最終ステージとなるツアー・オブ・カタール第6ステージはサム・ベネット(アイルランド、ボーラ・アルゴン18)がスプリント勝利。ニキ・テルプストラ(オランダ、エティックス・クイックステップ)が総合リードを守りきり、2連覇を果たした。



スタート前に談笑するアレクサンダー・クリストフ(ノルウェー、カチューシャ)とニキ・テルプストラ(オランダ、エティックス・クイックステップ)スタート前に談笑するアレクサンダー・クリストフ(ノルウェー、カチューシャ)とニキ・テルプストラ(オランダ、エティックス・クイックステップ) photo:A.S.O.スタート地点のシーラインビーチはいかにもリゾートといった雰囲気スタート地点のシーラインビーチはいかにもリゾートといった雰囲気 photo:A.S.O.


最終日まで総合争いが白熱したツアー・オブ・カタール最終日まで総合争いが白熱したツアー・オブ・カタール photo:A.S.O.


逃げたニコラ・ボエム(イタリア、バルディアーニ・CSF)、ステファノ・ピラッツィ(イタリア、バルディアーニ・CSF)、プレヴェン・ファンホッケ(ベルギー、トップスポートフラーンデレン)、マークス・ブルグハート(ドイツ、BMCレーシング)逃げたニコラ・ボエム(イタリア、バルディアーニ・CSF)、ステファノ・ピラッツィ(イタリア、バルディアーニ・CSF)、プレヴェン・ファンホッケ(ベルギー、トップスポートフラーンデレン)、マークス・ブルグハート(ドイツ、BMCレーシング) photo:A.S.O.カチューシャが終始集団をコントロールしたカチューシャが終始集団をコントロールした photo:A.S.O.ドーハへと向けて加速する集団ドーハへと向けて加速する集団 photo:A.S.O.周回コースには多くの観客が集まった周回コースには多くの観客が集まった photo:A.S.O.アレクサンダー・クリストフ(ノルウェー、カチューシャ)とニキ・テルプストラ(オランダ、エティックス・クイックステップ)をマークするニキ・テルプストラ(オランダ、エティックス・クイックステップ)アレクサンダー・クリストフ(ノルウェー、カチューシャ)とニキ・テルプストラ(オランダ、エティックス・クイックステップ)をマークするニキ・テルプストラ(オランダ、エティックス・クイックステップ) photo:A.S.O.ツアー・オブ・カタールを締めくくるのは、第1ステージのゴール地点、シーラインビーチリゾートを出発しドーハ市街に設けられた5.6kmの周回路を10周してフィニッシュする113km。

ステージ優勝もさることながら、この日最も注目されたのが、総合争い。第3ステージのタイムトライアルでリーダージャージを着用したディフェンディングチャンピオン、テルプストラだが、その後の第4・第5ステージで、アレクサンダー・クリストフ(ノルウェー、カチューシャ)が2連勝。36秒あったタイム差をボーナスタイムによって返上し、今日のスタート前には11秒差にまで詰めている。

中間スプリントでは1位に3秒、2位に2秒、3位に1秒のボーナスタイムが、フィニッシュでは1位に10秒、2位に6秒、3位に4秒のボーナスタイムが与えられる。ここまでに3勝をもぎ取っているクリストフにとって、中間スプリントで1秒でもタイム差を返せれば、総合逆転が可能となる、まさに秒差を争う展開。

逆に言えば、テルプストラにとっては、クリストフの中間スプリントを阻止し、先頭集団でゴールすれば勝利できるという状況。お互いの思惑が正面からぶつかり合う、熱い戦いが予感された最終ステージとなった。

この日、スタートから間もなく、プレヴェン・ファンホッケ(ベルギー、トップスポートフラーンデレン)、マークス・ブルグハート(ドイツ、BMCレーシング)、ニコラ・ボエム(イタリア、バルディアーニ・CSF)、ステファノ・ピラッツィ(イタリア、バルディアーニ・CSF)の4名が逃げに挑む。

しかし、集団をコントロールするカチューシャは1分前後のタイム差をキープしたままレースを進め、ドーハ市街の周回路に入っていく。海沿いの直線を二つのヘアピンで往復する5.6kmの周回を1周し終わった時には、22秒まで差が詰めていた。結局68km地点で逃げはすべて吸収され、第1中間スプリントに向けて加速していく。

クリストフのボーナスタイム獲得を阻止すべく動いたトム・ボーネン(ベルギー、エティックス・クイックステップ)が先頭で中間スプリントポイントを駆け抜けたが、クリストフは2番手で通過。テルプストラに対し、2秒を返し総合逆転の望みをつないだ。

一つめの中間スプリントを終え、少し緩まった集団からイーリョ・ケイセ(ベルギー、エティックス・クイックステップ)とギース・ファンホッケ(ベルギー、トップスポートフラーンデレン)が抜け出す。6周回を残して25秒のタイムギャップをつけるが、ティンコフ・サクソが先頭に立ち猛追を仕掛ける。エースであるペーター・サガン(スロバキア、ティンコフ・サクソ)が自ら牽引するほどの気迫がこもった追走で再び集団は1つに。

ラスト1周に入った集団は活性化。最後のヘアピンに先頭で飛び込んだのはアンドレア・グアルディーニ(イタリア、アスタナ)を擁するアスタナトレイン。

しかし、その右側からサガンで勝利を狙うティンコフ・サクソトレインが上がっていく。アスタナは先頭こそティンコフ・サクソに譲ったものの、グアルディ―ニをサガンの番手へと送り込むことに成功。



サム・ベネット(アイルランド、ボーラ・アルゴン18)がアンドレア・グアルディーニ(イタリア、アスタナ)を差し切ったサム・ベネット(アイルランド、ボーラ・アルゴン18)がアンドレア・グアルディーニ(イタリア、アスタナ)を差し切った photo:A.S.O.


