2009/02/19(木) - 21:45
ガーミンチーム御用達ブランドである「フェルト」。今年もチームバイクとして活躍するのはハイエンドモデルのF1 SLだ。超軽量モデルとしても知られるF1 SLの実力を、多角的に検証してみた。
2008年、ガーミン・チポトレチームが駆ってツール・ド・フランスで大旋風を巻き起こしたフェルト。特に同チームのアメリカ人選手クリスティアン・ヴァンデヴェルデの活躍は目覚ましく、混戦のツールをフェルトとともに総合5位でフィニッシュしている。
2009年も引き続き、ガーミン・スリップストリームチームはフェルトを駆っている。そのメインバイクとなるのが、F1 SLだ。今回インプレした仕様の完成車重量は、6.35kgという超軽量を示す。
ペダル、ボトルケージなどは含まれていない重量とはいえ、パーツの選択次第ではUCI(国際自転車競技連合)が定める最低重量6.8kgを簡単に下回ってしまう軽さなのだ。
「超軽量バイク」というと、「走らないのでは?」とか「持って軽いけど、乗っては軽くないだろう」などのイメージを持つ人もいると思うが、フェルト・F1 SLに関してはまったくの杞憂である。「UHCナノウルトラハイブリッドカーボン」というカーボンナノテクノロジーを駆使した最新素材により、高剛性と唱われるバイクと同等以上の剛性感を実現しているのだ。
フェルトの創始者であるジム・フェルトは、スチールやアルミフレーム全盛時代に「チュービングの魔術師」と呼ばれた人物。同じチューブを使っても、ジム・フェルトの手にかかると、まったく別物の「走るバイク」に仕上がったからだ。プロ選手の顧客も多く、所属チームカラーに塗装されて活躍したジム・フェルトのバイクは数知れないという伝説も残っている。
その実力はカーボンフレーム全盛時代となっても、まったく色あせていないどころか、さらに磨きがかかっていると言えるだろう。上記の「UHCナノウルトラハイブリッドカーボン」素材はもちろんのこと、フレーム各部のボリュームや肉厚を調整することにより、最も軽い重量で最も高い剛性を出し、そしても最も「走るバイク」へと仕上げているのである。
クリスティアン・ヴァンデヴェルデは言う。「フェルトのバイクに出会えたことに、僕はとても感謝している。だって、ツール・ド・フランス総合5位という、これまでの最高成績を実現させてくれたのだから。フェルトは僕がこれまでに乗ってきたバイクの中で、間違いなくベストだ」と。
さて、インプレライダー三上和志と佐藤正一は、このプロユースバイクをどのように評価したのだろうか? さっそくインプレッションをお届けしよう!
三上和志(サイクルハウスMIKAMI)
とにかく硬いバイクだ。踏んだら踏んだだけ即座に進み、ハンドルを切れば切っただけクイックに曲がってくれる。そのダイレクト感の高さは、まさに異次元と言っても良いだろう。
にもかかわらず、持ってみるとビックリするほど軽く、その剛性感の高さとのアンバランスに、思わず「えっ?」と驚きの声を上げてしまう。これまで、こんなに軽くてこんなに剛性感の高いバイクに出会ったことがないので、自分が何か間違ってしまったのかと疑ってしまうのだ。
この素晴らしいハンドリングは、ゴールスプリントでとても生きるだろう。混戦の状態になっても、縫うように隙間をぬけられるフィーリングなのだ。クリテリウムやタイトなコーナーの多いコースを走るのにも、もちろん良い。
反面、路面の凹凸はそれなりに拾う。段差などの衝撃もダイレクトだ。しかし、路面からのインフォメーションを手やカラダに直接感じた方が、危険回避には有利な場面も多々あるのも事実。慣れてしまえば、これはこれで捨てがたい魅力になるはず。
とにかく硬いバイクを好む人にとって、これ以上のバイクもないだろう。硬いバイクが好きならば、ヒルクライマーでもスプリンターでもOKだ。ライダーの実力を100%引き出してくれること間違いなし!
佐藤正一(なるしまフレンド)
まずは持ってみてビックリした。今や完成車重量で6kg台後半のバイクは数多くあるが、さすがに6kg台前半の6.35kgともなると、持ったときの軽さがワンランク違う。軽量バイクを好む人にとって、間違いなくフェルト・F1 SLは選択肢に加わるはずだ。
そして、乗ってみてもっとビックリした。軽さに相反する剛性感の高さを持っているからだ。わざと力まかせにペダルをグイグイと踏み込んでみても、フレームがよじれることはなく、踏んだ分だけススッと前に進んでくれるのである。レース指向の人にとって、これはかなり気持ちよい乗り味だ。
コーナリングはちょっと独特なフィーリングだった。硬いバイクなので、慣れないとちょっとクイックすぎる印象なのだ。最初は「不安定かな?」とも思ったが、慣れてくるとこれはこれでなかなか良い。このハンドリングを端的な言葉で表現すると、「スイスイ走れる」という感じだ。荒れた路面はちょっと苦手かもしれないが、きれいな路面ならば、これは最強のハンドリングかもしれない。
ブレーキングもダイレクトな印象。ハイスピードからフルブレーキングしても、フレームが負けてしまうことはまったくない。
振動吸収性は不思議と良かった。硬いバイクゆえ路面の凹凸はそれなりに拾うのだが、微振動は見事に吸収されるのだ。そのため、長時間乗っても手のひらがしびれるようなことはまったくない。
とにかく、軽くて硬い! そして、スイスイ走れる! ヒルクライム派はもちろんのこと、スプリンターが乗っても文句は出ないはず。この軽さからくる絶対的な加速性の高さは、ゴールスプリントでも間違いなく生きるだろう。本当に楽しいバイクだ!
