2015/08/20(木) - 09:10
ヴィットリアから従来のリムセメントに代わる非常にユニークな特性を持つチューブラー用接着剤「Magic Mastik(マジック・マスティック)」が発表された。塗布/接着作業が非常に簡単で、経験がない初心者でも扱えるという話題の製品をさっそくテストしてみた。
ヴィットリアMagic Mastik photo:Makoto.AYANO
Magic Mastik(マジック・マスティック)は、レーシングタイヤをリードするイタリアンブランド「ヴィットリア」が新しく開発したチューブラータイヤ用接着剤だ。
メーカー側からのアナウンスでは、Magic Mastikは従来のリムセメントと比べ非常にユニークな特徴を複数備えており、誰でも簡単に塗布することが可能で、従来のリムセメントのようにチューブラーとリムの両側に塗布する必要はなく、リムの表面に1層のみ塗布するだけでプロメカニックレベルのチューブラータイヤ接着が可能だという。
Magic Mastikはおもに以下のような特徴を備えているという。
・作業が簡単で、経験が少ない、もしくは全くないアマチュアでも使用可能
・速乾性であり、乾燥時間を従来リムセメント比で50%短縮。12時間で走行可能になる
・不燃性であるため航空機での遠征時や作業時にも安心
・最大 120°Cまで耐えられる耐熱性をもつ
・カーボン、アルミ問わず全てのチューブラーリムに使用が可能
商品名 Magic Mastik(マジック・マスティック)
内容量 12gx 2 本(タイヤ 2 本分)
EAN コード 8022530002639
希望小売価格 2,680 円(税別)
発売日 8月末
インプレッション
「所要時間5分。歪みなく完璧な真円度で装着できることでチューブラーの性能を最大限に引き出せる」
遮光性の袋の中にチューブが2本封入されている ここでは8月上旬にヴィットリア・ジャパンから提供を受けたMagic Mastikのサンプル品により、編集部の綾野 真が実際に使用したインプレッションをお届けする。
まずカーボンリムの接着面を界面活性剤やアルコールなどを用いてクリーニングする 商品状態では小袋のなかにチューブ状のMagic Mastik2本が封入されていた。サンプル品のため発売時に用意される日本語の使用説明書(パッケージ裏面に貼り付けられる予定)がないだけで、それが商品の状態だ。使用方法のビデオは日本語字幕付きですでに公開済みであるため、それを参考にタイヤ装着作業を行ってみることに。
先端が斜めにカットされたアプリケーターから内容液を少量づつ出しながらリムに塗っていく シルバーコートされた遮光袋は、おそらくは長期に渡って品質を保つための包装だろう。2本のチューブは内容量各12gで、それぞれがタイヤ1本ぶん相当だ。
指の腹を使って伸ばすとスムーズに塗布できる。ベタつかず汚れないので気にならない 装着するホイールには使用中のシマノ・デュラエースC35ホイールを用意した。フルカーボンのチューブラーリムで、TUFO製リムテープを用いてタイヤを接着してあったが、タイヤを剥がし、リムテープを除去し、界面活性剤などを使用して念入りに表面をクリーニングした。
チューブラータイヤは交換用にと持っていた私物のヴィットリア・コルサCXとSRを使用して装着作業を行ってみた(ヴィットリア製品であったことは偶然だ)。
指についても汚れる感じがしない。簡単に拭き取ることができるので気にならない Magic Mastikのキャップを取り、先端が斜めにカットされたアプリケーターから内容液を少量づつ出しながらリムに塗っていく。内容液は無色・透明で、少し粘りはあるものの粘着力が弱く、接着剤という印象ではない。HowToビデオにあるように指でリム表面に伸ばしていくとムラ無くスムーズに伸びてゆく。光沢があるので、塗布できた箇所は目視で確認できる。
指についたMagic Mastik液は無色透明のままで、汚れを呼ばない。ウェスやティッシュで拭き取れるので、指を汚す感じがまったくない。伸びが良いため、一度指でなぞるだけで接着面に均等に塗布できた。チューブ1本はロードリムならやや余る。使い切る必要はないようだ。
リムに一層塗るだけで十分とされ、タイヤ裏側(いわゆるフンドシ)に塗布する必要はないとのことだ。
