2015/05/30(土) - 06:27
1級山岳チェルヴィニアでファビオ・アル(イタリア、アスタナ)がアタック。チームメイトをマークするマリアローザのアルベルト・コンタドール(スペイン、ティンコフ・サクソ)を振り切って、アルが山頂フィニッシュ制覇を果たしました。
スイスとの国境に広がるアルプス山脈に突き進む第19ステージが今大会のクイーンステージ。距離も236kmと長く、後半にかけて1級山岳が3つ連続する。
1級山岳サンバルテレミー(登坂距離16.5km/平均勾配6.7%)と1級山岳サンパンタレオン(登坂距離16.5km/平均勾配7.2%)を越え、最後はイタリア語でマッターホルンを意味する1級山岳チェルヴィニア(登坂距離19.2km/平均勾配5%)を駆け上がる。獲得標高差は今大会最大の5000mに達した。
開幕から3週間近く走り続けているにも関わらず、この日も最初の1時間の平均スピードが50.3km/hというハイスピードな幕開け。チェルヴィニアを目指す逃げグループは34km地点で生まれる。カルロスアルベルト・ベタンクール(コロンビア、AG2Rラモンディアール)や、すでに今大会ステージ優勝を飾っているヴァシル・キリエンカ(ベラルーシ、チームスカイ)とディエゴ・ウリッシ(イタリア、ランプレ・メリダ)を含む9名が先行した。
徐々に広がりつつあるタイム差をコントロールしたのはマリアローザを守る立場のティンコフ・サクソではなく攻撃する立場のアスタナ。残り少ないチャンスをものにしたいカザフスタンチームの牽引によって先頭9名のリードは4分30秒以下に押さえ込まれた。
ピエモンテ州からアオスタ州に入り、氷河が削り出したダイナミックな渓谷(強い追い風)を進むうちにタイム差は縮小を続け、最初の難所である1級山岳サンバルテレミーに差し掛かる頃には3分に。登坂距離が16.5kmに達する峠道を進むうちに先頭はキリエンカ、パヴェル・コチェトコフ(ロシア、カチューシャ)、エスデバン・シャベス(コロンビア、オリカ・グリーンエッジ)、ジョヴァンニ・ヴィスコンティ(イタリア、モビスター)、マレク・ルトケヴィッチ(ポーランド、CCCスプランディポルコウィチェ)の5名に絞られた。
メイン集団とのタイム差が3分を割り込む中、先頭ではヴィスコンティがアグレッシブな走りを見せる。マリアアッズーラ(山岳賞)争いでトップのステフェン・クルイスウィク(オランダ、ロットNLユンボ)から41ポイント差の6位につけていたヴィスコンティがまずは1級山岳サンバルテレミーを先頭通過して35ポイント獲得した。
続く1級山岳サンパンタレオンでもヴィスコンティの積極性は衰えず、コチェトコフやルトケヴィッチ、キリエンカ、シャベスらを振り切って頂上を先頭通過。マリアアッズーラを着るクルイスウィクが集団から飛び出してポイントを加算したものの、この日だけで74ポイントを荒稼ぎしたヴィスコンティが暫定山岳賞トップに立った。
アスタナのペースメイクによって連続1級山岳で40名ほどに絞られたメイン集団は、最後の1級山岳チェルヴィニア突入後、残り10kmアーチ手前で先頭ヴィスコンティを吸収。そこから総合成績とステージ優勝を懸けた闘いが始まった。
アスタナがペースを作るメイン集団の中から最初に動いたのは総合2位ミケル・ランダ(スペイン、アスタナ)で、すかさずマリアローザのコンタドールとライダー・ヘシェダル(カナダ、キャノンデール・ガーミン)が反応。遅れてファビオ・アル(イタリア、アスタナ)とステフェン・クルイスウィク(オランダ、ロットNLユンボ)、レオポルド・ケーニッヒ(チェコ、チームスカイ)もジョインする。
しばらく互いの表情を見ながらの駆け引きが続き、残り8.5kmで仕掛けたヘシェダルが独走を開始する。2012年ジロ覇者ヘシェダルを追う形で総合3位アルがアタック。快調に登りを進んだアルは直近のライバルであるランダをマークするコンタドールを引き離すとともに先頭ヘシェダルをキャッチし、そのままの勢いで独走に持ち込んだ。
