2009/09/10(木) - 09:13
集団を牽き続けたリクイガスの読み違いにより、混戦のスプリントに持ち込まれた第11ステージ。ジロとツールで2回ずつステージ2位を経験していたタイラー・ファラー(アメリカ、ガーミン)が、念願のグランツール初勝利を手にした。
200kmかけてムルシア地方を駆け巡る第11ステージは、途中1級山岳コジャド・ベルメホ峠と2級山岳カンポ・デ・サンフアン峠が登場する。ゴールまで距離があったため、これらの山岳では総合争いは勃発せず、山岳に弱いスプリンターを振るい落とすためのセレクションの場となった。
春からずっと膝に故障を抱えていたフランク・シュレク(ルクセンブルク、サクソバンク)は、この日スタートせずにルクセンブルクに帰国。フランクは膝の手術を受ける予定で、実質的に今シーズンのレース活動を終えた。
レース序盤はアタックに次ぐアタックで、ようやくレースが落ち着いたのは、1級山岳コジャド・ベルメホ峠の上りが始まった39km地点。平均勾配5.3%の上りで飛び出したのは、山岳賞ジャージを競り合う2人を含む逃げだった。
メイン集団を5分引き離して1級山岳を上ったのは、山岳賞1位のダビ・デラフエンテ(スペイン、フジ・セルヴェット)と、同賞2位のダヴィ・モンクティエ(フランス、コフィディス)。これにアメツ・チュルカ(スペイン、エウスカルテル)とジョニー・フーガーランド(オランダ、ヴァカンソレイユ)を加えた計4名。
前日に手に入れた山岳賞ジャージを守りたいデラフエンテだったが、3日連続での逃げは過酷すぎた。やがてデラフエンテは先頭グループから遅れてメイン集団に吸収。1級山岳はモンクティエが先頭で通過し、一日でデラフエンテからジャージを奪い返した。
先頭の3名と、ケースデパーニュがコントロールするメイン集団とのタイム差は10分近くまで広がったが、リクイガスとラボバンクが集団コントロールを始めるとタイム差は縮小。残り100km地点で9分あったタイム差は、残り60km地点で4分に。この日最後の難所、2級山岳カンポ・デ・サンフアン峠でリクイガスが猛烈にペースを上げ始めた。
リクイガスのペースアップによって集団は分裂し、トム・ボーネン(ベルギー、クイックステップ)を始めとするスプリンターたちが脱落。何とか1分差を保って2級山岳の頂上に達したエスケープトリオは、モンクティエが先頭で通過して山岳リードを広げた。
やがてゴールまで43kmを残して先頭3名が吸収されると、カウンターアタックでレミ・ディグレゴリオ(フランス、フランセーズデジュー)が先行。しかし単独では大きなリードを奪えず、ゴールまで16kmを残して吸収。間髪入れずにリーナス・ゲルデマン(ドイツ、ミルラム)が飛び出したが、スプリンターチームの勢いの前には沈黙した。
2級山岳で遅れていたオスカル・フレイレ(スペイン、ラボバンク)やアンドレ・グライペル(ドイツ、チームコロンビア・HTC)は集団に復帰したが、ボーネンやボルト・ボジッチ(スロベニア、ヴァカンソレイユ)は遥か後方の集団。上りで絞られたスプリンターによる勝負に持ち込まれることに。
この日最も積極的に集団を牽いたのはリクイガス。レース終盤の60kmをほぼリクイガスが先頭固定で牽き続けたと言っても過言ではない。総力を挙げて集団の主導権を握ったリクイガスは、徐々にチームメイトの数を減らしながらゴールへ。しかしラスト2kmの時点でベンナーティの牽引役は僅かに2人。アシストを使い果たしたリクイガスは、ラスト1kmで主導権を失ってしまった。
得意の独走体勢に持ち込もうと、ファビアン・カンチェラーラ(スイス、サクソバンク)がラスト1kmでロングスパート。しかしこの動きは封じ込められ、スプリンターたちが入り乱れるカタチで最終ストレートへ。互いに牽制しあうスプリンターたち。先頭に押し出されたファラーがラスト300mで腰を上げ、ロングスプリント体勢に入った。
若干の上り勾配の最終ストレートで、スプリンターたちの力と力のぶつかり合い。先行したファラーのスプリントは、上りにも失速することなく最後まで伸び続けた。ファラーが両手を広げてゴール。グランツール初勝利を射止めた。
