2014/07/09(水) - 09:41
フランスに帰ったツール第4ステージで、またしてもマルセル・キッテルがスプリント勝利。アシストを失いながらも自力でロングスプリントを仕掛け、先行したアレクサンダー・クリストフを撃ち落とした。また序盤にはクリス・フルームが落車したもの、大事には至っていない。
熱狂に包まれたイギリスでの3日間を終え、ツールはドーバー海峡を渡りフランスへ。移動日は設定されなかったものの、例えば今年のジロ・デ・イタリアのような長時間移動は要さないため、選手達は第3ステージ終了後すぐに海を超え、第4ステージのスタート地点であるルテュケ・パリプラージュの街に入った。
この日のコースは序盤と中盤に2つのカテゴリー4級山岳を含むものの、ほぼ真っ平らと言っていい163.5kmのコース。英仏海峡を望むオパール海岸の保養地・ルテュケから内陸部に入り、ベルギーとの国境をかすめながら(一瞬だけベルギーに入る)パリ〜ルーベでもお馴染みの街・リールへと到達する。
また、第3ステージで落車し「ウォーミングアップのためにローラー台に乗ったが痛みがひどすぎた。スタートの瞬間まで我慢してみたけれど、無視できないほどの痛みだった。皆を失望させてしまって悲しい」と語るアンディ・シュレク(ルクセンブルク、トレックファクトリーレーシング)が出走直前にDNSを決定。チームドクターは「膝のMRI検査を受け、その結果で必要ならば治療の方法を決めていく。出走は絶対に良くなかった」と語っている。
コース設定から平穏な一日になるかと思いきや、この日は落車が頻発。北フランス名物の横風を利用した各チームの動きも加わったことで慌ただしい展開となった。
アタックの末にエスケープを決めたのは、ユーロップカーのキャプテンを務めるトマ・ヴォクレール(フランス)。これにルイスアンヘル・マテマルドネス(スペイン、コフィディス)が追従すると、集団はこの2名を見送ってペースを落とした。
しかしその集団内では、はすった選手のあおりを食らったクリス・フルーム(イギリス、チームスカイ)が、バウク・モレマ(オランダ、ベルキン)と一緒に落車。速度が遅かったため大事には至らなかったが、フルームは擦過傷と手首を打撲し、パヴェステージを前に受難の一日となってしまう。
熱狂を帯びたイギリスを終え、プロトンは「普段通り」のツールを走る。ヴォクレールとマテマルドネスは快調にタイム差を拡大したが、この日の最大タイム差は3分20秒あまり。集団では93km地点にある中間スプリントを巡ってブライアン・コカール(フランス、ユーロップカー)とペーター・サガン(スロバキア、キャノンデール)が争い、サガンが先着。
すると勢いそのままにキャノンデールが横風区間でペースアップし、この動きにロット・ベリソルも同調する。これによって集団は2つに割れ、後方にはミカル・クヴィアトコウスキー(ポーランド、オメガファーマ・クイックステップ)やアルノー・デマール(フランス、FDJ.fr)が取り残されたが、暫くの追走の後に集団は一つに戻った。
この展開でタイム差を縮められた先頭グループからは、パンクでマテマルドネスが脱落。追いかけるメイン集団はアンドレ・グライペル(ドイツ)を勝たせたいロット・ベリソルが牽引を開始したものの、濡れたロータリーで3名(ヘンダーソン、デクレルク、バク)が同時落車。これによってヘンダーソンがリタイアを喫し、ロットはスプリント戦力を大幅に失ってしまう。
単独で粘ったヴォクレールは残り16km地点で吸収され、いよいよスプリンターチームが主導権争いを開始。濡れたコーナーや中央分離帯が連続し、道幅が絶えず変化する市街地を高速で駆け抜けた。
ティンコフ・サクソとガーミン・シャープが互いに列車を並べあって争うも、その均衡はTT世界王者トニ・マルティン(ドイツ、オメガファーマ・クイックステップ)の牽きによって崩される。オメガファーマがチームTT状態で作るハイペースに集団は長く引き延ばされ、アシストを失ったグライペルは後方に埋もれてしまった。
