2015/10/27(火) - 20:50
ジャパンカップ初参戦を果たした世界No.1のUCIワールドツアーチーム、BMCレーシング。長いシーズンを終えた選手達が、シーズンオフの初日に選んだ東京観光を写真で紹介。そして、選手たちに今シーズンのことや、ジャパンカップの印象、来年の目標などを聞きました。
ジャパンカップの翌日。ホテルの1階へと降りてきたBMCレーシングの選手達の表情は、レース前のそれとは異なり、とても朗らかであった。見送りに来た熱心なファンに感謝しつつ、東京行きのバスに乗り込むと、最初に止まったパーキングエリアでは、ヨーロッパでは見慣れないであろう日本のお菓子を買い込み、味比べ。そう、待ちに待ったオフシーズンが始まったからである。
この日のスケジュールは浅草寺にお参りした後、登録有形文化財に登録されている今半別館ですき焼きに舌鼓を打ち、秋葉原に移動してメイドカフェを体験。まさに新旧のジャパニーズカルチャーに触れる1日である。また、東京観光後はアフターパーティーに参加。再びファンとの交流を楽しんだ。
惜しくも日曜の表彰台を逃したものの、今回のジャパンカップではチーム内で最も良い成績を残したフローリス・ゲルツ。ロードレースのフィニッシュ後は悔しさを爆発させたものの、一晩明けるとすっかりリラックスモードに。「来季の目標はワールドツアーのレースで勝つことと、日本にまた来ることかな」というオランダの23歳は、途中で買ったジャガリコがお気に入りのようだ。
自らをクラシックレーサーと呼ぶゲルツは、シーズン途中よりスタジエとして走り、2016シーズンは正式加入が決定している。「これまで走ってきたカテゴリーは最初だけハードだったから、そこまで難しくはなかった。でも、上位カテゴリーのレースはフィニッシュに向かってハードになっていくから難しい」というのがプロカテゴリーの印象だそう。しかし、その走りは既にプロに順応している様に見え、ロードレースではラスト200mからスプリントで先行。「逃げグループの形成に効果的な働きをしてくれた」とジャクソン・スチュアート監督からも評価された。
BMCレーシングを選んだ理由については「リラックスしていて、家族みたいに選手同士の仲が良く、お互いを助けあうことで、より良い成績が目指せるから」と明かす。そんなゲルツは、浅草寺で深々とお参りしていた。筆者が何を祈っていたかを聞いてみると「ヨーロッパでは、願いごとの内容を他人に明かすと、その願いは叶わなくなるって言い伝えがあるからね」と教えてくれなかった。しかし、頭の中では来年の成功を思い描いているに違いない。ジャパンカップで活躍した選手は大成するというジンクスがあるが、ゲルツもその流れにのることができるか。来シーズンはぜひ注目したい。
「今シーズンはキャリアの中でも挑戦の年だった。幸先良くシーズンインしたものの、ブエルタ・アル・パイスバスコの第2ステージで大怪我を負った。3ヶ月も歩けなかったし、8月にコロラドやユタを走ったけど、その後に金属プレートを取り除く手術をしたから、回復にとても時間がかかってしまった。だけど、ジャパンカップで2度めのレース復帰を果たすことができたんだ」と少し目を潤ませながら話したのはピーター・ステティーナ。
アメリカ期待のオールラウンダーは移動のバスの中でも1人イヤホンをして音楽を聞きリラックスするなど、孤独を愛する男のよう。また、新しいことには何でも興味持つ冒険心もあり、早くケガ前の状態に戻って欲しいと、浅草寺では常香炉の煙を手術痕残る脚に浴びせていた。そして、今半ではマッシュルームと言いながらえのきを頬張り、メイドカフェでは仲間達と「萌え萌えキューン」とおどけてみたり。
そんなステティーナだが、来季はチームを移籍。BMCレーシングでの2年間を振り返ってもらった。「2014年は素晴らしい1年だった。ツールに初出場を果たし、山岳ではヴァンガーデレンをアシスト。地元のツアー・オフ・カリフォルニアではエースを任された。その勢いで2015年も飛躍できると思っていたが、怪我で全てが狂った。でも移籍するにも関わらず、ドクター達は僕の回復に全力を尽くしてくれた。とにかく素晴らしいチームだったよ。」
今回の来日チームの中で、キャプテン的な役目を務めたのが、プロトンの中でも最も高身長な選手の1人であるミヒャエル・シェアー(スイス)。「今年は97レースと、長くはなったけど良いシーズンだった。ツールではチームTTで勝利し、チームとして区間3勝を挙げ、ローハン・デニス(オーストラリア)がマイヨジョーヌを獲得。そして、日本でシーズンを終えることができて素晴らしいと感じている」と2015シーズンを振り返る。
