2015/05/30(土) - 14:09
目を疑うような深さの渓谷を逸れ、アルプス第3の高さを誇るマッターホルンに向けて進むプロトン。獲得標高差が5,000mに達したヴァッレ・ダオスタ州の1日を振り返ります。
イタリア側から見るマッターホルン(モンテ・チェルヴィーノ) photo:Kei Tsuji
開始直後からレースは高速化 photo:Kei Tsuji
ピエモンテの街を抜け、アオスタ州を目指す photo:Kei Tsuji
登場する1級山岳の名前がサンバルテレミーやサンパンタレオンという名前であることからも分かるように、第19ステージの後半部分はフランス語圏のヴァッレ・ダオスタ州を走る。イタリアの中で最小&最も人口の少ない州であり、公用語はイタリア語とフランス語。氷河が削り出した深い谷と急峻な山しかない尖った地形が特徴で、州の真ん中を高速道路が貫いている。アルプスの山々に囲まれた美しい地域だ。
フィニッシュ地点チェルヴィニアの背後には標高4,478mのマッターホルン(イタリア語名モンテ・チェルヴィーノ、フランス語名モン・セルヴァン)がある。アルプス山脈の中で標高4,810mのモンブランと標高4,609mのモンテローザに次いで3番目に高い名峰がそびえ立っている。なお、一般的にマッターホルンとして認識されている尖った山の形はスイスのツェルマット側(北東側)から見たもの。チェルヴィニア側(南西側)から見る山の形は少し趣が異なり、そこまで尖っているようには見えない。
標高2,000mオーバーの山間部に位置するチェルヴィニアは超大型スキーエリアの中心地。マッターホルンの東側にはスケール感が掴めないほど広大なゲレンデが広がっている。ゴンドラとロープウェイを乗り継いで標高3,820mのクラインマッターホルンまで行けば、国境を越えてスイスのツェルマット側へも足を伸ばせる。標高3,000mオーバーの氷河まで行けば夏スキーも楽しめるという。1級山岳チェルヴィニアのコースはそんなスキーリゾート地への主要アクセス路。路面コンディションは良好で、道幅もある。
3年前のジロ第14ステージで訪れた際、マリアローザ奪回に成功したのはライダー・ヘシェダル(カナダ、キャノンデール・ガーミン)。2012年のジロ覇者が縁起の良い登りでステージ優勝目指してアタックしたが、後ろから勢い良く飛び出したファビオ・アル(イタリア、アスタナ)に先頭を奪われてしまった。
モルティローロでの失速を感じさせない走りで優勝したアルは「とにかくいっぱい寝て回復に努めた。レースが終わってから、まだ夕方だったのにマッサージを受けながら寝てしまったこともあった。今朝起きた時にはまだ疲労感があったものの、走っているうちに調子が上向きであることを感じていたんだ」と復活への経緯を説明する。
連日スパニッシュライダーに話題を奪われがちだったジロで、アルがイタリアに勝利を引き戻した。アルは今大会7人目(8勝目)のイタリア人ステージ優勝者となった。
フォルテ・ディ・バルドを通過するメイン集団 photo:Kei Tsuji
観客の視線の先にライダー・ヘシェダル(カナダ、キャノンデール・ガーミン) photo:Kei Tsuji
先頭で1級山岳チェルヴィニアを駆け上がるファビオ・アル(イタリア、アスタナ) photo:Kei Tsuji
1級山岳チェルヴィニアを目指すアルベルト・コンタドール(スペイン、ティンコフ・サクソ)ら photo:Kei Tsuji
別府史之(トレックファクトリーレーシング)はグルペットに入ることなく笑顔でチェルヴィニアの頂上にやってきたが、実際はハンガーノックに苦しんでいたという。「最後の15kmがとても長いと感じていたら、ハンガーノックになった。フラフラな状態でした。20人くらい抜かれ、最後は止まりそうになったが、なんとか頂上にたどり着いた」と別府。
別府はこのヴァッレ・ダオスタ州に馴染みがある選手だ。2004年、フランスのクラブチーム「VCラポム・マルセイユ」に所属していた別府は、U23レースのジロ・デッラ・ヴァッレ・ダオスタでステージ優勝。若手の登竜門レースとして知られるレースでの活躍が、翌年のディスカバリーチャンネル入りにつながった。
