2015/05/07(木) - 19:38
ベルギーを拠点に活動するチームユーラシアIRCタイヤ。活動5年目を迎えた若手育成チームの今季の活動を橋川健監督がレポート。CCTチャンピオンシステム、そしてNIPPOヴィーニファンティーニへとつながる、欧州プロへの夢を追う若者たちのチームだ。
ベルギー、コルトレイクを拠点として活動するチームユーラシアIRC。監督を務めるのはCCTチャンピオンシステムの監督も兼任する橋川 健氏だ。活動するメンバーはアンダー以下の若手ばかり。自転車競技の本場ヨーロッパにおいて選手育成を主目的としたチームだ。
チームはCCTチャンピオンシステムのサテライト(下部)チームという性格があり、その系列上位にはジロ・デ・イタリア出場を決めたNIPPOヴィーニファンティーニの存在もある。つまりステップアップすることでプロという目標が現実的に見えてくる、唯一のネットワークを誇る日本のチームという性格を持っているのだ。
2010年の創設以来、チームの歩んだ道のりから現在の状況までを橋川健監督の言葉で解説しながら、シーズン前半の活動内容をレポートしよう。
チームユーラシアは、株式会社NIPPOの支援を受けて2010年に立ち上がった。当時は欧州を中心に活動する若手を中心とした育成チームが存在していなかったため、その意義は大きく、その間に竹之内 悠、大場政登志、小森亮平、小石祐馬らの選手達を輩出してきた。
竹之内はユーラシア在籍中の2012年にヨーロッパで2勝。UCIヨーロッパツアー1.2レースにおいて8位入賞、大場はユーラシア卒業後の1年目にあたる2013年に全日本個人タイムトライアル選手権で優勝、小森は現在愛三工業レーシングチームで活躍、小石は2015年のU23アジア選手権ロードで優勝するなど活躍。チームは5年の欧州活動で着実に成果を上げている。
また、チームは設立当初から井上ゴム工業・IRCタイヤからも大きな支援を得て活動。日本とは比較にならないほど厳しいベルギーの道路環境におけるロードレースタイヤの製品開発・テスト協力を行いながら走っている。
4月から今季の活動を開始 他チームとのコラボでベルギーレースを転戦
4月にベルギー入りした選手たち。メンバーは昨年に引き続き雨乞竜己、京都産業大学の樋口峻明。そして他チームとのコラボレーションとしてEQADSに所属する清水太己、ボンシャンスの澤地陵二、伊藤舜紀が合流した。このコラボは、欧州で活動するチームと連携しながら双方にとって良い環境を築き上げていきたいと考えている。
EQADS(エカーズ)の浅田顕監督やボンシャンスの福島晋一監督とは選手時代からの20年近い付き合いであり、腹を割って話し、選手の育成について語り合えるのはとても楽しい時間でもある。当然、それぞれのやり方があり、進んでいる道は異なるのだが、最終的な目標は同じだと考えている。
また、欧州で活躍したU23の選手の中から、8月以降にCCTチャンピオンシステムの研修生として登録し、欧州プロレースへの参戦サポートを行うことも視野に入れている。同様のことは2013年に小石祐馬がベルギーのコンチネンタルチーム「コルバ・スペラーノハム」で研修生として登録され、欧州プロのレースに参戦して大きな収穫を得た。
以下、ここまでのレースを振り返りながらチームメンバーたちの走りの内容を紹介したい。
4月4日 1戦目 アンゼヘム
出走171名、完走94名。完走率は約55%。このレースは「ケルメスクルス」と呼ばれる当日申し込みのレースで、エントリーの手軽さから世界中から選手が集まっている。しかし、手軽にエントリーできるのとは逆に、ベルギー登録のコンチネンタルチームに所属する選手のエントリーもありレベルは高い。雨乞・樋口・清水・澤地の4名が出走したが、清水以外の3名はリタイヤとなった。清水は何度か抜け出す集団に反応したが、付き切れなかった。
4月8日 2戦目 スタッフ・セイハース
このレースはプロの1.HCカテゴリーのシュヘイルデプライスのオープニングレースとして行われた。チームで事前にエントリーを行うI.C.(インタークラブ)と呼ばれるカテゴリーだが、このI.C.も2段階あり、I.C.1はベルギーのトップアマチュアチーム、及びコンチネンタルチームのエントリーが認められるが、I.C.2は育成を目的としたカテゴリーで、トップアマチュアチームのエントリーは制限があり、コンチネンタルチームの出走は認められていない。
