2009/08/30(日) - 09:32
オランダで開幕したブエルタ・ア・エスパーニャ。第1ステージはアッセンTTサーキットで行なわれ、雨の難を逃れたファビアン・カンチェラーラ(スイス、サクソバンク)がトップタイムで優勝し、初めてマイヨオロに袖を通した。
オランダのモーターサーキットを濡らした雨
スペインを飛び出し、オランダで開幕した第64回ブエルタ。新しいモノを積極的に取り入れる主催者は、モーターバイク用のTT(ツーリスト・トロフィー)サーキットでブエルタ新時代をスタートさせた。
アッセンTTサーキットは、1955年に建造された世界最古クラスのサーキットで、コース長は4.555km。モトGPやスーパーバイク世界選手権が開催されるサーキットとして、モータースポーツ界では名前が通っている。1995年には当時スーパーバイク世界選手権にフル参戦していた永井康友選手がここで事故死した。
個人タイムトライアルのコースはこの平坦サーキットを一周。スタート地点とゴール地点が数百メートル重なるため、コース全長は4.8km。距離は若干異なるが、モーターバイクによるレコードタイムは1分18秒だ。
この日、サーキットに詰めかけた観客は4万人。オランダ特有の強い風と気まぐれな天候が198名の選手たちを悩ませた。前半は晴れ時々曇りのドライなコンディション。しかしちょうどレースの折り返し地点、90番台の選手たちがスタートするころには土砂降りの大雨が降り、路面は完全なウェットコンディションになった。
好条件の中トップタイムを維持していたのはロマン・クロイツィゲル(チェコ、リクイガス)。雨の中を走ったデーヴィッド・ミラー(イギリス、ガーミン)が暫定3位に滑り込んだが、その他の選手は軒並み遅れた。
しかし、さすがは水はけの良いモータースポーツ用のサーキット。雨が止み、太陽が顔を出すと路面コンディションは回復を始め、終盤の選手たちがスタートするころにはほぼ乾ききっていた。
回復したコンディションの中、193番手スタートのカンチェラーラが他の追随を許さないトップタイムをマークし、最後までホットシートを守りきった。カンチェラーラの平均スピードは54km/h。2度目のブエルタ出場でステージ初優勝を飾った。
初めてマイヨオロに袖を通したカンチェラーラは語る。「オランダでステージ優勝してブエルタのリーダージャージに袖を通すなんてメチャクチャ嬉しいよ。初日に勝つことは、個人的にもチーム的にも大きな目標だったんだ」。
狙い通りの勝利?しかし本人は自分のコンディションに確証を得ていなかった。「ブエルタはあくまでも地元スイスで開催される世界選手権に向けての調整レースとしての位置づけだった。トップコンディションの強力なライバルたちがいたし、正直言って勝てるとは思っていなかった。でも何とかやり遂げたんだ。自分の努力に誇りをもっているよ」。
サクソバンクはシュレク兄弟が揃って30秒以上遅れたが、総合狙いのヤコブ・フグルサング(デンマーク)がステージ24位と好スタートを切っている。
ヴィノとバッソが好スタート、スプリンターが上位に
4.8kmという距離の短さから、TTスペシャリストだけでなくスプリンターも上位に絡んだ。2位に入ったのは、復調しつつあるトム・ボーネン(ベルギー、クイックステップ)。3位には好調のタイラー・ファラー(アメリカ、ガーミン)が入った。
2007年のブエルタでポイント賞を獲得したダニエーレ・ベンナーティ(イタリア、リクイガス)も5位に入り、スプリンター3名が上位に名前を連ねる結果に。翌日からの平坦ステージでは、ボーナスタイムによるマイヨオロ獲得を目指す。ボーナスタイムはステージ1位20秒、2位12秒、3位8秒だ。
ステージ4位に入ったイェンス・モーリス(オランダ、ヴァカンソレイユ)は、トラック世界選手権の団体追い抜きと個人追い抜きで銀メダルを獲得しているスピードマン。プロコンチネンタルチーム所属ながら、地元オランダ人選手最高位を手にした。オランダ人2位は24秒遅れ・30位のロバート・ヘーシンク(ラボバンク)だった。