沿道の声援を受けながら登りを突き進んだアルが、ヘシェダルを28秒、後半追い上げたリゴベルト・ウラン(コロンビア、エティックス・クイックステップ)を1分10秒、そしてマリアローザのコンタドールらを1分18秒引き離してフィニッシュ。チェルヴィニアで喜びを爆発させた。
第16ステージのモルティローロで失速し、コンタドールから大きく遅れるとともに総合3位にダウンしていたアルが復活。「ロードレースは苦しみのスポーツだ。モルティローロの日は残り40kmを苦しみ続け、そして今日は残り7kmを苦しみ続けた。調子が良ければ勝つのは簡単だけど、調子が悪ければ成功は遠のくんだ。脚ではなく頭でペダルを踏み続けることをこのジロで学んだよ。今日は苦しみを乗り越えて成功を掴んだ。モルティローロの40kmと今日の7kmは同じ苦しさだった」と、2年連続でジロの山頂フィニッシュを制したアルは語る。
「調子が悪い時期が続いていただけにこの勝利は予想していなかった。何とか踏ん張って総合上位もキープできたし、今日はハッピーだ」。この日の結果を受けてアルはチームメイトのランダと入れ替わる形で総合2位に浮上。コンタドールとの総合タイム差も4分37秒に縮まった。総合トップ10の中では他にもステージ2位に入ったヘシェダルが総合9位から総合7位にジャンプアップしている。
ステージ5位に入ったクルイスウィクは山岳賞6ポイントを加算したものの、16ポイント差でヴィスコンティにマリアアッズーラを奪われている。マリアビアンカはアル、マリアロッサはジャコモ・ニッツォロ(イタリア、トレックファクトリーレーシング)がキープしている。
ジロ・デ・イタリア2015第19ステージ結果
1位 ファビオ・アル(イタリア、アスタナ) 6h24’13”
2位 ライダー・ヘシェダル(カナダ、キャノンデール・ガーミン) +28”
3位 リゴベルト・ウラン(コロンビア、エティックス・クイックステップ) +1’10”
4位 タネル・カンゲルト(エストニア、アスタナ) +1’18”
5位 ステフェン・クルイスウィク(オランダ、ロットNLユンボ)
6位 アルベルト・コンタドール(スペイン、ティンコフ・サクソ)
7位 ミケル・ランダ(スペイン、アスタナ)
8位 レオポルド・ケーニッヒ(チェコ、チームスカイ) +1’21”
9位 ミケル・ニエベ(スペイン、チームスカイ) +1’24”
10位 アレクサンドル・ジェニエ(フランス、FDJ) +2’24”
11位 ダミアーノ・カルーゾ(イタリア、BMCレーシング) +2’27”
12位 アンドレイ・アマドール(コスタリカ、モビスター)
15位 ユーリ・トロフィモフ(ロシア、カチューシャ) +2’49”
82位 別府史之(日本、トレックファクトリーレーシング) +42’06”
個人総合成績
1位 アルベルト・コンタドール(スペイン、ティンコフ・サクソ) 78h48’40”
2位 ファビオ・アル(イタリア、アスタナ) +4’37”
3位 ミケル・ランダ(スペイン、アスタナ) +5’15”
4位 アンドレイ・アマドール(コスタリカ、モビスター) +8’10”
5位 レオポルド・ケーニッヒ(チェコ、チームスカイ) +10’47”
6位 ユーリ・トロフィモフ(ロシア、カチューシャ) +11’11”
7位 ライダー・ヘシェダル(カナダ、キャノンデール・ガーミン) +12’05”
8位 ダミアーノ・カルーゾ(イタリア、BMCレーシング) +12’14”
9位 ステフェン・クルイスウィク(オランダ、ロットNLユンボ) +12’53”
10位 アレクサンドル・ジェニエ(フランス、FDJ) +15’07”
マリアロッサ ポイント賞
ジャコモ・ニッツォロ(イタリア、トレックファクトリーレーシング)
マリアアッズーラ 山岳賞
ジョヴァンニ・ヴィスコンティ(イタリア、モビスター)
マリアビアンカ ヤングライダー賞
ファビオ・アル(イタリア、アスタナ)