場合によってはケルメスクルスよりレベルが低くなる可能性があり、選手達には積極的に逃げに加わることを指示した。
スタート直後からアタックが繰り返され、その中から5名がエスケープ。人数が少ないことと、まだ100km以上残されていることから集団はこの逃げを容認した。風もほとんど無風であり、集団内は完全にサイクリングとなった。
ラスト20kmを切り集団がペースを上げてエスケープグループを吸収するタイミングで、約20名が集団から先行。この逃げは最後まで逃げ切ることになった。この逃げには樋口と雨乞が反応したが、雨乞は樋口が行ったのを見届けて、集団を引き連れるリスクを考えて踏むのを止めてしまった。そしてその後、樋口が千切れてしまった。
結果は残念なものだったが、内容は良かった。ただし完走率が8割であったことからも分かるとおり、展開的には楽な展開であり、気を赦せる内容ではない。
4月18-19日 5-6戦目 トィーダーグセ・バン・ハーベルストリーク
このレースはI.C.1のカテゴリーで行われる2日間のステージレースで、ベルギーのコンチネンタルチーム6チームが参戦。2.2と言っても良いほどレベルが高く、チームユーラシアでは毎年参戦し、選手たちを評価するうえで重要な指標の一つとなっているレースである。ロンド・ファン・フラーンデレンで使用される石畳の急坂「オウデ・クワレモント」を2日続けて通過し、コース設定はまさしく「ミニ・ロンド」である。
澤地、清水、伊藤、樋口の4人は初日のステージでリタイヤとなった。澤地、伊藤、樋口は集団での位置取りなどまだ課題が多い。清水は2年前にも出場しており総合成績でトップ30に入っているが、今回は完走できなかった。本来の実力を出し切れなかったのは残念であるが、それもまた実力である。
出走は192名。多くの選手たちは皆、プロチームやプロフェッショナルコンチネンタルチームへのステップアップを目標にしている。その中で初日に集団で完走したのは104名(54%)。集団から千切れた選手も含めた完走者は153名。完走率は約80%。2日目は集団で完走したのは84名(56%)。2日間を通すと完走者は139名(72%)になる。このレースは日本人選手にとってハードなレースであっても、全体を通してみれば集団レースとなりやすい「楽なレース」であることがわかる。
過去2回出場していずれもリタイヤに終わっている雨乞は、今回3回目の出場となる。直近のレースでは良い動きができていただけに期待していた。初日は約80名ほどのメイン集団に残っていたが、100km地点で単独で落車。後続のグルペット集団に吸収され、149位で完走。登りや石畳区間でも良い位置でクリアしていただけに残念であった。
2日目は雨乞のみが出走となった。集団からアタックする余裕も集団スプリントに加わる余裕も残っていなかったが、昨年に比べて成長しているのを感じる。たしかに「集団についていく」だけで精一杯であったが、欧州で集団が50%前後まで絞られるレースにおいて、集団で付いていくためには常に集団の中で動けなくてはならない。簡単に聞こえることであるが、多くの日本人選手がぶつかる壁でもある。今後のレースも期待したい。
ZLMルームポットツアーにナショナルチームのメンバーとして参加
小石佑馬と徳田優は、4月17・18日にオランダで行われたZLMルームポットツアーにジャパンナショナルチームのメンバーとして参戦した。全3ステージで出走152人中完走者は69人。完走率は45%だった。
ハードなレース展開となり、徳田はレース序盤で遅れリタイヤ。小石はメイン集団に残っていたものの落車し、鎖骨を折る怪我を負ってしまった。小石はベルギーで手術を受け、5月下旬〜6月上旬にはレースに復帰する予定だ。このレースでは昨年に引き続き日本のナショナルチームメンバー全員がリタイヤに終わった。
ヨーロッパでプロを目指すということを、もう一度自覚して欲しい
3月下旬にナショナルチームのメンバー9名を預かり、ベルギーのレースに参戦する機会があった。そこでチームユーラシアメンバーを合わせた日本人選手たち13名に、トレーニングについて簡単な講座を行った。そこでまず選手達に聞いたのが「トレーニング日誌をつけているか?」ということ。
