2014/07/17(木) - 13:56
ツール・ド・フランス前半戦を盛り上げた立役者トニー・ギャロパン(フランス、ロット・ベリソル)が優勝を飾った第11ステージ。初の栄光を掴んだギャロパンの他、暑い一日を乗り切った選手たちのコメントを紹介。
ステージ初優勝を飾ったトニー・ギャロパン(フランス、ロット・ベリソル)
生まれ変わったのかって?いや、そうは思わない。昨年クラシカ・サンセバスティアンで勝った時のように、早めにアタックする戦法を取るべきと分かっていた。でもここまでサガンのような選手をマークするあまり、5位や6位といった結果が多かった。トップライダーと比べて自分は劣っているという劣等感があったんだ。
最後のアタックは予定してしなかった。ここからそう遠くないレ・ルスで父親とフィアンセと一緒にトレーニングキャンプをしたことがあって、その時に今日のコースのほとんどをチェックしていたんだ。でも最後の5kmは走っていなかったので、調子も良かったし、チームカーの監督に頼んで走りながらコースマップをチェック。パンチャーの闘いになると思った。20〜30人の集団スプリントには持ち込みたくなかったからカテゴリーの付いていない小さな登りでアタック。以前走った時にその登りを発見していたんだ。
3人(ロジャース、サガン、クヴィアトコウスキー)が追いついてきた時、スプリントでは勝ち目がないと思った。だから何としても独走に持ち込む必要があった。マイヨジョーヌ獲得とステージ優勝はまた違った感覚。マイヨジョーヌを獲得した日は残り5kmからそのことを考えていたから、心の準備は出来ていた。今日は最後の最後まで成功を確信出来なかった。その分、喜びは大きかったよ。チームカーから「行け!」「振り向くな!」という指示が出ていたけど、残り100mで振り返った。そこで勝利を確信した。
ツール・ド・フランスでの自分のパフォーマンスについて驚いていない。「今回はエースのアシストだが、チャンスがあればステージ優勝を狙ってほしい」と開幕前から監督に告げられていた。いつもビッグネームの後ろに隠れがちだったけど、安定性が持ち味だと思っているし、そこから一歩抜け出したかった。夢が叶ったよ。この数日は感情の嵐だ。マイヨジョーヌを獲得したときは月にも登る気分だったけど、翌日はバイクの上で悪夢を見た。そして今こうしてステージ優勝に輝いている。インクレディブルだ。
ステージ2位のジョン・デゲンコルブ(ドイツ、ジャイアント・シマノ)
今日は惜しかった。あともう一歩だった。今日こそが自分のチャンスだと思っていたんだ。勇敢に勝利をもぎ取ったトニー・ギャロパンを祝福したいと思う。この1週間は今までのキャリアの中で一番苦しいものだった。第5ステージで負った怪我の痛みが無くなってきたことは朗報だ。明日のステージでもスプリント勝利を狙いたい。今日のステージ2位で自信が戻ってきた。
再びステージ優勝のチャンスを逃したペーター・サガン(スロバキア、キャノンデール)
今日は勝ちパターンに持ち込んだはずなのに勝てなかった。クヴィアトコウスキーとギャロパン、ロジャースと一緒に先行した時、当然スプリントでは僕に勝機が有るので、誰も協力してくれなかった。まずロジャースがアタックして、続いてクヴィアトコウスキー。全員のアタックに反応するのは無理な話だ。
ガールフレンドの誕生日に勝ちたかったけど、マイヨヴェールと花束があるから許してほしい。自信をもってこれからも闘う。もう2位はうんざりだけど、みんな僕をマークするからレース運びは難しい。
敢闘賞を獲得したニコラス・ロッシュ(アイルランド、ティンコフ・サクソ)
アルベルト(コンタドール)のリタイアがチームに大きな穴をあけた。チームが共有する夢が断たれてしまった。でもまだチームには力が残されている。新しい風を吹き込むメンタリティを共有しながら、ステージ優勝を狙っていく。これからも攻撃は続けるけど、毎日当てずっぽうに無駄なアタックを繰り返すわけじゃない。そんなステージの特性と選手の脚質を見極めながら戦略を練っている。
今日のステージの難易度は予想以上で、勾配のある登りが多かった。自分とマイケル・ロジャース向きのステージだったけど、結果的にダニエーレ・ベンナーティが集団に残ってスプリントに絡んだ。当初の夢は消え去ったけど、チームは存在感を示しながら闘いを続けるよ。
