2009/07/21(火) - 12:20
コルナゴ Arteは6000系アルミの前三角にカーボンシート&チェーンステーを組み合わせたカーボンバックモデルだ。コンポにはシマノ・105を採用し、即レース参加もOKなスペックを持つ。シマノ・105完成車にしてリーズナブルな価格を実現し、「いつかはコルナゴ」という人の夢をかなえてくれた。
「コルナゴ」は1953年、エルネスト・コルナゴがミラノ郊外の町・カンビアーゴに興したブランドだ。創業以来、名だたる強豪チームにフレーム供給を続け、エディ・メルクス、ジュゼッペ・サロンニ、ヨハン・ムセーウ、フランコ・バッレリーニ、アンドレア・ターフィ、パオロ・ベッティーニ、オスカル・フレイレといった超一流選手の勝利にを支え続けてきた。こうして「コルナゴ=世界最高のレーシングバイク」というイメージを確固たるものとしたのである。
エルネスト・コルナゴに「どういったバイク作りを目指しているのですか?」と質問すると、「私はレースで勝てるバイクを作ることしか考えていない」という答えが必ず返ってくる。それを端的に示すのがコルナゴのラインナップだ。ラインナップの多くがプロユースの高級ロードバイクやそれに準ずるモデルであり、いわゆる廉価版が存在しないのだ。そういった点でクルマのフェラーリと非常に近い“立ち位置”を持っていると言えるだろう。
事実、コルナゴとフェラーリとは以前から協力関係にあり、コルナゴの代名詞とも言えるストレートフォークは、1980年代にフェラーリとの共同研究から生まれたものだ。最近ではCF-1、CF-2などのフェラーリとのコラボレートモデルも製作しており、フェラーリF1チームのエースドライバーだったミハエル・シューマッハーもコルナゴオーナーの一人だ。要するに、コルナゴは自転車界における“プレミアムブランド”なのである。
しかし、最高の技術を惜しみなく投入したEPS、エクストリームパワー、エクストリーム-C、C50といったハイエンドモデルは、価格的に手が届きにくいのも事実。「いつかはコルナゴ」という憧れは持っていても、なかなかそれを実現するのは難しい。
そんなライダーにとって、このArteはまさに福音とも言えるバイクだ。6000系アルミニウムチューブの前三角にカーボン製のシート&チェーンステーを組み合わせたカーボンバックモデルとすることにより、カッチリとした乗り味を実現。同時にフルカーボンフレームよりも価格を抑えることにも成功している。
「なんだアルミか」と言う事なかれ。コルナゴご自慢のジルコ加工とハイドロフォーミングを組み合わせたダブルバテッドのチューブは、コルナゴらしさをプンプンと漂わせる素晴らしい作りなのだ。組み合わされるコンポーネントは、信頼性の高いシマノ・105、ホイールは最新のWH-RS30だ。このまま即レース参加OKのハイスペックを誇るのは、さすがコルナゴといったところだ。
― インプレッション ―
「乗り心地の良さに驚いた!」
西谷雅史(サイクルポイント オーベスト)
アルミのフロントトライアングルを持っているので、結構ガチガチの乗り味を想像していたのだが、その予想は良い意味で裏切られた 。振動吸収性がとても高く、乗り心地が非常に良いのだ。カーボン製のシートステーとチェーンステーが効いているのだろう。
それゆえ、剛性感はメチャクチャ高いというほどではない。しかし、フロントトライアングルがガッチリとしているので、ペダルに加えられたパワーの伝達効率は良く、適度に踏み込んでいくとスイスイと進む感覚がある。ただし、大パワーをかけた時はバックが少々負けてしまうようで、鮮烈な加速感というほどではない。
ストレートフォークというとクイックなハンドリングを想像してしまうが、このバイクのハンドリングは直進安定性重視だ。ゆっくり走っていても直進安定性が高いので、初心者にも安全な味付けである。逆にクイックなハンドリングを期待する人にとっては、ダルに感じるかもしれない。
コーナリングはとても良い。振動吸収性が高いため、荒れたコーナーでもバイクが暴れることなく、しっとりと路面に食いついて曲がってくれるのだ。特にハイスピードのコーナリングが気持ち良く、安心して曲がることができる。
ブレーキング性能も悪くない。ハイスピードからのフルブレーキングでも、フレーム全体が粘る感じで止まってくれる。これも初心者に緊張感を強いらない味付けだのだろう。私のようなレース指向の人間にとっては、「コルナゴにしては……」というイメージを持たなくもないが、このバイクのダーゲットはレース指向の人だけではないだろうから、これはこれでアリだと思う。