しかし、大本命キッテルを連れたジャイアント・シマノも残り2kmから上がってくる。しかし各チームが入り乱れて最終コーナーをクリアした先、絶好の体勢に持ちこんだのはロシアチャンピオンのアレクサンドル・ポルセフに連れられたアレクサンダー・クリストフ(ノルウェー)。キッテルを若干引き離し、スプリントが始まった。
1車身ほどのリードを持ったクリストフだったが、後方からキッテルとデマールが猛烈な勢いで追い上げてくる。横一線の接戦の末、勝利したのはキッテル。昨日に続く2連勝、第4ステージにして3勝目をマークした。
トレインから発射された第3ステージとは違い、自力で勝利をもぎとったキッテル。「残り30kmあたりからはとてもハイペースで、非常にまとまって走るのが難しかった。最終コーナーのことばかり考えていて、事前に予習もしていた。ロングスプリントになったけれど、上手く挽回できたよ」と語った。
また、落車したフルームや、マイヨジョーヌのヴィンチェンツォ・ニーバリ(イタリア、アスタナ)ら総合陣は問題無く集団内でゴール。新城幸也(ユーロップカー)は55秒遅れの128位でフィニッシュしている。
ツール・ド・フランス2014第4ステージ結果
1位 マルセル・キッテル(ドイツ、ジャイアント・シマノ) 3h36'39"
2位 アレクサンダー・クリストフ(ノルウェー、カチューシャ)
3位 アルノー・デマール(フランス、FDJ.fr)
4位 ペーター・サガン(スロバキア、キャノンデール)
5位 ブライアン・コカール(フランス、ユーロップカー)
6位 アンドレ・グライペル(ドイツ、ロット・ベリソル)
7位 マーク・レンショー(オーストラリア、オメガファーマ・クイックステップ)
8位 ダニー・ヴァンポッペル(オランダ、トレックファクトリーレーシング)
9位 ダヴィデ・チモライ(イタリア、ランプレ・メリダ)
10位 ダニエル・オス(イタリア、BMCレーシング)
128位 新城幸也(日本、ユーロップカー) +55"
マイヨジョーヌ(個人総合成績)
マイヨヴェール(ポイント賞)
マイヨアポワ(山岳賞)
マイヨブラン(新人賞)
チーム総合成績
ステージ敢闘賞
トマ・ヴォクレール(フランス、ユーロップカー)
text:So.Isobe
photo:Kei Tsuji, Makoto Ayano, Tim de Waele
熱狂に包まれたイギリスでの3日間を終え、ツールはドーバー海峡を渡りフランスへ。移動日は設定されなかったものの、例えば今年のジロ・デ・イタリアのような長時間移動は要さないため、選手達は第3ステージ終了後すぐに海を超え、第4ステージのスタート地点であるルテュケ・パリプラージュの街に入った。
この日のコースは序盤と中盤に2つのカテゴリー4級山岳を含むものの、ほぼ真っ平らと言っていい163.5kmのコース。英仏海峡を望むオパール海岸の保養地・ルテュケから内陸部に入り、ベルギーとの国境をかすめながら(一瞬だけベルギーに入る)パリ〜ルーベでもお馴染みの街・リールへと到達する。
また、第3ステージで落車し「ウォーミングアップのためにローラー台に乗ったが痛みがひどすぎた。スタートの瞬間まで我慢してみたけれど、無視できないほどの痛みだった。皆を失望させてしまって悲しい」と語るアンディ・シュレク(ルクセンブルク、トレックファクトリーレーシング)が出走直前にDNSを決定。チームドクターは「膝のMRI検査を受け、その結果で必要ならば治療の方法を決めていく。出走は絶対に良くなかった」と語っている。
コース設定から平穏な一日になるかと思いきや、この日は落車が頻発。北フランス名物の横風を利用した各チームの動きも加わったことで慌ただしい展開となった。
