2015/06/26(金) - 09:05
今回の「あなたの自転車見せてください」では、Mt.富士ヒルクライムで優勝した中村龍太郎さん以下、トップ5入賞者たちのバイクにクローズアップ。1時間切りというタイムを支えたバイク達を紹介します。タイムアップを狙うヒントが見つかるかも?
1位 中村龍太郎さん(チーム・コバリン)フェルト F FRD
途中逃げにも乗り、最後は抜群のスプリントで念願の勝利を収めた中村龍太郎さん(チーム・コバリン)。その愛車はTeXtremeカーボンを使い、フレーム重量720gに仕上げられているフェルトのオールラウンドレーシングマシン、「F FRD」。プロレーサーがこぞって山岳で使うモデルだ。
以前は一つ下のグレードである「F1」に乗っていた中村さん。「F1と比べて凄く硬い。その分疲れてしまうんですが、ダイレクトに走るので、今回のような常にパワーを掛け続けるレースには最高ですね。レース時間が短い日本のレースにはほぼ向いていると思います」とインプレ。
マシンのセッティングは普段使いをベースにしつつ、クイックやシートポストをWOODMAN製に変更。ホイールがWH-9000C50なのは「これしか11速レース用を持っていないから」だそうだが、レーススピードが速かったことがむしろ味方したそう。
コンポーネントは9000系デュラエースだが、クランクセットはSRM+ROTORクランク+7900系デュラエースのリング。SRMはチームメイトの高岡亮寛さんから借りているものだそう。「今まで感覚で乗っていたのですが、パワーを見ることで自己判断ができた。最近成績が上がっている一つの要因になっていると感じています」と語ってくれた。
「今年の目標は、全日本選手権タイムトライアル。短い登りがあるので自分向きですし、大島の東京オリンピックプレ大会でも良い成績が出せていたので良い順位を狙っていきたいですね」(※有言実行でTT全日本王者に!記事はこちら)
2位 雨宮耕基さん(山梨学院大)ピナレロ FP1
「最後のスプリントでは田崎さんを交わし、"よっしゃこれで優勝だ!"と思ったのですが、後ろから龍太郎さんが来て刺されてしまった。苦手なスプリントで負けてしまい悔しいですね」とは、昨年獲得したブライテストホープ賞のジャージを着て2位に入った山梨学院大学2年生の雨宮耕基さん。それでも途中逃げに乗るなど、鮮烈な印象を強豪ヒルクライマー相手に見せつけたはず。
そんな若き雨宮さんが駆ったのは「初めて買ったロードバイクで、未だに乗り続けてるんです」という、ピナレロのアルミ+カーボンハイブリッドバイクFP1。「周りの皆がカーボンバイクに乗り換えているのが羨ましくて。もう6年目になるので、自転車が"もう疲れたよ"って言っている気がしてなりません(笑)」とは本人の談。
月間で2500、多い時には3000kmも練習するという雨宮さん。いかにも学生らしい、使い込まれた感漂うバイクには、バーテープやブラケット、コラムアンカーを外し、授○中に頑張って書いたという手書きコースマップをハンドルに巻くなど、ヒルクライム用の努力の跡がちらほら。ホイールがBORAなのは「これしか決戦用を持っていない」という理由だが、このコースにはむしろ合っていたそう。
「2週間後の全日本選手権(U23)に向けて良い弾みになりました!」と力強く語ってくれた雨宮さん。実は新車に変えるプランがあり「乗るバイクのブランドはずっと一本でいきたい」と、2台目も筆頭候補はピナレロ。ブランド愛を熱く語って頂きました。
3位 田崎友康さん(Ft麒麟山レーシング)YONEX CARBONEX
「もちろん優勝が目標でしたが、メンツがメンツだったので、3位でもある程度満足できています」と、悔しさ半分、嬉しさ半分に語ってくれたのは、いち早くゴール前でロングスパートを仕掛けた田崎友康さん。しかしそれでも流石は強豪クライマー、要所要所で前に上がる勝負勘は、併走オートバイから見ていてもさすがのモノを感じました。
