2013/10/17(木) - 10:04
キャノンデールプロサイクリングチームが駆り、2013年の"北のクラシック"で鮮烈なデビューを遂げた新型エンデュランスロード、SYNAPSE Hi-Mod。今回のインプレッションでは、最高級フレームに6800系アルテグラを組み合わせた完成車「SYNAPSE Hi-Mod 3 ULTEGRA」をテストした。
新生シナプスを語るに、まずペーター・サガン(スロバキア、キャノンデールプロサイクリング)の功労を忘れるわけにはいかないだろう。彼はこの3月、グリーン1色に塗られたバイクを駆り、ヘント〜ウェベルヘムのゴールライン上で勝利のウイリーを披露。続くロンド・ファン・フラーンデレンでは2位となり、「SYNAPSE Hi-Mod」のデビューをセンセーショナルに彩ったのだ。
同社のピュアレーシングモデルであるSUPER SIX EVOをフォーミュラ1と例えるならば、SYNAPSE Hi-Modは「24時間耐久レースのレーシングカー」。つまり求めたのは、最高速度はそれほど変わらずも、ハイアベレージスピードを長時間に渡ってキープできる走行性能。単に快適性を高めたのではなく、スピード、ハンドリング、軽さなどを高次元でミックスさせるべく研究が行われた。
真横からのカタログ写真を見ただけでは分からないが、実際にSYNAPSE Hi-Modを目にすると、フレームは驚くほど複雑な曲線で構成されていることに気づく。シートチューブ下部が双胴に分かれた「パワーピラミッド」も十二分に強いインパクトを放つのだが、中間部分からギュッとねじれ絞られるフロントフォークや、螺旋形状のシートステーやチェーンステーは、艶めかしいフォルムを描きながらエンドに向けて収束する。
実はこの複雑極まるフォルムこそが「SAVE PLUS」たる、SYNAPSE Hi-Modの核心部分。フロントフォーク、リアステー、シートチューブの形状を前後左右に変化させ、さらにカーボンの積層を最適化することで、快適性と路面追従性を飛躍的に向上させたテクノロジーだ。
SAVE PLUSの詳細な解説については、北イタリアで行われた発表会の特集レポートに譲るが、核となるのは限られたチューブ長のなかで縦・横の偏平や太さを変化させることで振動減衰距離を稼ぐという技術だ。加えてシートポスト径は25.4mmと細く、さらにシートクランプさえ廃したことで、より積極的に"しなり"を生み出すよう工夫されている。
注目したいのは、エストラマーやベアリングといったギミックをフレームに内蔵せず、素材(SUPER SIX EVOと同じバリステックカーボン)や形状の工夫のみで快適性を向上させていること。これはつまり、シッティング、ダンシングなど乗車ポジションに関わらず、常に一定の快適性能を得ることに繋がるのである。
SYNAPSE Hi-Modのもう一つの要は、S.E.R.G.(SYNAPSE Endurance Race Geometry)という独自のジオメトリーにある。これはSUPER SIX EVOと前シナプスの中間の値としたもので、エンデュランスレースで勝つことを目的として新たに打ち出されたものだ。
ペダリングパワーを受け止める核、ボトムブラケットは68mm幅を廃し、左側(ノンドライブ側)を5mm拡大し73mm幅とした左右非対称の「BB30A」を導入。これに伴ってチェーンステーも幅を広げ、従来よりもよりワイドなタイヤクリアランスを確保している。さらに踵のクリアランスも両足でそれぞれ10mmずつと、ポジションの自由度も大きくされている。
そうして完成したSYNAPSE Hi-Modのフレーム重量は、塗装済みで950g。SUPER SIX EVOに比較すれば重たく感じるものの、快適性と剛性の両立を目指した新生SYNAPSEとしては、充分な値だろう。
今回のテスト車両である「SYNAPSE Hi-Mod 3」は、6800系アルテグラとマヴィック・キシリウムエキップSホイールを搭載した完成車。特徴的なSiSL2クランクこそ搭載していないが、即実戦投入可能なスペックを備えた「本気」のアッセンブルだ。早速インプレッションに移ろう。
ーインプレッション
