2015/05/29(金) - 06:00
1級山岳モンテ・オローニョの下りでアタックしたフィリップ・ジルベール(ベルギー、BMCレーシング)が、後続を振り切ってヴェルバニアへ。後方でマリアローザが躍進する中、ジルベールが単独逃げ切りでステージ2勝目を飾りました。
隣国スイスで一夜を過ごしたジロ・デ・イタリアはスタート後すぐにイタリアに戻る。大都市ミラノの北をかすめるようにしてマッジョーレ湖へ。コースの約4分の3は真っ平らだが、123km地点で突如コースは上昇を開始。1000m近い高低差を駆け上がって1級山岳モンテ・オローニョをクリアし、テクニカルな下りをこなしてヴェルバニアにフィニッシュする。
逃げ切り向きのコースレイアウトとあって、レースはメリーデのスタート直後から高速化する。アタックとカウンターアタックの応酬が続き、常時50km/h近いスピードで集団は巡行。アタック合戦は44km地点まで延々と続いた。別府史之(トレックファクトリーレーシング)もアタックに加わったもののタイミングの悪い前輪パンクで逃げに乗るチャンスを逃している。
シルヴァン・シャヴァネル(フランス、IAMサイクリング)やダミアーノ・クネゴ(イタリア、NIPPOヴィーニファンティーニ)、フィリップ・ジルベール(ベルギー、BMCレーシング)を含む14名の強力な逃げはグングンとタイム差を広げ、追走していたファビオ・フェリーネ(イタリア、トレックファクトリーレーシング)らを振り切って最大13分という揺るぎないリードを築き上げることに成功する。逃げに乗った総合15位・26分21秒遅れのアマエル・モワナール(フランス、BMCレーシング)は危険な存在ではないとティンコフ・サクソは判断した。
順調にステージ優勝に向けて走っていた先頭14名だったが、クネゴとロベルト・フェラーリ(イタリア、ランプレ・メリダ)がレース中盤に落車して脱落。クネゴは鎖骨骨折と脳震盪によって不運にもレースを去っている。
フィニッシュ地点ヴェルバニアの近くを一旦通過し、マッジョーレ湖畔に差し掛かってもなおタイム差は12分オーバー。12名に絞られた逃げグループは余裕を持って、この日唯一の、そして最大の難所である1級山岳モンテ・オローニョに突入した。
メイン集団ではティンコフ・サクソが登り口に向かってペースアップ。1級山岳モンテ・オローニョに向かっている最中に集団内では落車が2度発生し、総合2位ミケル・ランダ(スペイン、アスタナ)らが足止めを食らってしまう。ティンコフ・サクソは構わずペースを上げ続け、ランダを引き離した状態で登坂をスタートさせた。
10%弱の勾配を刻む1級山岳モンテ・オローニョで先頭グループは崩壊し、ダビ・デラクルス(スペイン、エティックス・クイックステップ)、フランチェスコ・ボンジョルノ(イタリア、バルディアーニCSF)、アマエル・モワナール(フランス、BMCレーシング)、カンスタンティン・シウトソウ(ベラルーシ、チームスカイ)の4名が先行を開始。ジルベールやシャヴァネルは脱落してしまう。
その9分後方では総合争いが大きく動き、チームメイトに発射される形でマリアローザのコンタドールが独走を開始。落車によって45秒のタイムを失っていた総合2位のランダはファビオ・アル(イタリア、アスタナ)を含む集団に復帰したものの、その時点でコンタドールは1分以上先を走っていた。
コンタドールにはライダー・ヘシェダル(カナダ、キャノンデール・ガーミン)が合流。総合のライバルたちを引き離すという利害が一致したジロ総合優勝経験者2人が高速で急勾配の登りを進む。ランダやアルの他、総合上位陣を含むメイン集団からコンタドールは1分30秒のリードを得た。
4名の逃げグループはボンジョルノを先頭に1級山岳モンテ・オローニョをクリアし、ジルベールが58秒遅れ、コンタドールとヘシェダルが7分43秒遅れ、そしてメイン集団が8分53秒遅れでテクニカルな下り区間に突入する。
ジルベールは下りで先頭4名を捉えると、およそフィニッシュまで20kmを残してそのままアタック。一気にリードを広げたジルベールが下りでさらに先行し、単独追走したボンジョルノを47秒引き離して独走フィニッシュした。
