2015/01/25(日) - 18:36
ツアー・オブ・ジャパンでステージ1勝、ツール・ド・熊野でステージ2勝を飾った24歳のワウテル・ウィッパート(オランダ、ドラパック)がUCIワールドチームに一矢報いた。UCIワールドツアー初戦ツアー・ダウンアンダーの最終ステージの模様をお伝えします。
アデレードの中心を貫くキングウィリアムロードを、オレンジ色のオークルジャージを着たローハン・デニス(オーストラリア、BMCレーシング)が凱旋。平均スピード46.5km/hのハイスピードバトルが繰り広げられた。
ツアー・ダウンアンダー最終日は例年よりもグレードアップした4.5kmの市街地コースを20周する90km。緩い登りを含むもののほぼ平坦と言える周回コースはスプリンターたちのものだ。
レース開始とともにスピードアップしたプロトンから、グレゴリー・ヘンダーソン(ニュージーランド、ロット・ソウダル)、ネイサン・ハース(オーストラリア、キャノンデール・ガーミン)、カルヴィン・ワトソン(オーストラリア、トレックファクトリーレーシング)、マヌエーレ・ボアーロ(イタリア、ティンコフ・サクソ)、アレクシ・グジャール(フランス、AG2Rラモンディアール)が飛び出して逃げグループを形成したものの、中間スプリント狙いのオリカ・グリーンエッジによって引き戻される。
中間スプリントではダリル・インピー(南アフリカ、オリカ・グリーンエッジ)が先着し、ポイント賞のリードを広げることに成功する。すると再び集団先頭ではアタックが続発する。続いて飛び出したのはボアーロ、クリストファー・ユールイェンセン(デンマーク、ティンコフ・サクソ)、ピーター・ケノー(イギリス、チームスカイ)、ラース・ボーム(オランダ、アスタナ)、ラルスイティング・バク(デンマーク、ロット・ソウダル)、アレックス・ハウズ(アメリカ、キャノンデール・ガーミン)。2時間弱のレースで6名は1分15秒のリードを得た。
スプリンターチームはテキストブック通りの集団牽引を見せ、フィニッシュまで3周を残してタイム差は30秒に。ジャイアント・アルペシン、IAMサイクリング、ランプレ・メリダ、チームスカイ、ドラパック、エティックス・クイックステップが集団先頭で競り合いながら残り2周に差し掛かった。
先頭でボアーロが独走に持ち込む中、スプリントに向けてポジション争いを繰り広げていた集団の中で落車が発生する。「この最終ステージで勝つために1週間走ってきた」と語っていたマルセル・キッテル(ドイツ、ジャイアント・アルペシン)らが後方に取り残され、約半数に絞られた集団が逃げを捉えて最終周回へ。
最も組織的なリードアウトを見せたのはオリカ・グリーンエッジとIAMサイクリング。2チームのトレインを上手く利用したウィッパートが残り200mで最初に仕掛けた。
オーストラリアチャンピオンジャージを着るハインリッヒ・ハウッスラー(オーストラリア、IAMサイクリング)が反応したものの、ウィッパートのスプリントが伸びる。UCIワールドチームを退けて、ドラパックのウィッパートが驚きの表情で勝利した。
「とてもナーバスなレースだった。1週間の疲れで後ろに下がってしまったものの、チームメイトたちが最終スプリントに向けてトレインを組んで引き上げてくれた。オーストラリアチームの一員として、オーストラリアのUCIワールドツアーレースで勝つなんてファンタスティックだ」とウィッパート。
1990年生まれのウィッパートは昨年ツアー・オブ・ジャパンでステージ1勝、ツール・ド・熊野でステージ2勝。UCIアジアツアーを中心に成功を収めていたオランダ生まれのスプリンターが世界の舞台で金星を飾った。
同タイムでフィニッシュしたデニスが総合リード2秒を守りきって総合優勝。落車の影響で総合8位から総合12位にダウンしたティアゴ・マシャド(ポルトガル、カチューシャ)を除いて、総合トップ10に変動はなかった。
「仮に集団が分裂してもすぐに反応出来るように、とにかくリッチーに引き離されないことだけを考えて走っていた」と総合優勝に輝いたデニスは語る。「何度か集団の後ろに下がってしまうシーンがあったけど、その度にチームメイトが下がってくれて、前まで引き上げてくれた。彼らの働きには脱帽だ。彼らの献身なしにこの勝利はあり得なかった」。
