2009/07/18(土) - 12:04
ヴォージュ山脈を横断するツール・ド・フランス第13ステージ。降りしきる詰めたい雨の中、逃げグループの中から飛び出したハインリッヒ・ハウッスラー(ドイツ、サーヴェロ)が独走勝利を飾った。総合成績はアスタナのコントロールにより変動無し。マイヨアポワとマイヨヴェールは持ち主を変えている。
雨のヴォージュ山脈で3人が逃げる
南フランスからスペイン、ピレネーを経てアルプスに向かうツール・ド・フランスは、フランス東部、ドイツ国境に面したアルザス地方へと入っていく。前日のゴール地点ヴィッテルから同地方コルマールまでの200kmの間には、ヴォージュ山脈が横たわる。
アルプスステージほどの破壊力は無いが、1級〜3級のカテゴリー山岳が5つ連続するなど侮れない。晴天&高温のツール第1週とは打って変わって、この日は冷たい雨が選手たちを濡らした。
レース開始直後に飛び出したのは、ツールで実績を残すイェンス・フォイクト(ドイツ、サクソバンク)やクリストフ・モロー(フランス、アグリチュベル)らを含む7名のグループ。しかしメイン集団はこれを容認せず、前日同様序盤から50km/h近いハイスピードな展開に。
やがて55km地点で先頭グループからハインリッヒ・ハウッスラー(ドイツ、サーヴェロ)、シルヴァン・シャヴァネル(フランス、クイックステップ)、ルーベン・ペレス(スペイン、エウスカルテル)の3名が抜け出すとようやく集団はペースダウン。雨脚が強まる中、3名は100km地点で最大9分15秒のリードを築き上げた。
メイン集団では山岳ポイントを狙ってフランコ・ペッリツォッティ(イタリア、リクイガス)やエゴイ・マルティネス(スペイン、エウスカルテル)が動きを見せ、競り合うようにカテゴリー山岳を通過。これらの動きはメイン集団に封じ込められた。
雨の下りでリーナス・ゲルデマン(ドイツ、ミルラム)が単独アタックを決めたが、先頭グループに追いつくこと無く吸収。やがて選手たちは、この日最大の難所1級山岳プラツェルヴァゼル峠に突入した。
登坂距離8.7km・平均勾配7.6%のこの上りで、先頭グループからペレスが脱落すると、メイン集団からはマイヨアポワを着るマルティネスが脱落。メイン集団ではサクソバンクが攻撃的なペースアップを図ったが、メンバーを揃えるアスタナがこれを封じ込めた。アスタナは前日の落車で総合4位のリーヴァイ・ライプハイマー(アメリカ)を失ったが、それでも山岳でのチーム力は圧倒的だ。
結局このプラツェルヴァゼル峠でも総合上位陣は動かず、マルティネス不在の間にペッリツォッティが山岳ポイントを加算。先頭では雨に濡れたテクニカルな下りでハウッスラーがシャヴァネルを振り切り、そのままレース終盤のカテゴリー山岳へと突入した。
悪天候で輝いたハウッスラーの真価
独走態勢に入ったハウッスラー。終盤に登場するカテゴリー3級と2級の山岳でもそのペースは落ちなかった。メイン集団からはアメツ・チュルカ(スペイン、エウスカルテル)とブリース・フェイユ(フランス、アグリチュベル)が飛び出して追走したが、失速するシャヴァネルを捉えるだけで精一杯。
ハウッスラーが独走のままゴールにやってきた。母国ドイツにほど近いコルマールでの嬉しいツールステージ初優勝に、ハウッスラーは雨と涙に濡れた顔を両手で覆ってゴールに飛び込む。悪天候をはねのける、貫禄の独走勝利だった。
ハウッスラーは今年サーヴェロ・テストチームに移籍して一気にブレイクした25歳。
シーズン序盤のツアー・オブ・カタール総合2位&新人賞&スプリント賞に始まり、ヴォルタ・アオ・アルガルヴェでステージ2勝、パリ〜ニースでステージ1勝、ミラノ〜サンレモ2位、ロンド・ファン・フラーンデレン2位、パリ〜ルーベ7位。クラシックレースでは果敢にアタックを繰り返す印象的な走りを見せた。
ハウッスラーは集団スプリントでも勝利を狙えるほどのスプリント力の持ち主だが、クラシックレースのような短い上りもこなし、独走も得意。この日はダウンヒル能力の高さも見せつけた。