それから11年の時が経ち、苦しみながらも縁起の良い地域でのステージを終えた別府は「美しいアオスタ渓谷を横目に走ることができて、とても気持ち良かった」とコメントしている。なお、アルは2011年と2012年のジロ・デッラ・ヴァッレ・ダオスタ総合優勝者だ。
42分06秒遅れでフィニッシュを目指す別府史之(トレックファクトリーレーシング) photo:Kei Tsuji
好天に恵まれた1級山岳チェルヴィニア photo:Kei Tsuji
ファビオ・アル(イタリア、アスタナ)が何度もガッツポーズ photo:Tim de Waele
ステージ優勝をあえて狙わず、マリアローザキープを優先する走りを見せたコンタドール。そろそろステージ優勝するのではないかと言われてはや3週間、コンタドールはまだステージ1勝も飾っていない。毎日表彰台でプロセッコを慣れた手つきで振り回しているが、マリアローザを着ずにプロセッコを開けたことは1度もない。
剥奪された2010年ツールと2011年ジロを合わせるとコンタドールはグランツールで合計8回総合優勝しており、その中でステージ優勝せずに総合優勝したケースは2回ある(2008年ジロと2010年ツール)。ツールではステージ通算3勝、ブエルタではステージ通算5勝を飾っているが、記録上ジロでのステージ優勝はゼロ(2011年第9ステージの優勝は剥奪)。
ミラノにフィニッシュする最終日の第21ステージはスプリンターのためのステージ。つまり第20ステージがコンタドールにとって事実上最後のチャンスとなる。コンタドールは第20ステージを見据え、脚を残してチェルヴィニアにフィニッシュしているように見えた。苦しい表情を見せることなく、かと言って自分からペースを上げるわけでもなく。「明日のステージは本当に厳しい。今日よりも厳しい登りが待っている。引き続きライバルたちの動きをマークすることになるけど、自分からアタックする日になるかもしれない。もちろんステージ優勝したいという思いはある」(コンタドール)
コンタドールが厳しいと警戒するのが今大会のチーマコッピ(最高地点)であるコッレ・デッレ・フィネストレだ。登坂距離18.5km/平均勾配9.2%の登りの後半には名物となった未舗装のダートが登場する。マリアローザがトラブルに巻き込まれてもライバルたちが構わずペースを上げ、その逆のパターンも発生したリスペクトの薄い今大会。コッレ・デッレ・フィネストレはパンクやメカトラの発生率が高い峠として知られているが、トラブルなく力と力の真っ向勝負を期待したい。
残り5kmを切り、暗いトンネルへと入っていく photo:Kei Tsuji
トンネルを抜けると広がるアルプスの山岳風景 photo:Kei Tsuji
text&photo:Kei Tsuji, Saint Vincent, Italy
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登場する1級山岳の名前がサンバルテレミーやサンパンタレオンという名前であることからも分かるように、第19ステージの後半部分はフランス語圏のヴァッレ・ダオスタ州を走る。イタリアの中で最小&最も人口の少ない州であり、公用語はイタリア語とフランス語。氷河が削り出した深い谷と急峻な山しかない尖った地形が特徴で、州の真ん中を高速道路が貫いている。アルプスの山々に囲まれた美しい地域だ。
フィニッシュ地点チェルヴィニアの背後には標高4,478mのマッターホルン(イタリア語名モンテ・チェルヴィーノ、フランス語名モン・セルヴァン)がある。アルプス山脈の中で標高4,810mのモンブランと標高4,609mのモンテローザに次いで3番目に高い名峰がそびえ立っている。なお、一般的にマッターホルンとして認識されている尖った山の形はスイスのツェルマット側(北東側)から見たもの。チェルヴィニア側(南西側)から見る山の形は少し趣が異なり、そこまで尖っているようには見えない。
標高2,000mオーバーの山間部に位置するチェルヴィニアは超大型スキーエリアの中心地。マッターホルンの東側にはスケール感が掴めないほど広大なゲレンデが広がっている。ゴンドラとロープウェイを乗り継いで標高3,820mのクラインマッターホルンまで行けば、国境を越えてスイスのツェルマット側へも足を伸ばせる。標高3,000mオーバーの氷河まで行けば夏スキーも楽しめるという。1級山岳チェルヴィニアのコースはそんなスキーリゾート地への主要アクセス路。路面コンディションは良好で、道幅もある。