塗布が終わり、軽くエアを入れたチューブラーを装着する。装着時のMagic Mastikは粘着力が弱く、むしろ潤滑剤のような働きをするのでタイヤはスムーズにリム上に収まる。粘着力が弱いためセンター出しが容易で、エアを入れたチューブラータイヤを歪みない位置に収めることができる。手で修正しなくとも、自然に良い位置に収まり、均等に張力がかかるように落ち着くという印象だ。
センター出しを終えたチューブラーに8気圧以上のエアを入れるとリムサイドから透明な「余り液」がはみ出てくるが、これも濡れた布で容易に拭きとることができる。この液の伸びが良いので拭き取る際に広がってしまいがちだが、これも無色透明で汚れを呼ばない。乾いてもタイヤサイドやトレッドに影響がなさそうな印象だが、ブレーキシュー当たり面は念入りに拭きとっておいたほうが良さそうだ。指についた液は水で流せるのが不思議だ。
チューブラーに軽くエアを充填してから装着する 以上の装着作業は5分あれば終わるので、使用法にある謳い文句は誇大表現では無い。リムセメントより格段に簡単であることは実感できる。装着状態で12時間置けば接着が完全となり、ライド可能とのことだ。
タイヤのセンター出しが非常に簡単だ。タイヤは自然に収まるためねじれも少ない 内部でどのように硬化し、接着力が発揮されていくのかは確認しようがないため、試しにアルミリムやプラ板の上に液を垂らし、硬化の様子をみた。
垂らしたMagic Mastikは、液状から3時間経てば指で触れても表面がベタつかない状態に硬化する。乾燥しても容積はほとんど減らず、硬化状態の触感はビニール系樹脂のようだった。
リムサイドにはみ出した液はクリアなため目立たないが拭きとったほうが良さそうだ 装着作業は確かに簡単で、「初心者でもベテランメカニックと同じようにチューブラータイヤが貼れる」という使用感は確かに実感できた。
そしていちばん感心するのはタイヤのセンターが簡単に・完全に出せること。即乾性をイメージさせる謳い文句だが、むしろ即乾性リムセメントに比べれば塗布時には遅乾で、粘着性が低いため、チューブラータイヤがねじれず、つっぱらず、均一に装着できる。従来のリムセメントで貼ったものはホイールを回転させてみるとトレッドが波打ったり、ねじれている箇所があるものだが、Magic Mastikを使ってみると非常にスムーズに仕上がる。全周に渡って均等な張力でタイヤが収まっていると思われ、クリンチャータイヤ並みに真円度が高く、歪みの非常に少ない状態に仕上げられる。おそらくそれは転がり抵抗の少なさにもつながるはずだ。
12時間以上置いた状態で、翌日から2日間の静岡〜東京の箱根越えロードツーリングに使用してみた。
箱根峠〜小田原へ「天下の険」でのダウンヒルでも問題なし。リムはブレーキングで高熱を帯びたが、接着は緩むことなく、タイヤのズレなどの問題は発生しなかった。走っているときは常にトレッドにねじれや波打ちの無いスムーズな走行感を味わえた。まるで腕利きのプロが貼ったチューブラータイヤのように。
はみ出た液は乾く前に濡れた布で拭きとっておく。粘着性が低いのですぐに除去できる カーボンリムへのチューブラータイヤ装着という主用途のテストでは大変な満足感を得られた。Magic Mastikはチューブラータイヤ本来の高性能を存分に引き出してくれる製品に仕上がっているようだ。
従来のリムセメントの様な「定期的な貼り替え」は不要だという。ただし塗布してしばらくは接着力を発揮しない特性のため、路上でのタイヤ交換の際の応急処置には即接着力を得られるリムテープを用いるのが良いだろう。
垂らした液は3時間程度で硬化してベタつかなくなる。容積はほとんど減少しないようだ 2本セットで2,680 円(税別)の希望小売価格は、従来のリムセメントの価格を無視した設定だ。しかし使用前に感じた「非常なる高価さ」は、その使用時の簡単さとタイヤ装着状態のレベルの高さを前にすれば、その値段ぶんの価値を十分感じることができる。
チューブラータイヤのリーディングブランドであるヴィットリア。当然そのテクノロジーと開発力は一歩先を行っている。今季意欲的なホイール群をリリースした同社は、来季はレーシングタイヤのラインアップを刷新してくるという噂が聞こえてきている。その前に接着の要であるリムセメントを刷新してしまうという、ステップを踏んだ製品開発の順序は素晴らしいと思う。
長期テストを経ない今はまだ不明点があるため、疑問点はヴィットリア・ジャパンを通じてイタリアの開発陣に確認してもらった。回答が得られたものは下に記そう。
・剥がすときにはどうするのか?