いつでも笑顔を絶やさない196cmのスイス人は、旅することを心得ている様で、東京の観光ガイドを持参し、散策の時はライカのカメラを首からぶら下げる(シェアー撮影の美しい写真は本人のInstagramを参照のこと)。用意周到な点がリーダーを任される所以の1つなのだろう。
また、チームが立ち上がった2010年からBMCレーシングに所属していることも信頼に繋がっているはず。「僕達はとてもコンペティティブで、どのレースでも勝利を目指している。クラシックならジルベール、ステージレースならヴァンガーデレンと、レースのタイプごとにエースがいる」とBMCレーシングの強みを分析。また「来年はリッチー・ポートも加わり、より強力で完成されたチームになる」とも。
BMCレーシングは、今季33勝をマーク。勝利数で見るとワールドツアーチームの中では5位タイ。シーズンを通してコンスタントに結果を残していることについては「第一にチーム運営がしっかりしており、エースもアシストも揃っていて、お互いに助け合いながら勝利を狙っている。そして、16人が勝利を挙げている点も他チームとは違う点かな。」という。加えて、キャリア10年のうち9年を共にしているBMCのバイクについては「フォナック時代から大きな信頼を置いている。とてもSLR01を気に入っていて、今は90%のレースで使用している」と溺愛の様子だ。
首都高から見える東京のシティービューに一際目を輝かせていたのはペーター・べリトス。「シーズンは長くなっているけど、中東やオーストラリア、日本と色々な国を巡ることができる点は自分にとっては良いこと」と語る3度のスロバキアTTチャンピオンは、10年ほど前にツアー・オブ・ジャパンに参戦して以来、今回が2度目の来日。ただ、前回はあまり時間に余裕が無かったそうで、今回の東京観光を心待ちにしていたそう。
カタールから始まった長い今シーズンのハイライトは、ブエルタ・ア・エスパーニャ初日のチームTTを制し、リーダージャージを獲得したこと。「勝利を狙って全員でプッシュしていて、たまたま僕が先頭でフィニッシュしたんだ。それでもリーダージャージを着ることができて、とても嬉しかったし、チームも喜んでくれた。」と彫りの深い顔から笑顔をのぞかせた。
前所属のクイックステップ時代から3度のチームTT世界選手権優勝に貢献し、TTのナショナルチャンピオンに3度輝いているべリトスは、「とにかく長い時間、TTバイクにまたがることが重要なんだ」とTTに強い理由を説明。最後に世界チャンピオンに輝いた同郷のペーター・サガンについては「彼はいつか世界選に勝つだろうと目されていた。2年前はダメだったけど、今回はコースもマッチしていて、勝ち方も彼らしかったね」と自国初のエリートカテゴリーでのロードレース優勝を喜んだ。
「2月にシーズンインして、ステージレースを中心にアシストとして走ってきた。多くの有力ライダーとレースできたことは今後に繋がると思うし、日本に来れたことも良かったね。チームとイタリア人選手への応援が特に大きかった様に思えた。来年も引き続き自らを高めていきたい」とは、プロ1年目を終えたマヌエル・センニ。あどけなさが残るイタリア生まれの23歳だが、食事などには保守的な、典型的なヨーロッパ人の様だ。
来日前にはイル・ロンバルディアに出走。今シーズンの参加レースリストには有名どころがズラッと並んでる。6月のイタリアTT選手権では5位でフィニッシュ。そんなセンニにどんな脚質のライダーなのかを聞いてみると「クライマーだけど、TTでも成績を狙えると思う。あまりTTバイクには慣れていないけれど、これからはTTのトレーニングにより多くの時間を割くつもり」と巻き舌混じりのイタリアンな英語で答える。
尊敬している先輩はジルベールだそうで、「フィルと一緒に走ったレースでは多くを学んだ。そして、戦術についても色々と教えてもらったんだ」という。イタリアの名門育成チームCOLPACの出身で、ゲルツと並んでBMCの有望株であることは間違いなさそうで、来年はその名前を目にする機会が増えることだろう。
ジャパンカップ、東京観光、アフターパーティーを終えたBMCレーシングの来日メンバーは、多くが翌朝の便で帰国の途に。一方で、シェアーは日本に残り、京都へと脚を伸ばしたのだそう。来年の予定は未定だが、赤色のナイスガイ達が再びジャパンカップに参戦してくれること期待したい。
