2013/10/30(水) - 10:07
ウインドサーフィンのトップシェアブランドという肩書きを引っさげ、自転車業界に参入してから3年、拡充を続けるニールプライドの最新モデルがZEPHYR(ゼファー)だ。「エンデュランスレーシングロード」という新しいカテゴリーへ、同社が投げうったゼファーの実力とは。
NEILPRYDE(ニールプライド)という名称は、既にロードサイクリストの間で一定以上の認知度を得たと言って良いだろう。BMWデザインワークスとタッグを組み、エアロを意識したALIZE、そしてオールラウンドレーシングのDIABLOという、美しいデザインのロードバイクを発表したのが2011年のことだ。
更にその2年後、2013年には超軽量モデルのBULA SL、TT/トライアスロンモデルのBAYAMOという2モデルがラインナップに加わり、ラインナップは大きく拡充を果たした。そして全てのモデルに共通しているのが、それぞれが各ジャンルにおけるフラッグシップモデルであること。いずれもニールプライドがサポートするプロコンチネンタルチーム「ユナイテッド・ヘルスケア」が実戦で使用していることからも、その性能と信頼度は証明済みと言えよう。
筆者も2012年モデルのディアブロを所有しているが、フレーム精度の高さ故、組み付けに全くストレスがないことにはとかく驚かされた。流石はウインドサーフィンの世界を牽引するリーディングカンパニー。自転車ブランドとしてはまるで新興ながら、「"しっかり"しているんだな」と思わされていた。
オールラウンド、エアロ、軽量、TTと4ジャンルのバイクを世に送り出してきたニールプライドだが、ここ最近注目を浴びる「コンフォート」カテゴリーは2013年の段階で未だ切り崩していなかった。そして2014年、遂に振動吸収性を高めることに重きを置いたバイクがデビューする。それが今回インプレッションを行ったZEPHYR(ゼファー)だ。
ユーロバイクを前にお披露目されたゼファーは、ニールプライドが「エンデュランスレースシリーズ」として位置づけるバイクだ。つまり単なるフニャフニャなバイクではなく、快適性とレーシング性能を両立した、長距離や悪路のレースで活躍する性能が求められたのである。
長めのヘッドチューブ、大きくスローピングしたトップチューブなど、「コンフォートバイク」然としたゼファーだが、最も目に付くのは27.2mmのシートポストから連続して弧を描くようにデザインされたシートチューブ周辺の造形だろう。これは一目して分かる通り、リアホイールからの突き上げを緩和するため。そしてシートチューブ自体も微妙かつ複雑なアールを持たせ、チューブの肉厚を変化させることでより、しなやかな動きを実現したのだという。
更にはトラック用ピストバイクの如く、シートチューブとチェーンステーの接合部よりも後方に突き出したリアエンドも特徴的だ。これも上記同様に縦方向の振動吸収を担うもので、同時にBB〜リアエンド長をBULA SLと比較し10mm伸ばすことで安定したハンドリングを狙っている。
リアエンドと並び、フロントフォークの造形もかなり独創的と言える。フォークを前後方向に動かすため肩部分はボリューム感あるエアロ形状としながらも、ブレーキ取り付け部分から下に向かうにつれ絞り込まれ、最後はフレーム側にオフセットして収束する。クラウン部分のリブもその動きを助けるためだが、デザインとして落とし込まれているのは流石である。一方で横剛性はしっかりと確保されており、機敏な旋回性能が求められた。
ゼファーはフレームの前三角にオリジナルのC6.7カーボンを採用しており、ALIZEやDIABLOにも使用実績があるため、性能はお墨付き。「柔」の一方、ヘッドチューブやBB周辺は「剛」とされ、スプリンターの爆発力にも応えてくれるはず。
またタイヤクリアランスも28cまで対応し、ロングライド、そして近年流行の兆しあるグラベルライドなど、新たなフィールドを開拓するには最適なバイクだと言えるだろう。メカニカル・Di2両対応であるため、フレーム乗せ替えの際にコンポーネントを選ばずユーザーフレンドリーだ。
今回インプレッションを行ったのは、シマノ・6800系アルテグラを搭載した完成車。ホイールは同RS31で、プライスは388,500円(税込)だ。早速ライダーのコメントをお届けしよう。
ーインプレッション
「長い時間バイクに乗りたい人、一台のバイクに多様性を求める人には強力な選択肢となる」錦織大祐(フォーチュンバイク)