使用用途としては、ずばり週末のロングライドだ。レースには出ないけど、コルナゴは欲しいという人に最適だと思う。ジルコデザインのチューブもコルナゴらしくてとても良い雰囲気だ。もちろんレースで使っても悪くないが、この乗り心地の良さ、直進安定性の高さ、そしてコーナリングの良さはロングライドでこそ生きるハズだ。
「リーズナブルな価格でも、コルナゴらしさを失っていない」
仲沢 隆(自転車ジャーナリスト)
イタリア人はレースが好きな国民だ。F1に代表される自動車レース、モトGPに代表されるオートバイレース、そしてジロ・デ・イタリアやミラノ~サンレモ、ジロ・デ・ロンバルディアに代表される自転車レースに心の底から熱狂する。
それらを支える乗り物も大好きだ。クルマの世界ではフェラーリやランボルギーニ、アルファロメオ、マゼラーティ、オートバイの世界ではドゥカティやモトグッチ、そして自転車の世界ではコルナゴやデローザ、ピナレロ、ビアンキといった宝石のようなブランドが数多く存在するのだ。
中でもコルナゴは、クルマのフェラーリと並んでイタリアのレース文化を最も具現化したブランドだということができるだろう。売れ線の廉価版などには目もくれずに、ひたすらレースで勝てる車両を作ることにのみ神経を集中しているのだ。コルナゴもフェラーリも、本当にピュアなブランドだと思う。
コルナゴに乗るのには色々な理由があるだろう。「かっこいいから」「プロレースで活躍しているから」「速く走れるから」……。どれも間違いではない。どのような理由であるにせよ、コルナゴのオーナーになった人は、誰でもそれ相応の満足を得られるハズだ。そういった点において、コルナゴというのは本当にすごいブランドだと思う。コルナゴに乗るということは、イタリアのレース文化を手足で感じるということに他ならないのだ。
さて、前置きが長くなったが、このArteもやはりコルナゴそのものであった。しっとりとした乗り味になりがちなカーボンシート&チェーンステーを、アルミの前三角がピリッと引き締めているといった感じだろうか。とにかく、そのバランスが絶妙なのだ。速く快適に走るためにはどうしたら良いか? コルナゴはその辺のツボをしっかりと押さえている。リーズナブルな価格だからといって、コルナゴらしさは少しも失っていない。
剛性感は適度な印象だ。振動吸収性もとても良い。言うまでもなく、ペダリングのパワーはアルミの前三角がガッチリと受け止め、カーボンのシート&チェーンステーが振動吸収を受け持っている。
フォークも良い。ダンシングで体重をかけても挙動が乱れることはなく、抜群の操縦性を見せるのである。どちらかというと直進安定性重視のハンドリングだが、グランフォンドやロングライドをターゲットにしたバイクであるから、この味付けは大正解だ。グラフィックも素晴らしい。イタリアらしい華のあるデザインだ。これを楽しむだけでも、コルナゴを買う価値があると言えるだろう。
少々誉めすぎてしまった感があるが、これまで7台のコルナゴを乗り継いできた「コルナゴ好き」のインプレッションとして、勘弁して頂きたい。
<コルナゴ・Arte スペック>
フレーム アルミニウム+カーボンシート&チェーンステー
フレームマテリアル 6000 シリーズアルミニウム
フォーク コルナゴ・ストリートカーボン
シートポスト FSA・SP-SL280 31.6mm
フロントディレイラー シマノ・105
リアディレイラー シマノ・105
シフター シマノ・105(10S)
ブレーキ シマノ・105
クランクセット シマノ・FC-R600 50×34T
チェーン シマノ・105
カセットスプロケット シマノ・105 10S 12-25T
ハンドルバー FSA・ウィング HB-RD30シルバー
ホイール シマノ・WH-RS30
タイヤ ヴィットリア・ルビーノプロ
サドル プロロゴ・カッパ
カラー BLK/ブラックシルバー、WGL/ホワイトゴールド、WRL/ホワイトレッド
サイズ 420S、450S、480S、500S、520S、540S
希望小売価格(税込み) 262,500円(105完成車)
インプレライダーのプロフィール
西谷雅史(サイクルポイント オーベスト)
東京都調布市にある「サイクルポイント オーベスト」店長。チームオーベストを率い、自らも積極的にレースに参戦。主なリザルトはツール・ド・おきなわ市民200km優勝、ジャパンカップアマチュアレース優勝など。2007年の実業団小川大会では、シマノの野寺秀徳、狩野智也を抑えて優勝している。まさに「日本最速の店長」だ!
