2013/09/02(月) - 08:45
レース主催者が「世界で最も厳しい登りの一つ」と自信を見せるバルデペニャス・デ・ハエンの激坂が、2年ぶりに登場した。ブエルタ・ア・エスパーニャ第9ステージのフィニッシュラインに向かって、ダニエル・モレーノ(スペイン、カチューシャ)が猛スパート。後続を引き離したモレーノがマイヨロホを手にした。
残り1kmから登りが始まり、残り500mから街中を直線的に登るバルデペニャス・デ・ハエンの坂。「壁」のような最大勾配27%の坂では簡単に数十秒のタイム差がつく。カテゴリー山岳ではないが、11ある山頂フィニッシュの1つにカウントされている。
スタート直後、1km地点でアタックを成功させたのはジョニー・フーガーランド(オランダ、ヴァカンソレイユ・DCM)とルーク・ロウ(イギリス、スカイプロサイクリング)の2人。ここにロイド・モンドリー(フランス、アージェードゥーゼル)とハビエル・アラメンディア(スペイン、カハルーラル)、アントニー・ルー(フランス、FDJ.fr)が加わる形で5名の逃げグループが出来上がる。
最大6分半のリードを得た逃げグループを、フィリップ・ジルベール(ベルギー、BMCレーシングチーム)で勝利を狙うBMCレーシングチームやロット・ベリソル、カチューシャが追撃する展開に。オリーブ畑が広がる丘陵地帯を進むうちにタイム差は縮まり、残り40km地点でタイム差は1分を切った。
やがてこの日唯一のカテゴリー山岳である2級山岳アルト・デ・ロスフライレスに差し掛かると逃げグループは崩壊。逃げの常連アラメンディアが最後まで粘ったものの、残り25km地点で吸収される。
続いてアメツ・チュルカ(スペイン、カハルーラル)やロベルト・キセロフスキー(クロアチア、レディオシャック・レオパード)がそれぞれ登りアタックを仕掛けたが決まらない。すると、モビスターやBMCレーシングチームが牽引するメイン集団から勢いよくエドヴァルド・ボアッソンハーゲン(ノルウェー、スカイプロサイクリング)が飛び出した。
元ノルウェーチャンピオンはそのまま独走で2級山岳をクリアし、20秒リードでテクニカルなダウンヒルに突入。フアンアントニオ・フレチャ(スペイン、ヴァカンソレイユ・DCM)やルイスレオン・サンチェス(スペイン、ベルキンプロサイクリング)が下りでカウンターアタックを仕掛けたが、先頭ボアッソンハーゲンには届かなかった。
40名ほどに絞られたメイン集団を率いたのはカチューシャで、ルーカ・パオリーニ(イタリア、カチューシャ)らの猛烈なペースアップによって残り2kmでボアッソンハーゲンは吸収。バルデペニャス・デ・ハエンの街に差し掛かり、残り1kmのアーチを合図に登りが始まった。
直角コーナーを抜け、じわりじわりと勾配が増すうちに、メイン集団は縦に長く伸びる。最大勾配27%に達する直前に、ダニエル・モレーノ(スペイン、カチューシャ)がアタック。緑色のマイヨプントスを着るモレーノが飛び立った。
激坂を感じさせない軽いダンシングで突き進んだモレーノは、追いすがるアレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター)とホアキン・ロドリゲス(スペイン、カチューシャ)を引き離す。その後方ではマイヨロホを着るニコラス・ロッシュ(アイルランド、サクソ・ティンコフ)らがハンドルに掴まって喘ぐ。
勢いを落とさず激坂をクリアしたモレーノは、ゴール手前の緩斜面区間を踏んで行く。最終的に後続を4秒引き離したモレーノが右手を突き上げた。
2011年大会に登場した際には、ステージ優勝を飾ったロドリゲスのアシストを務めながら、自身もステージ3位に入っているモレーノ。「ユイの壁」にゴールする今年のフレーシュ・ワロンヌでも優勝しており、激坂勝負にめっぽう強い。「パワーとエネルギーが要求されるフィニッシュだった。今日ついたタイム差よりも、昨日のステージで稼いだリードのほうが重要だよ」と激坂の名手は語る。
「チームタイムトライアルでは苦しんだ。だから山頂フィニッシュでタイムロスを帳消しにしたいと思っていた」。その言葉通り、連日ステージ上位に絡む走りを見せるモレーノは、初日のチームタイムトライアルで被ったタイムロスを挽回し、ついに総合首位に。ロッシュが1秒差で続いている。「このレッドジャージを何が何でも守り抜きたいとは思っていない。プリート(ロドリゲス)やニーバリは3週間を走る耐久力があるし、まだまだ何が起こるか分からない。今日の朗報は、プリートが総合上位に上がって来たことだ」。