「路面状況がしっかりと伝わってくる。安全で操る楽しみを感じるバイク」錦織大祐(フォーチュンバイク)
シナプスについての一般の認識は、同社が誇るレース向けハイエンドモデルであるSUPER SIX EVOの”走行性能を維持しつつ快適性を大幅に高めたモデル”だと思います。実際に試乗すると単に”振動吸収性が高く、かつ楽に速く走れる”だけではなく、”直進安定性が高く思い通りに曲がれる”といったロードバイクの基本に忠実なバイクだと感じました。普段からレーシングモデルに乗っている方でも、違和感なくシナプスでレースを走れると思います。とてもオールマイティーな性格のバイクです。
このオールマイティーな性格は、設計段階でしならせる部分としならせない部分をはっきりと区分したフレーム形状に由来していると思います。より大きな力を受け止めるために、ボトムブラケットにBB30規格を採用し、シートステーやトップチューブの集合部であるバックステー上端部の剛性を高めているのでしょう。
振動吸収に関してはSUPER SIX EVOと同じく、フロントフォークとリア三角の先端部分を細身とすることで対応しています。加えて、ただ衝撃に対して変形している訳ではなく、変形してから元に戻るまでの時間が非常に早いことが特徴的ですね。
日本では荒れた道が連続している状況というのは余り多くはないですが、ワンステップ前の挙動が次の動作に影響を与えないため、常にその瞬間の路面状況が程よく体に伝わってきますね。”シナプス”という単語は神経細胞の接合部と言う意味を持ちますが、このバイクは路面と体の間をつなげる”接合部”という意味では非常にうまいネーミングだと感心してしまいました。
振動吸収性が高いことはもはや言うまでもないのですが、ハンドリング性能も非常に高い印象です。長めのホイールベースを採用していますが、もたつき感やダルさというわけではなく、”メリハリが効いている”と表現出来ますね。例えば、流している時に不意に目の前に大きなギャップが現れても、フレーム自体が素早いライン変化に対応出来るだけの高い反応性も持っているため、速くて快適ということに加え、安全なバイクであるとも言えます。特にロングライドや長距離レースの後半などでは、バイクに任せられる部分が大きくなるのは大きなアドバンテージですね。
最近一部のコアなライダーの間で話題になっているグラベルロード(未舗装路)での走行も楽しいですね。突発的な回避動作やセンチ単位の細かいハンドリング動作にも思い通りに対応してくれました。エンデュランス系バイクの中には、バイクに走らされていると感じるモデルも多い中、シナプスには操る楽しみを感じることが出来ましたね。
完成車としてのパーツ構成も非常にバランスが良いですね。賛否両論あるBB30ですが、狭いQファクターが実現できるホログラムSiSLクランクを標準装備しているという点ではメリットになっていますね。ジオメトリーに関しては一般的なロードバイクとして扱える寸法に収まっていると思います。もちろんアップライトなポジションも十分対応可能です。
フィールドをロードレースに限ればSUPER SIX EVOの軽快感に軍配がありますが、守備範囲の広さではシナプスが勝っていますね。ちょっと意外かも知れませんが、DHバーを装着してトライアスロンに出場したとしても高い直進性が武器になりますし、ヒルクライムでもバイクに体を預けながらダイナミックにダンシング出来るでしょう。様々な使い方を想定するライダーには是非とも検討の余地がある、非常に完成度が高い1台です。
「ロールスロイスの様な走破性と快適性を持った1台」渡辺将大(タキザワサイクル)
楽しくて、いつまでも乗っていたいバイクという第一印象を受けました。舗装が割れている個所に意図的に突っ込んでも気にならないほどの衝撃吸収性の高さが特徴ですね。乗り味を例えるならば、シクロクロスバイクにロード用のタイヤを履かせたイメージです。
シナプスが最も真価を発揮するのは中速度域での巡航ですね。また、直進性が高いことから低速で景色を楽しみながらのライドにも向くでしょう。一般的なロードバイクの乗り方ではないですが、砂利が敷き詰められたグラベルでの安定性や安心感は特筆すべき点ですね。仲間と一緒に道なき道を冒険してみるのも楽しいはずです。
