2015/02/21(土) - 09:03
高性能タイヤブランドとして不動の地位を確立しているイタリアのヴィットリアが独自開発のロードバイク用ホイールをリリースした。プロチームやビッグレースへのサポートを通して得たアイデアを詰め込んだというハイエンドのカーボンチューブラー「QURANO 46」のインプレッションをお届けする。
ヴィットリア QURANO 46 photo:Makoto.AYANO
ジャイアント・アルペシンやロットNLユンボなど多くのプロチームにタイヤを供給するヴィットリア。この他にも日本を始めとした各国の自転車競技連盟のスポンサーを務め、ジロ・デ・イタリアを始めとしたイタリア国内のビッグレースをメインにニュートラルサポートも行っている、定番ブランドだ。
これまで少ないながらも、 タイヤメーカーがホイールやリムをリリースした例は存在する。しかし、そのほとんどが汎用規格でないタイヤを使うためのセットという考え方であった。しかしヴィットリアはホイール単体としての性能を純粋に追求。加えて、数多くのビッグレースでのサポート経験を活かし独自の機構も盛り込んでいることが特徴だ。
ヴィットリアのタイヤと組み合わせることで性能を最大限に発揮できるよう設計されている
民生品としては初の採用となる「グラフェン」によって強化されたカーボンリム
タイヤとの接着力を向上させたリムベッド
リアは46mmハイトながらオフセット仕様とされている
2015モデルより展開を開始するヴィットリアホイールのロード用ラインナップは全部で8モデル。そのハイエンドに位置付けられるのがチューブラー仕様のカーボンエアロホイール「QURANO(キュラーノ)」シリーズだ。
プロアマ問わず、機材に求められる最も重要な性能といえば強度・耐久性だ。ここ数年で技術の発展によりカーボンの性能は飛躍的に上昇したものの、完璧な信頼性に一歩でも近づくべく、ヴィットリアはQURANOシリーズに新たな素材を投入した。それが「グラフェン」と呼ばれるナノ素材だ。
民生品としては初の採用となる「グラフェン」は、炭素原子が六角形の蜂の巣状に結合した2次元構造の極めて薄い素材で、鋼鉄の200倍という脅威の強度を有している。ヴィットリアではこれを従来から使用するカーボン素材に適量配合することで様々な性能を高めることに成功。ブレーキング時の温度上昇軽減や横方向全体及びスポーク穴周辺部の強度向上を実現したという。
整備性を重視してニップルは外出しとされている
全てのホイールにQRコードが貼られ、オンライン登録することで最大3年の保証が受けられる
ヴィットリアのこだわりはリムの素材だけではなく、形状にも及ぶ。近年主流の23~25mm幅のタイヤにあわせてリム幅を広くとり、タイヤの接地面を縦方向に短く、横方向に広くすることで、グリップと転がりという相反する性能を同時に改善。リムベッドはヴィットリアのチューブラータイヤに最適な形状に合わせられ、接合強度を増加させることで、より安全性が高まったという。またホイール前後の働きの違いに着目し、今回テストする「QURANO 46」はフロントを42mm、リアを46mmとリムハイトを変え、リアリムはオフセット仕様としている。
シンプルな造りのフロントハブ
左右の剛性差を均等に近づけるべくハイローフランジとされたリアハブ
ストレートプルのエアロスポークを採用
工具なしで取り外すことができるSwitch Itシステム
独自設計のハブはイタリア国内でアルミから削り出しで製造される。ニュートラルサポートの経験に基づき開発された「Switch IT」というテクノロジーが大きな特徴で、これはスプロケットを取り付けたまま工具無しでフリーボディを交換できる、メンテナンス製に優れるシステムだ。
予めスプロケットを装着したフリーボディを用意しておけば、シマノ/スラムとカンパニョーロ、あるいは11sと10sを瞬時に交換することが可能。これは主にどんなチームにも分け隔てなく故障(パンク)対応を行うニュートラルサポートで活きるシステムだが、コンポーネントの異なる複数台のバイクを所有しているホビーユーザーにも大変ありがたいとも言える。加えて回転性能と耐久性に優れる日本製のベアリングや、リアのスポークテンションの左右バランスを是正するためのハイローフランジの採用、軽量化のための肉抜きなど細部の造りも抜かり無い。
ニップル回しなどがセットになったホイールメンテナンス用携帯工具などが付属
保管や持ち運びに便利なヴィットリアロゴ入りホイールバッグ
スポークはエアロ形状のストレートプルタイプで、フロントは16本のラジアル組、リアは21本の2:1組としている。ニップルはメンテナンス性に優れる外出し仕様だ。重量は前後ペアで1298g。QRレバー、ホイールバッグ、ブレーキシュー、バルブエクステンダー、ホイールメンテナンス用携帯工具が付属する。