質量のあるものがフワッと前に進んでいるような第一印象を受けました。飛行機で言えばジャンボジェット、船で言えば大型帆船のような重量感のあるものが確実に前に進む印象ですね。パリッとした軽快なバイクのフィーリングとは異なりますが、踏み心地が柔らかく、踏んだ力が失われている感覚は非常に少ない。バックステーやフロントフォークからはしなりを感じますが、このしなりは下からの突き上げに対してのみ発生しており、ペダル入力に対するネガティブなしなりはありません。
従来のコンフォートバイクは、振動を吸収する箇所しなる箇所を明確に区別しているもの、剛性は高いが振動吸収がいいもの、バネ感があるもの、振動を吸収するギミックが明確なものなどに分類できますが、ゼファーには、縦のコンプライアンスだけでなく、左右のコンプライスにも対応し三次元的に振動吸収しつつ前に進む、という他にない独特の感覚がありました。
船のような、抵抗のあるところをかきわけ進む感じが特徴的でした。砂利道やぬかるみの道も走ってみましたが、走行抵抗があればあるほど、左右の好バランスで抵抗をかきわけ前進していく。反応性が良いとまでは言えませんが、巡行性能はかなり高い。気付かぬうちに勝手にスピードがでていて、メーターを見て驚くことすらある程です。巡航はすごく気持ち良かったですよ。
意外にもフレームはかなりボリューム感たっぷりでしたが、振動吸収性やダンシング際の振りやすさよりも、ブレーキの制動時の挙動にメリットが生まれているような気がします。一見、今までのニールプライドとは違い、現在の流行の"ありがち"なフレームというネガティブな印象でしたが、実際には競合他社と異なる性能を持ち合わせており、明確な線引きが感じられました。同社のディアブロやビューラのようにバンクした際の軸安定性に加え、前に進む強さというニールプライド"らしさ"を感じる事ができました。
最も気持ちよく走れる速度域は時速30km〜35kmでしょう。それ以上でモガいてもたわむフィーリングはありませんでしたが、長い距離でこそ真価を発揮するため、公道ロングやエンデューロなどを好むライダーに向いています。レーサーが最優先で選択するフレームではないかもしれませんが、長い時間バイクに乗りたい人、一台のバイクに多様性を求める人には強力な選択肢となるはずです。
今回テストした完成車には28Cのタイヤがついてますが、特に重さは気にはならず、フレームと相まって遊ぶフィールドを広めてくれる大きな要素でした。パーツが自社製品で揃えられている点もデザインの統一という観点から評価できますし、完成車としての完成度も高いことに加え、価格もかなりリーズナブルであることも嬉しいポイントですね。
「ジオメトリーこそコンフォートバイクだが、モノ自体はレース向き」渡辺将大(タキザワサイクル)
コンフォート性の中にあるレース性能。これが第一印象として強く感じた事でした。反応性、高速域からの加速性、スピードを殺さずにダンシングからシッティングに切り替えられる点などは素晴らしく、高い戦闘力を感じます。ジオメトリーこそコンフォートバイクですが、モノ自体はレース向きに作ってあるのでしょう。
コンフォート性能については、特徴的なフロントフォークや大きくベンドしたリアバック周辺が特に良く働いている印象を受けました。(路面状況を把握するため)もっとコツコツきても良いのかな?と一瞬感じてしまうほどであり、悪路でも非常に快適でした。更にマイルドではあるものの、前後ともに硬過ぎたり柔らか過ぎたりもしていないため、非常に総合的なバランスに長けています。
しならせて振動を吸い上げるフレームの中には、柔らか過ぎて不安を覚えるモノもあると思います。しかしゼファーはヘッドの下ワンが大きく、フォークのクラウン部分もしっかりとしているため、そうした悪い印象がありませんでした。軽量の「ビューラSL」は高剛性ながら縦にしなるバイクですが、ゼファーはその性格のまま、より縦方向の柔らかさを増したバイクだと感じました。これはニールプライドらしさの現れている部分かもしれませんね。
一方レース性能としては、ギアを掛けた際の立ち上がりスピードに光るものがありました。ダンシングすると、縦方向に加えて横にもややしなり、テンポよくリズミカルに走ることができます。短めのダッシュやペースアップより、1〜2kmの距離をハイペースでダンシングすることに向いています。
BB周りもしっかりした出来で、下りも安定しています。ただ少しまったりとはしているため、速い切り返しが連続するコースを攻めるには向いていないでしょう。しかし、国内ではそういった場面がほとんどないため、不満を感じる事はまずありません。
完成車としてもかなりお手頃な価格だと思います。11速のアルテグラでワイドギアも使えますし、28cタイヤであることからダート・グラベル性能も高いですが、大半の方は舗装路100%だと思いますから、そうした場合にはミドルハイトのホイール+もう少し細いタイヤを組み合わせることをオススメします。走行性能やヒルクライム性能も向上して、取り扱いももう少し楽になるでしょうね。ただ、先行投資としては全く高価ではないと感じました。