6分31秒遅れでゴールにやってきたメイン集団は、トル・フースホフト(ノルウェー、サーヴェロ)が2着に入って15ポイントを獲得。グルペットに入ったマーク・カヴェンディッシュ(イギリス、チームコロンビア・HTC)が獲得ポイントゼロのため、フースホフトが2日でマイヨヴェールを奪い返した。
山岳賞ランキングは、山岳ポイントを加算したペッリツォッティが、ついにマルティネスを3ポイント上回ってトップに。ジロ・デ・イタリア総合3位のクライマー系オールラウンダーが、赤玉のマイヨアポワに袖を通している。
総合成績は動かずにリナルド・ノチェンティーニ(イタリア、アージェードゥーゼル)がマイヨジョーヌをキープ。ノチェンティーニは1週間に渡ってマイヨジョーヌを着ており、着用日数ではマリオ・チポッリーニやマルコ・パンターニを超えた。
ツール・ド・フランス2009第13ステージ結果
1位 ハインリッヒ・ハウッスラー(ドイツ、サーヴェロ)4h56'26"
2位 アメツ・チュルカ(スペイン、エウスカルテル)+4'11"
3位 ブリース・フェイユ(フランス、アグリチュベル)+6'13"
4位 シルヴァン・シャヴァネル(フランス、クイックステップ)+6'31"
5位 ピーター・ベリトス(スロバキア、ミルラム)+6'43"
6位 トル・フースホフト(ノルウェー、サーヴェロ)
7位 ウラディミール・エフィムキン(ロシア、アージェードゥーゼル)
8位 ブラドレー・ウィギンズ(イギリス、ガーミン)
9位 ジョージ・ヒンカピー(アメリカ、チームコロンビア・HTC)
10位 アンディ・シュレク(ルクセンブルク、サクソバンク)
86位 別府史之(日本、スキル・シマノ)+20'21"
143位 新城幸也(日本、Bboxブイグテレコム)+23'44"
マイヨジョーヌ(個人総合成績)
1位 リナルド・ノチェンティーニ(イタリア、アージェードゥーゼル)53h30'30"
2位 アルベルト・コンタドール(スペイン、アスタナ)+06"
3位 ランス・アームストロング(アメリカ、アスタナ)+08"
4位 ブラドレー・ウィギンズ(イギリス、ガーミン)+46"
5位 アンドレアス・クレーデン(ドイツ、アスタナ)+54"
6位 トニ・マルティン(ドイツ、チームコロンビア・HTC)+1'00"
7位 クリスティアン・ヴァンデヴェルデ(アメリカ、ガーミン)+1'24"
8位 アンディ・シュレク(ルクセンブルク、サクソバンク)+1'49"
9位 ヴィンチェンツォ・ニーバリ(イタリア、リクイガス)+1'54"
10位 ルイスレオン・サンチェス(スペイン、ケースデパーニュ)+2'16"
141位 新城幸也(日本、Bboxブイグテレコム)+1h34'57"
144位 別府史之(日本、スキル・シマノ)+1h36'42"
マイヨヴェール(ポイント賞)
1位 トル・フースホフト(ノルウェー、サーヴェロ)205pts
2位 マーク・カヴェンディッシュ(イギリス、チームコロンビア・HTC)200pts
3位 ホセホアキン・ロハス(スペイン、ケースデパーニュ)116pts
41位 新城幸也(日本、Bboxブイグテレコム)30pts
67位 別府史之(日本、スキル・シマノ)18pts
マイヨアポワ(山岳賞)
1位 フランコ・ペッリツォッティ(イタリア、リクイガス)98pts
2位 エゴイ・マルティネス(スペイン、エウスカルテル)95pts
3位 ブリース・フェイユ(フランス、アグリチュベル)64pts
マイヨブラン(新人賞)
1位 トニ・マルティン(ドイツ、チームコロンビア・HTC)53h31'30"
2位 アンディ・シュレク(ルクセンブルク、サクソバンク)+49"
3位 ヴィンチェンツォ・ニーバリ(イタリア、リクイガス)+54"
チーム総合成績
1位 サクソバンク 158h57'08"
2位 アージェードゥーゼル +34"