また、新規参入ながら販売開始時点から手厚いサポート体制が敷かれていることも特徴。QURANOシリーズをはじめとした全てのホイールはQRコードによって管理され、オンライン登録をすることで最大3年間の保証を受けられると同時に、補修履歴等を記録されるという。発売は3月中ごろを予定しており、国内にも専用工具が必要となる作業を請け負うヴィットリアホイール専門のサービスセンターが開設される。
処女作ながらも完成度の高い製品群を送り出したヴィットリア。それではハイエンドモデル、「QURANO 46」のインプレッションに移ろう。
ーインプレッション
「デビューモデルとは思えない完成度の高さ 比較的高剛性なフレームにマッチする」
小畑郁(なるしまフレンド神宮店)
ホイールにおいては新興ブランドながら、QURANO 46の完成度はとても高いレベルにあり、全体なバランスに優れた1本です。後発というだけあって、他ブランドのホイールをよく研究して設計しているのでしょう。ホイールの性能を高めるためのテクノロジーを惜しみなく投入してきたという印象ですね。
「デビューモデルとは思えない完成度の高さ 比較的高剛性なフレームにマッチする」小畑郁(なるしまフレンド神宮店) 特に感心したのはリアのリムがオフセットしている点です。ロープロファイルでは多く採用されている一方、エアロホイールには珍しい仕様ですね。しかし、左右異径のハブフランジや2:1スポーキングとあわせて、スポークテンションの左右差を抑えることができていると感じました。
一般的に前後でリム形状を変えてしまうと金型が2種類必要になることから価格が上がってしまいがちですがQURANO 46は21万円台に抑えられています。他ブランドが値上がりしている中にあっては非常にコストパフォーマンスが高いといえるでしょう。
リムとスポークが直結している構造の高剛性カーボンホイールに比べると踏み込んだ際やダンシング時にしなりを感じます。恐らくこの乗り味は意図的に味付けされたモノで、やや細身のスポークを使用することで力を逃して上げているのだと思います。極端に硬いホイールを求めている方には少し物足りないかもしれませんが、絶対的な剛性レベルは高いですね。
エアロダイナミクスも良好で、ワイドリムながら横風にも振られにくい印象です。ブレーキング性能は標準的なレベルでしょう。長期間テストしたわけではないですが、ホイール全体としての耐久性にも不満はなさそうです。比較的高剛性なフレームと相性が良いのではないでしょうか。
ユニークな機構のハブですが、抵抗が少なく空走時もよく転がってくれます。フリーボディ部は構造的にゴミを拾いやすいのではと感じましたが、一般ユーザーの皆さんでも簡単に脱着できるので、メンテナンスも苦ではないでしょう。ただ実際のところ、メンテナンス頻度は長期間使ってみないと分からない部分です。
今回のインプレッションを通して新しいホイールブランドとして高いレベルにあり、今後にも期待を持てます。現ラインアップでの最軽量モデルが今回テストしたQURANO 46とのことで、個人的にはより軽量なロープロファイルモデルを期待したいところです。
「高剛性なピュアレーシングホイール ブレーキフィールの良さはアルミ以上」
山崎嘉貴(ブレアサイクリング)
これまで様々なプロユースレベルのホイールを使ってきましたが、その中でも一際剛性が高いと感じました。一枚板の様な乗り味でしなやかさは感じません。リム、スポーク、ハブの一体感が高く、カーボンスポーク直結タイプのホイールとも似た印象がありました。
「高剛性なピュアレーシングホイール ブレーキフィールの良さはアルミ以上」山崎嘉貴(ブレアサイクリング)
この剛性の高さはハブやスポーク、スポーキングがどれもオーソドックスであること、リムそのものが非常に硬質であることに起因するものだと考えられます。リムの硬さはブレーキフィールにも繋がっていて、当て効きから握りこんだ際の制動力の立ち上がりが非常に強い、これまでのカーボンリムには無いフィーリングで驚きました。
標準的なカーボンリムであればパッドとカーボンのクロスが擦れてシューっと抜けていく印象がありますが、ヴィットリアの場合にはリムがパッドに食い込んで行くかの様なフィーリング。今回のテストではシマノ105のブレーキを使用しましたが、レーススピードでの制動にも不満はなく、単純な制動力ではアルミリムすら凌駕しているといえますね。
エアロホイールというだけあって巡航性能は高いレベルにあります。しかし、加速性能はさらに優れており、踏み込みに即座に反応し、リニアに速度が上がってくれます。また、踏み込んだ際にホイールが撓まず、ブレーキシューとリムが擦らないという点もレース用ホイールとしては評価できるポイントですね。調整幅が小さく、シューとリムの間隔を広げづらいエアロブレーキ仕様のバイクにも良いのではないでしょうか。