ゼファーはコンフォートバイクではありながらも、レース志向の方にも乗ってもらいたい。長い距離をハイペースで走りたい方、レースを初めて間もない方にもオススメです。また、体に故障を抱えたライダーや、効率を活かして走りたいライダーにはもってこいのフレームでしょう。体力をセーブできることから、キツいヒルクライムレースでも良いでしょう。もちろん長距離のレースでは最適ですし、短距離でも後半に足を貯めて勝負をしたいライダーには相性が良いはずです。
ニールプライド ZEPHYR(6800系アルテグラ完成車)
サイズ:XS, S, M, L, XL
フレーム:C6.7 TORAY UD
フォーク:C6.7 TORAY UD 1-1/8 to 1-1/4
フレーム重量:1050g(Lサイズ)
コンポーネント:シマノ 6800系アルテグラ
ボトムブラケット:FSA PF30
ホイール:シマノ WH-RS31
ステム、ハンドル、シートポスト:ニールプライド
価 格:388,500円(税込)他フレームセット(273,000円)あり
インプレライダーのプロフィール
渡辺将大(タキザワサイクル)
群馬県のタキザワサイクルにてチーフメカニックとして勤務する傍ら、シクロクロスを含むレース参加や林道ツーリングを通して、10代から60代まで幅広い年齢層のユーザーに自転車の楽しみ方を提供している。かつては高校大学と名門校にて競技生活を送り、ベルギーやオランダでの競技経験、1年間のオーストラリア競技留学経験を持つ。グラベルライディングを嗜み、レースだけにとらわれない幅広い自転車の楽しみ方を追求中。
タキザワサイクル
錦織大祐(フォーチュンバイク)
幼少のころから自転車屋を志し、都内の大型プロショップで店長として経験を積んだ後、2010年に東京錦糸町にフォーチュンバイクをオープンさせた新進気鋭の若手店主。世界各国の自転車メーカーと繋がりを持ち、実際の製造現場で得た見聞をユーザーに伝えることを信条としている。シマノ鈴鹿ロードに18年連続で出場する一方、普段はロングライドやスローペースでのサイクリングを楽しむ。
フォーチュンバイク
ウエア協力:reric
text:So.Isobe
photo:Makoto.AYANO,So.Isobe
NEILPRYDE(ニールプライド)という名称は、既にロードサイクリストの間で一定以上の認知度を得たと言って良いだろう。BMWデザインワークスとタッグを組み、エアロを意識したALIZE、そしてオールラウンドレーシングのDIABLOという、美しいデザインのロードバイクを発表したのが2011年のことだ。
更にその2年後、2013年には超軽量モデルのBULA SL、TT/トライアスロンモデルのBAYAMOという2モデルがラインナップに加わり、ラインナップは大きく拡充を果たした。そして全てのモデルに共通しているのが、それぞれが各ジャンルにおけるフラッグシップモデルであること。いずれもニールプライドがサポートするプロコンチネンタルチーム「ユナイテッド・ヘルスケア」が実戦で使用していることからも、その性能と信頼度は証明済みと言えよう。
筆者も2012年モデルのディアブロを所有しているが、フレーム精度の高さ故、組み付けに全くストレスがないことにはとかく驚かされた。流石はウインドサーフィンの世界を牽引するリーディングカンパニー。自転車ブランドとしてはまるで新興ながら、「"しっかり"しているんだな」と思わされていた。
オールラウンド、エアロ、軽量、TTと4ジャンルのバイクを世に送り出してきたニールプライドだが、ここ最近注目を浴びる「コンフォート」カテゴリーは2013年の段階で未だ切り崩していなかった。そして2014年、遂に振動吸収性を高めることに重きを置いたバイクがデビューする。それが今回インプレッションを行ったZEPHYR(ゼファー)だ。
ユーロバイクを前にお披露目されたゼファーは、ニールプライドが「エンデュランスレースシリーズ」として位置づけるバイクだ。つまり単なるフニャフニャなバイクではなく、快適性とレーシング性能を両立した、長距離や悪路のレースで活躍する性能が求められたのである。
長めのヘッドチューブ、大きくスローピングしたトップチューブなど、「コンフォートバイク」然としたゼファーだが、最も目に付くのは27.2mmのシートポストから連続して弧を描くようにデザインされたシートチューブ周辺の造形だろう。これは一目して分かる通り、リアホイールからの突き上げを緩和するため。そしてシートチューブ自体も微妙かつ複雑なアールを持たせ、チューブの肉厚を変化させることでより、しなやかな動きを実現したのだという。