フレームの造形を確認してみると、BBで剛性や強度を確保しつつ、他の部分を細身にすることで振動吸収性を確保していると推測出来ます。特にシートステーが特徴的で、細身であることに加え、ネジリが入ったことで柔軟性と剛性のバランスを整えられていると感じました。
加えて、BB付近で二股に分かれる特徴的なシートチューブが路面からの突き上げを確実に逃がしているように感じました。フロントフォークは剛性よりも柔軟性を重視している印象ですが、そのしなり加減は適度で、根元の剛性が確保されているために下りの制動時でも不安は感じなかったですね。
フレーム形状の工夫が快適性に大きく影響している一方、操作性に最も大きく影響を与えているのはジオメトリーだと感じました。カタログには明記されていませんが、恐らくフロントセンターが長いために、フロントセンタ―がギャップの上を覆い被さる様な感覚に仕上がっているのでしょう。下りでも非常に安定していました。
ヘッドチューブの高さは良い意味でも悪い意味でも乗り味に大きく影響していますね。アップライトなポジションが取りやすい反面、ダンシング時に少しダルさを感じるため、ペースの上下が激しくダンシングを用いる機会が多い国内レースではデメリットになる可能性があります。
しかし、悪天候や悪路などハードなコンディションや長距離のレースでは圧倒的に有利でしょう。ダートや滑りやすい路面がコースに含まれていればバイクが持つ走破性が存分に発揮されるでしょう。ツール・ド・おきなわの市民200kmのように長距離・長時間レースでは、適度な剛性感が終盤でのアタックやゴールスプリントをアシストしてくれるはずです。
完成車としてのパッケージもよく考えられていますね。標準装備されるマヴィックのキシリウムEQUIPEはフレームと非常にマッチしていますし、アップグレードは特に必要ないほどです。アルミ製のホログラムSiSLクランクは剛性感が高く、パワーをロスしている感覚を感じませんでした。
各社のハイエンドモデルが”レーシングカー”ならば、シナプスは”ロールスロイス”と例えることができると思います。コンフォートバイクは”ビギナー向き”と捉える方も少なくはないでしょうが、シナプスはビギナーから上級者まで、誰が乗っても”楽しくラク”に走れる1台ですね。きっと、いつものライドが自然と長時間・長距離になることでしょう。
キャノンデール SYNAPSE Hi-Mod 3
サイズ:48、51、54、56、58
フレーム:BallisTec Hi-MOD Carbon, Di2 ready, SAVE PLUS, BB30A
フォーク:SAVE PLUS, BallisTec Hi-MOD Carbon, 1-1/8" to 1-1/4" tapered steerer
コンポーネント:シマノ 6800系アルテグラ
クランク:キャノンデール Hollowgram Si, BB30A, FSA Chainrings 50/34
ホイール:マヴィック キシリウムエキップS
ステム、ハンドル:キャノンデール C1
価 格:459,000円
インプレライダーのプロフィール
渡辺将大(タキザワサイクル)
群馬県のタキザワサイクルにてチーフメカニックとして勤務する傍ら、シクロクロスを含むレース参加や林道ツーリングを通して、10代から60代まで幅広い年齢層のユーザーに自転車の楽しみ方を提供している。かつては高校大学と名門校にて競技生活を送り、ベルギーやオランダでの競技経験、1年間のオーストラリア競技留学経験を持つ。グラベルライディングを嗜み、レースだけにとらわれない幅広い自転車の楽しみ方を追求中。
タキザワサイクル
錦織大祐(フォーチュンバイク)
幼少のころから自転車屋を志し、都内の大型プロショップで店長として経験を積んだ後、2010年に東京錦糸町にフォーチュンバイクをオープンさせた新進気鋭の若手店主。世界各国の自転車メーカーと繋がりを持ち、実際の製造現場で得た見聞をユーザーに伝えることを信条としている。シマノ鈴鹿ロードに18年連続で出場する一方、普段はロングライドやスローペースでのサイクリングを楽しむ。