今年精力的にグランツールに出場したファラーは、ジロ・デ・イタリアとツール・ド・フランスでステージ2位が2回ずつ。惜しくも勝利に手が届いていなかった。しかし8月のヴァッテンフォール・サイクラシックスで優勝を飾ると、エネコ・ツアーではステージ3勝の大活躍。意気揚々とこのブエルタに挑んでいた。
初勝利を手にしたファラーは「今日は最後の上りで遅れたけど、何とかチームメイトの力を借りて集団に復帰。デーヴィッド・ミラーのおかげでいいカタチでスプリントに絡めたんだ」とコメント。最終局面ではミラーがファラーを集団先頭まで引き上げた。
「このステージ優勝で僕の目標は達成されたよ。シーズン中、ずっとグランツールでの勝利を狙い続けていたんだ。ツール・ド・フランスでは勝利に手が届かなかったけど、パリに辿り着いた時点でコンディションはバッチリだった」。ファラーは25ポイントを獲得し、ポイント賞ランキングトップのグライペルと7ポイント差の2位に浮上。ポイント賞候補に名乗りを挙げた。
ブエルタは13日目にして早くも大会最後の休息日。休息日明けの第12ステージから、怒濤の超級山岳ゴール3連戦が始まる。
選手コメントはレキップ紙より。
ブエルタ・ア・エスパーニャ2009第11ステージ結果
1位 タイラー・ファラー(アメリカ、ガーミン)5h11'10"
2位 フィリップ・ジルベール(ベルギー、サイレンス・ロット)
3位 マルコ・マルカート(イタリア、ヴァカンソレイユ)
4位 イニャキ・イサーシ(スペイン、エウスカルテル)
5位 アンドレ・グライペル(ドイツ、チームコロンビア・HTC)
6位 アレッサンドロ・バッラン(イタリア、ランプレ)
7位 エンリーコ・ガスパロット(イタリア、ランプレ)
8位 クリスティアン・クネース(ドイツ、ミルラム)
9位 オスカル・フレイレ(スペイン、ラボバンク)
10位 マッテーオ・トザット(イタリア、クイックステップ)
マイヨオロ(個人総合成績)
1位 アレハンドロ・バルベルデ(スペイン、ケースデパーニュ)45h37'51"
2位 カデル・エヴァンス(オーストラリア、サイレンス・ロット)+07"
3位 ロバート・ヘーシンク(オランダ、ラボバンク)+36"
4位 トーマス・ダニエルソン(アメリカ、ガーミン)+51"
5位 イヴァン・バッソ(イタリア、リクイガス)+53"
6位 サムエル・サンチェス(スペイン、エウスカルテル)+1'03"
7位 ダミアーノ・クネゴ(イタリア、ランプレ)+2'13"
8位 エセキエル・モスケラ(スペイン、シャコベオ・ガリシア)+2'24"
9位 アイマル・スベルディア(スペイン、アスタナ)+3'10"
10位 タディ・ヴァリャベッチ(スロベニア、アージェードゥーゼル)+3'13"
モンターニャ(山岳賞)
1位 ダヴィ・モンクティエ(フランス、コフィディス)86pts
2位 ダビ・デラフエンテ(スペイン、フジ・セルヴェット)72pts
3位 ピーター・ウェーニング(オランダ、ラボバンク)48pts
プントス(ポイント賞)
1位 アンドレ・グライペル(ドイツ、チームコロンビア・HTC)99pts
2位 タイラー・ファラー(アメリカ、ガーミン)92pts
3位 トム・ボーネン(ベルギー、クイックステップ)75pts
コンビナーダ(複合賞)
1位 カデル・エヴァンス(オーストラリア、サイレンス・ロット)18pts
2位 アレハンドロ・バルベルデ(スペイン、ケースデパーニュ)20pts
3位 ダミアーノ・クネゴ(イタリア、ランプレ)27pts
チーム総合成績
1位 ケースデパーニュ 136h55'00"
2位 アスタナ +4'32"
3位 フジ・セルヴェット +7'04"
リタイア
DNS フランク・シュレク(ルクセンブルク、サクソバンク)
DNF ジョン・ガドレ(フランス、アージェードゥーゼル)
DNF ミハエル・アルバジーニ(スイス、チームコロンビア・HTC)