そんな3位を支えたバイクは田崎さんの地元、新潟のYONEXで作られるCARBONEX。処女作にしてアンダー700gを達成した超軽量レーシングバイクだが、田崎さんが駆るのは塗装をギリギリまで減らし、フレーム重量660gをマークする受注生産品のスペシャルエディションだ。
「軽い部分に注目されがちですが、実はものすごくバネのある乗り味で、平地での走りも素晴しいんです」と田崎さん。フロントをシングルギアにし軽量化を図っていることが大きなポイントで、フロントの歯数はキツすぎないスバルラインに合わせて42T。チェーン脱落を防ぐため、歯の高いシクロクロス用ギア板を使っていることも工夫したポイントだそう。
ホイールは長年愛用しているというEDGEに軽量スプロケットを組み合わせる。他にはバーテープを取り外し、ブレーキキャリパーなども軽量な製品を使い、重量は5.5kgほど。「でも、無理矢理に軽量化は求めていません。しっかりと安心して下れるよう安全は担保してるんです」ちなみに実業団レースでの重量下限6.8kgルールには、シートチューブ内に鉄筋を入れ、フロントギアをダブルにするなどでクリアしているという。今後の目標は一週間後に控えるJBCFの富士ヒルクライムを筆頭に、国体予選のバンク競技、鳥海、乗鞍とヒルクライムが中心になるそうだ。
4位 宿谷英男さん(BEARBELL)スコット ADDICT-SL
「今年は乗鞍にツール・ド・おきなわの市民210kmが合わさったかのように濃いメンバーが集まっていて、20位であっても不思議でないなと思っていました。」とは、スプリントで4位に入ったBEARBELLの宿谷英男さん。「ゴール勝負では位置取りに恐怖心があって、最後尾からまくっていきました。最後は去年刺されてしまった兼松さんと競るかたちになり、なんとか先着。リベンジできました(笑)」
実は昨年も4位に入り、愛車自慢コーナーにご出演頂いた宿谷さん。バイクはヒルクライマーからの人気がすこぶる高いスコットの軽量オールラウンドレーシングバイク、アディクトSLだが、「今年は兼松さんも同じバイクになっていたので、何としても負けるわけにはいかなかったんです」と言う。
「機材は昨年と全く変わっていませんが、フルシーズンを通して走ったことで安心感はすごく高まりました」というこのバイク。本来Di2対応していないが、宿谷さんの希望に合わせて変速ケーブルをダウンチューブに内蔵させ、BB下からはチェーンステー下側に沿わせてテープ止めしている。BB下のケーブル取り出し口には自作のグロメットを装着し、ケーブルの出し角度を最適化しているのだ。
ホイールはax-lightnessの軽量リムとDTスイスの180ハブ、そしてサピムのハイエンドスポーク「CX-Super」を使って手組みしたというスキの無い仕上がりだ。
5位 兼松大和(TeamGreenRoad) スコット ADDICT-SL
昨年3位に入った兼松大和さん(TeamGreenRoad)は、今年4位の宿谷さんにギリギリ差し込まれてしまい5位フィニッシュ。「今年は逃げに対する集団のメンバーが強力でした。だから自分からは動かずに様子を見ながら展開していました。ゴール勝負になると分かっていたので、勝負勘のある田崎さんをマークしていました」とレースを振り返る。
昨年はコルナゴのM10に乗っていたが、「今年は乗鞍も視野に入れているので、より軽量なバイクが欲しかった」とスコットのADDICT-SLにチェンジしたという。パーツも一通り入れ替わっていて、よく見れば怪しげな箇所もちらほらと…。
「メカや機械に強い知り合いがいて、その方にお願いして可能な限りのチューニングを施しています」とのことで、怪しげなシートポストはまさかの自作。ペダルのベアリング部分も様々な工夫を凝らし、回転抵抗を削っているという。
他にもKCNCの超軽量ブレーキ、SRAMのREDにカンパニョーロチェーンを組み合わせ、バーテープは取り外し。より勾配がキツい乗鞍の際にはフロントギアをシングル化し、4.9kgまで絞り込むという。「今年は乗鞍を、来年は富士ヒルクライムで優勝を飾れるように頑張ります!」