フォーチュンバイク
ウエア協力:reric
text:So.Isobe
photo:Makoto.AYANO,So.Isobe
新生シナプスを語るに、まずペーター・サガン(スロバキア、キャノンデールプロサイクリング)の功労を忘れるわけにはいかないだろう。彼はこの3月、グリーン1色に塗られたバイクを駆り、ヘント〜ウェベルヘムのゴールライン上で勝利のウイリーを披露。続くロンド・ファン・フラーンデレンでは2位となり、「SYNAPSE Hi-Mod」のデビューをセンセーショナルに彩ったのだ。
同社のピュアレーシングモデルであるSUPER SIX EVOをフォーミュラ1と例えるならば、SYNAPSE Hi-Modは「24時間耐久レースのレーシングカー」。つまり求めたのは、最高速度はそれほど変わらずも、ハイアベレージスピードを長時間に渡ってキープできる走行性能。単に快適性を高めたのではなく、スピード、ハンドリング、軽さなどを高次元でミックスさせるべく研究が行われた。
真横からのカタログ写真を見ただけでは分からないが、実際にSYNAPSE Hi-Modを目にすると、フレームは驚くほど複雑な曲線で構成されていることに気づく。シートチューブ下部が双胴に分かれた「パワーピラミッド」も十二分に強いインパクトを放つのだが、中間部分からギュッとねじれ絞られるフロントフォークや、螺旋形状のシートステーやチェーンステーは、艶めかしいフォルムを描きながらエンドに向けて収束する。
実はこの複雑極まるフォルムこそが「SAVE PLUS」たる、SYNAPSE Hi-Modの核心部分。フロントフォーク、リアステー、シートチューブの形状を前後左右に変化させ、さらにカーボンの積層を最適化することで、快適性と路面追従性を飛躍的に向上させたテクノロジーだ。
SAVE PLUSの詳細な解説については、北イタリアで行われた発表会の特集レポートに譲るが、核となるのは限られたチューブ長のなかで縦・横の偏平や太さを変化させることで振動減衰距離を稼ぐという技術だ。加えてシートポスト径は25.4mmと細く、さらにシートクランプさえ廃したことで、より積極的に"しなり"を生み出すよう工夫されている。
注目したいのは、エストラマーやベアリングといったギミックをフレームに内蔵せず、素材(SUPER SIX EVOと同じバリステックカーボン)や形状の工夫のみで快適性を向上させていること。これはつまり、シッティング、ダンシングなど乗車ポジションに関わらず、常に一定の快適性能を得ることに繋がるのである。
SYNAPSE Hi-Modのもう一つの要は、S.E.R.G.(SYNAPSE Endurance Race Geometry)という独自のジオメトリーにある。これはSUPER SIX EVOと前シナプスの中間の値としたもので、エンデュランスレースで勝つことを目的として新たに打ち出されたものだ。
ペダリングパワーを受け止める核、ボトムブラケットは68mm幅を廃し、左側(ノンドライブ側)を5mm拡大し73mm幅とした左右非対称の「BB30A」を導入。これに伴ってチェーンステーも幅を広げ、従来よりもよりワイドなタイヤクリアランスを確保している。さらに踵のクリアランスも両足でそれぞれ10mmずつと、ポジションの自由度も大きくされている。
そうして完成したSYNAPSE Hi-Modのフレーム重量は、塗装済みで950g。SUPER SIX EVOに比較すれば重たく感じるものの、快適性と剛性の両立を目指した新生SYNAPSEとしては、充分な値だろう。
今回のテスト車両である「SYNAPSE Hi-Mod 3」は、6800系アルテグラとマヴィック・キシリウムエキップSホイールを搭載した完成車。特徴的なSiSL2クランクこそ搭載していないが、即実戦投入可能なスペックを備えた「本気」のアッセンブルだ。早速インプレッションに移ろう。
ーインプレッション
「路面状況がしっかりと伝わってくる。安全で操る楽しみを感じるバイク」錦織大祐(フォーチュンバイク)
