ニューヨークで始動したキャノンデール・ガーミン。長年チームを指揮するジョナサン・ヴォータースGMは「チーム体制は大きく変わらない」と念を押す。今後も若手の育成に力を入れていく予定だ。



キャノンデール・ガーミンのジョナサン・ヴォータースGMキャノンデール・ガーミンのジョナサン・ヴォータースGM photo:Kei Tsuji


2008年ジロ 初日のチームTTで勝利したスリップストリーム・チポレ2008年ジロ 初日のチームTTで勝利したスリップストリーム・チポレ photo:Tim de Waele2003年、アメリカ・コロラド州ボルダーを拠点にスリップストリームスポーツは産声をあげた。マネージャーを務めたのは当時引退したばかりのジョナサン・ヴォータース。かつてUSポスタルやクレディアグリコルで走った1973年生まれのヴォータース率いるアメリカチームは、若手の育成を掲げて始動した。

2005年にUCIコンチネンタルチーム、2007年にUCIプロコンチネンタルチーム登録し、スリップストリーム・チポレとして活動していた2008年のジロ・デ・イタリアでグランツールデビュー。そこでチームTTを制し、翌年メインスポンサーにガーミン社を獲得してUCIプロツアー入りを果たした。スペイン北東部カタルーニャ州のジローナに活動拠点を置いており、ヴォータース氏はボルダーとジローナ、そして世界各地のレースを行き来する生活を送っている。

今も昔もチームの理念は「若手の育成」。それを象徴するかのように、2015年はUCIワールドツアー最年少チームとして活動する。UCIプロコンチネンタルチーム登録を済ませた2007年にチーム内のアンチドーピング検査体制を確立。アンチドーピングに対して最も厳格な姿勢を取っている。チーム加入時の血液レベル測定は必須条件だ。一方で、過去のドーピングを告白し、出場停止処分を受けた選手を受け入れる態勢も取っている。

ヴォータース氏はマネージャーとしての位置付けであり、監督としてチームカーのハンドルを握ることはない。静かに言葉を選びなら、メリハリをつけてチームの理論を説くヴォータース氏に、2015年の体制について聞いた。その言葉は揺るぎない自信に溢れていた。



ジョナサン・ヴォータースGM(キャノンデール・ガーミン)ジョナサン・ヴォータースGM(キャノンデール・ガーミン) photo:Kei Tsuji


キャノンデール・ガーミンのジャージを着た選手たちが登場キャノンデール・ガーミンのジャージを着た選手たちが登場 photo:Kei Tsuji2つのチームの合併を振り返って

2つのチームを1つにまとめるのは複雑な作業だった。それまで毎週のようにライバルとして顔を突き合わせていた2つのUCIワールドツアーチームを融合させる。しかも2つの全く異なるスタイルとヒストリー、選手層、国籍のチームだから余計に骨折りだったよ。話を進めるうちに互いの長所と短所が分かるようになり、以前よりも層の厚いよりプロフェッショナルな組織を作り上げることに成功した。

結果的に強力な布陣になりましたね

14カ国の選手が集まるインターナショナルな布陣だ。150年以上の歴史と伝統をもつイタリアの自転車カルチャーと、革新に主眼を置いたアメリカ的な見地の融合。異なる2つのカルチャーが交わるためには共通の言語が必要だった。だからカリブ海で1週間のチームビルディングキャンプを行なったんだ。海でセーリングボートに乗って、毎日選手の組み合わせを変えながらレースを行なった。上手くコミュニケーションを取らなければ闘えないことを身をもって感じてもらった。

新ジャージでトレーニングを行なうダニエル・マーティン(アイルランド、キャノンデール・ガーミン)ら新ジャージでトレーニングを行なうダニエル・マーティン(アイルランド、キャノンデール・ガーミン)ら photo:Cannondale Garmin今後も目標は若手の育成ですか?

2003年にチームを創設した当初、所属していたのは6名の若い選手たち。そのうち3人がUCIワールドツアーに進んでいる。スリップストリームは若手の育成を目標に掲げており、そのスタンスは変わらない。今後も育成に力を入れていく。私が現役時代に経験したドーピング問題のようなことを、若い世代に経験してほしくないんだ。それはチーム結成時からの基本理念。レースで勝つことは信じられない喜びを与えてくれるものの、最も優先すべきはドーピングを経験させないこと。それがチームの礎なんだ。

有能な選手をどうやって発掘するんですか?

他のUCIワールドツアーチームのマネージャーはリクリートの際にビッグレースの成績を参考にしている。でも私は小さなレースでの走りに注目している。アメリカはもちろん、南米やヨーロッパ、アジアにも目を向けている。例えば2014年に加入したコロンビアのハニエル・アセベドはフィジカルテストで驚くような結果を出した。名の知れていない選手の中にも、極めて身体能力が高い選手は多くいるんだ。そういう選手を発掘したい。そこには出身国の垣根はない。

日本人を加入させる可能性について

もちろん良い選手がいれば獲得することも考える。日本人選手の中では新城幸也を良く知っているし、他にも良い選手がいるならば是非教えてほしい。若くてもやる気のある選手は自主的にコンタクトを取るべきだ。

黒いジャージのチームが増えましたね

確かに増えたかもしれない。チームスカイにジャイアント・アルペシン、トレックファクトリーレーシング、そしてキャノンデール・ガーミン。黒いジャージがある意味でトレンドだ。でもそれぞれ特色があるので見間違えることはないと思う。ヘルメットや袖が明るいグリーンなのでプロトンの中でも目立つはずだ。



ダニエル・マーティン(アイルランド)とダヴィデ・フォルモロ(イタリア)のインタビューは後ほどお伝えします。

text:Kei Tsuji

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