2014/05/26(月) - 06:52
1級山岳モンテカンピオーネにフィニッシュするジロ・デ・イタリア第15ステージで、総合上位陣が激しいアタック合戦を繰り広げた。独走に持ち込んだファビオ・アル(イタリア、アスタナ)がステージ初優勝を飾るとともに、総合4位にジャンプアップ。マリアローザは動かなかった。
ロンバルディア州の平野を抜け、大都市ミラノの北部を東へ。225kmコースの大半はフラットだが、残り20kmを切ると同時にコースは山岳へと進路を取る。標高204mから標高1665mの頂上まで一気に駆け上がる1級山岳モンテカンピオーネ(直訳するとチャンピオンの山)こそがこの日唯一の登りだ。
モンテカンピオーネは故マルコ・パンターニが1998年のジロ総合優勝を決定づけた山。平均勾配は7.6%で、下り区間を含むため、中盤にかけてコンスタントに9%近い勾配を刻む。全長19.35kmという長い1級山岳で、休息日前の選手たちがアタックを繰り返した。
スタート直後から高速化したレースは、16km地点で12名が先行する展開に。ダミアーノ・クネゴ(イタリア、ランプレ・メリダ)やアダム・ハンセン(オーストラリア、ロット・ベリソル)、サイモン・ゲシュケ(ドイツ、ジャイアント・シマノ)、ルーカ・パオリーニ(イタリア、カチューシャ)、ファビオ・フェリーネ(イタリア、トレックファクトリーレーシング)を含む強力な逃げは着々とアドバンテージを拡大。
マリアローザ擁するオメガファーマ・クイックステップに逃げを吸収する意思はなく、ペースを上げることなく安全運転でミラノ近郊の市街地を抜けて行く。レース中盤にかけてタイム差は10分まで広がった。
レース後半に差し掛かると、蛍光イエローのネーリソットリが積極的にメイン集団のペースアップを開始する。逃げに選手を送り損ねたイタリアチームの牽引によってタイム差は縮まり、最後の1級山岳モンテカンピオーネ手前でタイム差は2分に。
登坂タイムが1時間近いこの長い登りで、逃げグループはハンセンのアタックによって崩壊。アンドレ・カルドソ(ポルトガル、ガーミン・シャープ)だけがハンセンに合流する。観客が詰めかけた登りを、2人で協力して逃げ続けた。
AG2Rラモンディアールがペースを作るメイン集団からは、マリアアッズーラを着るジュリアン・アレドンド(コロンビア、トレックファクトリーレーシング)が先陣を切ってアタックを仕掛ける。山岳ポイントを渇望しているアレドンドは、食らいつくエドアルド・ザルディーニ(イタリア、バルディアーニCSF)を振り切って先頭のカルドソとハンセンに合流する。
こうして先頭はアレドンドとカルドソに絞られたが、約1分後方に位置する総合上位陣の本格的なペースアップが始まるとそのリードは縮小。アレドンドらの動きはあっけなく終わりを迎えた。
メイン集団から勢い良く飛び出したフィリップ・ダイグナン(アイルランド、チームスカイ)は、アレドンドとカルドソを抜いて一気に先頭へ。縮小したメイン集団(アル、ポッツォヴィーヴォ、ペッリツォッティ、ケルデルマン、エヴァンス、モラビート、ドゥアルテ、キンタナ、ウラン、ロラン、モレーノ、マイカ、ロジャース、キセロフスキー、バッソ、ヘシェダル)が20秒遅れでダイグナンを追って残り5km。
ここからピエール・ロラン(フランス、ユーロップカー)やナイロ・キンタナ(コロンビア、モビスター)、リゴベルト・ウラン(コロンビア、オメガファーマ・クイックステップ)、カデル・エヴァンス(オーストラリア、BMCレーシング)がアタックを連発。今年のジロの主役たちが幾度となく互いをアタックする。するとイヴァン・バッソ(イタリア、キャノンデール)やライダー・ヘシェダル(カナダ、ガーミン・シャープ)が脱落した。
一人で飛び出したロランが先頭ダイグナンに合流する頃、残り3kmを切ってからファビオ・アル(イタリア、アスタナ)が渾身のアタック。この動きにマリアローザは反応出来ず、アルがそのままロランとダイグナンをパスして先頭に立つ。