text&photo:So.Isobe
1位 中村龍太郎さん(チーム・コバリン)フェルト F FRD
途中逃げにも乗り、最後は抜群のスプリントで念願の勝利を収めた中村龍太郎さん(チーム・コバリン)。その愛車はTeXtremeカーボンを使い、フレーム重量720gに仕上げられているフェルトのオールラウンドレーシングマシン、「F FRD」。プロレーサーがこぞって山岳で使うモデルだ。
以前は一つ下のグレードである「F1」に乗っていた中村さん。「F1と比べて凄く硬い。その分疲れてしまうんですが、ダイレクトに走るので、今回のような常にパワーを掛け続けるレースには最高ですね。レース時間が短い日本のレースにはほぼ向いていると思います」とインプレ。
マシンのセッティングは普段使いをベースにしつつ、クイックやシートポストをWOODMAN製に変更。ホイールがWH-9000C50なのは「これしか11速レース用を持っていないから」だそうだが、レーススピードが速かったことがむしろ味方したそう。
コンポーネントは9000系デュラエースだが、クランクセットはSRM+ROTORクランク+7900系デュラエースのリング。SRMはチームメイトの高岡亮寛さんから借りているものだそう。「今まで感覚で乗っていたのですが、パワーを見ることで自己判断ができた。最近成績が上がっている一つの要因になっていると感じています」と語ってくれた。
「今年の目標は、全日本選手権タイムトライアル。短い登りがあるので自分向きですし、大島の東京オリンピックプレ大会でも良い成績が出せていたので良い順位を狙っていきたいですね」(※有言実行でTT全日本王者に!記事はこちら)
2位 雨宮耕基さん(山梨学院大)ピナレロ FP1
「最後のスプリントでは田崎さんを交わし、"よっしゃこれで優勝だ!"と思ったのですが、後ろから龍太郎さんが来て刺されてしまった。苦手なスプリントで負けてしまい悔しいですね」とは、昨年獲得したブライテストホープ賞のジャージを着て2位に入った山梨学院大学2年生の雨宮耕基さん。それでも途中逃げに乗るなど、鮮烈な印象を強豪ヒルクライマー相手に見せつけたはず。
そんな若き雨宮さんが駆ったのは「初めて買ったロードバイクで、未だに乗り続けてるんです」という、ピナレロのアルミ+カーボンハイブリッドバイクFP1。「周りの皆がカーボンバイクに乗り換えているのが羨ましくて。もう6年目になるので、自転車が"もう疲れたよ"って言っている気がしてなりません(笑)」とは本人の談。
月間で2500、多い時には3000kmも練習するという雨宮さん。いかにも学生らしい、使い込まれた感漂うバイクには、バーテープやブラケット、コラムアンカーを外し、授○中に頑張って書いたという手書きコースマップをハンドルに巻くなど、ヒルクライム用の努力の跡がちらほら。ホイールがBORAなのは「これしか決戦用を持っていない」という理由だが、このコースにはむしろ合っていたそう。
「2週間後の全日本選手権(U23)に向けて良い弾みになりました!」と力強く語ってくれた雨宮さん。実は新車に変えるプランがあり「乗るバイクのブランドはずっと一本でいきたい」と、2台目も筆頭候補はピナレロ。ブランド愛を熱く語って頂きました。
3位 田崎友康さん(Ft麒麟山レーシング)YONEX CARBONEX
「もちろん優勝が目標でしたが、メンツがメンツだったので、3位でもある程度満足できています」と、悔しさ半分、嬉しさ半分に語ってくれたのは、いち早くゴール前でロングスパートを仕掛けた田崎友康さん。しかしそれでも流石は強豪クライマー、要所要所で前に上がる勝負勘は、併走オートバイから見ていてもさすがのモノを感じました。
そんな3位を支えたバイクは田崎さんの地元、新潟のYONEXで作られるCARBONEX。処女作にしてアンダー700gを達成した超軽量レーシングバイクだが、田崎さんが駆るのは塗装をギリギリまで減らし、フレーム重量660gをマークする受注生産品のスペシャルエディションだ。