現役最後のUCIワールドツアーレースを総合3位で終えたエヴァンスについてデニスは「『俺についてこい』と言い続けるカデルに導かれるように走ったよ。彼はプロトンの中で最も経験豊かな選手であり、絶大な信頼を置いている。それに、アデレードの街に繰り出す時も彼が注目を全て集めてくれるし、レース中もインタビューを受けるのは決まって彼。だからプレッシャーもなく楽に過ごすことが出来たよ」と語る。地元アデレード生まれのデニスは2月8日にアワーレコードに挑戦する予定だ。
ツアー・ダウンアンダー2015第6ステージ結果
1位 ワウテル・ウィッパート(オランダ、ドラパック) 1h56’09”
2位 ハインリッヒ・ハウッスラー(オーストラリア、IAMサイクリング)
3位 ボリス・ファレー(ベルギー、ロット・ソウダル)
4位 パヴェル・ブラット(ロシア、ティンコフ・サクソ)
5位 ダリル・インピー(南アフリカ、オリカ・グリーンエッジ)
6位 ニッコーロ・ボニファツィオ(イタリア、ランプレ・メリダ)
7位 スティール・ヴォンホフ(オーストラリア、UniSAオーストラリア)
8位 ルスラン・トレバイェフ(カザフスタン、アスタナ)
9位 リュトガー・ゼーリッヒ(ドイツ、カチューシャ)
10位 セバスティアン・シャヴァネル(フランス、FDJ)
個人総合成績
1位 ローハン・デニス(オーストラリア、BMCレーシング) 19h15’18”
2位 リッチー・ポート(オーストラリア、チームスカイ) +02”
3位 カデル・エヴァンス(オーストラリア、BMCレーシング) +20”
4位 トム・ドゥムラン(オランダ、ジャイアント・アルペシン) +22”
5位 ルーベン・フェルナンデス(スペイン、モビスター) +24”
6位 ドメニコ・ポッツォヴィーヴォ(イタリア、AG2Rラモンディアール) +31”
7位 ダリル・インピー(南アフリカ、オリカ・グリーンエッジ) +35”
8位 ゴルカ・イサギーレ(スペイン、モビスター) +52”
9位 ヤルリンソン・パンタノ(コロンビア、IAMサイクリング) +53”
10位 ジョージ・ベネット(ニュージーランド、ロットNLユンボ) +57”
ポイント賞
ダリル・インピー(南アフリカ、オリカ・グリーンエッジ)
山岳賞
ジャック・ボブリッジ(オーストラリア、UniSAオーストラリア)
ヤングライダー賞
ローハン・デニス(オーストラリア、BMCレーシング)
チーム総合成績
モビスター
text&photo:Kei Tsuji in Adelaide, Australia
アデレードの中心を貫くキングウィリアムロードを、オレンジ色のオークルジャージを着たローハン・デニス(オーストラリア、BMCレーシング)が凱旋。平均スピード46.5km/hのハイスピードバトルが繰り広げられた。
ツアー・ダウンアンダー最終日は例年よりもグレードアップした4.5kmの市街地コースを20周する90km。緩い登りを含むもののほぼ平坦と言える周回コースはスプリンターたちのものだ。
レース開始とともにスピードアップしたプロトンから、グレゴリー・ヘンダーソン(ニュージーランド、ロット・ソウダル)、ネイサン・ハース(オーストラリア、キャノンデール・ガーミン)、カルヴィン・ワトソン(オーストラリア、トレックファクトリーレーシング)、マヌエーレ・ボアーロ(イタリア、ティンコフ・サクソ)、アレクシ・グジャール(フランス、AG2Rラモンディアール)が飛び出して逃げグループを形成したものの、中間スプリント狙いのオリカ・グリーンエッジによって引き戻される。
中間スプリントではダリル・インピー(南アフリカ、オリカ・グリーンエッジ)が先着し、ポイント賞のリードを広げることに成功する。すると再び集団先頭ではアタックが続発する。続いて飛び出したのはボアーロ、クリストファー・ユールイェンセン(デンマーク、ティンコフ・サクソ)、ピーター・ケノー(イギリス、チームスカイ)、ラース・ボーム(オランダ、アスタナ)、ラルスイティング・バク(デンマーク、ロット・ソウダル)、アレックス・ハウズ(アメリカ、キャノンデール・ガーミン)。2時間弱のレースで6名は1分15秒のリードを得た。
スプリンターチームはテキストブック通りの集団牽引を見せ、フィニッシュまで3周を残してタイム差は30秒に。ジャイアント・アルペシン、IAMサイクリング、ランプレ・メリダ、チームスカイ、ドラパック、エティックス・クイックステップが集団先頭で競り合いながら残り2周に差し掛かった。