第9ステージを終えて、依然として総合成績1分以内に6名がひしめく。翌日の第10ステージに登場する超級山岳アルト・デ・アサリャナスの山頂フィニッシュで更なる絞り込みがかかるだろう。マイヨロホを失ったロッシュは「昨年のブエルタは残り4日で全てが変わった。毎日違うことが起こる。最終週は全く違うストーリーが繰り広げられると思う」という言葉を残している。
選手コメントはレース公式サイトやチーム公式サイトより。
ブエルタ・ア・エスパーニャ2013第9ステージ結果
1位 ダニエル・モレーノ(スペイン、カチューシャ) 4h18'57"
2位 アレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター) +04"
3位 ホアキン・ロドリゲス(スペイン、カチューシャ)
4位 ニコラス・ロッシュ(アイルランド、サクソ・ティンコフ) +08"
5位 サムエル・サンチェス(スペイン、エウスカルテル) +09"
6位 リナルド・ノチェンティーニ(イタリア、アージェードゥーゼル)
7位 ヴィンチェンツォ・ニーバリ(イタリア、アスタナ)
8位 フィリップ・ジルベール(ベルギー、BMCレーシングチーム) +13"
9位 ワレン・バーギル(フランス、アルゴス・シマノ)
10位 イゴール・アントン(スペイン、エウスカルテル) +15"
11位 イヴァン・バッソ(イタリア、キャノンデールプロサイクリング)
12位 イヴァン・サンタロミータ(イタリア、BMCレーシングチーム)
13位 セルジオルイス・エナオモントーヤ(コロンビア、スカイプロサイクリング) +18"
14位 ミケル・ニエベ(スペイン、エウスカルテル)
15位 タネル・カンゲルト(エストニア、アスタナ)
16位 バルト・デクレルク(ベルギー、ロット・ベリソル)
17位 クリストファー・ホーナー(アメリカ、レディオシャック・レオパード)
18位 ハビエル・モレーノ(スペイン、モビスター) +26"
19位 ミケーレ・スカルポーニ(イタリア、ランプレ・メリダ)
20位 ドメニコ・ポッツォヴィーヴォ(イタリア、アージェードゥーゼル) +29"
敢闘賞
ハビエル・アラメンディア(スペイン、カハルーラル)
マイヨロホ(個人総合成績)
1位 ダニエル・モレーノ(スペイン、カチューシャ) 35h58'34"
2位 ニコラス・ロッシュ(アイルランド、サクソ・ティンコフ) +01"
3位 ヴィンチェンツォ・ニーバリ(イタリア、アスタナ) +19"
4位 アレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター) +22"
5位 クリストファー・ホーナー(アメリカ、レディオシャック・レオパード) +28"
6位 ホアキン・ロドリゲス(スペイン、カチューシャ) +56"
7位 レオポルド・ケーニッヒ(チェコ、ネットアップ・エンドゥーラ) +1'09"
8位 アイマル・スベルディア(スペイン、レディオシャック・レオパード) +1'10"
9位 リゴベルト・ウラン(コロンビア、スカイプロサイクリング) +1'22"
10位 イヴァン・サンタロミータ(イタリア、BMCレーシングチーム) +1'25"
マイヨプントス(ポイント賞)
1位 ダニエル・モレーノ(スペイン、カチューシャ) 93pts
2位 ニコラス・ロッシュ(アイルランド、サクソ・ティンコフ) 68pts
3位 アレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター) 65pts
マイヨモンターニャ(山岳賞)
1位 ニコラス・ロッシュ(アイルランド、サクソ・ティンコフ) 15pts
2位 レオポルド・ケーニッヒ(チェコ、ネットアップ・エンドゥーラ) 12pts
3位 ダニエル・モレーノ(スペイン、カチューシャ) 12pts
マイヨコンビナーダ(複合賞)
1位 ダニエル・モレーノ(スペイン、カチューシャ) 5pts
2位 ニコラス・ロッシュ(アイルランド、サクソ・ティンコフ) 5pts
3位 レオポルド・ケーニッヒ(チェコ、ネットアップ・エンドゥーラ) 16pts
チーム総合成績
1位 モビスター 107h00'10"
2位 サクソ・ティンコフ +16"
