2015/10/05(月) - 09:41
フィニッシュ直前、沿道から飛んできたイタリア国旗が偶然イタリアチャンピオンジャージに貼り付いた。ヴィンチェンツォ・ニーバリ(イタリア、アスタナ)によるイル・ロンバルディア制覇。「メッシーナのサメ」がシーズン最後のモニュメントを制した。
イタリア北部を覆う雨雲がロンバルディア州の山岳地帯を濡らしたが、レースが通過する頃には晴れ間が出るほど回復。245kmコースで行われる「落ち葉のクラシック」は午前10時半、昨年のフィニッシュ地点ベルガモをスタートした。
レース前半の主役はサイモン・ゲシュケ(ドイツ、ジャイアント・アルペシン)やヤン・ポランク(スロベニア、ランプレ・メリダ)を含む11名の逃げグループ。メイン集団はアスタナの支配下に置かれたものの、残り70kmを切ってから慌ただしく展開する。
前日にアルカンシェルを奉納したマドンナ・デル・ギザッロ教会に向かう登りでミカル・クヴィアトコウスキー(ポーランド、エティックス・クイックステップ)がメイン集団からカウンターアタック。元世界チャンピオンの攻撃には6名が反応し、先頭の逃げグループを追撃する。
続く最大勾配27%の「ソルマーノの壁」でクヴィアトコウスキーはティム・ウェレンス(ベルギー、ロット・ソウダル)とともに逃げグループをパスして先頭へ。アスタナがペースを刻む約20名のメイン集団がそのすぐ後ろに迫る。その中にダニエル・マーティン(アイルランド、キャノンデール・ガーミン)やフィリップ・ジルベール(ベルギー、BMCレーシング)はいなかった。
先頭に躍り出たクヴィアトコウスキーとウェレンスはコモ湖半に至るテクニカルなダウンヒルをこなしてコモの街へ。しかし終盤に連続するチヴィリオとサンフェルモ・デッラ・バッターリアの登りを前に、アスタナが徹底的にリードする精鋭集団に引き戻された。
勝負に残ったのはニーバリとローザ(アスタナ)、ピノ(FDJ)、チャベス(オリカ・グリーンエッジ)、モレーノ(カチューシャ)、バルベルデ(モビスター)、ニエベ(チームスカイ)の7名。この中からイタリアチャンピオンジャージのニーバリがチヴィリオでアタックを仕掛けたが決まらない。すると、頂上通過後、登りを終えてちょうど息を整えるタイミングでニーバリが再びアタックした。
「新たに取り入れられたチヴィリオの登りが必ずレースが動くポイントになると予想していた。クラシックライダーよりもピュアクライマー向きの勾配ある登り。そこからダウンヒルとサンフェルモ・デッラ・バッターリアの登りを含め、慎重にコースを研究したんだ。登坂ペースが速かったので登りで飛び出せず、下りでアタックした」というニーバリがトップチューブに座って身をかがめ、誰よりも速いスピードで下りコーナーに突っ込んだ。
ロード世界選手権の下りを攻めたペーター・サガン(スロバキア、ティンコフ・サクソ)を引き合いに出し、ニーバリは「僕はサガンほどクレイジーじゃない。いつも余裕を持って下っている」と笑う。前走のモーターバイクを追い抜く際にヒヤリとするシーンも見られたが、軽やかなバイクコントロールでクリア。牽制のためペースの上がらない後続集団とのタイム差は40秒まで広がった。
最後の難所であるサンフェルモ・デッラ・バッターリアでモレーノやピノが追撃し、ニーバリの11秒後方に迫ったものの追いつけず。頂上を越えてフィニッシュまでの下りが始まると再びタイム差は拡大。極限まで空気抵抗を軽減させながら下りを攻めるニーバリと、ブラケットを握ったまま下るモレーノのスピード差は歴然だった。
暖かな西陽が差し込むコモの街に独走でやってきたニーバリが声援に応えながら両手を挙げる。沿道から飛んできたイタリア国旗を腹部に貼り付けながら、イタリアチャンピオンの勝利が決まった。
チームカーに捕まったことによる失格処分でブエルタ・ア・エスパーニャを去り、悪いイメージを引きずったニーバリがシーズン最後のUCIワールドツアーレースで勝利した。「ブエルタでは大きな間違いを犯してしまった。でもそこでゼロからスタートする気になったんだ。ブエルタの失格は良い出来事だったと今だから言える。怒りの感情が僕をこの勝利に導いた」と、ニーバリは一連の出来事を振り返る。
「2015年シーズンには満足しているよ。間違いもあったけど、精神的な強さと決意を胸に帰ってきた。イタリア人選手が長く達成していなかったモニュメント制覇でシーズンを締めくくることが出来てよかった」。2010年ブエルタ、2013年ジロ、2014年ツールで総合優勝を飾った30歳のニーバリがモニュメント初制覇を果たした。
イル・ロンバルディア2015結果
1位 ヴィンチェンツォ・ニーバリ(イタリア、アスタナ) 6h16’28”
2位 ダニエル・モレーノ(スペイン、カチューシャ) +21”
3位 ティボー・ピノ(フランス、FDJ) +32”
4位 アレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター) +46”
5位 ディエゴ・ローザ(イタリア、アスタナ)
6位 ミケル・ニエベ(スペイン、チームスカイ)
7位 トニー・ギャロパン(フランス、ロット・ソウダル) +56”
8位 エスデバン・チャベス(コロンビア、オリカ・グリーンエッジ)
9位 セルジオルイス・エナオモントーヤ(コロンビア、チームスカイ)
10位 ジャンルーカ・ブランビッラ(イタリア、エティックス・クイックステップ) +1’10”
DNF 山本元喜(日本、NIPPOヴィーニファンティーニ)