www.o-vest.com
仲沢 隆(自転車ジャーナリスト)
ツール・ド・フランスやクラシックレースなどの取材、バイク工房の取材、バイクショーの取材などを通じて、国内外のロードバイク事情に精通する自転車ジャーナリスト。2007年からは大学院にも籍を置き、自転車競技や自転車産業を文化人類学の観点から研究中。
ウェア協力:カステリ(インターマックス)、カンパニョーロ
edit:仲沢 隆
photo:綾野 真
「コルナゴ」は1953年、エルネスト・コルナゴがミラノ郊外の町・カンビアーゴに興したブランドだ。創業以来、名だたる強豪チームにフレーム供給を続け、エディ・メルクス、ジュゼッペ・サロンニ、ヨハン・ムセーウ、フランコ・バッレリーニ、アンドレア・ターフィ、パオロ・ベッティーニ、オスカル・フレイレといった超一流選手の勝利にを支え続けてきた。こうして「コルナゴ=世界最高のレーシングバイク」というイメージを確固たるものとしたのである。
エルネスト・コルナゴに「どういったバイク作りを目指しているのですか?」と質問すると、「私はレースで勝てるバイクを作ることしか考えていない」という答えが必ず返ってくる。それを端的に示すのがコルナゴのラインナップだ。ラインナップの多くがプロユースの高級ロードバイクやそれに準ずるモデルであり、いわゆる廉価版が存在しないのだ。そういった点でクルマのフェラーリと非常に近い“立ち位置”を持っていると言えるだろう。
事実、コルナゴとフェラーリとは以前から協力関係にあり、コルナゴの代名詞とも言えるストレートフォークは、1980年代にフェラーリとの共同研究から生まれたものだ。最近ではCF-1、CF-2などのフェラーリとのコラボレートモデルも製作しており、フェラーリF1チームのエースドライバーだったミハエル・シューマッハーもコルナゴオーナーの一人だ。要するに、コルナゴは自転車界における“プレミアムブランド”なのである。
しかし、最高の技術を惜しみなく投入したEPS、エクストリームパワー、エクストリーム-C、C50といったハイエンドモデルは、価格的に手が届きにくいのも事実。「いつかはコルナゴ」という憧れは持っていても、なかなかそれを実現するのは難しい。
そんなライダーにとって、このArteはまさに福音とも言えるバイクだ。6000系アルミニウムチューブの前三角にカーボン製のシート&チェーンステーを組み合わせたカーボンバックモデルとすることにより、カッチリとした乗り味を実現。同時にフルカーボンフレームよりも価格を抑えることにも成功している。
「なんだアルミか」と言う事なかれ。コルナゴご自慢のジルコ加工とハイドロフォーミングを組み合わせたダブルバテッドのチューブは、コルナゴらしさをプンプンと漂わせる素晴らしい作りなのだ。組み合わされるコンポーネントは、信頼性の高いシマノ・105、ホイールは最新のWH-RS30だ。このまま即レース参加OKのハイスペックを誇るのは、さすがコルナゴといったところだ。
― インプレッション ―
「乗り心地の良さに驚いた!」
西谷雅史(サイクルポイント オーベスト)
アルミのフロントトライアングルを持っているので、結構ガチガチの乗り味を想像していたのだが、その予想は良い意味で裏切られた 。振動吸収性がとても高く、乗り心地が非常に良いのだ。カーボン製のシートステーとチェーンステーが効いているのだろう。
それゆえ、剛性感はメチャクチャ高いというほどではない。しかし、フロントトライアングルがガッチリとしているので、ペダルに加えられたパワーの伝達効率は良く、適度に踏み込んでいくとスイスイと進む感覚がある。ただし、大パワーをかけた時はバックが少々負けてしまうようで、鮮烈な加速感というほどではない。
ストレートフォークというとクイックなハンドリングを想像してしまうが、このバイクのハンドリングは直進安定性重視だ。ゆっくり走っていても直進安定性が高いので、初心者にも安全な味付けである。逆にクイックなハンドリングを期待する人にとっては、ダルに感じるかもしれない。
コーナリングはとても良い。振動吸収性が高いため、荒れたコーナーでもバイクが暴れることなく、しっとりと路面に食いついて曲がってくれるのだ。特にハイスピードのコーナリングが気持ち良く、安心して曲がることができる。
ブレーキング性能も悪くない。ハイスピードからのフルブレーキングでも、フレーム全体が粘る感じで止まってくれる。これも初心者に緊張感を強いらない味付けだのだろう。私のようなレース指向の人間にとっては、「コルナゴにしては……」というイメージを持たなくもないが、このバイクのダーゲットはレース指向の人だけではないだろうから、これはこれでアリだと思う。
使用用途としては、ずばり週末のロングライドだ。レースには出ないけど、コルナゴは欲しいという人に最適だと思う。ジルコデザインのチューブもコルナゴらしくてとても良い雰囲気だ。もちろんレースで使っても悪くないが、この乗り心地の良さ、直進安定性の高さ、そしてコーナリングの良さはロングライドでこそ生きるハズだ。