チーム総合成績
アスタナ
text&photo:Kei Tsuji in Cervinia, Italy
スイスとの国境に広がるアルプス山脈に突き進む第19ステージが今大会のクイーンステージ。距離も236kmと長く、後半にかけて1級山岳が3つ連続する。
1級山岳サンバルテレミー(登坂距離16.5km/平均勾配6.7%)と1級山岳サンパンタレオン(登坂距離16.5km/平均勾配7.2%)を越え、最後はイタリア語でマッターホルンを意味する1級山岳チェルヴィニア(登坂距離19.2km/平均勾配5%)を駆け上がる。獲得標高差は今大会最大の5000mに達した。
開幕から3週間近く走り続けているにも関わらず、この日も最初の1時間の平均スピードが50.3km/hというハイスピードな幕開け。チェルヴィニアを目指す逃げグループは34km地点で生まれる。カルロスアルベルト・ベタンクール(コロンビア、AG2Rラモンディアール)や、すでに今大会ステージ優勝を飾っているヴァシル・キリエンカ(ベラルーシ、チームスカイ)とディエゴ・ウリッシ(イタリア、ランプレ・メリダ)を含む9名が先行した。
徐々に広がりつつあるタイム差をコントロールしたのはマリアローザを守る立場のティンコフ・サクソではなく攻撃する立場のアスタナ。残り少ないチャンスをものにしたいカザフスタンチームの牽引によって先頭9名のリードは4分30秒以下に押さえ込まれた。
ピエモンテ州からアオスタ州に入り、氷河が削り出したダイナミックな渓谷(強い追い風)を進むうちにタイム差は縮小を続け、最初の難所である1級山岳サンバルテレミーに差し掛かる頃には3分に。登坂距離が16.5kmに達する峠道を進むうちに先頭はキリエンカ、パヴェル・コチェトコフ(ロシア、カチューシャ)、エスデバン・シャベス(コロンビア、オリカ・グリーンエッジ)、ジョヴァンニ・ヴィスコンティ(イタリア、モビスター)、マレク・ルトケヴィッチ(ポーランド、CCCスプランディポルコウィチェ)の5名に絞られた。
メイン集団とのタイム差が3分を割り込む中、先頭ではヴィスコンティがアグレッシブな走りを見せる。マリアアッズーラ(山岳賞)争いでトップのステフェン・クルイスウィク(オランダ、ロットNLユンボ)から41ポイント差の6位につけていたヴィスコンティがまずは1級山岳サンバルテレミーを先頭通過して35ポイント獲得した。
続く1級山岳サンパンタレオンでもヴィスコンティの積極性は衰えず、コチェトコフやルトケヴィッチ、キリエンカ、シャベスらを振り切って頂上を先頭通過。マリアアッズーラを着るクルイスウィクが集団から飛び出してポイントを加算したものの、この日だけで74ポイントを荒稼ぎしたヴィスコンティが暫定山岳賞トップに立った。
アスタナのペースメイクによって連続1級山岳で40名ほどに絞られたメイン集団は、最後の1級山岳チェルヴィニア突入後、残り10kmアーチ手前で先頭ヴィスコンティを吸収。そこから総合成績とステージ優勝を懸けた闘いが始まった。
アスタナがペースを作るメイン集団の中から最初に動いたのは総合2位ミケル・ランダ(スペイン、アスタナ)で、すかさずマリアローザのコンタドールとライダー・ヘシェダル(カナダ、キャノンデール・ガーミン)が反応。遅れてファビオ・アル(イタリア、アスタナ)とステフェン・クルイスウィク(オランダ、ロットNLユンボ)、レオポルド・ケーニッヒ(チェコ、チームスカイ)もジョインする。
しばらく互いの表情を見ながらの駆け引きが続き、残り8.5kmで仕掛けたヘシェダルが独走を開始する。2012年ジロ覇者ヘシェダルを追う形で総合3位アルがアタック。快調に登りを進んだアルは直近のライバルであるランダをマークするコンタドールを引き離すとともに先頭ヘシェダルをキャッチし、そのままの勢いで独走に持ち込んだ。