13人中、練習日誌(距離と内容程度の20文字程度のものを含み)を実践している選手はたったの4名。先月何km(もしくは何時間)走ったか? について即答できたのは1名だけだった。
13名の多くの選手は将来ヨーロッパでプロになることを目指している。その上であえて厳しいことを言うと、インターネットや雑誌などには機材や体幹トレーニング、パワートレーニング、ポジショニング、ペダリングなど選手達が惹かれるキーワードが溢れ、それらを見て、聞いて、体験することで「達成感」を感じており、最も大事なことから目を逸らしているように感じた。
もちろんレベルに合わせた機材は必要だし、様々な知識を取り入れることはとても重要なことであるが、もっと基本的な問題に取り組み、欧州レベルとの差を詰めていくことを期待したい。
夏休みのU17・19の若者の欧州レース参戦をサポート
今夏、チームユーラシアは日本自転車競技連盟より「JCF強化パートナー」として中学・高校生のロード選手を、夏休みのあいだ欧州で強化・育成する遠征合宿を委託されました。
ここ数年はナショナルチームをはじめ欧州を拠点とする若手育成のための活動が増えてきたこともあり、他チームとのコラボレーションを積極的に進め、より質の高いレースを学び、近い将来に欧州で活躍できる「プロ選手の育成」を行うための活動として、今年はU17、U19の欧州レース参戦サポート活動を行います。
この合宿に参加するのは、U17が6名前後、U19が6名前後。渡航費、現地での生活費、海外保険は実費相当は選手負担しますが、レース参戦に掛かる経費、マネージメント等においてチームユーラシアIRCタイヤによるサポートが行われます(選手のキャリア等に応じ渡航経費の一部サポートも行う)。
また、期間中はメカニック講習(洗車~中級車レベルの整備)や英会話講習(英語圏の講師によるレッスン)、自転車競技のトレーニング理論などの講習を行います。
日本の男子のユース(U17、U19カテゴリー)の選手たちは世界のトップレベルで戦えるだけのポテンシャルを持っていると考えています。 しかし、その後いつのまにか欧州、世界との差が大きく引き離され、ジュニアカテゴリーでは世界のトップクラスで戦うことができた選手たちですら、その後の方向性を見失ってしまうことが多いのです。
ジュニアやユースのカテゴリーで欧州レースの走り方、意識を学ぶことは、U23カテゴリーに上がったときにも世界で戦う高い意識を持つ選手へ成長するためにとても重要だと考えており、結果を残すことはもちろん大事なことですが、それ以上に欧州レベルの走り、意識等を肌で感じて欲しいと思います。
現在、ジュニアのジャパンナショナルチームも海外遠征を行い、ネイションズカップでの優勝など成果を残し有意義な遠征を行っています。しかし、この度の遠征合宿はより多くの選手に門戸を開き、より多くのレースを経験させ、将来のナショナルチーム(強化指定)に選抜されて行くであろう選手の発掘も目的としています。そして数年後、この遠征合宿に参加した選手の中から欧州プロチームのメンバーとして活躍する日本人選手が輩出される事を期待しています。
text:Ken.HASHIKAWA
text&edit:Makoto.AYANO
photo:Makoto.AYANO,Sonoko.Tanaka,Ken.HASHIKAWA
橋川健(はしかわ・けん)プロフィール
1970年生。1991年にプロチームのモトローラとスポット契約し、欧州での選手活動をスタート。1994年にTonissteinerと契約しプロに。同年全日本プロフェッショナル選手権で優勝。1996年ツール・ド・おきなわ優勝、1998年にも全日本プロフェッショナル選手権で優勝。1999年にブリヂストンアンカーに移籍。ツール・ド・北海道ステージ3勝&総合優勝などの輝かしい戦績を誇る。2010年よりチームユーラシアの監督に就任。ベルギー、西フランドル地方のコルトレイクを拠点に活動する。
Team Eurasia-IRCタイヤ 総責任者兼監督
CCT p/b Champion System 監督兼コーチ
UCI(国際自転車競技連盟)公認 レベル1コーチ