リムセメントと同様に剥がせます。カーボンリムの場合は繊維の剥離に注意して剥がしてください。
・一度塗布したMagic Mastikの除去方法は?
タイヤを剥がした後にリムに残ったMagic Mastikはある程度の粘着力を残しており、指で擦ると消しゴムかすの様にポロポロと取れます。Magic Mastikを再塗布する場合は除去する必要はなく、その上から再塗布が可能です。
・MTBやシクロクロスチューブラーの接着には向くのか?
非公式ですが、日本国内でのサポートチーム「SNELシクロクロスチーム」によるテストでは、低圧で横方向に大きな力がかかるシクロクロス用途には不向きのようだとの回答を得ています。(ヴィットリア・ジャパンの見解)
※追記 タイヤを剥がす際のインプレッション
路上でパンクし、タイヤを剥がしてみた。エアを抜いてこじれば驚くほど簡単にタイヤが剥がせた。リム表面にはほとんど接着力のあるMagic Mastikは残らない 使用後2週間でのライド中にパンクしたことにより、剥がすときのインプレを追記します。
チューブラータイヤのエアを抜いてタイヤをこじれば、驚くほど簡単に剥がれてしまった。つまり貼るのと同様に剥がすのも非常に楽に簡単に行える。それがイコール、低圧で使うシクロクロス用途などの場合には向かない理由だ。つまり「エアを抜いた状態での横方向の力には耐えない」。
通常の高圧状態ではまったく剥がれる気配は感じなかったが、おそらく2気圧以下の場合は横方向に力を掛ければタイヤはすぐ剥がれてしまうだろう。
チューブラータイヤを剥がした後、リム表面側にはほとんどMagic Mastikは残らず、接着力はゼロの状態になる。わずかに残ったMagic Mastikのカスは、手でこすればポロポロと落ちる。リム表面はキレイな状態なので、リムテープを使うか、タイヤのフラップ側にリムセメントの接着力が残った使用済みチューブラーをスペアとして携行するのがオススメだ。
ヴィットリア制作のHowToビデオ
photo&text:Makoto.AYANO
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Magic Mastik(マジック・マスティック)は、レーシングタイヤをリードするイタリアンブランド「ヴィットリア」が新しく開発したチューブラータイヤ用接着剤だ。
メーカー側からのアナウンスでは、Magic Mastikは従来のリムセメントと比べ非常にユニークな特徴を複数備えており、誰でも簡単に塗布することが可能で、従来のリムセメントのようにチューブラーとリムの両側に塗布する必要はなく、リムの表面に1層のみ塗布するだけでプロメカニックレベルのチューブラータイヤ接着が可能だという。
Magic Mastikはおもに以下のような特徴を備えているという。
・作業が簡単で、経験が少ない、もしくは全くないアマチュアでも使用可能
・速乾性であり、乾燥時間を従来リムセメント比で50%短縮。12時間で走行可能になる
・不燃性であるため航空機での遠征時や作業時にも安心
・最大 120°Cまで耐えられる耐熱性をもつ
・カーボン、アルミ問わず全てのチューブラーリムに使用が可能
商品名 Magic Mastik(マジック・マスティック)
内容量 12gx 2 本(タイヤ 2 本分)
EAN コード 8022530002639
希望小売価格 2,680 円(税別)
発売日 8月末
インプレッション
「所要時間5分。歪みなく完璧な真円度で装着できることでチューブラーの性能を最大限に引き出せる」
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リムに一層塗るだけで十分とされ、タイヤ裏側(いわゆるフンドシ)に塗布する必要はないとのことだ。