残り1kmの時点で後続のキンタナとロランに対して13秒、ウランに対して22秒のリードを築いたアルが、さらにリードを広げる走りで独走フィニッシュした。
不調のミケーレ・スカルポーニ(イタリア)に代わってアスタナのエースを担う23歳が、2度目のジロでグランツール初勝利を飾った。
ビッグネームに真っ向勝負を挑み、勝利を収めたアルは記者会見で「キンタナやウランと一緒に走っているだけで鳥肌なのに、そこから飛び出して独走するなんて信じられない気持ち。これまでに経験したことのない気持ちに包まれている」と興奮を抑えながら話す。ボーナスタイム10秒も加算したアルは総合7位から総合4位にジャンプアップしている。
ウランはアルから42秒遅れでフィニッシュ。キンタナとロランに20秒奪われる結果となったが、エヴァンスをはじめとするライバルたちが軒並み下位に沈んだため、総合的に見るとリードを広げたと言える。総合2位エヴァンスとの総合タイム差は1分を超えた。
別府史之(トレックファクトリーレーシング)は21分58秒差の116位、新城幸也(ユーロップカー)は32分04秒差の139位。落車の影響が心配された新城だったが、「テーピングのおかげで思ったほどサドルの上での痛みは無かった」と安堵の表情を浮かべた。翌日は今大会3回目の休息日が設定されている。
ジロ・デ・イタリア2014第15ステージ結果
マリアローザ 個人総合成績
マリアロッサ ポイント賞
ナセル・ブアニ(フランス、FDJ.fr)
マリアアッズーラ 山岳賞
ジュリアン・アレドンド(コロンビア、トレックファクトリーレーシング)
マリアビアンカ ヤングライダー賞
ラファル・マイカ(ポーランド、ティンコフ・サクソ)
チーム総合成績
オメガファーマ・クイックステップ
text&photo:Kei Tsuji in Monte Campione, Italy
ロンバルディア州の平野を抜け、大都市ミラノの北部を東へ。225kmコースの大半はフラットだが、残り20kmを切ると同時にコースは山岳へと進路を取る。標高204mから標高1665mの頂上まで一気に駆け上がる1級山岳モンテカンピオーネ(直訳するとチャンピオンの山)こそがこの日唯一の登りだ。
モンテカンピオーネは故マルコ・パンターニが1998年のジロ総合優勝を決定づけた山。平均勾配は7.6%で、下り区間を含むため、中盤にかけてコンスタントに9%近い勾配を刻む。全長19.35kmという長い1級山岳で、休息日前の選手たちがアタックを繰り返した。
スタート直後から高速化したレースは、16km地点で12名が先行する展開に。ダミアーノ・クネゴ(イタリア、ランプレ・メリダ)やアダム・ハンセン(オーストラリア、ロット・ベリソル)、サイモン・ゲシュケ(ドイツ、ジャイアント・シマノ)、ルーカ・パオリーニ(イタリア、カチューシャ)、ファビオ・フェリーネ(イタリア、トレックファクトリーレーシング)を含む強力な逃げは着々とアドバンテージを拡大。
マリアローザ擁するオメガファーマ・クイックステップに逃げを吸収する意思はなく、ペースを上げることなく安全運転でミラノ近郊の市街地を抜けて行く。レース中盤にかけてタイム差は10分まで広がった。
レース後半に差し掛かると、蛍光イエローのネーリソットリが積極的にメイン集団のペースアップを開始する。逃げに選手を送り損ねたイタリアチームの牽引によってタイム差は縮まり、最後の1級山岳モンテカンピオーネ手前でタイム差は2分に。
登坂タイムが1時間近いこの長い登りで、逃げグループはハンセンのアタックによって崩壊。アンドレ・カルドソ(ポルトガル、ガーミン・シャープ)だけがハンセンに合流する。観客が詰めかけた登りを、2人で協力して逃げ続けた。