アスタナでレースに復帰した2006年のブエルタ覇者アレクサンドル・ヴィノクロフ(カザフスタン、アスタナ)は、ブランクを感じさせない走りで7位。総合成績を狙う選手としてはトップタイムだ。
ヴィノクロフは「ゴールが近づくと脚が悲鳴を上げたよ。2年間のブランクを経て復帰後初めてのビッグレースだということを考えると、文句無しの結果だ」とコメント。アジアチャンピオンとしての脚を見せつけた。
総合狙いの選手としては、本来TTを得意としないイヴァン・バッソ(イタリア、リクイガス)が、アレハンドロ・バルベルデ(スペイン、ケースデパーニュ)やカデル・エヴァンス(オーストラリア、サイレンス・ロット)らを上回るタイムでステージ8位。初のブエルタ制覇に向けて好スタートを切ったバッソは「ジロの時と比べて精神的なストレスも少なく、身体的にもフレッシュな状態だ。総合争いはアンダルシアの山岳3連戦で決するだろう。バルベルデ、エヴァンス、サンチェス、ヘーシンクらがライバルになる」とコメントしている。
選手コメントはガゼッタ紙、サクソバンクのチーム公式サイト、ならびにアスタナのチーム公式サイトより。
ブエルタ・ア・エスパーニャ2009第1ステージ結果
1位 ファビアン・カンチェラーラ(スイス、サクソバンク)5'20"
2位 トム・ボーネン(ベルギー、クイックステップ)+09"
3位 タイラー・ファラー(アメリカ、ガーミン)+12"
4位 イェンス・モーリス(オランダ、ヴァカンソレイユ)+14"
5位 ダニエーレ・ベンナーティ(イタリア、リクイガス)+16"
6位 ロマン・クロイツィゲル(チェコ、リクイガス)+17"
7位 アレクサンドル・ヴィノクロフ(カザフスタン、アスタナ)+18"
8位 イヴァン・バッソ(イタリア、リクイガス)
9位 アレハンドロ・バルベルデ(スペイン、ケースデパーニュ)
10位 マチェイ・ボドナール(ポーランド、リクイガス)+19"
11位 ベアト・グラブシュ(ドイツ、チームコロンビア・HTC)
12位 カデル・エヴァンス(オーストラリア、サイレンス・ロット)
13位 リーナス・ゲルデマン(ドイツ、ミルラム)
14位 フィリップ・ジルベール(ベルギー、サイレンス・ロット)+21"
15位 デーヴィッド・ミラー(イギリス、ガーミン)
16位 イマノル・エルビーティ(スペイン、ケースデパーニュ)
17位 ダビド・エッレロ(スペイン、シャコベオ・ガリシア)+22"
18位 イグナタス・コノヴァロヴァス(リトアニア、サーヴェロ)
19位 ヴァシル・キリエンカ(ベラルーシ、ケースデパーニュ)
20位 マヌエル・クインツィアート(イタリア、リクイガス)
マイヨオロ(個人総合成績)
1位 ファビアン・カンチェラーラ(スイス、サクソバンク)5'20"
2位 トム・ボーネン(ベルギー、クイックステップ)+09"
3位 タイラー・ファラー(アメリカ、ガーミン)+12"
4位 イェンス・モーリス(オランダ、ヴァカンソレイユ)+14"
5位 ダニエーレ・ベンナーティ(イタリア、リクイガス)+16"
6位 ロマン・クロイツィゲル(チェコ、リクイガス)+17"
7位 アレクサンドル・ヴィノクロフ(カザフスタン、アスタナ)+18"
8位 イヴァン・バッソ(イタリア、リクイガス)
9位 アレハンドロ・バルベルデ(スペイン、ケースデパーニュ)
10位 マチェイ・ボドナール(ポーランド、リクイガス)+19"
プントス(ポイント賞)
1位 ファビアン・カンチェラーラ(スイス、サクソバンク)25pts
2位 トム・ボーネン(ベルギー、クイックステップ)20pts
3位 タイラー・ファラー(アメリカ、ガーミン)16pts
コンビナーダ(複合賞)
1位 ファビアン・カンチェラーラ(スイス、サクソバンク)2pts
2位 トム・ボーネン(ベルギー、クイックステップ)4pts
3位 タイラー・ファラー(アメリカ、ガーミン)6pts
チーム総合成績
1位 リクイガス 16'51"
2位 サクソバンク +03"