「今日はアマエル・モワナールとのチーム戦で勝利した。彼は登りをクライマーたちとこなし、自分はマイペースを維持して登坂。頂上通過時点で大きく遅れていたけど、下りでの挽回は可能だと思っていた」と、遅れてフィニッシュしたモワナールを抱き寄せ、感謝のハグをたっぷりと続けたジルベールは語る。
第12ステージに続く2勝目を飾ったジルベールは「確かに下りでリスクを負ったけど、ジロでステージ優勝するためにはそれぐらいのリスクは必要」と笑った。
一方、コンタドールとヘシェダルには逃げグループから下がったダヴィデ・ヴィッレッラ(イタリア、キャノンデール・ガーミン)が合流し、3名で下りを攻めてフィニッシュを目指す。人数を揃えた後続集団に若干タイム差を詰められながらも、終わってみれば先頭ジルベールから6分05秒遅れでフィニッシュ。7分18秒遅れでフィニッシュしたライバルたちから1分13秒ものリードを得ることに成功した。
総合2位ランダとの総合タイム差を5分15秒まで広げたコンタドールは「1級山岳を好位置で登り始めるためにチームメイトたちが全開で集団を引いていた時にランダが落車の影響で脱落。今日はモルティローロとは真逆のシチュエーションだった。結果的に彼からタイムを奪うことが出来て良かったよ」とハードなステージを振り返る。
「登りからフィニッシュまでタイムトライアル状態だったのでさすがに疲れている」と打ち明けているが、改めてジロの王者であることを走りで証明。総合争いにおいて独走状態でコンタドールは翌日からの2連続難関山岳ステージを迎える。
ジロ・デ・イタリア2015第18ステージ結果
1位 フィリップ・ジルベール(ベルギー、BMCレーシング) 4h04’14”
2位 フランチェスコ・ボンジョルノ(イタリア、バルディアーニCSF) +47”
3位 シルヴァン・シャヴァネル(フランス、IAMサイクリング) +1’01”
4位 マッテーオ・ブザート(イタリア、サウスイースト)
5位 アマエル・モワナール(フランス、BMCレーシング)
6位 ダビ・デラクルス(スペイン、エティックス・クイックステップ)
7位 リナルド・ノチェンティーニ(イタリア、AG2Rラモンディアール)
8位 カンスタンティン・シウトソウ(ベラルーシ、チームスカイ)
9位 チャド・ハガ(アメリカ、ジャイアント・アルペシン) +2’42”
10位 ピーター・ウェーニング(オランダ、オリカ・グリーンエッジ) +3’55”
11位 ライダー・ヘシェダル(カナダ、キャノンデール・ガーミン) +6’05”
12位 アルベルト・コンタドール(スペイン、ティンコフ・サクソ)
14位 アレクサンドル・ジェニエ(フランス、FDJ +7’18”
15位 ステフェン・クルイスウィク(オランダ、ロットNLユンボ)
16位 ダミアーノ・カルーゾ(イタリア、BMCレーシング)
17位 レオポルド・ケーニッヒ(チェコ、チームスカイ)
20位 ユーリ・トロフィモフ(ロシア、カチューシャ)
23位 ミケル・ランダ(スペイン、アスタナ)
24位 ファビオ・アル(イタリア、アスタナ)
25位 アンドレイ・アマドール(コスタリカ、モビスター)
個人総合成績
1位 アルベルト・コンタドール(スペイン、ティンコフ・サクソ) 72h23’09”
2位 ミケル・ランダ(スペイン、アスタナ) +5’15”
3位 ファビオ・アル(イタリア、アスタナ) +6’05”
4位 アンドレイ・アマドール(コスタリカ、モビスター) +7’01”
5位 ユーリ・トロフィモフ(ロシア、カチューシャ) +9’40”
6位 レオポルド・ケーニッヒ(チェコ、チームスカイ) +10’44”
7位 ダミアーノ・カルーゾ(イタリア、BMCレーシング) +11’05”
8位 ステフェン・クルイスウィク(オランダ、ロットNLユンボ) +12’53”
9位 ライダー・ヘシェダル(カナダ、キャノンデール・ガーミン) +13’01”
10位 アレクサンドル・ジェニエ(フランス、FDJ) +14’01”
マリアロッサ ポイント賞
ジャコモ・ニッツォロ(イタリア、トレックファクトリーレーシング)
マリアアッズーラ 山岳賞
ステフェン・クルイスウィク(オランダ、ロットNLユンボ)
マリアビアンカ ヤングライダー賞
ファビオ・アル(イタリア、アスタナ)