日本自転車競技連盟 ロード部会員
平成26年度日本オリンピック委員会強化スタッフ
ベルギー、コルトレイクを拠点として活動するチームユーラシアIRC。監督を務めるのはCCTチャンピオンシステムの監督も兼任する橋川 健氏だ。活動するメンバーはアンダー以下の若手ばかり。自転車競技の本場ヨーロッパにおいて選手育成を主目的としたチームだ。
チームはCCTチャンピオンシステムのサテライト(下部)チームという性格があり、その系列上位にはジロ・デ・イタリア出場を決めたNIPPOヴィーニファンティーニの存在もある。つまりステップアップすることでプロという目標が現実的に見えてくる、唯一のネットワークを誇る日本のチームという性格を持っているのだ。
2010年の創設以来、チームの歩んだ道のりから現在の状況までを橋川健監督の言葉で解説しながら、シーズン前半の活動内容をレポートしよう。
チームユーラシアは、株式会社NIPPOの支援を受けて2010年に立ち上がった。当時は欧州を中心に活動する若手を中心とした育成チームが存在していなかったため、その意義は大きく、その間に竹之内 悠、大場政登志、小森亮平、小石祐馬らの選手達を輩出してきた。
竹之内はユーラシア在籍中の2012年にヨーロッパで2勝。UCIヨーロッパツアー1.2レースにおいて8位入賞、大場はユーラシア卒業後の1年目にあたる2013年に全日本個人タイムトライアル選手権で優勝、小森は現在愛三工業レーシングチームで活躍、小石は2015年のU23アジア選手権ロードで優勝するなど活躍。チームは5年の欧州活動で着実に成果を上げている。
また、チームは設立当初から井上ゴム工業・IRCタイヤからも大きな支援を得て活動。日本とは比較にならないほど厳しいベルギーの道路環境におけるロードレースタイヤの製品開発・テスト協力を行いながら走っている。
4月から今季の活動を開始 他チームとのコラボでベルギーレースを転戦
4月にベルギー入りした選手たち。メンバーは昨年に引き続き雨乞竜己、京都産業大学の樋口峻明。そして他チームとのコラボレーションとしてEQADSに所属する清水太己、ボンシャンスの澤地陵二、伊藤舜紀が合流した。このコラボは、欧州で活動するチームと連携しながら双方にとって良い環境を築き上げていきたいと考えている。
EQADS(エカーズ)の浅田顕監督やボンシャンスの福島晋一監督とは選手時代からの20年近い付き合いであり、腹を割って話し、選手の育成について語り合えるのはとても楽しい時間でもある。当然、それぞれのやり方があり、進んでいる道は異なるのだが、最終的な目標は同じだと考えている。
また、欧州で活躍したU23の選手の中から、8月以降にCCTチャンピオンシステムの研修生として登録し、欧州プロレースへの参戦サポートを行うことも視野に入れている。同様のことは2013年に小石祐馬がベルギーのコンチネンタルチーム「コルバ・スペラーノハム」で研修生として登録され、欧州プロのレースに参戦して大きな収穫を得た。
以下、ここまでのレースを振り返りながらチームメンバーたちの走りの内容を紹介したい。
4月4日 1戦目 アンゼヘム
出走171名、完走94名。完走率は約55%。このレースは「ケルメスクルス」と呼ばれる当日申し込みのレースで、エントリーの手軽さから世界中から選手が集まっている。しかし、手軽にエントリーできるのとは逆に、ベルギー登録のコンチネンタルチームに所属する選手のエントリーもありレベルは高い。雨乞・樋口・清水・澤地の4名が出走したが、清水以外の3名はリタイヤとなった。清水は何度か抜け出す集団に反応したが、付き切れなかった。
4月8日 2戦目 スタッフ・セイハース
このレースはプロの1.HCカテゴリーのシュヘイルデプライスのオープニングレースとして行われた。チームで事前にエントリーを行うI.C.(インタークラブ)と呼ばれるカテゴリーだが、このI.C.も2段階あり、I.C.1はベルギーのトップアマチュアチーム、及びコンチネンタルチームのエントリーが認められるが、I.C.2は育成を目的としたカテゴリーで、トップアマチュアチームのエントリーは制限があり、コンチネンタルチームの出走は認められていない。
場合によってはケルメスクルスよりレベルが低くなる可能性があり、選手達には積極的に逃げに加わることを指示した。