沿道の声援を受けながら登りを突き進んだアルが、ヘシェダルを28秒、後半追い上げたリゴベルト・ウラン(コロンビア、エティックス・クイックステップ)を1分10秒、そしてマリアローザのコンタドールらを1分18秒引き離してフィニッシュ。チェルヴィニアで喜びを爆発させた。
第16ステージのモルティローロで失速し、コンタドールから大きく遅れるとともに総合3位にダウンしていたアルが復活。「ロードレースは苦しみのスポーツだ。モルティローロの日は残り40kmを苦しみ続け、そして今日は残り7kmを苦しみ続けた。調子が良ければ勝つのは簡単だけど、調子が悪ければ成功は遠のくんだ。脚ではなく頭でペダルを踏み続けることをこのジロで学んだよ。今日は苦しみを乗り越えて成功を掴んだ。モルティローロの40kmと今日の7kmは同じ苦しさだった」と、2年連続でジロの山頂フィニッシュを制したアルは語る。
「調子が悪い時期が続いていただけにこの勝利は予想していなかった。何とか踏ん張って総合上位もキープできたし、今日はハッピーだ」。この日の結果を受けてアルはチームメイトのランダと入れ替わる形で総合2位に浮上。コンタドールとの総合タイム差も4分37秒に縮まった。総合トップ10の中では他にもステージ2位に入ったヘシェダルが総合9位から総合7位にジャンプアップしている。
ステージ5位に入ったクルイスウィクは山岳賞6ポイントを加算したものの、16ポイント差でヴィスコンティにマリアアッズーラを奪われている。マリアビアンカはアル、マリアロッサはジャコモ・ニッツォロ(イタリア、トレックファクトリーレーシング)がキープしている。
ジロ・デ・イタリア2015第19ステージ結果
1位 ファビオ・アル(イタリア、アスタナ) 6h24’13”
2位 ライダー・ヘシェダル(カナダ、キャノンデール・ガーミン) +28”
3位 リゴベルト・ウラン(コロンビア、エティックス・クイックステップ) +1’10”
4位 タネル・カンゲルト(エストニア、アスタナ) +1’18”
5位 ステフェン・クルイスウィク(オランダ、ロットNLユンボ)
6位 アルベルト・コンタドール(スペイン、ティンコフ・サクソ)
7位 ミケル・ランダ(スペイン、アスタナ)
8位 レオポルド・ケーニッヒ(チェコ、チームスカイ) +1’21”
9位 ミケル・ニエベ(スペイン、チームスカイ) +1’24”
10位 アレクサンドル・ジェニエ(フランス、FDJ) +2’24”
11位 ダミアーノ・カルーゾ(イタリア、BMCレーシング) +2’27”
12位 アンドレイ・アマドール(コスタリカ、モビスター)
15位 ユーリ・トロフィモフ(ロシア、カチューシャ) +2’49”
82位 別府史之(日本、トレックファクトリーレーシング) +42’06”
個人総合成績
1位 アルベルト・コンタドール(スペイン、ティンコフ・サクソ) 78h48’40”
2位 ファビオ・アル(イタリア、アスタナ) +4’37”
3位 ミケル・ランダ(スペイン、アスタナ) +5’15”
4位 アンドレイ・アマドール(コスタリカ、モビスター) +8’10”
5位 レオポルド・ケーニッヒ(チェコ、チームスカイ) +10’47”
6位 ユーリ・トロフィモフ(ロシア、カチューシャ) +11’11”
7位 ライダー・ヘシェダル(カナダ、キャノンデール・ガーミン) +12’05”
8位 ダミアーノ・カルーゾ(イタリア、BMCレーシング) +12’14”
9位 ステフェン・クルイスウィク(オランダ、ロットNLユンボ) +12’53”
10位 アレクサンドル・ジェニエ(フランス、FDJ) +15’07”
マリアロッサ ポイント賞
ジャコモ・ニッツォロ(イタリア、トレックファクトリーレーシング)
マリアアッズーラ 山岳賞
ジョヴァンニ・ヴィスコンティ(イタリア、モビスター)
マリアビアンカ ヤングライダー賞
ファビオ・アル(イタリア、アスタナ)
チーム総合成績
アスタナ
text&photo:Kei Tsuji in Cervinia, Italy
フォトギャラリー
Amazon.co.jp