2015/12/15(火) - 09:11
2013年冬のデビュー以来、口コミ、あるいはインプレの好評価により人気が急上昇し、日本のホビーシクロクロスライダーの間で瞬く間に大きなシェアを獲得するに至ったIRCのSERAC CXシリーズ。ノーマルタイプに加え、路面コンディション別にMADとSANDの3種を揃えたことも好評化につながっている。
IRC SERAC CX MUD TUBLESS photo:Makoto.AYANO
クロスカントリー用MTBタイヤとして定評がある「SERAC(シラク)」の名を冠したシクロクロス用チューブレスタイヤが「SERAC CX」シリーズである。ロード用チューブレスタイヤの構造をベースとし、MTBタイヤでの経験を基に設計されたトレッドパターンを組み合わせることで高性能を実現。国内のシクロクロスシーンにおいて高いシェアを獲得するに至った。
IRC SERAC CX TUBLESS
IRC SERAC CX SAND TUBLESS トレッドは全面が密なダイヤ目だ photo:Makoto.AYANOSERAC CXシリーズの特長は、チューブラーに迫る高い走行性能にある。その根幹を担うのがケーシングであり、同社のFormula PRO TUBELESSシリーズやMTBレーシングタイヤと同じく180TPIのナイロンケーシングを採用。軽量性や振動吸収性、低圧走行時の追従性と接地特性など、CXタイヤに求められる諸性能を高次元でバランスさせることに成功している。
そして、高い安全性もSERAC CXの特長の1つである。現在もトップカテゴリーでは主流のチューブラータイヤは乾燥度合や作業者のスキルによって接着強度が左右されるという点がある。一方で、ホイールとの嵌合によって固定されるチューブレスは作業者に寄らず固定力が一定でかつ強固。装着した瞬間から高い固定力が発揮されるため、走行中にホイールからタイヤが外れるリスクが低くなっている。
またIRCによれば、国内でもシェアが高まりつつあるディスクブレーキ仕様のCXバイクなど、ホイールとタイヤへ高い負荷が加わる環境においても信頼性が高いとのこと。パンク時に内圧が急激に低下しないことや、交換が容易なことも、チューブレスならではの大きな特長である。
SERAC CXシリーズのバリエーションは、トレンドパターン別に3種類。SERAC XCをベースとしつつノブの高さや個数、密度、側面のテーパー角をシクロクロスに最適化したスタンダードモデル、トレッド全面が密なダイヤ目とされた砂地向けの「SAND」、スタンダードモデルをベースにノブの背を高くした泥用の「MAD」がラインアップされる。
幅は3種類とも700x32cの1サイズ展開。生産は全て日本国内にて行われている。なお、SERAC CXシリーズはパンクの防止と安全性向上のためにIRCの純正シーラントと併用することが推奨されている。
SERAC CXシリーズ3種を長期インプレッション by 綾野 真(シクロワイアード編集部)
マスターズクラスで各地のシクロクロスレースに参戦を続ける私こと綾野 真(CW編集部)が、SERAC CXシリーズ3種を2シーズンに渡って使用しての使い分けインプレとしてまとめてみた。
まず初めての使用はノーマルのSERAC CXで、昨シーズン始めに投入した。そして順次MUD、SANDと実戦投入。ホイールもそれにあわせて増やし、3セットを揃えた。それまでFMBやチャレンジ、シュワルベなどのハンドメイドCXチューブラーを使用してきたため、記す実感はそれらとの比較となっている。
オールラウンドモデルとして安心感がある IRC SERAC CX TUBLESS(茨城シクロクロスにて) photo:KeiTsuji
国産であることを示すMADE IN JAPANのレターが入る SERAC CXシリーズに共通することだが、トレッドやサイドにコシがあって、かつとてもしなやかだ。路面の凸凹のショックをいなし、コーナーで粘るその感じは、かつてはチューブラーでしか出せなかったしなやかさだ。この点が好評のもっとも大きな要因だと思う。
適正空気圧に関しては、メーカー推奨空気圧は3Bar〜5Barとなっているが、実際の使用については2Bar前後を基準としたい。これはタイヤが外れる危険についてメーカー側が責任を負えないが故の表記だろうと想像するが、トップ選手からホビークラスまで、SERACユーザーに聞き取りした実情では、やはり2Barが基準になると言っていい。