スペック
フレーム フェルト・UHCナノモジュラーカーボンファイバー 3KPフィニッシュ <900g
フォーク フェルト・UHCナノ1.1 ワンピースカーボンファイバー 305g
コンポーネント シマノ・デュラエース7900シリーズ
ホイール シマノ・デュラエース WH-7850-C24-CL
タイヤ ヴィットリア・ディアマンテプロライト 700×23C
ハンドルバー DEVOX・UHCナノウルトラハイブリッドコンポジットカーボン
ステム DEVOS・7050アルミニウム
サドル DEVOX・チームイシュー
シートポスト フェルト・1.1カーボン
カラー グロスホワイト&クリアカーボン
サイズ 50, 52, 54, 56cm
完成車重量 13.98ポンド=6.35kg
希望小売価格(税込み) 288,750円(フレームセット)
785,400円(デュラエース7900完成車)
三上和志(サイクルハウスMIKAMI)
埼玉県飯能市にある「サイクルハウスMIKAMI」店主。MTBクロスカントリー全日本シリーズ大会で活躍した経験を生かし、MTBに関してはハード・ソフトともに造詣が深い。トレーニングの一環としてロードバイクにも乗っており、使用目的に合った車種の選択や適正サイズに関するアドバイスなど、特に実走派のライダーに定評が高い。
サイクルハウスMIKAMI
佐藤正一(なるしまフレンド)
東京・原宿にあるロードバイク系プロショップ「なるしまフレンド原宿店」店員。身長170cm、体重62kg。日本一のロードバイク販売量を誇るショップの店員だけに、その情報量の豊富さは右に出る者がいない。実業団チーム「なるしまフレンド」のレーサーとしても活躍しており、2008年は実業団石川大会BR-3で3位に食い込む好成績を収めている。
なるしまフレンド
text&edit:仲沢 隆
photo:綾野 真
ツール・ド・フランスで証明された実力
2008年、ガーミン・チポトレチームが駆ってツール・ド・フランスで大旋風を巻き起こしたフェルト。特に同チームのアメリカ人選手クリスティアン・ヴァンデヴェルデの活躍は目覚ましく、混戦のツールをフェルトとともに総合5位でフィニッシュしている。
2009年も引き続き、ガーミン・スリップストリームチームはフェルトを駆っている。そのメインバイクとなるのが、F1 SLだ。今回インプレした仕様の完成車重量は、6.35kgという超軽量を示す。
ペダル、ボトルケージなどは含まれていない重量とはいえ、パーツの選択次第ではUCI(国際自転車競技連合)が定める最低重量6.8kgを簡単に下回ってしまう軽さなのだ。
軽さと相反する剛性感の高さ
「超軽量バイク」というと、「走らないのでは?」とか「持って軽いけど、乗っては軽くないだろう」などのイメージを持つ人もいると思うが、フェルト・F1 SLに関してはまったくの杞憂である。「UHCナノウルトラハイブリッドカーボン」というカーボンナノテクノロジーを駆使した最新素材により、高剛性と唱われるバイクと同等以上の剛性感を実現しているのだ。
フェルトの創始者であるジム・フェルトは、スチールやアルミフレーム全盛時代に「チュービングの魔術師」と呼ばれた人物。同じチューブを使っても、ジム・フェルトの手にかかると、まったく別物の「走るバイク」に仕上がったからだ。プロ選手の顧客も多く、所属チームカラーに塗装されて活躍したジム・フェルトのバイクは数知れないという伝説も残っている。
その実力はカーボンフレーム全盛時代となっても、まったく色あせていないどころか、さらに磨きがかかっていると言えるだろう。上記の「UHCナノウルトラハイブリッドカーボン」素材はもちろんのこと、フレーム各部のボリュームや肉厚を調整することにより、最も軽い重量で最も高い剛性を出し、そしても最も「走るバイク」へと仕上げているのである。
クリスティアン・ヴァンデヴェルデは言う。「フェルトのバイクに出会えたことに、僕はとても感謝している。だって、ツール・ド・フランス総合5位という、これまでの最高成績を実現させてくれたのだから。フェルトは僕がこれまでに乗ってきたバイクの中で、間違いなくベストだ」と。
さて、インプレライダー三上和志と佐藤正一は、このプロユースバイクをどのように評価したのだろうか? さっそくインプレッションをお届けしよう!