シナプスについての一般の認識は、同社が誇るレース向けハイエンドモデルであるSUPER SIX EVOの”走行性能を維持しつつ快適性を大幅に高めたモデル”だと思います。実際に試乗すると単に”振動吸収性が高く、かつ楽に速く走れる”だけではなく、”直進安定性が高く思い通りに曲がれる”といったロードバイクの基本に忠実なバイクだと感じました。普段からレーシングモデルに乗っている方でも、違和感なくシナプスでレースを走れると思います。とてもオールマイティーな性格のバイクです。
このオールマイティーな性格は、設計段階でしならせる部分としならせない部分をはっきりと区分したフレーム形状に由来していると思います。より大きな力を受け止めるために、ボトムブラケットにBB30規格を採用し、シートステーやトップチューブの集合部であるバックステー上端部の剛性を高めているのでしょう。
振動吸収に関してはSUPER SIX EVOと同じく、フロントフォークとリア三角の先端部分を細身とすることで対応しています。加えて、ただ衝撃に対して変形している訳ではなく、変形してから元に戻るまでの時間が非常に早いことが特徴的ですね。
日本では荒れた道が連続している状況というのは余り多くはないですが、ワンステップ前の挙動が次の動作に影響を与えないため、常にその瞬間の路面状況が程よく体に伝わってきますね。”シナプス”という単語は神経細胞の接合部と言う意味を持ちますが、このバイクは路面と体の間をつなげる”接合部”という意味では非常にうまいネーミングだと感心してしまいました。
振動吸収性が高いことはもはや言うまでもないのですが、ハンドリング性能も非常に高い印象です。長めのホイールベースを採用していますが、もたつき感やダルさというわけではなく、”メリハリが効いている”と表現出来ますね。例えば、流している時に不意に目の前に大きなギャップが現れても、フレーム自体が素早いライン変化に対応出来るだけの高い反応性も持っているため、速くて快適ということに加え、安全なバイクであるとも言えます。特にロングライドや長距離レースの後半などでは、バイクに任せられる部分が大きくなるのは大きなアドバンテージですね。
最近一部のコアなライダーの間で話題になっているグラベルロード(未舗装路)での走行も楽しいですね。突発的な回避動作やセンチ単位の細かいハンドリング動作にも思い通りに対応してくれました。エンデュランス系バイクの中には、バイクに走らされていると感じるモデルも多い中、シナプスには操る楽しみを感じることが出来ましたね。
完成車としてのパーツ構成も非常にバランスが良いですね。賛否両論あるBB30ですが、狭いQファクターが実現できるホログラムSiSLクランクを標準装備しているという点ではメリットになっていますね。ジオメトリーに関しては一般的なロードバイクとして扱える寸法に収まっていると思います。もちろんアップライトなポジションも十分対応可能です。
フィールドをロードレースに限ればSUPER SIX EVOの軽快感に軍配がありますが、守備範囲の広さではシナプスが勝っていますね。ちょっと意外かも知れませんが、DHバーを装着してトライアスロンに出場したとしても高い直進性が武器になりますし、ヒルクライムでもバイクに体を預けながらダイナミックにダンシング出来るでしょう。様々な使い方を想定するライダーには是非とも検討の余地がある、非常に完成度が高い1台です。
「ロールスロイスの様な走破性と快適性を持った1台」渡辺将大(タキザワサイクル)
楽しくて、いつまでも乗っていたいバイクという第一印象を受けました。舗装が割れている個所に意図的に突っ込んでも気にならないほどの衝撃吸収性の高さが特徴ですね。乗り味を例えるならば、シクロクロスバイクにロード用のタイヤを履かせたイメージです。
シナプスが最も真価を発揮するのは中速度域での巡航ですね。また、直進性が高いことから低速で景色を楽しみながらのライドにも向くでしょう。一般的なロードバイクの乗り方ではないですが、砂利が敷き詰められたグラベルでの安定性や安心感は特筆すべき点ですね。仲間と一緒に道なき道を冒険してみるのも楽しいはずです。