「リーズナブルな価格でも、コルナゴらしさを失っていない」
仲沢 隆(自転車ジャーナリスト)
イタリア人はレースが好きな国民だ。F1に代表される自動車レース、モトGPに代表されるオートバイレース、そしてジロ・デ・イタリアやミラノ~サンレモ、ジロ・デ・ロンバルディアに代表される自転車レースに心の底から熱狂する。
それらを支える乗り物も大好きだ。クルマの世界ではフェラーリやランボルギーニ、アルファロメオ、マゼラーティ、オートバイの世界ではドゥカティやモトグッチ、そして自転車の世界ではコルナゴやデローザ、ピナレロ、ビアンキといった宝石のようなブランドが数多く存在するのだ。
中でもコルナゴは、クルマのフェラーリと並んでイタリアのレース文化を最も具現化したブランドだということができるだろう。売れ線の廉価版などには目もくれずに、ひたすらレースで勝てる車両を作ることにのみ神経を集中しているのだ。コルナゴもフェラーリも、本当にピュアなブランドだと思う。
コルナゴに乗るのには色々な理由があるだろう。「かっこいいから」「プロレースで活躍しているから」「速く走れるから」……。どれも間違いではない。どのような理由であるにせよ、コルナゴのオーナーになった人は、誰でもそれ相応の満足を得られるハズだ。そういった点において、コルナゴというのは本当にすごいブランドだと思う。コルナゴに乗るということは、イタリアのレース文化を手足で感じるということに他ならないのだ。
さて、前置きが長くなったが、このArteもやはりコルナゴそのものであった。しっとりとした乗り味になりがちなカーボンシート&チェーンステーを、アルミの前三角がピリッと引き締めているといった感じだろうか。とにかく、そのバランスが絶妙なのだ。速く快適に走るためにはどうしたら良いか? コルナゴはその辺のツボをしっかりと押さえている。リーズナブルな価格だからといって、コルナゴらしさは少しも失っていない。
剛性感は適度な印象だ。振動吸収性もとても良い。言うまでもなく、ペダリングのパワーはアルミの前三角がガッチリと受け止め、カーボンのシート&チェーンステーが振動吸収を受け持っている。
フォークも良い。ダンシングで体重をかけても挙動が乱れることはなく、抜群の操縦性を見せるのである。どちらかというと直進安定性重視のハンドリングだが、グランフォンドやロングライドをターゲットにしたバイクであるから、この味付けは大正解だ。グラフィックも素晴らしい。イタリアらしい華のあるデザインだ。これを楽しむだけでも、コルナゴを買う価値があると言えるだろう。
少々誉めすぎてしまった感があるが、これまで7台のコルナゴを乗り継いできた「コルナゴ好き」のインプレッションとして、勘弁して頂きたい。
<コルナゴ・Arte スペック>
フレーム アルミニウム+カーボンシート&チェーンステー
フレームマテリアル 6000 シリーズアルミニウム
フォーク コルナゴ・ストリートカーボン
シートポスト FSA・SP-SL280 31.6mm
フロントディレイラー シマノ・105
リアディレイラー シマノ・105
シフター シマノ・105(10S)
ブレーキ シマノ・105
クランクセット シマノ・FC-R600 50×34T
チェーン シマノ・105
カセットスプロケット シマノ・105 10S 12-25T
ハンドルバー FSA・ウィング HB-RD30シルバー
ホイール シマノ・WH-RS30
タイヤ ヴィットリア・ルビーノプロ
サドル プロロゴ・カッパ
カラー BLK/ブラックシルバー、WGL/ホワイトゴールド、WRL/ホワイトレッド
サイズ 420S、450S、480S、500S、520S、540S
希望小売価格(税込み) 262,500円(105完成車)
インプレライダーのプロフィール
西谷雅史(サイクルポイント オーベスト)
東京都調布市にある「サイクルポイント オーベスト」店長。チームオーベストを率い、自らも積極的にレースに参戦。主なリザルトはツール・ド・おきなわ市民200km優勝、ジャパンカップアマチュアレース優勝など。2007年の実業団小川大会では、シマノの野寺秀徳、狩野智也を抑えて優勝している。まさに「日本最速の店長」だ!
www.o-vest.com
仲沢 隆(自転車ジャーナリスト)
ツール・ド・フランスやクラシックレースなどの取材、バイク工房の取材、バイクショーの取材などを通じて、国内外のロードバイク事情に精通する自転車ジャーナリスト。2007年からは大学院にも籍を置き、自転車競技や自転車産業を文化人類学の観点から研究中。
ウェア協力:カステリ(インターマックス)、カンパニョーロ
edit:仲沢 隆
photo:綾野 真