体重64kgの自分の場合、1.7〜2.2Barぐらいの間で、コースを試走しながら路面状況によって調整している。タイトコーナーが多かったり、タイヤがヨレるセクションがある場合は気持ち高めにしつつ、ショック吸収をタイヤに任せたい度合いに応じて圧を少しづつ下げてセットしている。
2シーズンに渡って使用した印象は、非常に満足している。高価なハンドメイド製チューブラーを性能面で超えたとまでは言い切れないが、かなり肉薄した性能を出している。ノブがよく効くので、グリップ力という点では限界も高く、性格がわかりやすいのも良い。
SERAC CX MUD
IRC SERAC CX MUD TUBLESS photo:Makoto.AYANO
SERAC CXをベースにノブを高く、間隔を広くとることで泥はけ性を高めた photo:Makoto.AYANO
泥のレースでなくても、コースに滑るポイントがある場合は、前輪にだけでもMUDを使うとノブが良く効いてスリップダウンしないので安心感が増す。MUD用といえば特別なイメージがあるが、シクロクロスレースでの使用頻度はけっこうな高さであり、MUDはノーマルと併せてホイールに取り付けた状態で常備したいレベルだ。
SERAC CX SAND
その名前から砂地用というイメージを受けるが、自分の中では「ドライコンディションの高速レース用」という位置づけだ。2015年初めに出場したシクロクロス千葉はCX初心者・入門者にやさしい「マイルドシクロクロス」というコンセプトで、舗装路と芝の多いイージーなコースだった。SANDをチョイスして走ったおかげでマスターズクラスでスタートからゴールまで逃げ切って優勝することができた。濡れた芝のコーナーにやや気を遣ったが、舗装の直線やコーナーでロードレーサー並みに高速走行&コーナリングできたからだ。
全面が密なダイヤ目となる IRC SERAC CX SAND TUBLESSのトレッド photo:Makoto.AYANO
サイドにもノブが無く、全面がダイヤ目トレッドのため抵抗が少なく、高速走行が可能だ。高めの空気圧でもしなやかで、タイヤ全体で路面をグリップする不思議な感覚がある。ドライコンディション専用と感じていたが、ドロや雪のレースでも意外や意外、ノブ有りタイヤよりもスムーズに走ってくれる場面があるようだ。シクロクロス東京のような砂場の攻略にはもちろんこのSANDが有効だ。
シクロクロス千葉マスターズクラスでは舗装パートの多いスピードコースだった photo:Yuichiro.Hosoda
サイド部を手で押し込んだだけでそのしなやかさが分かる photo:Makoto.AYANO
粘土質な深い泥に覆われた昨年のCX全日本選手権 photo:Kei Tsuji昨シーズンの宮城・菅生サーキットでのシクロクロス全日本選手権は、粘土質の深い泥に悩まされた極悪コンディションだったが、SANDを使用した選手は泥抜けの良さにかなりのアドバンテージを得たという。残念ながら私はこうしたシーンでSANDを使用するというノウハウに到達していなかったため、そのメリットを享受できず終いでいた。
SERAC CX SANDは「面でグリップさせると有効だ」と上級者は言う。そのような使い方をする選手がカテゴリー1クラスに多くいることは確かだ。私の場合はまだ自信が持てないためつい使うのを躊躇してしまうが、どうやらその用途は確立されつつあるようだ。
一方、レースで使うには少々慣れが必要だろうが、最高なのは普段のCXライドだ。いや、「グラベルライド」と言ったほうが良いかもしれない。身近なオフロードをSANDでツーリングペースで走るのは非常に楽しい。荒れた小路や落ち葉のサイクリングロード、河川敷などへどんどん走っていけるので、CXバイクが最高の散歩バイクにできる。グラベルロードには太いが、CXバイクをグラベルロード的に乗るには最高のタイヤだ。そうした日常の使用を重ねて、レースでも使えるよう感覚を身につけたいと思っている。
また、SANDについてはクリンチャー仕様も用意されているため、チューブレス対応ホイールを持ち合わせていないライダーにもよいだろう。サイドトレッドが薄いことにより、チューブレス仕様に通じるしなやかさを持ちあわせており、修理の容易さとあわせてオススメだ。