フレームの造形を確認してみると、BBで剛性や強度を確保しつつ、他の部分を細身にすることで振動吸収性を確保していると推測出来ます。特にシートステーが特徴的で、細身であることに加え、ネジリが入ったことで柔軟性と剛性のバランスを整えられていると感じました。
加えて、BB付近で二股に分かれる特徴的なシートチューブが路面からの突き上げを確実に逃がしているように感じました。フロントフォークは剛性よりも柔軟性を重視している印象ですが、そのしなり加減は適度で、根元の剛性が確保されているために下りの制動時でも不安は感じなかったですね。
フレーム形状の工夫が快適性に大きく影響している一方、操作性に最も大きく影響を与えているのはジオメトリーだと感じました。カタログには明記されていませんが、恐らくフロントセンターが長いために、フロントセンタ―がギャップの上を覆い被さる様な感覚に仕上がっているのでしょう。下りでも非常に安定していました。
ヘッドチューブの高さは良い意味でも悪い意味でも乗り味に大きく影響していますね。アップライトなポジションが取りやすい反面、ダンシング時に少しダルさを感じるため、ペースの上下が激しくダンシングを用いる機会が多い国内レースではデメリットになる可能性があります。
しかし、悪天候や悪路などハードなコンディションや長距離のレースでは圧倒的に有利でしょう。ダートや滑りやすい路面がコースに含まれていればバイクが持つ走破性が存分に発揮されるでしょう。ツール・ド・おきなわの市民200kmのように長距離・長時間レースでは、適度な剛性感が終盤でのアタックやゴールスプリントをアシストしてくれるはずです。
完成車としてのパッケージもよく考えられていますね。標準装備されるマヴィックのキシリウムEQUIPEはフレームと非常にマッチしていますし、アップグレードは特に必要ないほどです。アルミ製のホログラムSiSLクランクは剛性感が高く、パワーをロスしている感覚を感じませんでした。
各社のハイエンドモデルが”レーシングカー”ならば、シナプスは”ロールスロイス”と例えることができると思います。コンフォートバイクは”ビギナー向き”と捉える方も少なくはないでしょうが、シナプスはビギナーから上級者まで、誰が乗っても”楽しくラク”に走れる1台ですね。きっと、いつものライドが自然と長時間・長距離になることでしょう。
キャノンデール SYNAPSE Hi-Mod 3
サイズ:48、51、54、56、58
フレーム:BallisTec Hi-MOD Carbon, Di2 ready, SAVE PLUS, BB30A
フォーク:SAVE PLUS, BallisTec Hi-MOD Carbon, 1-1/8" to 1-1/4" tapered steerer
コンポーネント:シマノ 6800系アルテグラ
クランク:キャノンデール Hollowgram Si, BB30A, FSA Chainrings 50/34
ホイール:マヴィック キシリウムエキップS
ステム、ハンドル:キャノンデール C1
価 格:459,000円
インプレライダーのプロフィール
渡辺将大(タキザワサイクル)
群馬県のタキザワサイクルにてチーフメカニックとして勤務する傍ら、シクロクロスを含むレース参加や林道ツーリングを通して、10代から60代まで幅広い年齢層のユーザーに自転車の楽しみ方を提供している。かつては高校大学と名門校にて競技生活を送り、ベルギーやオランダでの競技経験、1年間のオーストラリア競技留学経験を持つ。グラベルライディングを嗜み、レースだけにとらわれない幅広い自転車の楽しみ方を追求中。
タキザワサイクル
錦織大祐(フォーチュンバイク)
幼少のころから自転車屋を志し、都内の大型プロショップで店長として経験を積んだ後、2010年に東京錦糸町にフォーチュンバイクをオープンさせた新進気鋭の若手店主。世界各国の自転車メーカーと繋がりを持ち、実際の製造現場で得た見聞をユーザーに伝えることを信条としている。シマノ鈴鹿ロードに18年連続で出場する一方、普段はロングライドやスローペースでのサイクリングを楽しむ。
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