3位 レディオシャック・レオパード +32"
text:Kei Tsuji
photo:Unipublic/Graham Watson
残り1kmから登りが始まり、残り500mから街中を直線的に登るバルデペニャス・デ・ハエンの坂。「壁」のような最大勾配27%の坂では簡単に数十秒のタイム差がつく。カテゴリー山岳ではないが、11ある山頂フィニッシュの1つにカウントされている。
スタート直後、1km地点でアタックを成功させたのはジョニー・フーガーランド(オランダ、ヴァカンソレイユ・DCM)とルーク・ロウ(イギリス、スカイプロサイクリング)の2人。ここにロイド・モンドリー(フランス、アージェードゥーゼル)とハビエル・アラメンディア(スペイン、カハルーラル)、アントニー・ルー(フランス、FDJ.fr)が加わる形で5名の逃げグループが出来上がる。
最大6分半のリードを得た逃げグループを、フィリップ・ジルベール(ベルギー、BMCレーシングチーム)で勝利を狙うBMCレーシングチームやロット・ベリソル、カチューシャが追撃する展開に。オリーブ畑が広がる丘陵地帯を進むうちにタイム差は縮まり、残り40km地点でタイム差は1分を切った。
やがてこの日唯一のカテゴリー山岳である2級山岳アルト・デ・ロスフライレスに差し掛かると逃げグループは崩壊。逃げの常連アラメンディアが最後まで粘ったものの、残り25km地点で吸収される。
続いてアメツ・チュルカ(スペイン、カハルーラル)やロベルト・キセロフスキー(クロアチア、レディオシャック・レオパード)がそれぞれ登りアタックを仕掛けたが決まらない。すると、モビスターやBMCレーシングチームが牽引するメイン集団から勢いよくエドヴァルド・ボアッソンハーゲン(ノルウェー、スカイプロサイクリング)が飛び出した。
元ノルウェーチャンピオンはそのまま独走で2級山岳をクリアし、20秒リードでテクニカルなダウンヒルに突入。フアンアントニオ・フレチャ(スペイン、ヴァカンソレイユ・DCM)やルイスレオン・サンチェス(スペイン、ベルキンプロサイクリング)が下りでカウンターアタックを仕掛けたが、先頭ボアッソンハーゲンには届かなかった。
40名ほどに絞られたメイン集団を率いたのはカチューシャで、ルーカ・パオリーニ(イタリア、カチューシャ)らの猛烈なペースアップによって残り2kmでボアッソンハーゲンは吸収。バルデペニャス・デ・ハエンの街に差し掛かり、残り1kmのアーチを合図に登りが始まった。
直角コーナーを抜け、じわりじわりと勾配が増すうちに、メイン集団は縦に長く伸びる。最大勾配27%に達する直前に、ダニエル・モレーノ(スペイン、カチューシャ)がアタック。緑色のマイヨプントスを着るモレーノが飛び立った。
激坂を感じさせない軽いダンシングで突き進んだモレーノは、追いすがるアレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター)とホアキン・ロドリゲス(スペイン、カチューシャ)を引き離す。その後方ではマイヨロホを着るニコラス・ロッシュ(アイルランド、サクソ・ティンコフ)らがハンドルに掴まって喘ぐ。
勢いを落とさず激坂をクリアしたモレーノは、ゴール手前の緩斜面区間を踏んで行く。最終的に後続を4秒引き離したモレーノが右手を突き上げた。
2011年大会に登場した際には、ステージ優勝を飾ったロドリゲスのアシストを務めながら、自身もステージ3位に入っているモレーノ。「ユイの壁」にゴールする今年のフレーシュ・ワロンヌでも優勝しており、激坂勝負にめっぽう強い。「パワーとエネルギーが要求されるフィニッシュだった。今日ついたタイム差よりも、昨日のステージで稼いだリードのほうが重要だよ」と激坂の名手は語る。
「チームタイムトライアルでは苦しんだ。だから山頂フィニッシュでタイムロスを帳消しにしたいと思っていた」。その言葉通り、連日ステージ上位に絡む走りを見せるモレーノは、初日のチームタイムトライアルで被ったタイムロスを挽回し、ついに総合首位に。ロッシュが1秒差で続いている。「このレッドジャージを何が何でも守り抜きたいとは思っていない。プリート(ロドリゲス)やニーバリは3週間を走る耐久力があるし、まだまだ何が起こるか分からない。今日の朗報は、プリートが総合上位に上がって来たことだ」。