アタックの末にエスケープを決めたのは、ユーロップカーのキャプテンを務めるトマ・ヴォクレール(フランス)。これにルイスアンヘル・マテマルドネス(スペイン、コフィディス)が追従すると、集団はこの2名を見送ってペースを落とした。
しかしその集団内では、はすった選手のあおりを食らったクリス・フルーム(イギリス、チームスカイ)が、バウク・モレマ(オランダ、ベルキン)と一緒に落車。速度が遅かったため大事には至らなかったが、フルームは擦過傷と手首を打撲し、パヴェステージを前に受難の一日となってしまう。
熱狂を帯びたイギリスを終え、プロトンは「普段通り」のツールを走る。ヴォクレールとマテマルドネスは快調にタイム差を拡大したが、この日の最大タイム差は3分20秒あまり。集団では93km地点にある中間スプリントを巡ってブライアン・コカール(フランス、ユーロップカー)とペーター・サガン(スロバキア、キャノンデール)が争い、サガンが先着。
すると勢いそのままにキャノンデールが横風区間でペースアップし、この動きにロット・ベリソルも同調する。これによって集団は2つに割れ、後方にはミカル・クヴィアトコウスキー(ポーランド、オメガファーマ・クイックステップ)やアルノー・デマール(フランス、FDJ.fr)が取り残されたが、暫くの追走の後に集団は一つに戻った。
この展開でタイム差を縮められた先頭グループからは、パンクでマテマルドネスが脱落。追いかけるメイン集団はアンドレ・グライペル(ドイツ)を勝たせたいロット・ベリソルが牽引を開始したものの、濡れたロータリーで3名(ヘンダーソン、デクレルク、バク)が同時落車。これによってヘンダーソンがリタイアを喫し、ロットはスプリント戦力を大幅に失ってしまう。
単独で粘ったヴォクレールは残り16km地点で吸収され、いよいよスプリンターチームが主導権争いを開始。濡れたコーナーや中央分離帯が連続し、道幅が絶えず変化する市街地を高速で駆け抜けた。
ティンコフ・サクソとガーミン・シャープが互いに列車を並べあって争うも、その均衡はTT世界王者トニ・マルティン(ドイツ、オメガファーマ・クイックステップ)の牽きによって崩される。オメガファーマがチームTT状態で作るハイペースに集団は長く引き延ばされ、アシストを失ったグライペルは後方に埋もれてしまった。
しかし、大本命キッテルを連れたジャイアント・シマノも残り2kmから上がってくる。しかし各チームが入り乱れて最終コーナーをクリアした先、絶好の体勢に持ちこんだのはロシアチャンピオンのアレクサンドル・ポルセフに連れられたアレクサンダー・クリストフ(ノルウェー)。キッテルを若干引き離し、スプリントが始まった。
1車身ほどのリードを持ったクリストフだったが、後方からキッテルとデマールが猛烈な勢いで追い上げてくる。横一線の接戦の末、勝利したのはキッテル。昨日に続く2連勝、第4ステージにして3勝目をマークした。
トレインから発射された第3ステージとは違い、自力で勝利をもぎとったキッテル。「残り30kmあたりからはとてもハイペースで、非常にまとまって走るのが難しかった。最終コーナーのことばかり考えていて、事前に予習もしていた。ロングスプリントになったけれど、上手く挽回できたよ」と語った。
また、落車したフルームや、マイヨジョーヌのヴィンチェンツォ・ニーバリ(イタリア、アスタナ)ら総合陣は問題無く集団内でゴール。新城幸也(ユーロップカー)は55秒遅れの128位でフィニッシュしている。
ツール・ド・フランス2014第4ステージ結果
1位 マルセル・キッテル(ドイツ、ジャイアント・シマノ) 3h36'39"
2位 アレクサンダー・クリストフ(ノルウェー、カチューシャ)
3位 アルノー・デマール(フランス、FDJ.fr)
4位 ペーター・サガン(スロバキア、キャノンデール)
5位 ブライアン・コカール(フランス、ユーロップカー)