マイヨジョーヌを着て安全に走り切ったヴィンチェンツォ・ニーバリ(イタリア、アスタナ)
暑い一日だった。寒い日々とは対局のエクストリームなコンディションだったけど、シチリア生まれなので暑さは得意なんだ。これまでのキャリアで様々な気象条件を経験している。でもタランスキーのように気象条件の変化で失速するなんてことは誰にでも起こり得る。落車のリスクも同様で、今日はミケーレ・スカルポーニが落車。他の選手に衝突されて落車したみたいだけど、彼は抗議なんて無駄なエネルギーを使うことなくレースに復帰した。
今日もチームはうまく機能していた。過去の経験から、ツールでは毎日何が起こるか分からない。だからチームとして細心の注意を払わないといけない。今日はガーミンがペースアップして、キャノンデールやオリカもギャロパンを追うためにハイペースを刻んだ。ナーバスな状態が続いたけど、何も問題は無かった。
マイヨアポワを着続けるホアキン・ロドリゲス(スペイン、カチューシャ)
休息日明けのステージは苦手で、今日はペースも速かった。平穏な一日を予想していたけど、山岳でのガーミンのペースアップでレースは一変。ハードな一日だった。でも太陽が戻ってきたことを嬉しく思う。今日のようなアップダウンコースではなく、自分向きの山岳コースに集中している。金曜日と土曜日に備えて体力を温存しているんだ。アルプス山岳でステージ優勝を狙いたい。
苦しみながらも完走したアンドリュー・タランスキー(アメリカ、ガーミン・シャープ)
背中が酷く痛んだが、チームのために走り続けたかった。信頼してくれているチームメイトやスタッフのために闘い続けた。これまでサポートしてくれた彼らのために、止まるわけにはいかなかったんだ。
ガーミン・シャープのシャールズ・ウェゲリュース監督
アンドリューにとって想像以上に厳しい一日となった。彼がこの一日を乗り切ったことを誇らしく思う。彼は諦めることを拒んだ。サイクリストらしい、アンドリューらしい判断だった。2日間で2度の落車が彼の野望を砕いた。総合成績を狙える存在だっただけに残念だ。
text:Kei Tsuji
ステージ初優勝を飾ったトニー・ギャロパン(フランス、ロット・ベリソル)
生まれ変わったのかって?いや、そうは思わない。昨年クラシカ・サンセバスティアンで勝った時のように、早めにアタックする戦法を取るべきと分かっていた。でもここまでサガンのような選手をマークするあまり、5位や6位といった結果が多かった。トップライダーと比べて自分は劣っているという劣等感があったんだ。
最後のアタックは予定してしなかった。ここからそう遠くないレ・ルスで父親とフィアンセと一緒にトレーニングキャンプをしたことがあって、その時に今日のコースのほとんどをチェックしていたんだ。でも最後の5kmは走っていなかったので、調子も良かったし、チームカーの監督に頼んで走りながらコースマップをチェック。パンチャーの闘いになると思った。20〜30人の集団スプリントには持ち込みたくなかったからカテゴリーの付いていない小さな登りでアタック。以前走った時にその登りを発見していたんだ。
3人(ロジャース、サガン、クヴィアトコウスキー)が追いついてきた時、スプリントでは勝ち目がないと思った。だから何としても独走に持ち込む必要があった。マイヨジョーヌ獲得とステージ優勝はまた違った感覚。マイヨジョーヌを獲得した日は残り5kmからそのことを考えていたから、心の準備は出来ていた。今日は最後の最後まで成功を確信出来なかった。その分、喜びは大きかったよ。チームカーから「行け!」「振り向くな!」という指示が出ていたけど、残り100mで振り返った。そこで勝利を確信した。
ツール・ド・フランスでの自分のパフォーマンスについて驚いていない。「今回はエースのアシストだが、チャンスがあればステージ優勝を狙ってほしい」と開幕前から監督に告げられていた。いつもビッグネームの後ろに隠れがちだったけど、安定性が持ち味だと思っているし、そこから一歩抜け出したかった。夢が叶ったよ。この数日は感情の嵐だ。マイヨジョーヌを獲得したときは月にも登る気分だったけど、翌日はバイクの上で悪夢を見た。そして今こうしてステージ優勝に輝いている。インクレディブルだ。