SERAC CXシリーズは2シーズン目ですっかり自分のメインタイヤとなった。シーラントを使えば低圧でもエア漏れはほぼ無く、トラブルは少ない。ピンホールパンクも自己修復できてしまうようだ。ただしトレッドとサイドが薄いためか、低圧で使った際にリム打ちパンクは発生しやすいことがわかってきた。
サイドウォールのぶ厚いカーボンリムでは少ないが、薄い(=ウォールの尖った)軽量アルミリム系では、段差での抜重に失敗するとサイドに穴が空くスネークバイト状のパンクを起こすことがあるようだ。この点はチューブラーの打たれ強さには敵わない。
タイヤ交換は嵌め合いの適したリムなら非常に簡単で、慣れれば15分もあれば完了する。しかし高圧のエアを一気に噴出できるチャンバーつきポンプ(もしくはコンプレッサー)を持っていることや、シーラントやリムテープの状態が良好なことが条件となる。レース直前の交換は、自信がある場合を除いてやらないほうが無難だ(さもないと走れなくなる)。自分の場合はホイールを2セット以上用意している。パンクしての交換やシーズン半ばでのタイヤ交換の容易さは、チューブラーに比較して、作業上、時間的なメリットで大きく優っているのは確かだ。
IRC SERAC CX TUBELESS
トレッドパターン:3種類(スタンダード、MUD、SAND)
ケーシング:ナイロン製180TPI
サイズ:700X32C
重 量:380g
指定空気圧:300~500kPa(45~75PSI)
価 格:6,600円(税抜)
IRC SERAC CX SAND クリンチャー
ビード:フォルディング
サイズ:700X32C
実測幅:32.1mm(リム内幅15.1mm/空気圧3bar)
実測重量:257g
指定空気圧:3bar~5bar(300~500kPa)
価 格:6,200円(税抜)
text:Makoto.AYANO
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クロスカントリー用MTBタイヤとして定評がある「SERAC(シラク)」の名を冠したシクロクロス用チューブレスタイヤが「SERAC CX」シリーズである。ロード用チューブレスタイヤの構造をベースとし、MTBタイヤでの経験を基に設計されたトレッドパターンを組み合わせることで高性能を実現。国内のシクロクロスシーンにおいて高いシェアを獲得するに至った。
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そして、高い安全性もSERAC CXの特長の1つである。現在もトップカテゴリーでは主流のチューブラータイヤは乾燥度合や作業者のスキルによって接着強度が左右されるという点がある。一方で、ホイールとの嵌合によって固定されるチューブレスは作業者に寄らず固定力が一定でかつ強固。装着した瞬間から高い固定力が発揮されるため、走行中にホイールからタイヤが外れるリスクが低くなっている。
またIRCによれば、国内でもシェアが高まりつつあるディスクブレーキ仕様のCXバイクなど、ホイールとタイヤへ高い負荷が加わる環境においても信頼性が高いとのこと。パンク時に内圧が急激に低下しないことや、交換が容易なことも、チューブレスならではの大きな特長である。
SERAC CXシリーズのバリエーションは、トレンドパターン別に3種類。SERAC XCをベースとしつつノブの高さや個数、密度、側面のテーパー角をシクロクロスに最適化したスタンダードモデル、トレッド全面が密なダイヤ目とされた砂地向けの「SAND」、スタンダードモデルをベースにノブの背を高くした泥用の「MAD」がラインアップされる。
幅は3種類とも700x32cの1サイズ展開。生産は全て日本国内にて行われている。なお、SERAC CXシリーズはパンクの防止と安全性向上のためにIRCの純正シーラントと併用することが推奨されている。
SERAC CXシリーズ3種を長期インプレッション by 綾野 真(シクロワイアード編集部)
マスターズクラスで各地のシクロクロスレースに参戦を続ける私こと綾野 真(CW編集部)が、SERAC CXシリーズ3種を2シーズンに渡って使用しての使い分けインプレとしてまとめてみた。
まず初めての使用はノーマルのSERAC CXで、昨シーズン始めに投入した。そして順次MUD、SANDと実戦投入。ホイールもそれにあわせて増やし、3セットを揃えた。それまでFMBやチャレンジ、シュワルベなどのハンドメイドCXチューブラーを使用してきたため、記す実感はそれらとの比較となっている。