6位 アンドレ・グライペル(ドイツ、ロット・ベリソル)
7位 マーク・レンショー(オーストラリア、オメガファーマ・クイックステップ)
8位 ダニー・ヴァンポッペル(オランダ、トレックファクトリーレーシング)
9位 ダヴィデ・チモライ(イタリア、ランプレ・メリダ)
10位 ダニエル・オス(イタリア、BMCレーシング)
128位 新城幸也(日本、ユーロップカー) +55"
マイヨジョーヌ(個人総合成績)
1位 ヴィンチェンツォ・ニーバリ(イタリア、アスタナ)
2位 ペーター・サガン(スロバキア、キャノンデール)
3位 ミハエル・アルバジーニ(スイス、オリカ・グリーンエッジ)
4位 フレフ・ファンアフェルマート(ベルギー、BMCレーシング)
5位 アルベルト・コンタドール(スペイン、ティンコフ・サクソ)
6位 アレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター)
7位 クリス・フルーム(イギリス、チームスカイ)
8位 ユルゲン・ファンデンブロック(ベルギー、ロット・ベリソル)
9位 バウク・モレマ(オランダ、ベルキン)
10位 ヤコブ・フグルサング(デンマーク、アスタナ)
2位 ペーター・サガン(スロバキア、キャノンデール)
3位 ミハエル・アルバジーニ(スイス、オリカ・グリーンエッジ)
4位 フレフ・ファンアフェルマート(ベルギー、BMCレーシング)
5位 アルベルト・コンタドール(スペイン、ティンコフ・サクソ)
6位 アレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター)
7位 クリス・フルーム(イギリス、チームスカイ)
8位 ユルゲン・ファンデンブロック(ベルギー、ロット・ベリソル)
9位 バウク・モレマ(オランダ、ベルキン)
10位 ヤコブ・フグルサング(デンマーク、アスタナ)
13h31'13"
+02"
+02"
マイヨヴェール(ポイント賞)
1位 ペーター・サガン(スロバキア、キャノンデール)
2位 マルセル・キッテル(ドイツ、ジャイアント・シマノ)
3位 ブライアン・コカール(フランス、ユーロップカー)
2位 マルセル・キッテル(ドイツ、ジャイアント・シマノ)
3位 ブライアン・コカール(フランス、ユーロップカー)
158pts
135pts
121pts
135pts
121pts
マイヨアポワ(山岳賞)
1位 シリル・ルモワンヌ(フランス、コフィディス)
2位 ブレル・カドリ(フランス、AG2Rラモンディアール)
3位 イェンス・フォイクト(ドイツ、トレックファクトリーレーシング)
2位 ブレル・カドリ(フランス、AG2Rラモンディアール)
3位 イェンス・フォイクト(ドイツ、トレックファクトリーレーシング)
6pts
5pt
4pt
5pt
4pt
マイヨブラン(新人賞)
1位 ペーター・サガン(スロバキア、キャノンデール)
2位 ロメン・バルデ(フランス、AG2Rラモンディアール)
3位 ミカル・クヴィアトコウスキー(ポーランド、オメガファーマ・クイックステップ)
2位 ロメン・バルデ(フランス、AG2Rラモンディアール)
3位 ミカル・クヴィアトコウスキー(ポーランド、オメガファーマ・クイックステップ)
17h07'54"
チーム総合成績
1位 チームスカイ
2位 アスタナ
3位 BMCレーシング
2位 アスタナ
3位 BMCレーシング
51h23'42"
+12"
+14"
+12"
+14"
ステージ敢闘賞
トマ・ヴォクレール(フランス、ユーロップカー)
text:So.Isobe
photo:Kei Tsuji, Makoto Ayano, Tim de Waele
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