3位 アスタナ +37"
第13ステージ敢闘賞
ハインリッヒ・ハウッスラー(ドイツ、サーヴェロ)
雨のヴォージュ山脈で3人が逃げる
南フランスからスペイン、ピレネーを経てアルプスに向かうツール・ド・フランスは、フランス東部、ドイツ国境に面したアルザス地方へと入っていく。前日のゴール地点ヴィッテルから同地方コルマールまでの200kmの間には、ヴォージュ山脈が横たわる。
アルプスステージほどの破壊力は無いが、1級〜3級のカテゴリー山岳が5つ連続するなど侮れない。晴天&高温のツール第1週とは打って変わって、この日は冷たい雨が選手たちを濡らした。
レース開始直後に飛び出したのは、ツールで実績を残すイェンス・フォイクト(ドイツ、サクソバンク)やクリストフ・モロー(フランス、アグリチュベル)らを含む7名のグループ。しかしメイン集団はこれを容認せず、前日同様序盤から50km/h近いハイスピードな展開に。
やがて55km地点で先頭グループからハインリッヒ・ハウッスラー(ドイツ、サーヴェロ)、シルヴァン・シャヴァネル(フランス、クイックステップ)、ルーベン・ペレス(スペイン、エウスカルテル)の3名が抜け出すとようやく集団はペースダウン。雨脚が強まる中、3名は100km地点で最大9分15秒のリードを築き上げた。
メイン集団では山岳ポイントを狙ってフランコ・ペッリツォッティ(イタリア、リクイガス)やエゴイ・マルティネス(スペイン、エウスカルテル)が動きを見せ、競り合うようにカテゴリー山岳を通過。これらの動きはメイン集団に封じ込められた。
雨の下りでリーナス・ゲルデマン(ドイツ、ミルラム)が単独アタックを決めたが、先頭グループに追いつくこと無く吸収。やがて選手たちは、この日最大の難所1級山岳プラツェルヴァゼル峠に突入した。
登坂距離8.7km・平均勾配7.6%のこの上りで、先頭グループからペレスが脱落すると、メイン集団からはマイヨアポワを着るマルティネスが脱落。メイン集団ではサクソバンクが攻撃的なペースアップを図ったが、メンバーを揃えるアスタナがこれを封じ込めた。アスタナは前日の落車で総合4位のリーヴァイ・ライプハイマー(アメリカ)を失ったが、それでも山岳でのチーム力は圧倒的だ。
結局このプラツェルヴァゼル峠でも総合上位陣は動かず、マルティネス不在の間にペッリツォッティが山岳ポイントを加算。先頭では雨に濡れたテクニカルな下りでハウッスラーがシャヴァネルを振り切り、そのままレース終盤のカテゴリー山岳へと突入した。
悪天候で輝いたハウッスラーの真価
独走態勢に入ったハウッスラー。終盤に登場するカテゴリー3級と2級の山岳でもそのペースは落ちなかった。メイン集団からはアメツ・チュルカ(スペイン、エウスカルテル)とブリース・フェイユ(フランス、アグリチュベル)が飛び出して追走したが、失速するシャヴァネルを捉えるだけで精一杯。
ハウッスラーが独走のままゴールにやってきた。母国ドイツにほど近いコルマールでの嬉しいツールステージ初優勝に、ハウッスラーは雨と涙に濡れた顔を両手で覆ってゴールに飛び込む。悪天候をはねのける、貫禄の独走勝利だった。
ハウッスラーは今年サーヴェロ・テストチームに移籍して一気にブレイクした25歳。
シーズン序盤のツアー・オブ・カタール総合2位&新人賞&スプリント賞に始まり、ヴォルタ・アオ・アルガルヴェでステージ2勝、パリ〜ニースでステージ1勝、ミラノ〜サンレモ2位、ロンド・ファン・フラーンデレン2位、パリ〜ルーベ7位。クラシックレースでは果敢にアタックを繰り返す印象的な走りを見せた。
ハウッスラーは集団スプリントでも勝利を狙えるほどのスプリント力の持ち主だが、クラシックレースのような短い上りもこなし、独走も得意。この日はダウンヒル能力の高さも見せつけた。
6分31秒遅れでゴールにやってきたメイン集団は、トル・フースホフト(ノルウェー、サーヴェロ)が2着に入って15ポイントを獲得。グルペットに入ったマーク・カヴェンディッシュ(イギリス、チームコロンビア・HTC)が獲得ポイントゼロのため、フースホフトが2日でマイヨヴェールを奪い返した。