「硬いバイクを好む人に最高のフィーリング」
三上和志(サイクルハウスMIKAMI)
とにかく硬いバイクだ。踏んだら踏んだだけ即座に進み、ハンドルを切れば切っただけクイックに曲がってくれる。そのダイレクト感の高さは、まさに異次元と言っても良いだろう。
にもかかわらず、持ってみるとビックリするほど軽く、その剛性感の高さとのアンバランスに、思わず「えっ?」と驚きの声を上げてしまう。これまで、こんなに軽くてこんなに剛性感の高いバイクに出会ったことがないので、自分が何か間違ってしまったのかと疑ってしまうのだ。
この素晴らしいハンドリングは、ゴールスプリントでとても生きるだろう。混戦の状態になっても、縫うように隙間をぬけられるフィーリングなのだ。クリテリウムやタイトなコーナーの多いコースを走るのにも、もちろん良い。
反面、路面の凹凸はそれなりに拾う。段差などの衝撃もダイレクトだ。しかし、路面からのインフォメーションを手やカラダに直接感じた方が、危険回避には有利な場面も多々あるのも事実。慣れてしまえば、これはこれで捨てがたい魅力になるはず。
とにかく硬いバイクを好む人にとって、これ以上のバイクもないだろう。硬いバイクが好きならば、ヒルクライマーでもスプリンターでもOKだ。ライダーの実力を100%引き出してくれること間違いなし!
「軽い! 硬い! スイスイ走れる楽しいバイク」
佐藤正一(なるしまフレンド)
まずは持ってみてビックリした。今や完成車重量で6kg台後半のバイクは数多くあるが、さすがに6kg台前半の6.35kgともなると、持ったときの軽さがワンランク違う。軽量バイクを好む人にとって、間違いなくフェルト・F1 SLは選択肢に加わるはずだ。
そして、乗ってみてもっとビックリした。軽さに相反する剛性感の高さを持っているからだ。わざと力まかせにペダルをグイグイと踏み込んでみても、フレームがよじれることはなく、踏んだ分だけススッと前に進んでくれるのである。レース指向の人にとって、これはかなり気持ちよい乗り味だ。
コーナリングはちょっと独特なフィーリングだった。硬いバイクなので、慣れないとちょっとクイックすぎる印象なのだ。最初は「不安定かな?」とも思ったが、慣れてくるとこれはこれでなかなか良い。このハンドリングを端的な言葉で表現すると、「スイスイ走れる」という感じだ。荒れた路面はちょっと苦手かもしれないが、きれいな路面ならば、これは最強のハンドリングかもしれない。
ブレーキングもダイレクトな印象。ハイスピードからフルブレーキングしても、フレームが負けてしまうことはまったくない。
振動吸収性は不思議と良かった。硬いバイクゆえ路面の凹凸はそれなりに拾うのだが、微振動は見事に吸収されるのだ。そのため、長時間乗っても手のひらがしびれるようなことはまったくない。
とにかく、軽くて硬い! そして、スイスイ走れる! ヒルクライム派はもちろんのこと、スプリンターが乗っても文句は出ないはず。この軽さからくる絶対的な加速性の高さは、ゴールスプリントでも間違いなく生きるだろう。本当に楽しいバイクだ!
スペック
フレーム フェルト・UHCナノモジュラーカーボンファイバー 3KPフィニッシュ <900g
フォーク フェルト・UHCナノ1.1 ワンピースカーボンファイバー 305g
コンポーネント シマノ・デュラエース7900シリーズ
ホイール シマノ・デュラエース WH-7850-C24-CL
タイヤ ヴィットリア・ディアマンテプロライト 700×23C
ハンドルバー DEVOX・UHCナノウルトラハイブリッドコンポジットカーボン
ステム DEVOS・7050アルミニウム
サドル DEVOX・チームイシュー
シートポスト フェルト・1.1カーボン
カラー グロスホワイト&クリアカーボン
サイズ 50, 52, 54, 56cm
完成車重量 13.98ポンド=6.35kg
希望小売価格(税込み) 288,750円(フレームセット)
785,400円(デュラエース7900完成車)
インプレライダーのプロフィール
三上和志(サイクルハウスMIKAMI)
埼玉県飯能市にある「サイクルハウスMIKAMI」店主。MTBクロスカントリー全日本シリーズ大会で活躍した経験を生かし、MTBに関してはハード・ソフトともに造詣が深い。トレーニングの一環としてロードバイクにも乗っており、使用目的に合った車種の選択や適正サイズに関するアドバイスなど、特に実走派のライダーに定評が高い。
サイクルハウスMIKAMI
佐藤正一(なるしまフレンド)
東京・原宿にあるロードバイク系プロショップ「なるしまフレンド原宿店」店員。身長170cm、体重62kg。日本一のロードバイク販売量を誇るショップの店員だけに、その情報量の豊富さは右に出る者がいない。実業団チーム「なるしまフレンド」のレーサーとしても活躍しており、2008年は実業団石川大会BR-3で3位に食い込む好成績を収めている。
なるしまフレンド
text&edit:仲沢 隆
photo:綾野 真