「軽い部分に注目されがちですが、実はものすごくバネのある乗り味で、平地での走りも素晴しいんです」と田崎さん。フロントをシングルギアにし軽量化を図っていることが大きなポイントで、フロントの歯数はキツすぎないスバルラインに合わせて42T。チェーン脱落を防ぐため、歯の高いシクロクロス用ギア板を使っていることも工夫したポイントだそう。
ホイールは長年愛用しているというEDGEに軽量スプロケットを組み合わせる。他にはバーテープを取り外し、ブレーキキャリパーなども軽量な製品を使い、重量は5.5kgほど。「でも、無理矢理に軽量化は求めていません。しっかりと安心して下れるよう安全は担保してるんです」ちなみに実業団レースでの重量下限6.8kgルールには、シートチューブ内に鉄筋を入れ、フロントギアをダブルにするなどでクリアしているという。今後の目標は一週間後に控えるJBCFの富士ヒルクライムを筆頭に、国体予選のバンク競技、鳥海、乗鞍とヒルクライムが中心になるそうだ。
4位 宿谷英男さん(BEARBELL)スコット ADDICT-SL
「今年は乗鞍にツール・ド・おきなわの市民210kmが合わさったかのように濃いメンバーが集まっていて、20位であっても不思議でないなと思っていました。」とは、スプリントで4位に入ったBEARBELLの宿谷英男さん。「ゴール勝負では位置取りに恐怖心があって、最後尾からまくっていきました。最後は去年刺されてしまった兼松さんと競るかたちになり、なんとか先着。リベンジできました(笑)」
実は昨年も4位に入り、愛車自慢コーナーにご出演頂いた宿谷さん。バイクはヒルクライマーからの人気がすこぶる高いスコットの軽量オールラウンドレーシングバイク、アディクトSLだが、「今年は兼松さんも同じバイクになっていたので、何としても負けるわけにはいかなかったんです」と言う。
「機材は昨年と全く変わっていませんが、フルシーズンを通して走ったことで安心感はすごく高まりました」というこのバイク。本来Di2対応していないが、宿谷さんの希望に合わせて変速ケーブルをダウンチューブに内蔵させ、BB下からはチェーンステー下側に沿わせてテープ止めしている。BB下のケーブル取り出し口には自作のグロメットを装着し、ケーブルの出し角度を最適化しているのだ。
ホイールはax-lightnessの軽量リムとDTスイスの180ハブ、そしてサピムのハイエンドスポーク「CX-Super」を使って手組みしたというスキの無い仕上がりだ。
5位 兼松大和(TeamGreenRoad) スコット ADDICT-SL
昨年3位に入った兼松大和さん(TeamGreenRoad)は、今年4位の宿谷さんにギリギリ差し込まれてしまい5位フィニッシュ。「今年は逃げに対する集団のメンバーが強力でした。だから自分からは動かずに様子を見ながら展開していました。ゴール勝負になると分かっていたので、勝負勘のある田崎さんをマークしていました」とレースを振り返る。
昨年はコルナゴのM10に乗っていたが、「今年は乗鞍も視野に入れているので、より軽量なバイクが欲しかった」とスコットのADDICT-SLにチェンジしたという。パーツも一通り入れ替わっていて、よく見れば怪しげな箇所もちらほらと…。
「メカや機械に強い知り合いがいて、その方にお願いして可能な限りのチューニングを施しています」とのことで、怪しげなシートポストはまさかの自作。ペダルのベアリング部分も様々な工夫を凝らし、回転抵抗を削っているという。
他にもKCNCの超軽量ブレーキ、SRAMのREDにカンパニョーロチェーンを組み合わせ、バーテープは取り外し。より勾配がキツい乗鞍の際にはフロントギアをシングル化し、4.9kgまで絞り込むという。「今年は乗鞍を、来年は富士ヒルクライムで優勝を飾れるように頑張ります!」
text&photo:So.Isobe