3位 ガーミン +06"
text:Kei Tsuji
photo:Cor Vos
オランダのモーターサーキットを濡らした雨
スペインを飛び出し、オランダで開幕した第64回ブエルタ。新しいモノを積極的に取り入れる主催者は、モーターバイク用のTT(ツーリスト・トロフィー)サーキットでブエルタ新時代をスタートさせた。
アッセンTTサーキットは、1955年に建造された世界最古クラスのサーキットで、コース長は4.555km。モトGPやスーパーバイク世界選手権が開催されるサーキットとして、モータースポーツ界では名前が通っている。1995年には当時スーパーバイク世界選手権にフル参戦していた永井康友選手がここで事故死した。
個人タイムトライアルのコースはこの平坦サーキットを一周。スタート地点とゴール地点が数百メートル重なるため、コース全長は4.8km。距離は若干異なるが、モーターバイクによるレコードタイムは1分18秒だ。
この日、サーキットに詰めかけた観客は4万人。オランダ特有の強い風と気まぐれな天候が198名の選手たちを悩ませた。前半は晴れ時々曇りのドライなコンディション。しかしちょうどレースの折り返し地点、90番台の選手たちがスタートするころには土砂降りの大雨が降り、路面は完全なウェットコンディションになった。
好条件の中トップタイムを維持していたのはロマン・クロイツィゲル(チェコ、リクイガス)。雨の中を走ったデーヴィッド・ミラー(イギリス、ガーミン)が暫定3位に滑り込んだが、その他の選手は軒並み遅れた。
しかし、さすがは水はけの良いモータースポーツ用のサーキット。雨が止み、太陽が顔を出すと路面コンディションは回復を始め、終盤の選手たちがスタートするころにはほぼ乾ききっていた。
回復したコンディションの中、193番手スタートのカンチェラーラが他の追随を許さないトップタイムをマークし、最後までホットシートを守りきった。カンチェラーラの平均スピードは54km/h。2度目のブエルタ出場でステージ初優勝を飾った。
初めてマイヨオロに袖を通したカンチェラーラは語る。「オランダでステージ優勝してブエルタのリーダージャージに袖を通すなんてメチャクチャ嬉しいよ。初日に勝つことは、個人的にもチーム的にも大きな目標だったんだ」。
狙い通りの勝利?しかし本人は自分のコンディションに確証を得ていなかった。「ブエルタはあくまでも地元スイスで開催される世界選手権に向けての調整レースとしての位置づけだった。トップコンディションの強力なライバルたちがいたし、正直言って勝てるとは思っていなかった。でも何とかやり遂げたんだ。自分の努力に誇りをもっているよ」。
サクソバンクはシュレク兄弟が揃って30秒以上遅れたが、総合狙いのヤコブ・フグルサング(デンマーク)がステージ24位と好スタートを切っている。
ヴィノとバッソが好スタート、スプリンターが上位に
4.8kmという距離の短さから、TTスペシャリストだけでなくスプリンターも上位に絡んだ。2位に入ったのは、復調しつつあるトム・ボーネン(ベルギー、クイックステップ)。3位には好調のタイラー・ファラー(アメリカ、ガーミン)が入った。
2007年のブエルタでポイント賞を獲得したダニエーレ・ベンナーティ(イタリア、リクイガス)も5位に入り、スプリンター3名が上位に名前を連ねる結果に。翌日からの平坦ステージでは、ボーナスタイムによるマイヨオロ獲得を目指す。ボーナスタイムはステージ1位20秒、2位12秒、3位8秒だ。
ステージ4位に入ったイェンス・モーリス(オランダ、ヴァカンソレイユ)は、トラック世界選手権の団体追い抜きと個人追い抜きで銀メダルを獲得しているスピードマン。プロコンチネンタルチーム所属ながら、地元オランダ人選手最高位を手にした。オランダ人2位は24秒遅れ・30位のロバート・ヘーシンク(ラボバンク)だった。
アスタナでレースに復帰した2006年のブエルタ覇者アレクサンドル・ヴィノクロフ(カザフスタン、アスタナ)は、ブランクを感じさせない走りで7位。総合成績を狙う選手としてはトップタイムだ。