ステージ優勝したサム・ベネット(アイルランド、ボーラ・アルゴン18)ステージ優勝したサム・ベネット(アイルランド、ボーラ・アルゴン18) photo:A.S.O.ニキ・テルプストラ(オランダ、エティックス・クイックステップ)が大会2連覇を達成したニキ・テルプストラ(オランダ、エティックス・クイックステップ)が大会2連覇を達成した photo:A.S.O.マッティ・ブレシェル(デンマーク、サクソ・ティンコフ)のリードアウトが終わり、サガンが仕掛けようとした瞬間、その背後から飛び出したグアルディ―ニ。最高のタイミングで勝負を仕掛けたように見えたが、さらにその後方からキレのある加速を見せたサム・ベネットが先頭でフィニッシュラインを越えた。

シーズン初勝利をつかんだベネットは喜びを隠しきれない様子で語る。「こんな最高の結果を残せて、うれしくて仕方がないよ。シーズンで初の勝利を世界トップレベルのスプリンター相手に掴めたことは幸せだよ。チームの皆がこの1週間のレースにおいて素晴らしい働きをなしとげてくれたおかげだ。彼らに感謝を!」

ベネットの勝利により、クリストフの逆転はならず。テルプストラが昨年に引き続き2連覇を決めた。「この結果にほっとしているよ。」と、わずかなタイム差で総合優勝を守り切ったニキ・テルプストラは語る。「今日のスタート前は少しナーバスになっていた。今日がクリストフにとってのいい日だったらどうしようってね。でも、チームメートがカチューシャを疲労させ、クリストフはスプリントに参加できず、僕は勝利することができたんだ。彼らには本当に感謝の気持ちでいっぱいだ。」

一方、テルプストラを追い詰めたものの、逆転ならなかったクリストフ。「総合首位を狙って僕らはありとあらゆる可能性にトライした。中間スプリントでは確かにタイム差を獲得できたけど、僕らはそこでエネルギーを使いきってしまった。総合成績で逆転はできなかったけど、それでもチームは印象的な活躍をしたと思うし、文句のつけようのない1週間だったよ。この時期に3勝して、総合表彰台に上れたというのは、僕のキャリアにとっても最高の結果だ。今はオマーンに向けて、休息を取るつもりさ。」と語った。

横風とボーナスタイムが白熱した争いを演出したツアー・オブ・カタール。ドバイから始まった中東レースはカタールの地を離れ、オマーンへとその舞台を移していく。



ツアー・オブ・カタール2015第6ステージ結果
1位 サム・ベネット(アイルランド、ボーラ・アルゴン18)
2位 アンドレア・グアルディーニ(イタリア、アスタナ)
3位 ナセル・ブアニ(フランス、コフィディス)
4位 ペーター・サガン(スロバキア、ティンコフ・サクソ)
5位 ユーセフ・リグイグイ(アルジェリア、MTNキュベカ)
6位 アダム・ブライス(イギリス、オリカ・グリーンエッジ)
7位 マッテオ・トレンティン(イタリア、エティックス・クイックステップ)
8位 トム・ボーネン(ベルギー、エティックス・クイックステップ)
9位 グレッグ・ファンアフェルマート(ベルギー、BMCレーシング)
10位 ホセホアキン・ロハス(スペイン、モビスター)
2h24'03"











個人総合成績
1位 ニキ・テルプストラ(オランダ、エティックス・クイックステップ)
2位 マチェイ・ボドナール(ポーランド、ティンコフ・サクソ)
3位 アレクサンダー・クリストフ(ノルウェー、カチューシャ)
4位 イアン・スタナード(イギリス、チームスカイ)
5位 グレッグ・ファンアフェルマート(ベルギー、BMC レーシング)
6位 ペーター・サガン(スロバキア、ティンコフ・サクソ)
7位 ルーク・ロウ(イギリス、チームスカイ)
8位 ハインリッヒ・ハウッスラー(オーストラリア、IAMサイクリング)
9位 トム・ボーネン(ベルギー、エティックス・クイックステップ)
10位 アンドレー・グリブコ(ウクライナ、アスタナ)
17h36'48"
+06"
+09"
+12"
+19"
+31"
+33"
+39"
+39"
+41"


ポイント賞
アレクサンダー・クリストフ(ノルウェー、カチューシャ)

新人賞
ペーター・サガン(スロバキア、ティンコフ・サクソ)

チーム総合成績
エティックス・クイックステップ

text:Naoki.YASUOKA
photo:A.S.O