AG2Rラモンディアールがペースを作るメイン集団からは、マリアアッズーラを着るジュリアン・アレドンド(コロンビア、トレックファクトリーレーシング)が先陣を切ってアタックを仕掛ける。山岳ポイントを渇望しているアレドンドは、食らいつくエドアルド・ザルディーニ(イタリア、バルディアーニCSF)を振り切って先頭のカルドソとハンセンに合流する。
こうして先頭はアレドンドとカルドソに絞られたが、約1分後方に位置する総合上位陣の本格的なペースアップが始まるとそのリードは縮小。アレドンドらの動きはあっけなく終わりを迎えた。
メイン集団から勢い良く飛び出したフィリップ・ダイグナン(アイルランド、チームスカイ)は、アレドンドとカルドソを抜いて一気に先頭へ。縮小したメイン集団(アル、ポッツォヴィーヴォ、ペッリツォッティ、ケルデルマン、エヴァンス、モラビート、ドゥアルテ、キンタナ、ウラン、ロラン、モレーノ、マイカ、ロジャース、キセロフスキー、バッソ、ヘシェダル)が20秒遅れでダイグナンを追って残り5km。
ここからピエール・ロラン(フランス、ユーロップカー)やナイロ・キンタナ(コロンビア、モビスター)、リゴベルト・ウラン(コロンビア、オメガファーマ・クイックステップ)、カデル・エヴァンス(オーストラリア、BMCレーシング)がアタックを連発。今年のジロの主役たちが幾度となく互いをアタックする。するとイヴァン・バッソ(イタリア、キャノンデール)やライダー・ヘシェダル(カナダ、ガーミン・シャープ)が脱落した。
一人で飛び出したロランが先頭ダイグナンに合流する頃、残り3kmを切ってからファビオ・アル(イタリア、アスタナ)が渾身のアタック。この動きにマリアローザは反応出来ず、アルがそのままロランとダイグナンをパスして先頭に立つ。
残り1kmの時点で後続のキンタナとロランに対して13秒、ウランに対して22秒のリードを築いたアルが、さらにリードを広げる走りで独走フィニッシュした。
不調のミケーレ・スカルポーニ(イタリア)に代わってアスタナのエースを担う23歳が、2度目のジロでグランツール初勝利を飾った。
ビッグネームに真っ向勝負を挑み、勝利を収めたアルは記者会見で「キンタナやウランと一緒に走っているだけで鳥肌なのに、そこから飛び出して独走するなんて信じられない気持ち。これまでに経験したことのない気持ちに包まれている」と興奮を抑えながら話す。ボーナスタイム10秒も加算したアルは総合7位から総合4位にジャンプアップしている。
ウランはアルから42秒遅れでフィニッシュ。キンタナとロランに20秒奪われる結果となったが、エヴァンスをはじめとするライバルたちが軒並み下位に沈んだため、総合的に見るとリードを広げたと言える。総合2位エヴァンスとの総合タイム差は1分を超えた。
別府史之(トレックファクトリーレーシング)は21分58秒差の116位、新城幸也(ユーロップカー)は32分04秒差の139位。落車の影響が心配された新城だったが、「テーピングのおかげで思ったほどサドルの上での痛みは無かった」と安堵の表情を浮かべた。翌日は今大会3回目の休息日が設定されている。
ジロ・デ・イタリア2014第15ステージ結果
1位 ファビオ・アル(イタリア、アスタナ)
2位 ファビオ・ドゥアルテ(コロンビア、コロンビア)
3位 ナイロ・キンタナ(コロンビア、モビスター)
4位 ピエール・ロラン(フランス、ユーロップカー)
5位 リゴベルト・ウラン(コロンビア、オメガファーマ・クイックステップ)
6位 ラファル・マイカ(ポーランド、ティンコフ・サクソ)
7位 フランコ・ペッリツォッティ(イタリア、アンドローニジョカトリ)
8位 ダニエル・モレーノ(スペイン、カチューシャ)
9位 ライダー・ヘシェダル(カナダ、ガーミン・シャープ)
10位 カデル・エヴァンス(オーストラリア、BMCレーシング)
11位 ウィルコ・ケルデルマン(オランダ、ベルキン)
12位 ドメニコ・ポッツォヴィーヴォ(イタリア、AG2Rラモンディアール)
13位 ロベルト・キセロフスキー(クロアチア、トレックファクトリーレーシング)
