2014/07/20(日) - 23:15
MTB全日本選手権が修善寺の日本サイクルスポーツセンターで開催され、女子エリートで與那嶺恵理(サクソバンクFX証券)が圧勝し、男子U23では沢田時(ブリヂストンアンカーサイクリングチーム)が2連覇を達成。チャンピオンジャージに袖を通した。
MTBクロスカントリーの全日本チャンピオンを決めるレースの舞台となったのは、今年も修善寺の日本サイクルスポーツセンター(日本CSC)。バーム、ジャンプセクション、舗装の激坂上りなど含む1周4.25kmの周回コースはおおよそ昨年と同じレイアウトだが、ロードコースの舗装路登りが芝生に置き換えられ、再奥部のレイアウトも変更された。
雨天から一夜明けたこの日の朝、コースはそのほとんどが湿り気を帯びた状態だったが、時間の経過と共にドライ部分が増加。しかし水はけの悪い箇所では所々重たい泥が残り、一部選手のタイヤ選択を悩ませることに。11時ちょうどに男子U23が、その2分後に女子(エリート+ユース+ジュニア)カテゴリーが共に、6周回・25.5km先のゴールをめがけてスタートを切った。
女子エリートの注目は、やはり先の全日本ロードでも強さを見せた與那嶺恵理(サクソバンクFX証券)。昨年大会の降格処分の取り消しを経たゼッケンNo.0は、この日序盤から圧巻の独走劇を披露することとなる。
ホールショットこそ前日のダウンヒルで全日本選手権15連覇を決めた末政実緒(Unior Tools LITEC)が獲ったものの、1周目序盤ですぐさま與那嶺が先頭に立つ。本人も認める通りテクニック面での不利はあれど、それを全く問題としない走力ですぐさま大きなリードを稼ぎ出した。
1周目終了時点で、追いすがる末政に対しての差は42秒。3周目に入る頃にギャップは1分半まで拡大し、コーチであり、後に男子エリートで優勝する武井亨介(チーム・フォルツァ!)のアドバイスにうなずき、ハイペースを維持しながらの巡航モードでレースをこなしていく。
その後ろでは「前日の疲れが抜けきれず、特に序盤は辛かった」と苦しみながらレースを続ける末政に対して、後方からはゼッケンNo.1をつける中込由香里(team SY-Nak)が追い上げてくる。レース後半には遂に合流し熾烈な2位争いが繰り広げられ、最終周回の登りで中込がアタックを決めて先行した。
その争いのおよそ1分半先では、「下りは丁寧に、登りでタイム差を広げるというレース運びを意識していました。」とマイペースを守り切った與那嶺が、勝利の喜びを噛み締めながらゆっくりとゴールラインを通過。出迎えた武井享介と硬い握手を交わし、圧巻の独走劇を締めくくった。
もやは敵無しのパワーを見せつけた與那嶺は、「圧勝でしたが、もう少しタイム差が欲しかったというのが本音。でもどんな勝ち方でもチャンピオンという立場には凄い価値がある。本当に嬉しい勝利です。今回は楽しんで走れと言われていて、その通りにできました。」と喜びをコメント。
更に「今は6年後の東京オリンピックしか見ていません。誰に勝ちたいかではなく、6年後まで何ができるかを課題としています」と強い眼差しで自身の目標を口にした。ロード、MTB、シクロクロスとマルチに結果を出せる23歳の女子チャンピオンのこれからには、大いに期待したいところだ。
末政実緒(Unior Tools LITEC)と、中込由香里(team SY-Nak)のコメント
末政:自分の力を最大限出しきれたレースだと思います。疲れが抜けきれておらず辛い状況でしたが、最後まで諦めずに走り切ることが出来ました。序盤に抜け出したのは、スタートから前でレースを進めていくというWC出場の経験から得た走り方です。ベテランの中込選手は後半追い上げてくることがわかっていたので、出来る限り前でレースを進めていこうとしました。最後追いつかれた時は「来たか」と思いましたが、自分の実力が足りていませんでしたね。
中込:自分の力を出しきれました。トップとの差は一定だったため、最後まで頑張って踏み込みました。末政選手に攻撃を仕掛けたのは最終周の登り区間です。周回を重ねていく中で、そのポイントで差が縮まることがわかっていたので、あらかじめ決めてからのアタックでした。
與那嶺選手に対してはフィジカル的な力の差ではなく、レース経験の差で対抗しようという気持ちでレースに臨みました。力の差は仕方ありませんが、ロードレースメインの選手に負けるのはやはり悔しい。今日もたくさんの応援を頂いて、自分の好きな競技を続けられることに嬉しく思います。
男子U23では、まずスタートダッシュでディフェンディングチャンピオンの沢田時(ブリヂストンアンカーサイクリングチーム)と、タイトルの奪還を狙う中原義貴(Cannondale)、そして前田公平(TEAM SCOTT)という3強が先行を決める。