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体重64kgの自分の場合、1.7〜2.2Barぐらいの間で、コースを試走しながら路面状況によって調整している。タイトコーナーが多かったり、タイヤがヨレるセクションがある場合は気持ち高めにしつつ、ショック吸収をタイヤに任せたい度合いに応じて圧を少しづつ下げてセットしている。
2シーズンに渡って使用した印象は、非常に満足している。高価なハンドメイド製チューブラーを性能面で超えたとまでは言い切れないが、かなり肉薄した性能を出している。ノブがよく効くので、グリップ力という点では限界も高く、性格がわかりやすいのも良い。
SERAC CX MUD
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SERAC CX SAND
その名前から砂地用というイメージを受けるが、自分の中では「ドライコンディションの高速レース用」という位置づけだ。2015年初めに出場したシクロクロス千葉はCX初心者・入門者にやさしい「マイルドシクロクロス」というコンセプトで、舗装路と芝の多いイージーなコースだった。SANDをチョイスして走ったおかげでマスターズクラスでスタートからゴールまで逃げ切って優勝することができた。濡れた芝のコーナーにやや気を遣ったが、舗装の直線やコーナーでロードレーサー並みに高速走行&コーナリングできたからだ。
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一方、レースで使うには少々慣れが必要だろうが、最高なのは普段のCXライドだ。いや、「グラベルライド」と言ったほうが良いかもしれない。身近なオフロードをSANDでツーリングペースで走るのは非常に楽しい。荒れた小路や落ち葉のサイクリングロード、河川敷などへどんどん走っていけるので、CXバイクが最高の散歩バイクにできる。グラベルロードには太いが、CXバイクをグラベルロード的に乗るには最高のタイヤだ。そうした日常の使用を重ねて、レースでも使えるよう感覚を身につけたいと思っている。
また、SANDについてはクリンチャー仕様も用意されているため、チューブレス対応ホイールを持ち合わせていないライダーにもよいだろう。サイドトレッドが薄いことにより、チューブレス仕様に通じるしなやかさを持ちあわせており、修理の容易さとあわせてオススメだ。
SERAC CXシリーズは2シーズン目ですっかり自分のメインタイヤとなった。シーラントを使えば低圧でもエア漏れはほぼ無く、トラブルは少ない。ピンホールパンクも自己修復できてしまうようだ。ただしトレッドとサイドが薄いためか、低圧で使った際にリム打ちパンクは発生しやすいことがわかってきた。
サイドウォールのぶ厚いカーボンリムでは少ないが、薄い(=ウォールの尖った)軽量アルミリム系では、段差での抜重に失敗するとサイドに穴が空くスネークバイト状のパンクを起こすことがあるようだ。この点はチューブラーの打たれ強さには敵わない。
タイヤ交換は嵌め合いの適したリムなら非常に簡単で、慣れれば15分もあれば完了する。しかし高圧のエアを一気に噴出できるチャンバーつきポンプ(もしくはコンプレッサー)を持っていることや、シーラントやリムテープの状態が良好なことが条件となる。レース直前の交換は、自信がある場合を除いてやらないほうが無難だ(さもないと走れなくなる)。自分の場合はホイールを2セット以上用意している。パンクしての交換やシーズン半ばでのタイヤ交換の容易さは、チューブラーに比較して、作業上、時間的なメリットで大きく優っているのは確かだ。
IRC SERAC CX TUBELESS
トレッドパターン:3種類(スタンダード、MUD、SAND)
ケーシング:ナイロン製180TPI
サイズ:700X32C
重 量:380g
指定空気圧:300~500kPa(45~75PSI)
価 格:6,600円(税抜)
IRC SERAC CX SAND クリンチャー
ビード:フォルディング
サイズ:700X32C
実測幅:32.1mm(リム内幅15.1mm/空気圧3bar)
実測重量:257g
指定空気圧:3bar~5bar(300~500kPa)
価 格:6,200円(税抜)
text:Makoto.AYANO
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