「カンパニョーロとシマノ、10速と11速のどちらも使用しているという方には魅力的」 ハブ単体の性能も良好で、滑らかに回ってくれます。ただ、フリーボディの構造がこれまでとは大きく異ることから、水分や埃などに対する耐性等は未知数ですが、実際に分解してみた限りでは心配なさそうですね。複数台の自転車を所有しており、カンパニョーロとシマノ、10速と11速のどちらも使用しているという方にはフリーボディを簡単に取り外すことのできる新機構はとても魅力的ではないでしょうか。
恐らく、ライダーにはそれなりの脚力が求められますね。剛性が高いぶんロスは少ないのですが、ギアを重くすると反発が強くなり、疲労の蓄積が早いと感じることがありました。ハイレベルの競技者を除いては、登りに入った瞬間にフロントをインナーに落として、シャカシャカと回してあげると良く進んでくれるでしょう。
レース用ホイールですから快適性は二の次ですが、個人的には25cのタイヤを普段よりも低圧として衝撃吸収性を高めてあげたいですね。やはり、ヴィットリアの定番レーシングタイヤCorsa Evo Cxがピッタリなはずです。それでも快適性に物足りなさを感じる場合には、表示されている規定値の範囲でスポークテンションを調整すると良いかもしれません。
これだけの性能で20万円台前半は「買い」です。補修部品の供給体勢は未知数ですが、テクニカルセンターが設けられるとのことで、ホイールブランドとしては新しいながらも安心ですね。
ヴィットリア QURANO 46 photo:Makoto.AYANO
ヴィットリア Qurano 46
リム形式:チューブラー
リム素材:G+Carbon
リム高さ:フロント42mm、リア46mm
リム外幅:23.5mm
ハ ブ:アルミ合金製(フロント104g、リア260g)
ベアリング:フロント2個、リア4個
対応スプロケット:シマノ11s/スラム、カンパニョーロ
重 量:1298g
付属品:QRレバー、ホイールバッグ、ブレーキシュー、バルブエクステンダー、携帯工具
価 格:218,500円(税抜)
インプレライダーのプロフィール
小畑郁(なるしまフレンド) 小畑郁(なるしまフレンド)
その圧倒的な知識量と優れた技術力から国内No.1メカニックとの呼び声高いなるしまフレンド神宮店の技術チーフ。勤務の傍ら精力的に競技活動を行っており、ツール・ド・おきなわ市民210kmでは2010年に2位、2013年と2014年に8位に入った他、国内最高峰のJプロツアーではプロを相手に多数の入賞経験を持つ。現在もなお、メカニックと競技者の双方の視点から自転車のディープで果てしない世界を探求中。
CWレコメンドショップページ
なるしまフレンド
山崎嘉貴(ブレアサイクリング) 山崎嘉貴(ブレアサイクリング)
長野県飯田市にある「ブレアサイクリング」店主。ブリヂストンアンカーのサテライトチームに所属したのち、渡仏。自転車競技の本場であるフランスでのレース活動経験を生かして、南信州の地で自転車の楽しさを伝えている。サイクルスポーツ誌主催の最速店長選手権の初代優勝者でもあり、走れる店長として高い認知度を誇っている。オリジナルサイクルジャージ”GRIDE”の企画販売も手掛けており、オンラインストアで全国から注文が可能だ。
CWレコメンドショップページ
ブレアサイクリング
ウェア協力:GRIDE
text:Yuya.Yamamoto
photo:Makoto.AYANAO
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ジャイアント・アルペシンやロットNLユンボなど多くのプロチームにタイヤを供給するヴィットリア。この他にも日本を始めとした各国の自転車競技連盟のスポンサーを務め、ジロ・デ・イタリアを始めとしたイタリア国内のビッグレースをメインにニュートラルサポートも行っている、定番ブランドだ。
これまで少ないながらも、 タイヤメーカーがホイールやリムをリリースした例は存在する。しかし、そのほとんどが汎用規格でないタイヤを使うためのセットという考え方であった。しかしヴィットリアはホイール単体としての性能を純粋に追求。加えて、数多くのビッグレースでのサポート経験を活かし独自の機構も盛り込んでいることが特徴だ。
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2015モデルより展開を開始するヴィットリアホイールのロード用ラインナップは全部で8モデル。そのハイエンドに位置付けられるのがチューブラー仕様のカーボンエアロホイール「QURANO(キュラーノ)」シリーズだ。