3年前のジロ第14ステージで訪れた際、マリアローザ奪回に成功したのはライダー・ヘシェダル(カナダ、キャノンデール・ガーミン)。2012年のジロ覇者が縁起の良い登りでステージ優勝目指してアタックしたが、後ろから勢い良く飛び出したファビオ・アル(イタリア、アスタナ)に先頭を奪われてしまった。
モルティローロでの失速を感じさせない走りで優勝したアルは「とにかくいっぱい寝て回復に努めた。レースが終わってから、まだ夕方だったのにマッサージを受けながら寝てしまったこともあった。今朝起きた時にはまだ疲労感があったものの、走っているうちに調子が上向きであることを感じていたんだ」と復活への経緯を説明する。
連日スパニッシュライダーに話題を奪われがちだったジロで、アルがイタリアに勝利を引き戻した。アルは今大会7人目(8勝目)のイタリア人ステージ優勝者となった。
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別府はこのヴァッレ・ダオスタ州に馴染みがある選手だ。2004年、フランスのクラブチーム「VCラポム・マルセイユ」に所属していた別府は、U23レースのジロ・デッラ・ヴァッレ・ダオスタでステージ優勝。若手の登竜門レースとして知られるレースでの活躍が、翌年のディスカバリーチャンネル入りにつながった。
それから11年の時が経ち、苦しみながらも縁起の良い地域でのステージを終えた別府は「美しいアオスタ渓谷を横目に走ることができて、とても気持ち良かった」とコメントしている。なお、アルは2011年と2012年のジロ・デッラ・ヴァッレ・ダオスタ総合優勝者だ。
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ステージ優勝をあえて狙わず、マリアローザキープを優先する走りを見せたコンタドール。そろそろステージ優勝するのではないかと言われてはや3週間、コンタドールはまだステージ1勝も飾っていない。毎日表彰台でプロセッコを慣れた手つきで振り回しているが、マリアローザを着ずにプロセッコを開けたことは1度もない。
剥奪された2010年ツールと2011年ジロを合わせるとコンタドールはグランツールで合計8回総合優勝しており、その中でステージ優勝せずに総合優勝したケースは2回ある(2008年ジロと2010年ツール)。ツールではステージ通算3勝、ブエルタではステージ通算5勝を飾っているが、記録上ジロでのステージ優勝はゼロ(2011年第9ステージの優勝は剥奪)。
ミラノにフィニッシュする最終日の第21ステージはスプリンターのためのステージ。つまり第20ステージがコンタドールにとって事実上最後のチャンスとなる。コンタドールは第20ステージを見据え、脚を残してチェルヴィニアにフィニッシュしているように見えた。苦しい表情を見せることなく、かと言って自分からペースを上げるわけでもなく。「明日のステージは本当に厳しい。今日よりも厳しい登りが待っている。引き続きライバルたちの動きをマークすることになるけど、自分からアタックする日になるかもしれない。もちろんステージ優勝したいという思いはある」(コンタドール)
コンタドールが厳しいと警戒するのが今大会のチーマコッピ(最高地点)であるコッレ・デッレ・フィネストレだ。登坂距離18.5km/平均勾配9.2%の登りの後半には名物となった未舗装のダートが登場する。マリアローザがトラブルに巻き込まれてもライバルたちが構わずペースを上げ、その逆のパターンも発生したリスペクトの薄い今大会。コッレ・デッレ・フィネストレはパンクやメカトラの発生率が高い峠として知られているが、トラブルなく力と力の真っ向勝負を期待したい。
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text&photo:Kei Tsuji, Saint Vincent, Italy
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