更にはトラック用ピストバイクの如く、シートチューブとチェーンステーの接合部よりも後方に突き出したリアエンドも特徴的だ。これも上記同様に縦方向の振動吸収を担うもので、同時にBB〜リアエンド長をBULA SLと比較し10mm伸ばすことで安定したハンドリングを狙っている。
リアエンドと並び、フロントフォークの造形もかなり独創的と言える。フォークを前後方向に動かすため肩部分はボリューム感あるエアロ形状としながらも、ブレーキ取り付け部分から下に向かうにつれ絞り込まれ、最後はフレーム側にオフセットして収束する。クラウン部分のリブもその動きを助けるためだが、デザインとして落とし込まれているのは流石である。一方で横剛性はしっかりと確保されており、機敏な旋回性能が求められた。
ゼファーはフレームの前三角にオリジナルのC6.7カーボンを採用しており、ALIZEやDIABLOにも使用実績があるため、性能はお墨付き。「柔」の一方、ヘッドチューブやBB周辺は「剛」とされ、スプリンターの爆発力にも応えてくれるはず。
またタイヤクリアランスも28cまで対応し、ロングライド、そして近年流行の兆しあるグラベルライドなど、新たなフィールドを開拓するには最適なバイクだと言えるだろう。メカニカル・Di2両対応であるため、フレーム乗せ替えの際にコンポーネントを選ばずユーザーフレンドリーだ。
今回インプレッションを行ったのは、シマノ・6800系アルテグラを搭載した完成車。ホイールは同RS31で、プライスは388,500円(税込)だ。早速ライダーのコメントをお届けしよう。
ーインプレッション
「長い時間バイクに乗りたい人、一台のバイクに多様性を求める人には強力な選択肢となる」錦織大祐(フォーチュンバイク)
質量のあるものがフワッと前に進んでいるような第一印象を受けました。飛行機で言えばジャンボジェット、船で言えば大型帆船のような重量感のあるものが確実に前に進む印象ですね。パリッとした軽快なバイクのフィーリングとは異なりますが、踏み心地が柔らかく、踏んだ力が失われている感覚は非常に少ない。バックステーやフロントフォークからはしなりを感じますが、このしなりは下からの突き上げに対してのみ発生しており、ペダル入力に対するネガティブなしなりはありません。
従来のコンフォートバイクは、振動を吸収する箇所しなる箇所を明確に区別しているもの、剛性は高いが振動吸収がいいもの、バネ感があるもの、振動を吸収するギミックが明確なものなどに分類できますが、ゼファーには、縦のコンプライアンスだけでなく、左右のコンプライスにも対応し三次元的に振動吸収しつつ前に進む、という他にない独特の感覚がありました。
船のような、抵抗のあるところをかきわけ進む感じが特徴的でした。砂利道やぬかるみの道も走ってみましたが、走行抵抗があればあるほど、左右の好バランスで抵抗をかきわけ前進していく。反応性が良いとまでは言えませんが、巡行性能はかなり高い。気付かぬうちに勝手にスピードがでていて、メーターを見て驚くことすらある程です。巡航はすごく気持ち良かったですよ。
意外にもフレームはかなりボリューム感たっぷりでしたが、振動吸収性やダンシング際の振りやすさよりも、ブレーキの制動時の挙動にメリットが生まれているような気がします。一見、今までのニールプライドとは違い、現在の流行の"ありがち"なフレームというネガティブな印象でしたが、実際には競合他社と異なる性能を持ち合わせており、明確な線引きが感じられました。同社のディアブロやビューラのようにバンクした際の軸安定性に加え、前に進む強さというニールプライド"らしさ"を感じる事ができました。
最も気持ちよく走れる速度域は時速30km〜35kmでしょう。それ以上でモガいてもたわむフィーリングはありませんでしたが、長い距離でこそ真価を発揮するため、公道ロングやエンデューロなどを好むライダーに向いています。レーサーが最優先で選択するフレームではないかもしれませんが、長い時間バイクに乗りたい人、一台のバイクに多様性を求める人には強力な選択肢となるはずです。
今回テストした完成車には28Cのタイヤがついてますが、特に重さは気にはならず、フレームと相まって遊ぶフィールドを広めてくれる大きな要素でした。パーツが自社製品で揃えられている点もデザインの統一という観点から評価できますし、完成車としての完成度も高いことに加え、価格もかなりリーズナブルであることも嬉しいポイントですね。
「ジオメトリーこそコンフォートバイクだが、モノ自体はレース向き」渡辺将大(タキザワサイクル)