text:Kei Tsuji
photo:Cor Vos, Unipublic
200kmかけてムルシア地方を駆け巡る第11ステージは、途中1級山岳コジャド・ベルメホ峠と2級山岳カンポ・デ・サンフアン峠が登場する。ゴールまで距離があったため、これらの山岳では総合争いは勃発せず、山岳に弱いスプリンターを振るい落とすためのセレクションの場となった。
春からずっと膝に故障を抱えていたフランク・シュレク(ルクセンブルク、サクソバンク)は、この日スタートせずにルクセンブルクに帰国。フランクは膝の手術を受ける予定で、実質的に今シーズンのレース活動を終えた。
レース序盤はアタックに次ぐアタックで、ようやくレースが落ち着いたのは、1級山岳コジャド・ベルメホ峠の上りが始まった39km地点。平均勾配5.3%の上りで飛び出したのは、山岳賞ジャージを競り合う2人を含む逃げだった。
メイン集団を5分引き離して1級山岳を上ったのは、山岳賞1位のダビ・デラフエンテ(スペイン、フジ・セルヴェット)と、同賞2位のダヴィ・モンクティエ(フランス、コフィディス)。これにアメツ・チュルカ(スペイン、エウスカルテル)とジョニー・フーガーランド(オランダ、ヴァカンソレイユ)を加えた計4名。
前日に手に入れた山岳賞ジャージを守りたいデラフエンテだったが、3日連続での逃げは過酷すぎた。やがてデラフエンテは先頭グループから遅れてメイン集団に吸収。1級山岳はモンクティエが先頭で通過し、一日でデラフエンテからジャージを奪い返した。
先頭の3名と、ケースデパーニュがコントロールするメイン集団とのタイム差は10分近くまで広がったが、リクイガスとラボバンクが集団コントロールを始めるとタイム差は縮小。残り100km地点で9分あったタイム差は、残り60km地点で4分に。この日最後の難所、2級山岳カンポ・デ・サンフアン峠でリクイガスが猛烈にペースを上げ始めた。
リクイガスのペースアップによって集団は分裂し、トム・ボーネン(ベルギー、クイックステップ)を始めとするスプリンターたちが脱落。何とか1分差を保って2級山岳の頂上に達したエスケープトリオは、モンクティエが先頭で通過して山岳リードを広げた。
やがてゴールまで43kmを残して先頭3名が吸収されると、カウンターアタックでレミ・ディグレゴリオ(フランス、フランセーズデジュー)が先行。しかし単独では大きなリードを奪えず、ゴールまで16kmを残して吸収。間髪入れずにリーナス・ゲルデマン(ドイツ、ミルラム)が飛び出したが、スプリンターチームの勢いの前には沈黙した。
2級山岳で遅れていたオスカル・フレイレ(スペイン、ラボバンク)やアンドレ・グライペル(ドイツ、チームコロンビア・HTC)は集団に復帰したが、ボーネンやボルト・ボジッチ(スロベニア、ヴァカンソレイユ)は遥か後方の集団。上りで絞られたスプリンターによる勝負に持ち込まれることに。
この日最も積極的に集団を牽いたのはリクイガス。レース終盤の60kmをほぼリクイガスが先頭固定で牽き続けたと言っても過言ではない。総力を挙げて集団の主導権を握ったリクイガスは、徐々にチームメイトの数を減らしながらゴールへ。しかしラスト2kmの時点でベンナーティの牽引役は僅かに2人。アシストを使い果たしたリクイガスは、ラスト1kmで主導権を失ってしまった。
得意の独走体勢に持ち込もうと、ファビアン・カンチェラーラ(スイス、サクソバンク)がラスト1kmでロングスパート。しかしこの動きは封じ込められ、スプリンターたちが入り乱れるカタチで最終ストレートへ。互いに牽制しあうスプリンターたち。先頭に押し出されたファラーがラスト300mで腰を上げ、ロングスプリント体勢に入った。
若干の上り勾配の最終ストレートで、スプリンターたちの力と力のぶつかり合い。先行したファラーのスプリントは、上りにも失速することなく最後まで伸び続けた。ファラーが両手を広げてゴール。グランツール初勝利を射止めた。