text&photo:Yuya.Yamamoto
ジャパンカップの翌日。ホテルの1階へと降りてきたBMCレーシングの選手達の表情は、レース前のそれとは異なり、とても朗らかであった。見送りに来た熱心なファンに感謝しつつ、東京行きのバスに乗り込むと、最初に止まったパーキングエリアでは、ヨーロッパでは見慣れないであろう日本のお菓子を買い込み、味比べ。そう、待ちに待ったオフシーズンが始まったからである。
この日のスケジュールは浅草寺にお参りした後、登録有形文化財に登録されている今半別館ですき焼きに舌鼓を打ち、秋葉原に移動してメイドカフェを体験。まさに新旧のジャパニーズカルチャーに触れる1日である。また、東京観光後はアフターパーティーに参加。再びファンとの交流を楽しんだ。
惜しくも日曜の表彰台を逃したものの、今回のジャパンカップではチーム内で最も良い成績を残したフローリス・ゲルツ。ロードレースのフィニッシュ後は悔しさを爆発させたものの、一晩明けるとすっかりリラックスモードに。「来季の目標はワールドツアーのレースで勝つことと、日本にまた来ることかな」というオランダの23歳は、途中で買ったジャガリコがお気に入りのようだ。
自らをクラシックレーサーと呼ぶゲルツは、シーズン途中よりスタジエとして走り、2016シーズンは正式加入が決定している。「これまで走ってきたカテゴリーは最初だけハードだったから、そこまで難しくはなかった。でも、上位カテゴリーのレースはフィニッシュに向かってハードになっていくから難しい」というのがプロカテゴリーの印象だそう。しかし、その走りは既にプロに順応している様に見え、ロードレースではラスト200mからスプリントで先行。「逃げグループの形成に効果的な働きをしてくれた」とジャクソン・スチュアート監督からも評価された。
BMCレーシングを選んだ理由については「リラックスしていて、家族みたいに選手同士の仲が良く、お互いを助けあうことで、より良い成績が目指せるから」と明かす。そんなゲルツは、浅草寺で深々とお参りしていた。筆者が何を祈っていたかを聞いてみると「ヨーロッパでは、願いごとの内容を他人に明かすと、その願いは叶わなくなるって言い伝えがあるからね」と教えてくれなかった。しかし、頭の中では来年の成功を思い描いているに違いない。ジャパンカップで活躍した選手は大成するというジンクスがあるが、ゲルツもその流れにのることができるか。来シーズンはぜひ注目したい。
「今シーズンはキャリアの中でも挑戦の年だった。幸先良くシーズンインしたものの、ブエルタ・アル・パイスバスコの第2ステージで大怪我を負った。3ヶ月も歩けなかったし、8月にコロラドやユタを走ったけど、その後に金属プレートを取り除く手術をしたから、回復にとても時間がかかってしまった。だけど、ジャパンカップで2度めのレース復帰を果たすことができたんだ」と少し目を潤ませながら話したのはピーター・ステティーナ。
アメリカ期待のオールラウンダーは移動のバスの中でも1人イヤホンをして音楽を聞きリラックスするなど、孤独を愛する男のよう。また、新しいことには何でも興味持つ冒険心もあり、早くケガ前の状態に戻って欲しいと、浅草寺では常香炉の煙を手術痕残る脚に浴びせていた。そして、今半ではマッシュルームと言いながらえのきを頬張り、メイドカフェでは仲間達と「萌え萌えキューン」とおどけてみたり。
そんなステティーナだが、来季はチームを移籍。BMCレーシングでの2年間を振り返ってもらった。「2014年は素晴らしい1年だった。ツールに初出場を果たし、山岳ではヴァンガーデレンをアシスト。地元のツアー・オフ・カリフォルニアではエースを任された。その勢いで2015年も飛躍できると思っていたが、怪我で全てが狂った。でも移籍するにも関わらず、ドクター達は僕の回復に全力を尽くしてくれた。とにかく素晴らしいチームだったよ。」
今回の来日チームの中で、キャプテン的な役目を務めたのが、プロトンの中でも最も高身長な選手の1人であるミヒャエル・シェアー(スイス)。「今年は97レースと、長くはなったけど良いシーズンだった。ツールではチームTTで勝利し、チームとして区間3勝を挙げ、ローハン・デニス(オーストラリア)がマイヨジョーヌを獲得。そして、日本でシーズンを終えることができて素晴らしいと感じている」と2015シーズンを振り返る。