チーム総合成績
アスタナ
text&photo:Kei Tsuji in Verbania, Italy
隣国スイスで一夜を過ごしたジロ・デ・イタリアはスタート後すぐにイタリアに戻る。大都市ミラノの北をかすめるようにしてマッジョーレ湖へ。コースの約4分の3は真っ平らだが、123km地点で突如コースは上昇を開始。1000m近い高低差を駆け上がって1級山岳モンテ・オローニョをクリアし、テクニカルな下りをこなしてヴェルバニアにフィニッシュする。
逃げ切り向きのコースレイアウトとあって、レースはメリーデのスタート直後から高速化する。アタックとカウンターアタックの応酬が続き、常時50km/h近いスピードで集団は巡行。アタック合戦は44km地点まで延々と続いた。別府史之(トレックファクトリーレーシング)もアタックに加わったもののタイミングの悪い前輪パンクで逃げに乗るチャンスを逃している。
シルヴァン・シャヴァネル(フランス、IAMサイクリング)やダミアーノ・クネゴ(イタリア、NIPPOヴィーニファンティーニ)、フィリップ・ジルベール(ベルギー、BMCレーシング)を含む14名の強力な逃げはグングンとタイム差を広げ、追走していたファビオ・フェリーネ(イタリア、トレックファクトリーレーシング)らを振り切って最大13分という揺るぎないリードを築き上げることに成功する。逃げに乗った総合15位・26分21秒遅れのアマエル・モワナール(フランス、BMCレーシング)は危険な存在ではないとティンコフ・サクソは判断した。
順調にステージ優勝に向けて走っていた先頭14名だったが、クネゴとロベルト・フェラーリ(イタリア、ランプレ・メリダ)がレース中盤に落車して脱落。クネゴは鎖骨骨折と脳震盪によって不運にもレースを去っている。
フィニッシュ地点ヴェルバニアの近くを一旦通過し、マッジョーレ湖畔に差し掛かってもなおタイム差は12分オーバー。12名に絞られた逃げグループは余裕を持って、この日唯一の、そして最大の難所である1級山岳モンテ・オローニョに突入した。
メイン集団ではティンコフ・サクソが登り口に向かってペースアップ。1級山岳モンテ・オローニョに向かっている最中に集団内では落車が2度発生し、総合2位ミケル・ランダ(スペイン、アスタナ)らが足止めを食らってしまう。ティンコフ・サクソは構わずペースを上げ続け、ランダを引き離した状態で登坂をスタートさせた。
10%弱の勾配を刻む1級山岳モンテ・オローニョで先頭グループは崩壊し、ダビ・デラクルス(スペイン、エティックス・クイックステップ)、フランチェスコ・ボンジョルノ(イタリア、バルディアーニCSF)、アマエル・モワナール(フランス、BMCレーシング)、カンスタンティン・シウトソウ(ベラルーシ、チームスカイ)の4名が先行を開始。ジルベールやシャヴァネルは脱落してしまう。
その9分後方では総合争いが大きく動き、チームメイトに発射される形でマリアローザのコンタドールが独走を開始。落車によって45秒のタイムを失っていた総合2位のランダはファビオ・アル(イタリア、アスタナ)を含む集団に復帰したものの、その時点でコンタドールは1分以上先を走っていた。
コンタドールにはライダー・ヘシェダル(カナダ、キャノンデール・ガーミン)が合流。総合のライバルたちを引き離すという利害が一致したジロ総合優勝経験者2人が高速で急勾配の登りを進む。ランダやアルの他、総合上位陣を含むメイン集団からコンタドールは1分30秒のリードを得た。
4名の逃げグループはボンジョルノを先頭に1級山岳モンテ・オローニョをクリアし、ジルベールが58秒遅れ、コンタドールとヘシェダルが7分43秒遅れ、そしてメイン集団が8分53秒遅れでテクニカルな下り区間に突入する。
ジルベールは下りで先頭4名を捉えると、およそフィニッシュまで20kmを残してそのままアタック。一気にリードを広げたジルベールが下りでさらに先行し、単独追走したボンジョルノを47秒引き離して独走フィニッシュした。
「今日はアマエル・モワナールとのチーム戦で勝利した。彼は登りをクライマーたちとこなし、自分はマイペースを維持して登坂。頂上通過時点で大きく遅れていたけど、下りでの挽回は可能だと思っていた」と、遅れてフィニッシュしたモワナールを抱き寄せ、感謝のハグをたっぷりと続けたジルベールは語る。