今年精力的にグランツールに出場したファラーは、ジロ・デ・イタリアとツール・ド・フランスでステージ2位が2回ずつ。惜しくも勝利に手が届いていなかった。しかし8月のヴァッテンフォール・サイクラシックスで優勝を飾ると、エネコ・ツアーではステージ3勝の大活躍。意気揚々とこのブエルタに挑んでいた。
初勝利を手にしたファラーは「今日は最後の上りで遅れたけど、何とかチームメイトの力を借りて集団に復帰。デーヴィッド・ミラーのおかげでいいカタチでスプリントに絡めたんだ」とコメント。最終局面ではミラーがファラーを集団先頭まで引き上げた。
「このステージ優勝で僕の目標は達成されたよ。シーズン中、ずっとグランツールでの勝利を狙い続けていたんだ。ツール・ド・フランスでは勝利に手が届かなかったけど、パリに辿り着いた時点でコンディションはバッチリだった」。ファラーは25ポイントを獲得し、ポイント賞ランキングトップのグライペルと7ポイント差の2位に浮上。ポイント賞候補に名乗りを挙げた。
ブエルタは13日目にして早くも大会最後の休息日。休息日明けの第12ステージから、怒濤の超級山岳ゴール3連戦が始まる。
選手コメントはレキップ紙より。
ブエルタ・ア・エスパーニャ2009第11ステージ結果
1位 タイラー・ファラー(アメリカ、ガーミン)5h11'10"
2位 フィリップ・ジルベール(ベルギー、サイレンス・ロット)
3位 マルコ・マルカート(イタリア、ヴァカンソレイユ)
4位 イニャキ・イサーシ(スペイン、エウスカルテル)
5位 アンドレ・グライペル(ドイツ、チームコロンビア・HTC)
6位 アレッサンドロ・バッラン(イタリア、ランプレ)
7位 エンリーコ・ガスパロット(イタリア、ランプレ)
8位 クリスティアン・クネース(ドイツ、ミルラム)
9位 オスカル・フレイレ(スペイン、ラボバンク)
10位 マッテーオ・トザット(イタリア、クイックステップ)
マイヨオロ(個人総合成績)
1位 アレハンドロ・バルベルデ(スペイン、ケースデパーニュ)45h37'51"
2位 カデル・エヴァンス(オーストラリア、サイレンス・ロット)+07"
3位 ロバート・ヘーシンク(オランダ、ラボバンク)+36"
4位 トーマス・ダニエルソン(アメリカ、ガーミン)+51"
5位 イヴァン・バッソ(イタリア、リクイガス)+53"
6位 サムエル・サンチェス(スペイン、エウスカルテル)+1'03"
7位 ダミアーノ・クネゴ(イタリア、ランプレ)+2'13"
8位 エセキエル・モスケラ(スペイン、シャコベオ・ガリシア)+2'24"
9位 アイマル・スベルディア(スペイン、アスタナ)+3'10"
10位 タディ・ヴァリャベッチ(スロベニア、アージェードゥーゼル)+3'13"
モンターニャ(山岳賞)
1位 ダヴィ・モンクティエ(フランス、コフィディス)86pts
2位 ダビ・デラフエンテ(スペイン、フジ・セルヴェット)72pts
3位 ピーター・ウェーニング(オランダ、ラボバンク)48pts
プントス(ポイント賞)
1位 アンドレ・グライペル(ドイツ、チームコロンビア・HTC)99pts
2位 タイラー・ファラー(アメリカ、ガーミン)92pts
3位 トム・ボーネン(ベルギー、クイックステップ)75pts
コンビナーダ(複合賞)
1位 カデル・エヴァンス(オーストラリア、サイレンス・ロット)18pts
2位 アレハンドロ・バルベルデ(スペイン、ケースデパーニュ)20pts
3位 ダミアーノ・クネゴ(イタリア、ランプレ)27pts
チーム総合成績
1位 ケースデパーニュ 136h55'00"
2位 アスタナ +4'32"
3位 フジ・セルヴェット +7'04"
リタイア
DNS フランク・シュレク(ルクセンブルク、サクソバンク)
DNF ジョン・ガドレ(フランス、アージェードゥーゼル)
DNF ミハエル・アルバジーニ(スイス、チームコロンビア・HTC)
text:Kei Tsuji
photo:Cor Vos, Unipublic
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