しかし「最初の激坂で脚の掛かりが良くなかった」という前田が1周目でやや遅れ、先頭は中原と沢田が僅かにタイム差を稼ぐ展開に。前田は得意の下りで挽回を図ったものの、コース再奥部のマッドセクションでミス。以降は単独での追走を強いられてしまうこととなる。
先頭パックを積極的に率いたのは、序盤からハイペースを刻み独走に持ち込む作戦に出た中原。この展開で沢田を苦しめたがリードを奪うには至らず、2人は拮抗したまま3周回を終了する。その後ろは淡々とペースを刻む前田、山田誉史輝(LITEC FACTORY RACING)、山本兆(BIKE RANCH)らがそれぞれ単独でレースを展開した。
先頭の状況が変わったのは4周目の4Xセクション。中原が毎周同じポイントでタイヤを滑らせていたことに気づいていた沢田がそれを前に先行すると、焦った中原はその場所で痛恨のスリップダウン。「狙い澄ましていた」というアタックを成功させた沢田は40秒弱のリードを持ってレース後半に駒を進めた。
「落車のタイム差は十分に詰められるものだったが、自分のリズムが狂ってしまった。」と苦しい展開になった中原だが、気迫の走りでタイムギャップの拡大を防いでいく。一方、順調に先行するかに見えた沢田には、最終周回を前にパンクのアクシデントが襲いかかった。
つぶれたリアタイヤをひきずってフィードゾーンに駆け込んだ沢田だったが、迫る中原に対して10秒差をもってリスタートに成功。ピンチを脱した沢田は再び踏み直してペースを戻し、最後は45秒のリードを稼ぎ出してフィニッシュ。ゴールラインではU23カテゴリー2連覇を決める、大きなガッツポーズが決まった。
「前半がかなりキツく、中原選手の方が力があったように思います。」と振り返る沢田。「チームのサポート体勢が完璧だったためパンクの際も落ち着いて対応できていました。狙っていた2連覇を勝ち取れて嬉しいですね」とチームに対して感謝の気持ちを忘れない。ゴール後には頬に大粒の涙がつたった。
沢田と健闘を称えあった直後にしゃがみこんだ中原は、「今年は絶対勝つ気で練習を重ねてきたのですが…。でもこれを糧に練習を積みまた活躍したい。」と悔しさを隠しきれず。3位には「昨年がダメだったので、最低限表彰台に立ちたかった。短いダッシュが続く不得意なコースですが、それは分かっていたこと。克服できる脚をつくらないといけない」と後に語る前田が滑り込んだ。
また、これら2レースの前には男子マスターズと男子ジュニア、男子ユースのレースが行われ、マスターズでは蜂須賀智也(CLT BUCYO COFFEE)が優勝。男子ユースとジュニアではProRide勢が活躍し、それぞれ小林力と平林安里が制した。また女子エリートと同時出走だったジュニアでは中島崚歩(CLUB SY-Nak)が、女子ユースでは佐藤寿美(Tema BG8)が優勝を飾っている。
フォトギャラリー
全日本MTB選手権XCO2014 結果
女子エリート(6周回25.50km)
男子U23(6周回25.50km)
男子ジュニア(5周回21.25km)
男子ユース(3周回12.75km)
男子マスターズ(5周回21.25km)
女子ジュニア(3周回12.75km)
女子ユース(3周回12.75km)
text&photo:So.Isobe
MTBクロスカントリーの全日本チャンピオンを決めるレースの舞台となったのは、今年も修善寺の日本サイクルスポーツセンター(日本CSC)。バーム、ジャンプセクション、舗装の激坂上りなど含む1周4.25kmの周回コースはおおよそ昨年と同じレイアウトだが、ロードコースの舗装路登りが芝生に置き換えられ、再奥部のレイアウトも変更された。
雨天から一夜明けたこの日の朝、コースはそのほとんどが湿り気を帯びた状態だったが、時間の経過と共にドライ部分が増加。しかし水はけの悪い箇所では所々重たい泥が残り、一部選手のタイヤ選択を悩ませることに。11時ちょうどに男子U23が、その2分後に女子(エリート+ユース+ジュニア)カテゴリーが共に、6周回・25.5km先のゴールをめがけてスタートを切った。
女子エリートの注目は、やはり先の全日本ロードでも強さを見せた與那嶺恵理(サクソバンクFX証券)。昨年大会の降格処分の取り消しを経たゼッケンNo.0は、この日序盤から圧巻の独走劇を披露することとなる。
ホールショットこそ前日のダウンヒルで全日本選手権15連覇を決めた末政実緒(Unior Tools LITEC)が獲ったものの、1周目序盤ですぐさま與那嶺が先頭に立つ。本人も認める通りテクニック面での不利はあれど、それを全く問題としない走力ですぐさま大きなリードを稼ぎ出した。