text:Kei Tsuji
photo:Tim de Waele
イタリア北部を覆う雨雲がロンバルディア州の山岳地帯を濡らしたが、レースが通過する頃には晴れ間が出るほど回復。245kmコースで行われる「落ち葉のクラシック」は午前10時半、昨年のフィニッシュ地点ベルガモをスタートした。
レース前半の主役はサイモン・ゲシュケ(ドイツ、ジャイアント・アルペシン)やヤン・ポランク(スロベニア、ランプレ・メリダ)を含む11名の逃げグループ。メイン集団はアスタナの支配下に置かれたものの、残り70kmを切ってから慌ただしく展開する。
前日にアルカンシェルを奉納したマドンナ・デル・ギザッロ教会に向かう登りでミカル・クヴィアトコウスキー(ポーランド、エティックス・クイックステップ)がメイン集団からカウンターアタック。元世界チャンピオンの攻撃には6名が反応し、先頭の逃げグループを追撃する。
続く最大勾配27%の「ソルマーノの壁」でクヴィアトコウスキーはティム・ウェレンス(ベルギー、ロット・ソウダル)とともに逃げグループをパスして先頭へ。アスタナがペースを刻む約20名のメイン集団がそのすぐ後ろに迫る。その中にダニエル・マーティン(アイルランド、キャノンデール・ガーミン)やフィリップ・ジルベール(ベルギー、BMCレーシング)はいなかった。
先頭に躍り出たクヴィアトコウスキーとウェレンスはコモ湖半に至るテクニカルなダウンヒルをこなしてコモの街へ。しかし終盤に連続するチヴィリオとサンフェルモ・デッラ・バッターリアの登りを前に、アスタナが徹底的にリードする精鋭集団に引き戻された。
勝負に残ったのはニーバリとローザ(アスタナ)、ピノ(FDJ)、チャベス(オリカ・グリーンエッジ)、モレーノ(カチューシャ)、バルベルデ(モビスター)、ニエベ(チームスカイ)の7名。この中からイタリアチャンピオンジャージのニーバリがチヴィリオでアタックを仕掛けたが決まらない。すると、頂上通過後、登りを終えてちょうど息を整えるタイミングでニーバリが再びアタックした。
「新たに取り入れられたチヴィリオの登りが必ずレースが動くポイントになると予想していた。クラシックライダーよりもピュアクライマー向きの勾配ある登り。そこからダウンヒルとサンフェルモ・デッラ・バッターリアの登りを含め、慎重にコースを研究したんだ。登坂ペースが速かったので登りで飛び出せず、下りでアタックした」というニーバリがトップチューブに座って身をかがめ、誰よりも速いスピードで下りコーナーに突っ込んだ。
ロード世界選手権の下りを攻めたペーター・サガン(スロバキア、ティンコフ・サクソ)を引き合いに出し、ニーバリは「僕はサガンほどクレイジーじゃない。いつも余裕を持って下っている」と笑う。前走のモーターバイクを追い抜く際にヒヤリとするシーンも見られたが、軽やかなバイクコントロールでクリア。牽制のためペースの上がらない後続集団とのタイム差は40秒まで広がった。
最後の難所であるサンフェルモ・デッラ・バッターリアでモレーノやピノが追撃し、ニーバリの11秒後方に迫ったものの追いつけず。頂上を越えてフィニッシュまでの下りが始まると再びタイム差は拡大。極限まで空気抵抗を軽減させながら下りを攻めるニーバリと、ブラケットを握ったまま下るモレーノのスピード差は歴然だった。
暖かな西陽が差し込むコモの街に独走でやってきたニーバリが声援に応えながら両手を挙げる。沿道から飛んできたイタリア国旗を腹部に貼り付けながら、イタリアチャンピオンの勝利が決まった。
チームカーに捕まったことによる失格処分でブエルタ・ア・エスパーニャを去り、悪いイメージを引きずったニーバリがシーズン最後のUCIワールドツアーレースで勝利した。「ブエルタでは大きな間違いを犯してしまった。でもそこでゼロからスタートする気になったんだ。ブエルタの失格は良い出来事だったと今だから言える。怒りの感情が僕をこの勝利に導いた」と、ニーバリは一連の出来事を振り返る。
「2015年シーズンには満足しているよ。間違いもあったけど、精神的な強さと決意を胸に帰ってきた。イタリア人選手が長く達成していなかったモニュメント制覇でシーズンを締めくくることが出来てよかった」。2010年ブエルタ、2013年ジロ、2014年ツールで総合優勝を飾った30歳のニーバリがモニュメント初制覇を果たした。
イル・ロンバルディア2015結果
1位 ヴィンチェンツォ・ニーバリ(イタリア、アスタナ) 6h16’28”
2位 ダニエル・モレーノ(スペイン、カチューシャ) +21”
3位 ティボー・ピノ(フランス、FDJ) +32”
4位 アレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター) +46”
5位 ディエゴ・ローザ(イタリア、アスタナ)
6位 ミケル・ニエベ(スペイン、チームスカイ)
7位 トニー・ギャロパン(フランス、ロット・ソウダル) +56”
8位 エスデバン・チャベス(コロンビア、オリカ・グリーンエッジ)
9位 セルジオルイス・エナオモントーヤ(コロンビア、チームスカイ)
10位 ジャンルーカ・ブランビッラ(イタリア、エティックス・クイックステップ) +1’10”
DNF 山本元喜(日本、NIPPOヴィーニファンティーニ)
text:Kei Tsuji
photo:Tim de Waele
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