プロアマ問わず、機材に求められる最も重要な性能といえば強度・耐久性だ。ここ数年で技術の発展によりカーボンの性能は飛躍的に上昇したものの、完璧な信頼性に一歩でも近づくべく、ヴィットリアはQURANOシリーズに新たな素材を投入した。それが「グラフェン」と呼ばれるナノ素材だ。
民生品としては初の採用となる「グラフェン」は、炭素原子が六角形の蜂の巣状に結合した2次元構造の極めて薄い素材で、鋼鉄の200倍という脅威の強度を有している。ヴィットリアではこれを従来から使用するカーボン素材に適量配合することで様々な性能を高めることに成功。ブレーキング時の温度上昇軽減や横方向全体及びスポーク穴周辺部の強度向上を実現したという。
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ヴィットリアのこだわりはリムの素材だけではなく、形状にも及ぶ。近年主流の23~25mm幅のタイヤにあわせてリム幅を広くとり、タイヤの接地面を縦方向に短く、横方向に広くすることで、グリップと転がりという相反する性能を同時に改善。リムベッドはヴィットリアのチューブラータイヤに最適な形状に合わせられ、接合強度を増加させることで、より安全性が高まったという。またホイール前後の働きの違いに着目し、今回テストする「QURANO 46」はフロントを42mm、リアを46mmとリムハイトを変え、リアリムはオフセット仕様としている。
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予めスプロケットを装着したフリーボディを用意しておけば、シマノ/スラムとカンパニョーロ、あるいは11sと10sを瞬時に交換することが可能。これは主にどんなチームにも分け隔てなく故障(パンク)対応を行うニュートラルサポートで活きるシステムだが、コンポーネントの異なる複数台のバイクを所有しているホビーユーザーにも大変ありがたいとも言える。加えて回転性能と耐久性に優れる日本製のベアリングや、リアのスポークテンションの左右バランスを是正するためのハイローフランジの採用、軽量化のための肉抜きなど細部の造りも抜かり無い。
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また、新規参入ながら販売開始時点から手厚いサポート体制が敷かれていることも特徴。QURANOシリーズをはじめとした全てのホイールはQRコードによって管理され、オンライン登録をすることで最大3年間の保証を受けられると同時に、補修履歴等を記録されるという。発売は3月中ごろを予定しており、国内にも専用工具が必要となる作業を請け負うヴィットリアホイール専門のサービスセンターが開設される。
処女作ながらも完成度の高い製品群を送り出したヴィットリア。それではハイエンドモデル、「QURANO 46」のインプレッションに移ろう。
ーインプレッション
「デビューモデルとは思えない完成度の高さ 比較的高剛性なフレームにマッチする」
小畑郁(なるしまフレンド神宮店)
ホイールにおいては新興ブランドながら、QURANO 46の完成度はとても高いレベルにあり、全体なバランスに優れた1本です。後発というだけあって、他ブランドのホイールをよく研究して設計しているのでしょう。ホイールの性能を高めるためのテクノロジーを惜しみなく投入してきたという印象ですね。
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一般的に前後でリム形状を変えてしまうと金型が2種類必要になることから価格が上がってしまいがちですがQURANO 46は21万円台に抑えられています。他ブランドが値上がりしている中にあっては非常にコストパフォーマンスが高いといえるでしょう。
リムとスポークが直結している構造の高剛性カーボンホイールに比べると踏み込んだ際やダンシング時にしなりを感じます。恐らくこの乗り味は意図的に味付けされたモノで、やや細身のスポークを使用することで力を逃して上げているのだと思います。極端に硬いホイールを求めている方には少し物足りないかもしれませんが、絶対的な剛性レベルは高いですね。
エアロダイナミクスも良好で、ワイドリムながら横風にも振られにくい印象です。ブレーキング性能は標準的なレベルでしょう。長期間テストしたわけではないですが、ホイール全体としての耐久性にも不満はなさそうです。比較的高剛性なフレームと相性が良いのではないでしょうか。
ユニークな機構のハブですが、抵抗が少なく空走時もよく転がってくれます。フリーボディ部は構造的にゴミを拾いやすいのではと感じましたが、一般ユーザーの皆さんでも簡単に脱着できるので、メンテナンスも苦ではないでしょう。ただ実際のところ、メンテナンス頻度は長期間使ってみないと分からない部分です。