1周目終了時点で、追いすがる末政に対しての差は42秒。3周目に入る頃にギャップは1分半まで拡大し、コーチであり、後に男子エリートで優勝する武井亨介(チーム・フォルツァ!)のアドバイスにうなずき、ハイペースを維持しながらの巡航モードでレースをこなしていく。
その後ろでは「前日の疲れが抜けきれず、特に序盤は辛かった」と苦しみながらレースを続ける末政に対して、後方からはゼッケンNo.1をつける中込由香里(team SY-Nak)が追い上げてくる。レース後半には遂に合流し熾烈な2位争いが繰り広げられ、最終周回の登りで中込がアタックを決めて先行した。
その争いのおよそ1分半先では、「下りは丁寧に、登りでタイム差を広げるというレース運びを意識していました。」とマイペースを守り切った與那嶺が、勝利の喜びを噛み締めながらゆっくりとゴールラインを通過。出迎えた武井享介と硬い握手を交わし、圧巻の独走劇を締めくくった。
もやは敵無しのパワーを見せつけた與那嶺は、「圧勝でしたが、もう少しタイム差が欲しかったというのが本音。でもどんな勝ち方でもチャンピオンという立場には凄い価値がある。本当に嬉しい勝利です。今回は楽しんで走れと言われていて、その通りにできました。」と喜びをコメント。
更に「今は6年後の東京オリンピックしか見ていません。誰に勝ちたいかではなく、6年後まで何ができるかを課題としています」と強い眼差しで自身の目標を口にした。ロード、MTB、シクロクロスとマルチに結果を出せる23歳の女子チャンピオンのこれからには、大いに期待したいところだ。
末政実緒(Unior Tools LITEC)と、中込由香里(team SY-Nak)のコメント
末政:自分の力を最大限出しきれたレースだと思います。疲れが抜けきれておらず辛い状況でしたが、最後まで諦めずに走り切ることが出来ました。序盤に抜け出したのは、スタートから前でレースを進めていくというWC出場の経験から得た走り方です。ベテランの中込選手は後半追い上げてくることがわかっていたので、出来る限り前でレースを進めていこうとしました。最後追いつかれた時は「来たか」と思いましたが、自分の実力が足りていませんでしたね。
中込:自分の力を出しきれました。トップとの差は一定だったため、最後まで頑張って踏み込みました。末政選手に攻撃を仕掛けたのは最終周の登り区間です。周回を重ねていく中で、そのポイントで差が縮まることがわかっていたので、あらかじめ決めてからのアタックでした。
與那嶺選手に対してはフィジカル的な力の差ではなく、レース経験の差で対抗しようという気持ちでレースに臨みました。力の差は仕方ありませんが、ロードレースメインの選手に負けるのはやはり悔しい。今日もたくさんの応援を頂いて、自分の好きな競技を続けられることに嬉しく思います。
男子U23では、まずスタートダッシュでディフェンディングチャンピオンの沢田時(ブリヂストンアンカーサイクリングチーム)と、タイトルの奪還を狙う中原義貴(Cannondale)、そして前田公平(TEAM SCOTT)という3強が先行を決める。
しかし「最初の激坂で脚の掛かりが良くなかった」という前田が1周目でやや遅れ、先頭は中原と沢田が僅かにタイム差を稼ぐ展開に。前田は得意の下りで挽回を図ったものの、コース再奥部のマッドセクションでミス。以降は単独での追走を強いられてしまうこととなる。
先頭パックを積極的に率いたのは、序盤からハイペースを刻み独走に持ち込む作戦に出た中原。この展開で沢田を苦しめたがリードを奪うには至らず、2人は拮抗したまま3周回を終了する。その後ろは淡々とペースを刻む前田、山田誉史輝(LITEC FACTORY RACING)、山本兆(BIKE RANCH)らがそれぞれ単独でレースを展開した。
先頭の状況が変わったのは4周目の4Xセクション。中原が毎周同じポイントでタイヤを滑らせていたことに気づいていた沢田がそれを前に先行すると、焦った中原はその場所で痛恨のスリップダウン。「狙い澄ましていた」というアタックを成功させた沢田は40秒弱のリードを持ってレース後半に駒を進めた。
「落車のタイム差は十分に詰められるものだったが、自分のリズムが狂ってしまった。」と苦しい展開になった中原だが、気迫の走りでタイムギャップの拡大を防いでいく。一方、順調に先行するかに見えた沢田には、最終周回を前にパンクのアクシデントが襲いかかった。
つぶれたリアタイヤをひきずってフィードゾーンに駆け込んだ沢田だったが、迫る中原に対して10秒差をもってリスタートに成功。ピンチを脱した沢田は再び踏み直してペースを戻し、最後は45秒のリードを稼ぎ出してフィニッシュ。ゴールラインではU23カテゴリー2連覇を決める、大きなガッツポーズが決まった。