第12ステージに続く2勝目を飾ったジルベールは「確かに下りでリスクを負ったけど、ジロでステージ優勝するためにはそれぐらいのリスクは必要」と笑った。
一方、コンタドールとヘシェダルには逃げグループから下がったダヴィデ・ヴィッレッラ(イタリア、キャノンデール・ガーミン)が合流し、3名で下りを攻めてフィニッシュを目指す。人数を揃えた後続集団に若干タイム差を詰められながらも、終わってみれば先頭ジルベールから6分05秒遅れでフィニッシュ。7分18秒遅れでフィニッシュしたライバルたちから1分13秒ものリードを得ることに成功した。
総合2位ランダとの総合タイム差を5分15秒まで広げたコンタドールは「1級山岳を好位置で登り始めるためにチームメイトたちが全開で集団を引いていた時にランダが落車の影響で脱落。今日はモルティローロとは真逆のシチュエーションだった。結果的に彼からタイムを奪うことが出来て良かったよ」とハードなステージを振り返る。
「登りからフィニッシュまでタイムトライアル状態だったのでさすがに疲れている」と打ち明けているが、改めてジロの王者であることを走りで証明。総合争いにおいて独走状態でコンタドールは翌日からの2連続難関山岳ステージを迎える。
ジロ・デ・イタリア2015第18ステージ結果
1位 フィリップ・ジルベール(ベルギー、BMCレーシング) 4h04’14”
2位 フランチェスコ・ボンジョルノ(イタリア、バルディアーニCSF) +47”
3位 シルヴァン・シャヴァネル(フランス、IAMサイクリング) +1’01”
4位 マッテーオ・ブザート(イタリア、サウスイースト)
5位 アマエル・モワナール(フランス、BMCレーシング)
6位 ダビ・デラクルス(スペイン、エティックス・クイックステップ)
7位 リナルド・ノチェンティーニ(イタリア、AG2Rラモンディアール)
8位 カンスタンティン・シウトソウ(ベラルーシ、チームスカイ)
9位 チャド・ハガ(アメリカ、ジャイアント・アルペシン) +2’42”
10位 ピーター・ウェーニング(オランダ、オリカ・グリーンエッジ) +3’55”
11位 ライダー・ヘシェダル(カナダ、キャノンデール・ガーミン) +6’05”
12位 アルベルト・コンタドール(スペイン、ティンコフ・サクソ)
14位 アレクサンドル・ジェニエ(フランス、FDJ +7’18”
15位 ステフェン・クルイスウィク(オランダ、ロットNLユンボ)
16位 ダミアーノ・カルーゾ(イタリア、BMCレーシング)
17位 レオポルド・ケーニッヒ(チェコ、チームスカイ)
20位 ユーリ・トロフィモフ(ロシア、カチューシャ)
23位 ミケル・ランダ(スペイン、アスタナ)
24位 ファビオ・アル(イタリア、アスタナ)
25位 アンドレイ・アマドール(コスタリカ、モビスター)
個人総合成績
1位 アルベルト・コンタドール(スペイン、ティンコフ・サクソ) 72h23’09”
2位 ミケル・ランダ(スペイン、アスタナ) +5’15”
3位 ファビオ・アル(イタリア、アスタナ) +6’05”
4位 アンドレイ・アマドール(コスタリカ、モビスター) +7’01”
5位 ユーリ・トロフィモフ(ロシア、カチューシャ) +9’40”
6位 レオポルド・ケーニッヒ(チェコ、チームスカイ) +10’44”
7位 ダミアーノ・カルーゾ(イタリア、BMCレーシング) +11’05”
8位 ステフェン・クルイスウィク(オランダ、ロットNLユンボ) +12’53”
9位 ライダー・ヘシェダル(カナダ、キャノンデール・ガーミン) +13’01”
10位 アレクサンドル・ジェニエ(フランス、FDJ) +14’01”
マリアロッサ ポイント賞
ジャコモ・ニッツォロ(イタリア、トレックファクトリーレーシング)
マリアアッズーラ 山岳賞
ステフェン・クルイスウィク(オランダ、ロットNLユンボ)
マリアビアンカ ヤングライダー賞
ファビオ・アル(イタリア、アスタナ)
チーム総合成績
アスタナ
text&photo:Kei Tsuji in Verbania, Italy
フォトギャラリー
Amazon.co.jp