ステージ2位のジョン・デゲンコルブ(ドイツ、ジャイアント・シマノ)
今日は惜しかった。あともう一歩だった。今日こそが自分のチャンスだと思っていたんだ。勇敢に勝利をもぎ取ったトニー・ギャロパンを祝福したいと思う。この1週間は今までのキャリアの中で一番苦しいものだった。第5ステージで負った怪我の痛みが無くなってきたことは朗報だ。明日のステージでもスプリント勝利を狙いたい。今日のステージ2位で自信が戻ってきた。
再びステージ優勝のチャンスを逃したペーター・サガン(スロバキア、キャノンデール)
今日は勝ちパターンに持ち込んだはずなのに勝てなかった。クヴィアトコウスキーとギャロパン、ロジャースと一緒に先行した時、当然スプリントでは僕に勝機が有るので、誰も協力してくれなかった。まずロジャースがアタックして、続いてクヴィアトコウスキー。全員のアタックに反応するのは無理な話だ。
ガールフレンドの誕生日に勝ちたかったけど、マイヨヴェールと花束があるから許してほしい。自信をもってこれからも闘う。もう2位はうんざりだけど、みんな僕をマークするからレース運びは難しい。
敢闘賞を獲得したニコラス・ロッシュ(アイルランド、ティンコフ・サクソ)
アルベルト(コンタドール)のリタイアがチームに大きな穴をあけた。チームが共有する夢が断たれてしまった。でもまだチームには力が残されている。新しい風を吹き込むメンタリティを共有しながら、ステージ優勝を狙っていく。これからも攻撃は続けるけど、毎日当てずっぽうに無駄なアタックを繰り返すわけじゃない。そんなステージの特性と選手の脚質を見極めながら戦略を練っている。
今日のステージの難易度は予想以上で、勾配のある登りが多かった。自分とマイケル・ロジャース向きのステージだったけど、結果的にダニエーレ・ベンナーティが集団に残ってスプリントに絡んだ。当初の夢は消え去ったけど、チームは存在感を示しながら闘いを続けるよ。
マイヨジョーヌを着て安全に走り切ったヴィンチェンツォ・ニーバリ(イタリア、アスタナ)
暑い一日だった。寒い日々とは対局のエクストリームなコンディションだったけど、シチリア生まれなので暑さは得意なんだ。これまでのキャリアで様々な気象条件を経験している。でもタランスキーのように気象条件の変化で失速するなんてことは誰にでも起こり得る。落車のリスクも同様で、今日はミケーレ・スカルポーニが落車。他の選手に衝突されて落車したみたいだけど、彼は抗議なんて無駄なエネルギーを使うことなくレースに復帰した。
今日もチームはうまく機能していた。過去の経験から、ツールでは毎日何が起こるか分からない。だからチームとして細心の注意を払わないといけない。今日はガーミンがペースアップして、キャノンデールやオリカもギャロパンを追うためにハイペースを刻んだ。ナーバスな状態が続いたけど、何も問題は無かった。
マイヨアポワを着続けるホアキン・ロドリゲス(スペイン、カチューシャ)
休息日明けのステージは苦手で、今日はペースも速かった。平穏な一日を予想していたけど、山岳でのガーミンのペースアップでレースは一変。ハードな一日だった。でも太陽が戻ってきたことを嬉しく思う。今日のようなアップダウンコースではなく、自分向きの山岳コースに集中している。金曜日と土曜日に備えて体力を温存しているんだ。アルプス山岳でステージ優勝を狙いたい。
苦しみながらも完走したアンドリュー・タランスキー(アメリカ、ガーミン・シャープ)
背中が酷く痛んだが、チームのために走り続けたかった。信頼してくれているチームメイトやスタッフのために闘い続けた。これまでサポートしてくれた彼らのために、止まるわけにはいかなかったんだ。
ガーミン・シャープのシャールズ・ウェゲリュース監督
アンドリューにとって想像以上に厳しい一日となった。彼がこの一日を乗り切ったことを誇らしく思う。彼は諦めることを拒んだ。サイクリストらしい、アンドリューらしい判断だった。2日間で2度の落車が彼の野望を砕いた。総合成績を狙える存在だっただけに残念だ。
text:Kei Tsuji
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