「前半がかなりキツく、中原選手の方が力があったように思います。」と振り返る沢田。「チームのサポート体勢が完璧だったためパンクの際も落ち着いて対応できていました。狙っていた2連覇を勝ち取れて嬉しいですね」とチームに対して感謝の気持ちを忘れない。ゴール後には頬に大粒の涙がつたった。
沢田と健闘を称えあった直後にしゃがみこんだ中原は、「今年は絶対勝つ気で練習を重ねてきたのですが…。でもこれを糧に練習を積みまた活躍したい。」と悔しさを隠しきれず。3位には「昨年がダメだったので、最低限表彰台に立ちたかった。短いダッシュが続く不得意なコースですが、それは分かっていたこと。克服できる脚をつくらないといけない」と後に語る前田が滑り込んだ。
また、これら2レースの前には男子マスターズと男子ジュニア、男子ユースのレースが行われ、マスターズでは蜂須賀智也(CLT BUCYO COFFEE)が優勝。男子ユースとジュニアではProRide勢が活躍し、それぞれ小林力と平林安里が制した。また女子エリートと同時出走だったジュニアでは中島崚歩(CLUB SY-Nak)が、女子ユースでは佐藤寿美(Tema BG8)が優勝を飾っている。
フォトギャラリー
全日本MTB選手権XCO2014 結果
女子エリート(6周回25.50km)
1位 與那嶺恵理(サクソバンクFX証券)
2位 中込由香里(team SY-Nak)
3位 末政実緒(Unior Tools LITEC)
4位 小林可奈子(AZUMINO FOX MASSI)
5位 ケリー美枝子
2位 中込由香里(team SY-Nak)
3位 末政実緒(Unior Tools LITEC)
4位 小林可奈子(AZUMINO FOX MASSI)
5位 ケリー美枝子
1h33'44"
+1'29"
+2'06"
+2'15"
+5'30"
+1'29"
+2'06"
+2'15"
+5'30"
男子U23(6周回25.50km)
1位 沢田時(ブリヂストンアンカーサイクリングチーム)
2位 中原義貴(Cannondale)
3位 前田公平(TEAM SCOTT)
4位 山田誉史輝(LITEC FACTORY RACING)
5位 山本兆(BIKE RANCH)
6位 竹本颯太(Team BSC K&b)
2位 中原義貴(Cannondale)
3位 前田公平(TEAM SCOTT)
4位 山田誉史輝(LITEC FACTORY RACING)
5位 山本兆(BIKE RANCH)
6位 竹本颯太(Team BSC K&b)
1h19'01"
+45"
+3'00"
+4'42"
+5'41"
+9'26"
+45"
+3'00"
+4'42"
+5'41"
+9'26"
男子ジュニア(5周回21.25km)
1位 平林安里(WESTBERG ProRide)
2位 山田将輝(Limited846 DIRT FREAK)
3位 竹内遼(WESTBERG ProRide)
2位 山田将輝(Limited846 DIRT FREAK)
3位 竹内遼(WESTBERG ProRide)
1h08'23"
+57"
+1'41"
+57"
+1'41"
男子ユース(3周回12.75km)
1位 小林力(WESTBERG ProRide)
2位 黒瀬文也(teamBG8 滝川西高校)
3位 穴田玖舟(Team BG8 滝川西高校)
2位 黒瀬文也(teamBG8 滝川西高校)
3位 穴田玖舟(Team BG8 滝川西高校)
43m13"
+31"
+2'00"
+31"
+2'00"
男子マスターズ(5周回21.25km)
1位 蜂須賀智也(CLT BUCYO COFFEE)
2位 北島篤志(ckirin.com)
3位 山根一貴(ナカザワジム)
2位 北島篤志(ckirin.com)
3位 山根一貴(ナカザワジム)
1h12'03"
+25"
+33"
+25"
+33"
女子ジュニア(3周回12.75km)
1位 中島崚歩(CLUB SY-Nak)
2位 寺田有希(Ready Go JAPAN)
2位 寺田有希(Ready Go JAPAN)
49m53"
+1'27"
+1'27"
女子ユース(3周回12.75km)
1位 佐藤寿美(Tema BG8)
2位 山田夕貴(Team BG8 )
3位 松本璃奈(Mashun MTB racing)
2位 山田夕貴(Team BG8 )
3位 松本璃奈(Mashun MTB racing)
50m37"
+9'54"
+17'45"
+9'54"
+17'45"
text&photo:So.Isobe
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