14位 フィリップ・ダイグナン(アイルランド、チームスカイ)
15位 イヴァン・バッソ(イタリア、キャノンデール)
116位 別府史之(日本、トレックファクトリーレーシング)
139位 新城幸也(日本、ユーロップカー)
2位 ファビオ・ドゥアルテ(コロンビア、コロンビア)
3位 ナイロ・キンタナ(コロンビア、モビスター)
4位 ピエール・ロラン(フランス、ユーロップカー)
5位 リゴベルト・ウラン(コロンビア、オメガファーマ・クイックステップ)
6位 ラファル・マイカ(ポーランド、ティンコフ・サクソ)
7位 フランコ・ペッリツォッティ(イタリア、アンドローニジョカトリ)
8位 ダニエル・モレーノ(スペイン、カチューシャ)
9位 ライダー・ヘシェダル(カナダ、ガーミン・シャープ)
10位 カデル・エヴァンス(オーストラリア、BMCレーシング)
11位 ウィルコ・ケルデルマン(オランダ、ベルキン)
12位 ドメニコ・ポッツォヴィーヴォ(イタリア、AG2Rラモンディアール)
13位 ロベルト・キセロフスキー(クロアチア、トレックファクトリーレーシング)
14位 フィリップ・ダイグナン(アイルランド、チームスカイ)
15位 イヴァン・バッソ(イタリア、キャノンデール)
116位 別府史之(日本、トレックファクトリーレーシング)
139位 新城幸也(日本、ユーロップカー)
5h33'06"
+21"
+22"
+42"
+57"
+1'08"
+1'13"
+2'17"
+21'58"
+32'04"
+21"
+22"
+42"
+57"
+1'08"
+1'13"
+2'17"
+21'58"
+32'04"
マリアローザ 個人総合成績
1位 リゴベルト・ウラン(コロンビア、オメガファーマ・クイックステップ)
2位 カデル・エヴァンス(オーストラリア、BMCレーシング)
3位 ラファル・マイカ(ポーランド、ティンコフ・サクソ)
4位 ファビオ・アル(イタリア、アスタナ)
5位 ナイロ・キンタナ(コロンビア、モビスター)
6位 ドメニコ・ポッツォヴィーヴォ(イタリア、AG2Rラモンディアール)
7位 ウィルコ・ケルデルマン(オランダ、ベルキン)
8位 ピエール・ロラン(フランス、ユーロップカー)
9位 ロベルト・キセロフスキー(クロアチア、トレックファクトリーレーシング)
10位 ワウテル・ポエルス(オランダ、オメガファーマ・クイックステップ)
2位 カデル・エヴァンス(オーストラリア、BMCレーシング)
3位 ラファル・マイカ(ポーランド、ティンコフ・サクソ)
4位 ファビオ・アル(イタリア、アスタナ)
5位 ナイロ・キンタナ(コロンビア、モビスター)
6位 ドメニコ・ポッツォヴィーヴォ(イタリア、AG2Rラモンディアール)
7位 ウィルコ・ケルデルマン(オランダ、ベルキン)
8位 ピエール・ロラン(フランス、ユーロップカー)
9位 ロベルト・キセロフスキー(クロアチア、トレックファクトリーレーシング)
10位 ワウテル・ポエルス(オランダ、オメガファーマ・クイックステップ)
63h26'39"
+1'03"
+1'50"
+2'24"
+2'40"
+2'42"
+3'04"
+4'47"
+5'44"
+6'32"
+1'03"
+1'50"
+2'24"
+2'40"
+2'42"
+3'04"
+4'47"
+5'44"
+6'32"
マリアロッサ ポイント賞
ナセル・ブアニ(フランス、FDJ.fr)
マリアアッズーラ 山岳賞
ジュリアン・アレドンド(コロンビア、トレックファクトリーレーシング)
マリアビアンカ ヤングライダー賞
ラファル・マイカ(ポーランド、ティンコフ・サクソ)
チーム総合成績
オメガファーマ・クイックステップ
text&photo:Kei Tsuji in Monte Campione, Italy
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