先頭でボアーロが独走に持ち込む中、スプリントに向けてポジション争いを繰り広げていた集団の中で落車が発生する。「この最終ステージで勝つために1週間走ってきた」と語っていたマルセル・キッテル(ドイツ、ジャイアント・アルペシン)らが後方に取り残され、約半数に絞られた集団が逃げを捉えて最終周回へ。
最も組織的なリードアウトを見せたのはオリカ・グリーンエッジとIAMサイクリング。2チームのトレインを上手く利用したウィッパートが残り200mで最初に仕掛けた。
オーストラリアチャンピオンジャージを着るハインリッヒ・ハウッスラー(オーストラリア、IAMサイクリング)が反応したものの、ウィッパートのスプリントが伸びる。UCIワールドチームを退けて、ドラパックのウィッパートが驚きの表情で勝利した。
「とてもナーバスなレースだった。1週間の疲れで後ろに下がってしまったものの、チームメイトたちが最終スプリントに向けてトレインを組んで引き上げてくれた。オーストラリアチームの一員として、オーストラリアのUCIワールドツアーレースで勝つなんてファンタスティックだ」とウィッパート。
1990年生まれのウィッパートは昨年ツアー・オブ・ジャパンでステージ1勝、ツール・ド・熊野でステージ2勝。UCIアジアツアーを中心に成功を収めていたオランダ生まれのスプリンターが世界の舞台で金星を飾った。
同タイムでフィニッシュしたデニスが総合リード2秒を守りきって総合優勝。落車の影響で総合8位から総合12位にダウンしたティアゴ・マシャド(ポルトガル、カチューシャ)を除いて、総合トップ10に変動はなかった。
「仮に集団が分裂してもすぐに反応出来るように、とにかくリッチーに引き離されないことだけを考えて走っていた」と総合優勝に輝いたデニスは語る。「何度か集団の後ろに下がってしまうシーンがあったけど、その度にチームメイトが下がってくれて、前まで引き上げてくれた。彼らの働きには脱帽だ。彼らの献身なしにこの勝利はあり得なかった」。
現役最後のUCIワールドツアーレースを総合3位で終えたエヴァンスについてデニスは「『俺についてこい』と言い続けるカデルに導かれるように走ったよ。彼はプロトンの中で最も経験豊かな選手であり、絶大な信頼を置いている。それに、アデレードの街に繰り出す時も彼が注目を全て集めてくれるし、レース中もインタビューを受けるのは決まって彼。だからプレッシャーもなく楽に過ごすことが出来たよ」と語る。地元アデレード生まれのデニスは2月8日にアワーレコードに挑戦する予定だ。
ツアー・ダウンアンダー2015第6ステージ結果
1位 ワウテル・ウィッパート(オランダ、ドラパック) 1h56’09”
2位 ハインリッヒ・ハウッスラー(オーストラリア、IAMサイクリング)
3位 ボリス・ファレー(ベルギー、ロット・ソウダル)
4位 パヴェル・ブラット(ロシア、ティンコフ・サクソ)
5位 ダリル・インピー(南アフリカ、オリカ・グリーンエッジ)
6位 ニッコーロ・ボニファツィオ(イタリア、ランプレ・メリダ)
7位 スティール・ヴォンホフ(オーストラリア、UniSAオーストラリア)
8位 ルスラン・トレバイェフ(カザフスタン、アスタナ)
9位 リュトガー・ゼーリッヒ(ドイツ、カチューシャ)
10位 セバスティアン・シャヴァネル(フランス、FDJ)
個人総合成績
1位 ローハン・デニス(オーストラリア、BMCレーシング) 19h15’18”
2位 リッチー・ポート(オーストラリア、チームスカイ) +02”
3位 カデル・エヴァンス(オーストラリア、BMCレーシング) +20”
4位 トム・ドゥムラン(オランダ、ジャイアント・アルペシン) +22”
5位 ルーベン・フェルナンデス(スペイン、モビスター) +24”
6位 ドメニコ・ポッツォヴィーヴォ(イタリア、AG2Rラモンディアール) +31”
7位 ダリル・インピー(南アフリカ、オリカ・グリーンエッジ) +35”
8位 ゴルカ・イサギーレ(スペイン、モビスター) +52”
9位 ヤルリンソン・パンタノ(コロンビア、IAMサイクリング) +53”
10位 ジョージ・ベネット(ニュージーランド、ロットNLユンボ) +57”
ポイント賞
ダリル・インピー(南アフリカ、オリカ・グリーンエッジ)
山岳賞
ジャック・ボブリッジ(オーストラリア、UniSAオーストラリア)
ヤングライダー賞
ローハン・デニス(オーストラリア、BMCレーシング)
チーム総合成績
モビスター
text&photo:Kei Tsuji in Adelaide, Australia