山岳賞ランキングは、山岳ポイントを加算したペッリツォッティが、ついにマルティネスを3ポイント上回ってトップに。ジロ・デ・イタリア総合3位のクライマー系オールラウンダーが、赤玉のマイヨアポワに袖を通している。
総合成績は動かずにリナルド・ノチェンティーニ(イタリア、アージェードゥーゼル)がマイヨジョーヌをキープ。ノチェンティーニは1週間に渡ってマイヨジョーヌを着ており、着用日数ではマリオ・チポッリーニやマルコ・パンターニを超えた。
ツール・ド・フランス2009第13ステージ結果
1位 ハインリッヒ・ハウッスラー(ドイツ、サーヴェロ)4h56'26"
2位 アメツ・チュルカ(スペイン、エウスカルテル)+4'11"
3位 ブリース・フェイユ(フランス、アグリチュベル)+6'13"
4位 シルヴァン・シャヴァネル(フランス、クイックステップ)+6'31"
5位 ピーター・ベリトス(スロバキア、ミルラム)+6'43"
6位 トル・フースホフト(ノルウェー、サーヴェロ)
7位 ウラディミール・エフィムキン(ロシア、アージェードゥーゼル)
8位 ブラドレー・ウィギンズ(イギリス、ガーミン)
9位 ジョージ・ヒンカピー(アメリカ、チームコロンビア・HTC)
10位 アンディ・シュレク(ルクセンブルク、サクソバンク)
86位 別府史之(日本、スキル・シマノ)+20'21"
143位 新城幸也(日本、Bboxブイグテレコム)+23'44"
マイヨジョーヌ(個人総合成績)
1位 リナルド・ノチェンティーニ(イタリア、アージェードゥーゼル)53h30'30"
2位 アルベルト・コンタドール(スペイン、アスタナ)+06"
3位 ランス・アームストロング(アメリカ、アスタナ)+08"
4位 ブラドレー・ウィギンズ(イギリス、ガーミン)+46"
5位 アンドレアス・クレーデン(ドイツ、アスタナ)+54"
6位 トニ・マルティン(ドイツ、チームコロンビア・HTC)+1'00"
7位 クリスティアン・ヴァンデヴェルデ(アメリカ、ガーミン)+1'24"
8位 アンディ・シュレク(ルクセンブルク、サクソバンク)+1'49"
9位 ヴィンチェンツォ・ニーバリ(イタリア、リクイガス)+1'54"
10位 ルイスレオン・サンチェス(スペイン、ケースデパーニュ)+2'16"
141位 新城幸也(日本、Bboxブイグテレコム)+1h34'57"
144位 別府史之(日本、スキル・シマノ)+1h36'42"
マイヨヴェール(ポイント賞)
1位 トル・フースホフト(ノルウェー、サーヴェロ)205pts
2位 マーク・カヴェンディッシュ(イギリス、チームコロンビア・HTC)200pts
3位 ホセホアキン・ロハス(スペイン、ケースデパーニュ)116pts
41位 新城幸也(日本、Bboxブイグテレコム)30pts
67位 別府史之(日本、スキル・シマノ)18pts
マイヨアポワ(山岳賞)
1位 フランコ・ペッリツォッティ(イタリア、リクイガス)98pts
2位 エゴイ・マルティネス(スペイン、エウスカルテル)95pts
3位 ブリース・フェイユ(フランス、アグリチュベル)64pts
マイヨブラン(新人賞)
1位 トニ・マルティン(ドイツ、チームコロンビア・HTC)53h31'30"
2位 アンディ・シュレク(ルクセンブルク、サクソバンク)+49"
3位 ヴィンチェンツォ・ニーバリ(イタリア、リクイガス)+54"
チーム総合成績
1位 サクソバンク 158h57'08"
2位 アージェードゥーゼル +34"
3位 アスタナ +37"
第13ステージ敢闘賞
ハインリッヒ・ハウッスラー(ドイツ、サーヴェロ)
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