スタート直後からアタックが繰り返され、その中から5名がエスケープ。人数が少ないことと、まだ100km以上残されていることから集団はこの逃げを容認した。風もほとんど無風であり、集団内は完全にサイクリングとなった。
ラスト20kmを切り集団がペースを上げてエスケープグループを吸収するタイミングで、約20名が集団から先行。この逃げは最後まで逃げ切ることになった。この逃げには樋口と雨乞が反応したが、雨乞は樋口が行ったのを見届けて、集団を引き連れるリスクを考えて踏むのを止めてしまった。そしてその後、樋口が千切れてしまった。
結果は残念なものだったが、内容は良かった。ただし完走率が8割であったことからも分かるとおり、展開的には楽な展開であり、気を赦せる内容ではない。
4月18-19日 5-6戦目 トィーダーグセ・バン・ハーベルストリーク
このレースはI.C.1のカテゴリーで行われる2日間のステージレースで、ベルギーのコンチネンタルチーム6チームが参戦。2.2と言っても良いほどレベルが高く、チームユーラシアでは毎年参戦し、選手たちを評価するうえで重要な指標の一つとなっているレースである。ロンド・ファン・フラーンデレンで使用される石畳の急坂「オウデ・クワレモント」を2日続けて通過し、コース設定はまさしく「ミニ・ロンド」である。
澤地、清水、伊藤、樋口の4人は初日のステージでリタイヤとなった。澤地、伊藤、樋口は集団での位置取りなどまだ課題が多い。清水は2年前にも出場しており総合成績でトップ30に入っているが、今回は完走できなかった。本来の実力を出し切れなかったのは残念であるが、それもまた実力である。
出走は192名。多くの選手たちは皆、プロチームやプロフェッショナルコンチネンタルチームへのステップアップを目標にしている。その中で初日に集団で完走したのは104名(54%)。集団から千切れた選手も含めた完走者は153名。完走率は約80%。2日目は集団で完走したのは84名(56%)。2日間を通すと完走者は139名(72%)になる。このレースは日本人選手にとってハードなレースであっても、全体を通してみれば集団レースとなりやすい「楽なレース」であることがわかる。
過去2回出場していずれもリタイヤに終わっている雨乞は、今回3回目の出場となる。直近のレースでは良い動きができていただけに期待していた。初日は約80名ほどのメイン集団に残っていたが、100km地点で単独で落車。後続のグルペット集団に吸収され、149位で完走。登りや石畳区間でも良い位置でクリアしていただけに残念であった。
2日目は雨乞のみが出走となった。集団からアタックする余裕も集団スプリントに加わる余裕も残っていなかったが、昨年に比べて成長しているのを感じる。たしかに「集団についていく」だけで精一杯であったが、欧州で集団が50%前後まで絞られるレースにおいて、集団で付いていくためには常に集団の中で動けなくてはならない。簡単に聞こえることであるが、多くの日本人選手がぶつかる壁でもある。今後のレースも期待したい。
ZLMルームポットツアーにナショナルチームのメンバーとして参加
小石佑馬と徳田優は、4月17・18日にオランダで行われたZLMルームポットツアーにジャパンナショナルチームのメンバーとして参戦した。全3ステージで出走152人中完走者は69人。完走率は45%だった。
ハードなレース展開となり、徳田はレース序盤で遅れリタイヤ。小石はメイン集団に残っていたものの落車し、鎖骨を折る怪我を負ってしまった。小石はベルギーで手術を受け、5月下旬〜6月上旬にはレースに復帰する予定だ。このレースでは昨年に引き続き日本のナショナルチームメンバー全員がリタイヤに終わった。
ヨーロッパでプロを目指すということを、もう一度自覚して欲しい
3月下旬にナショナルチームのメンバー9名を預かり、ベルギーのレースに参戦する機会があった。そこでチームユーラシアメンバーを合わせた日本人選手たち13名に、トレーニングについて簡単な講座を行った。そこでまず選手達に聞いたのが「トレーニング日誌をつけているか?」ということ。
13人中、練習日誌(距離と内容程度の20文字程度のものを含み)を実践している選手はたったの4名。先月何km(もしくは何時間)走ったか? について即答できたのは1名だけだった。