ヴィノクロフは「ゴールが近づくと脚が悲鳴を上げたよ。2年間のブランクを経て復帰後初めてのビッグレースだということを考えると、文句無しの結果だ」とコメント。アジアチャンピオンとしての脚を見せつけた。
総合狙いの選手としては、本来TTを得意としないイヴァン・バッソ(イタリア、リクイガス)が、アレハンドロ・バルベルデ(スペイン、ケースデパーニュ)やカデル・エヴァンス(オーストラリア、サイレンス・ロット)らを上回るタイムでステージ8位。初のブエルタ制覇に向けて好スタートを切ったバッソは「ジロの時と比べて精神的なストレスも少なく、身体的にもフレッシュな状態だ。総合争いはアンダルシアの山岳3連戦で決するだろう。バルベルデ、エヴァンス、サンチェス、ヘーシンクらがライバルになる」とコメントしている。
選手コメントはガゼッタ紙、サクソバンクのチーム公式サイト、ならびにアスタナのチーム公式サイトより。
ブエルタ・ア・エスパーニャ2009第1ステージ結果
1位 ファビアン・カンチェラーラ(スイス、サクソバンク)5'20"
2位 トム・ボーネン(ベルギー、クイックステップ)+09"
3位 タイラー・ファラー(アメリカ、ガーミン)+12"
4位 イェンス・モーリス(オランダ、ヴァカンソレイユ)+14"
5位 ダニエーレ・ベンナーティ(イタリア、リクイガス)+16"
6位 ロマン・クロイツィゲル(チェコ、リクイガス)+17"
7位 アレクサンドル・ヴィノクロフ(カザフスタン、アスタナ)+18"
8位 イヴァン・バッソ(イタリア、リクイガス)
9位 アレハンドロ・バルベルデ(スペイン、ケースデパーニュ)
10位 マチェイ・ボドナール(ポーランド、リクイガス)+19"
11位 ベアト・グラブシュ(ドイツ、チームコロンビア・HTC)
12位 カデル・エヴァンス(オーストラリア、サイレンス・ロット)
13位 リーナス・ゲルデマン(ドイツ、ミルラム)
14位 フィリップ・ジルベール(ベルギー、サイレンス・ロット)+21"
15位 デーヴィッド・ミラー(イギリス、ガーミン)
16位 イマノル・エルビーティ(スペイン、ケースデパーニュ)
17位 ダビド・エッレロ(スペイン、シャコベオ・ガリシア)+22"
18位 イグナタス・コノヴァロヴァス(リトアニア、サーヴェロ)
19位 ヴァシル・キリエンカ(ベラルーシ、ケースデパーニュ)
20位 マヌエル・クインツィアート(イタリア、リクイガス)
マイヨオロ(個人総合成績)
1位 ファビアン・カンチェラーラ(スイス、サクソバンク)5'20"
2位 トム・ボーネン(ベルギー、クイックステップ)+09"
3位 タイラー・ファラー(アメリカ、ガーミン)+12"
4位 イェンス・モーリス(オランダ、ヴァカンソレイユ)+14"
5位 ダニエーレ・ベンナーティ(イタリア、リクイガス)+16"
6位 ロマン・クロイツィゲル(チェコ、リクイガス)+17"
7位 アレクサンドル・ヴィノクロフ(カザフスタン、アスタナ)+18"
8位 イヴァン・バッソ(イタリア、リクイガス)
9位 アレハンドロ・バルベルデ(スペイン、ケースデパーニュ)
10位 マチェイ・ボドナール(ポーランド、リクイガス)+19"
プントス(ポイント賞)
1位 ファビアン・カンチェラーラ(スイス、サクソバンク)25pts
2位 トム・ボーネン(ベルギー、クイックステップ)20pts
3位 タイラー・ファラー(アメリカ、ガーミン)16pts
コンビナーダ(複合賞)
1位 ファビアン・カンチェラーラ(スイス、サクソバンク)2pts
2位 トム・ボーネン(ベルギー、クイックステップ)4pts
3位 タイラー・ファラー(アメリカ、ガーミン)6pts
チーム総合成績
1位 リクイガス 16'51"
2位 サクソバンク +03"
3位 ガーミン +06"
text:Kei Tsuji
photo:Cor Vos
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