コンフォート性の中にあるレース性能。これが第一印象として強く感じた事でした。反応性、高速域からの加速性、スピードを殺さずにダンシングからシッティングに切り替えられる点などは素晴らしく、高い戦闘力を感じます。ジオメトリーこそコンフォートバイクですが、モノ自体はレース向きに作ってあるのでしょう。
コンフォート性能については、特徴的なフロントフォークや大きくベンドしたリアバック周辺が特に良く働いている印象を受けました。(路面状況を把握するため)もっとコツコツきても良いのかな?と一瞬感じてしまうほどであり、悪路でも非常に快適でした。更にマイルドではあるものの、前後ともに硬過ぎたり柔らか過ぎたりもしていないため、非常に総合的なバランスに長けています。
しならせて振動を吸い上げるフレームの中には、柔らか過ぎて不安を覚えるモノもあると思います。しかしゼファーはヘッドの下ワンが大きく、フォークのクラウン部分もしっかりとしているため、そうした悪い印象がありませんでした。軽量の「ビューラSL」は高剛性ながら縦にしなるバイクですが、ゼファーはその性格のまま、より縦方向の柔らかさを増したバイクだと感じました。これはニールプライドらしさの現れている部分かもしれませんね。
一方レース性能としては、ギアを掛けた際の立ち上がりスピードに光るものがありました。ダンシングすると、縦方向に加えて横にもややしなり、テンポよくリズミカルに走ることができます。短めのダッシュやペースアップより、1〜2kmの距離をハイペースでダンシングすることに向いています。
BB周りもしっかりした出来で、下りも安定しています。ただ少しまったりとはしているため、速い切り返しが連続するコースを攻めるには向いていないでしょう。しかし、国内ではそういった場面がほとんどないため、不満を感じる事はまずありません。
完成車としてもかなりお手頃な価格だと思います。11速のアルテグラでワイドギアも使えますし、28cタイヤであることからダート・グラベル性能も高いですが、大半の方は舗装路100%だと思いますから、そうした場合にはミドルハイトのホイール+もう少し細いタイヤを組み合わせることをオススメします。走行性能やヒルクライム性能も向上して、取り扱いももう少し楽になるでしょうね。ただ、先行投資としては全く高価ではないと感じました。
ゼファーはコンフォートバイクではありながらも、レース志向の方にも乗ってもらいたい。長い距離をハイペースで走りたい方、レースを初めて間もない方にもオススメです。また、体に故障を抱えたライダーや、効率を活かして走りたいライダーにはもってこいのフレームでしょう。体力をセーブできることから、キツいヒルクライムレースでも良いでしょう。もちろん長距離のレースでは最適ですし、短距離でも後半に足を貯めて勝負をしたいライダーには相性が良いはずです。
ニールプライド ZEPHYR(6800系アルテグラ完成車)
サイズ:XS, S, M, L, XL
フレーム:C6.7 TORAY UD
フォーク:C6.7 TORAY UD 1-1/8 to 1-1/4
フレーム重量:1050g(Lサイズ)
コンポーネント:シマノ 6800系アルテグラ
ボトムブラケット:FSA PF30
ホイール:シマノ WH-RS31
ステム、ハンドル、シートポスト:ニールプライド
価 格:388,500円(税込)他フレームセット(273,000円)あり
インプレライダーのプロフィール
渡辺将大(タキザワサイクル)
群馬県のタキザワサイクルにてチーフメカニックとして勤務する傍ら、シクロクロスを含むレース参加や林道ツーリングを通して、10代から60代まで幅広い年齢層のユーザーに自転車の楽しみ方を提供している。かつては高校大学と名門校にて競技生活を送り、ベルギーやオランダでの競技経験、1年間のオーストラリア競技留学経験を持つ。グラベルライディングを嗜み、レースだけにとらわれない幅広い自転車の楽しみ方を追求中。
タキザワサイクル
錦織大祐(フォーチュンバイク)
幼少のころから自転車屋を志し、都内の大型プロショップで店長として経験を積んだ後、2010年に東京錦糸町にフォーチュンバイクをオープンさせた新進気鋭の若手店主。世界各国の自転車メーカーと繋がりを持ち、実際の製造現場で得た見聞をユーザーに伝えることを信条としている。シマノ鈴鹿ロードに18年連続で出場する一方、普段はロングライドやスローペースでのサイクリングを楽しむ。
フォーチュンバイク
ウエア協力:reric
text:So.Isobe
photo:Makoto.AYANO,So.Isobe
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