13名の多くの選手は将来ヨーロッパでプロになることを目指している。その上であえて厳しいことを言うと、インターネットや雑誌などには機材や体幹トレーニング、パワートレーニング、ポジショニング、ペダリングなど選手達が惹かれるキーワードが溢れ、それらを見て、聞いて、体験することで「達成感」を感じており、最も大事なことから目を逸らしているように感じた。
もちろんレベルに合わせた機材は必要だし、様々な知識を取り入れることはとても重要なことであるが、もっと基本的な問題に取り組み、欧州レベルとの差を詰めていくことを期待したい。
夏休みのU17・19の若者の欧州レース参戦をサポート
今夏、チームユーラシアは日本自転車競技連盟より「JCF強化パートナー」として中学・高校生のロード選手を、夏休みのあいだ欧州で強化・育成する遠征合宿を委託されました。
ここ数年はナショナルチームをはじめ欧州を拠点とする若手育成のための活動が増えてきたこともあり、他チームとのコラボレーションを積極的に進め、より質の高いレースを学び、近い将来に欧州で活躍できる「プロ選手の育成」を行うための活動として、今年はU17、U19の欧州レース参戦サポート活動を行います。
この合宿に参加するのは、U17が6名前後、U19が6名前後。渡航費、現地での生活費、海外保険は実費相当は選手負担しますが、レース参戦に掛かる経費、マネージメント等においてチームユーラシアIRCタイヤによるサポートが行われます(選手のキャリア等に応じ渡航経費の一部サポートも行う)。
また、期間中はメカニック講習(洗車~中級車レベルの整備)や英会話講習(英語圏の講師によるレッスン)、自転車競技のトレーニング理論などの講習を行います。
日本の男子のユース(U17、U19カテゴリー)の選手たちは世界のトップレベルで戦えるだけのポテンシャルを持っていると考えています。 しかし、その後いつのまにか欧州、世界との差が大きく引き離され、ジュニアカテゴリーでは世界のトップクラスで戦うことができた選手たちですら、その後の方向性を見失ってしまうことが多いのです。
ジュニアやユースのカテゴリーで欧州レースの走り方、意識を学ぶことは、U23カテゴリーに上がったときにも世界で戦う高い意識を持つ選手へ成長するためにとても重要だと考えており、結果を残すことはもちろん大事なことですが、それ以上に欧州レベルの走り、意識等を肌で感じて欲しいと思います。
現在、ジュニアのジャパンナショナルチームも海外遠征を行い、ネイションズカップでの優勝など成果を残し有意義な遠征を行っています。しかし、この度の遠征合宿はより多くの選手に門戸を開き、より多くのレースを経験させ、将来のナショナルチーム(強化指定)に選抜されて行くであろう選手の発掘も目的としています。そして数年後、この遠征合宿に参加した選手の中から欧州プロチームのメンバーとして活躍する日本人選手が輩出される事を期待しています。
text:Ken.HASHIKAWA
text&edit:Makoto.AYANO
photo:Makoto.AYANO,Sonoko.Tanaka,Ken.HASHIKAWA
橋川健(はしかわ・けん)プロフィール
1970年生。1991年にプロチームのモトローラとスポット契約し、欧州での選手活動をスタート。1994年にTonissteinerと契約しプロに。同年全日本プロフェッショナル選手権で優勝。1996年ツール・ド・おきなわ優勝、1998年にも全日本プロフェッショナル選手権で優勝。1999年にブリヂストンアンカーに移籍。ツール・ド・北海道ステージ3勝&総合優勝などの輝かしい戦績を誇る。2010年よりチームユーラシアの監督に就任。ベルギー、西フランドル地方のコルトレイクを拠点に活動する。
Team Eurasia-IRCタイヤ 総責任者兼監督
CCT p/b Champion System 監督兼コーチ
UCI(国際自転車競技連盟)公認 レベル1コーチ
日本自転車競技連盟 ロード部会員
平成26年度日本オリンピック委員会強化スタッフ
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