第9ステージを終えて、依然として総合成績1分以内に6名がひしめく。翌日の第10ステージに登場する超級山岳アルト・デ・アサリャナスの山頂フィニッシュで更なる絞り込みがかかるだろう。マイヨロホを失ったロッシュは「昨年のブエルタは残り4日で全てが変わった。毎日違うことが起こる。最終週は全く違うストーリーが繰り広げられると思う」という言葉を残している。
選手コメントはレース公式サイトやチーム公式サイトより。
ブエルタ・ア・エスパーニャ2013第9ステージ結果
1位 ダニエル・モレーノ(スペイン、カチューシャ) 4h18'57"
2位 アレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター) +04"
3位 ホアキン・ロドリゲス(スペイン、カチューシャ)
4位 ニコラス・ロッシュ(アイルランド、サクソ・ティンコフ) +08"
5位 サムエル・サンチェス(スペイン、エウスカルテル) +09"
6位 リナルド・ノチェンティーニ(イタリア、アージェードゥーゼル)
7位 ヴィンチェンツォ・ニーバリ(イタリア、アスタナ)
8位 フィリップ・ジルベール(ベルギー、BMCレーシングチーム) +13"
9位 ワレン・バーギル(フランス、アルゴス・シマノ)
10位 イゴール・アントン(スペイン、エウスカルテル) +15"
11位 イヴァン・バッソ(イタリア、キャノンデールプロサイクリング)
12位 イヴァン・サンタロミータ(イタリア、BMCレーシングチーム)
13位 セルジオルイス・エナオモントーヤ(コロンビア、スカイプロサイクリング) +18"
14位 ミケル・ニエベ(スペイン、エウスカルテル)
15位 タネル・カンゲルト(エストニア、アスタナ)
16位 バルト・デクレルク(ベルギー、ロット・ベリソル)
17位 クリストファー・ホーナー(アメリカ、レディオシャック・レオパード)
18位 ハビエル・モレーノ(スペイン、モビスター) +26"
19位 ミケーレ・スカルポーニ(イタリア、ランプレ・メリダ)
20位 ドメニコ・ポッツォヴィーヴォ(イタリア、アージェードゥーゼル) +29"
敢闘賞
ハビエル・アラメンディア(スペイン、カハルーラル)
マイヨロホ(個人総合成績)
1位 ダニエル・モレーノ(スペイン、カチューシャ) 35h58'34"
2位 ニコラス・ロッシュ(アイルランド、サクソ・ティンコフ) +01"
3位 ヴィンチェンツォ・ニーバリ(イタリア、アスタナ) +19"
4位 アレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター) +22"
5位 クリストファー・ホーナー(アメリカ、レディオシャック・レオパード) +28"
6位 ホアキン・ロドリゲス(スペイン、カチューシャ) +56"
7位 レオポルド・ケーニッヒ(チェコ、ネットアップ・エンドゥーラ) +1'09"
8位 アイマル・スベルディア(スペイン、レディオシャック・レオパード) +1'10"
9位 リゴベルト・ウラン(コロンビア、スカイプロサイクリング) +1'22"
10位 イヴァン・サンタロミータ(イタリア、BMCレーシングチーム) +1'25"
マイヨプントス(ポイント賞)
1位 ダニエル・モレーノ(スペイン、カチューシャ) 93pts
2位 ニコラス・ロッシュ(アイルランド、サクソ・ティンコフ) 68pts
3位 アレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター) 65pts
マイヨモンターニャ(山岳賞)
1位 ニコラス・ロッシュ(アイルランド、サクソ・ティンコフ) 15pts
2位 レオポルド・ケーニッヒ(チェコ、ネットアップ・エンドゥーラ) 12pts
3位 ダニエル・モレーノ(スペイン、カチューシャ) 12pts
マイヨコンビナーダ(複合賞)
1位 ダニエル・モレーノ(スペイン、カチューシャ) 5pts
2位 ニコラス・ロッシュ(アイルランド、サクソ・ティンコフ) 5pts
3位 レオポルド・ケーニッヒ(チェコ、ネットアップ・エンドゥーラ) 16pts
チーム総合成績
1位 モビスター 107h00'10"
2位 サクソ・ティンコフ +16"
3位 レディオシャック・レオパード +32"
text:Kei Tsuji
photo:Unipublic/Graham Watson
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