塗布が終わり、軽くエアを入れたチューブラーを装着する。装着時のMagic Mastikは粘着力が弱く、むしろ潤滑剤のような働きをするのでタイヤはスムーズにリム上に収まる。粘着力が弱いためセンター出しが容易で、エアを入れたチューブラータイヤを歪みない位置に収めることができる。手で修正しなくとも、自然に良い位置に収まり、均等に張力がかかるように落ち着くという印象だ。
センター出しを終えたチューブラーに8気圧以上のエアを入れるとリムサイドから透明な「余り液」がはみ出てくるが、これも濡れた布で容易に拭きとることができる。この液の伸びが良いので拭き取る際に広がってしまいがちだが、これも無色透明で汚れを呼ばない。乾いてもタイヤサイドやトレッドに影響がなさそうな印象だが、ブレーキシュー当たり面は念入りに拭きとっておいたほうが良さそうだ。指についた液は水で流せるのが不思議だ。
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12時間以上置いた状態で、翌日から2日間の静岡〜東京の箱根越えロードツーリングに使用してみた。
箱根峠〜小田原へ「天下の険」でのダウンヒルでも問題なし。リムはブレーキングで高熱を帯びたが、接着は緩むことなく、タイヤのズレなどの問題は発生しなかった。走っているときは常にトレッドにねじれや波打ちの無いスムーズな走行感を味わえた。まるで腕利きのプロが貼ったチューブラータイヤのように。
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チューブラータイヤのリーディングブランドであるヴィットリア。当然そのテクノロジーと開発力は一歩先を行っている。今季意欲的なホイール群をリリースした同社は、来季はレーシングタイヤのラインアップを刷新してくるという噂が聞こえてきている。その前に接着の要であるリムセメントを刷新してしまうという、ステップを踏んだ製品開発の順序は素晴らしいと思う。
長期テストを経ない今はまだ不明点があるため、疑問点はヴィットリア・ジャパンを通じてイタリアの開発陣に確認してもらった。回答が得られたものは下に記そう。
・剥がすときにはどうするのか?
リムセメントと同様に剥がせます。カーボンリムの場合は繊維の剥離に注意して剥がしてください。
・一度塗布したMagic Mastikの除去方法は?
タイヤを剥がした後にリムに残ったMagic Mastikはある程度の粘着力を残しており、指で擦ると消しゴムかすの様にポロポロと取れます。Magic Mastikを再塗布する場合は除去する必要はなく、その上から再塗布が可能です。
・MTBやシクロクロスチューブラーの接着には向くのか?
非公式ですが、日本国内でのサポートチーム「SNELシクロクロスチーム」によるテストでは、低圧で横方向に大きな力がかかるシクロクロス用途には不向きのようだとの回答を得ています。(ヴィットリア・ジャパンの見解)
※追記 タイヤを剥がす際のインプレッション
チューブラータイヤのエアを抜いてタイヤをこじれば、驚くほど簡単に剥がれてしまった。つまり貼るのと同様に剥がすのも非常に楽に簡単に行える。それがイコール、低圧で使うシクロクロス用途などの場合には向かない理由だ。つまり「エアを抜いた状態での横方向の力には耐えない」。
通常の高圧状態ではまったく剥がれる気配は感じなかったが、おそらく2気圧以下の場合は横方向に力を掛ければタイヤはすぐ剥がれてしまうだろう。
チューブラータイヤを剥がした後、リム表面側にはほとんどMagic Mastikは残らず、接着力はゼロの状態になる。わずかに残ったMagic Mastikのカスは、手でこすればポロポロと落ちる。リム表面はキレイな状態なので、リムテープを使うか、タイヤのフラップ側にリムセメントの接着力が残った使用済みチューブラーをスペアとして携行するのがオススメだ。
ヴィットリア制作のHowToビデオ
photo&text:Makoto.AYANO
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