いつでも笑顔を絶やさない196cmのスイス人は、旅することを心得ている様で、東京の観光ガイドを持参し、散策の時はライカのカメラを首からぶら下げる(シェアー撮影の美しい写真は本人のInstagramを参照のこと)。用意周到な点がリーダーを任される所以の1つなのだろう。
また、チームが立ち上がった2010年からBMCレーシングに所属していることも信頼に繋がっているはず。「僕達はとてもコンペティティブで、どのレースでも勝利を目指している。クラシックならジルベール、ステージレースならヴァンガーデレンと、レースのタイプごとにエースがいる」とBMCレーシングの強みを分析。また「来年はリッチー・ポートも加わり、より強力で完成されたチームになる」とも。
BMCレーシングは、今季33勝をマーク。勝利数で見るとワールドツアーチームの中では5位タイ。シーズンを通してコンスタントに結果を残していることについては「第一にチーム運営がしっかりしており、エースもアシストも揃っていて、お互いに助け合いながら勝利を狙っている。そして、16人が勝利を挙げている点も他チームとは違う点かな。」という。加えて、キャリア10年のうち9年を共にしているBMCのバイクについては「フォナック時代から大きな信頼を置いている。とてもSLR01を気に入っていて、今は90%のレースで使用している」と溺愛の様子だ。
首都高から見える東京のシティービューに一際目を輝かせていたのはペーター・べリトス。「シーズンは長くなっているけど、中東やオーストラリア、日本と色々な国を巡ることができる点は自分にとっては良いこと」と語る3度のスロバキアTTチャンピオンは、10年ほど前にツアー・オブ・ジャパンに参戦して以来、今回が2度目の来日。ただ、前回はあまり時間に余裕が無かったそうで、今回の東京観光を心待ちにしていたそう。
カタールから始まった長い今シーズンのハイライトは、ブエルタ・ア・エスパーニャ初日のチームTTを制し、リーダージャージを獲得したこと。「勝利を狙って全員でプッシュしていて、たまたま僕が先頭でフィニッシュしたんだ。それでもリーダージャージを着ることができて、とても嬉しかったし、チームも喜んでくれた。」と彫りの深い顔から笑顔をのぞかせた。
前所属のクイックステップ時代から3度のチームTT世界選手権優勝に貢献し、TTのナショナルチャンピオンに3度輝いているべリトスは、「とにかく長い時間、TTバイクにまたがることが重要なんだ」とTTに強い理由を説明。最後に世界チャンピオンに輝いた同郷のペーター・サガンについては「彼はいつか世界選に勝つだろうと目されていた。2年前はダメだったけど、今回はコースもマッチしていて、勝ち方も彼らしかったね」と自国初のエリートカテゴリーでのロードレース優勝を喜んだ。
「2月にシーズンインして、ステージレースを中心にアシストとして走ってきた。多くの有力ライダーとレースできたことは今後に繋がると思うし、日本に来れたことも良かったね。チームとイタリア人選手への応援が特に大きかった様に思えた。来年も引き続き自らを高めていきたい」とは、プロ1年目を終えたマヌエル・センニ。あどけなさが残るイタリア生まれの23歳だが、食事などには保守的な、典型的なヨーロッパ人の様だ。
来日前にはイル・ロンバルディアに出走。今シーズンの参加レースリストには有名どころがズラッと並んでる。6月のイタリアTT選手権では5位でフィニッシュ。そんなセンニにどんな脚質のライダーなのかを聞いてみると「クライマーだけど、TTでも成績を狙えると思う。あまりTTバイクには慣れていないけれど、これからはTTのトレーニングにより多くの時間を割くつもり」と巻き舌混じりのイタリアンな英語で答える。
尊敬している先輩はジルベールだそうで、「フィルと一緒に走ったレースでは多くを学んだ。そして、戦術についても色々と教えてもらったんだ」という。イタリアの名門育成チームCOLPACの出身で、ゲルツと並んでBMCの有望株であることは間違いなさそうで、来年はその名前を目にする機会が増えることだろう。
ジャパンカップ、東京観光、アフターパーティーを終えたBMCレーシングの来日メンバーは、多くが翌朝の便で帰国の途に。一方で、シェアーは日本に残り、京都へと脚を伸ばしたのだそう。来年の予定は未定だが、赤色のナイスガイ達が再びジャパンカップに参戦してくれること期待したい。
text&photo:Yuya.Yamamoto
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APIS (アピス) レーシングキャップ BMC RACING
APIS (アピス)