今回のインプレッションを通して新しいホイールブランドとして高いレベルにあり、今後にも期待を持てます。現ラインアップでの最軽量モデルが今回テストしたQURANO 46とのことで、個人的にはより軽量なロープロファイルモデルを期待したいところです。
「高剛性なピュアレーシングホイール ブレーキフィールの良さはアルミ以上」
山崎嘉貴(ブレアサイクリング)
これまで様々なプロユースレベルのホイールを使ってきましたが、その中でも一際剛性が高いと感じました。一枚板の様な乗り味でしなやかさは感じません。リム、スポーク、ハブの一体感が高く、カーボンスポーク直結タイプのホイールとも似た印象がありました。
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標準的なカーボンリムであればパッドとカーボンのクロスが擦れてシューっと抜けていく印象がありますが、ヴィットリアの場合にはリムがパッドに食い込んで行くかの様なフィーリング。今回のテストではシマノ105のブレーキを使用しましたが、レーススピードでの制動にも不満はなく、単純な制動力ではアルミリムすら凌駕しているといえますね。
エアロホイールというだけあって巡航性能は高いレベルにあります。しかし、加速性能はさらに優れており、踏み込みに即座に反応し、リニアに速度が上がってくれます。また、踏み込んだ際にホイールが撓まず、ブレーキシューとリムが擦らないという点もレース用ホイールとしては評価できるポイントですね。調整幅が小さく、シューとリムの間隔を広げづらいエアロブレーキ仕様のバイクにも良いのではないでしょうか。
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レース用ホイールですから快適性は二の次ですが、個人的には25cのタイヤを普段よりも低圧として衝撃吸収性を高めてあげたいですね。やはり、ヴィットリアの定番レーシングタイヤCorsa Evo Cxがピッタリなはずです。それでも快適性に物足りなさを感じる場合には、表示されている規定値の範囲でスポークテンションを調整すると良いかもしれません。
これだけの性能で20万円台前半は「買い」です。補修部品の供給体勢は未知数ですが、テクニカルセンターが設けられるとのことで、ホイールブランドとしては新しいながらも安心ですね。
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ヴィットリア Qurano 46
リム形式:チューブラー
リム素材:G+Carbon
リム高さ:フロント42mm、リア46mm
リム外幅:23.5mm
ハ ブ:アルミ合金製(フロント104g、リア260g)
ベアリング:フロント2個、リア4個
対応スプロケット:シマノ11s/スラム、カンパニョーロ
重 量:1298g
付属品:QRレバー、ホイールバッグ、ブレーキシュー、バルブエクステンダー、携帯工具
価 格:218,500円(税抜)
インプレライダーのプロフィール
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その圧倒的な知識量と優れた技術力から国内No.1メカニックとの呼び声高いなるしまフレンド神宮店の技術チーフ。勤務の傍ら精力的に競技活動を行っており、ツール・ド・おきなわ市民210kmでは2010年に2位、2013年と2014年に8位に入った他、国内最高峰のJプロツアーではプロを相手に多数の入賞経験を持つ。現在もなお、メカニックと競技者の双方の視点から自転車のディープで果てしない世界を探求中。
CWレコメンドショップページ
なるしまフレンド
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長野県飯田市にある「ブレアサイクリング」店主。ブリヂストンアンカーのサテライトチームに所属したのち、渡仏。自転車競技の本場であるフランスでのレース活動経験を生かして、南信州の地で自転車の楽しさを伝えている。サイクルスポーツ誌主催の最速店長選手権の初代優勝者でもあり、走れる店長として高い認知度を誇っている。オリジナルサイクルジャージ”GRIDE”の企画販売も手掛けており、オンラインストアで全国から注文が可能だ。
CWレコメンドショップページ
ブレアサイクリング
ウェア協力:GRIDE
text:Yuya.Yamamoto
photo:Makoto.AYANAO
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