2013/08/25(日) - 10:21
シーズン最後のグランツール、ブエルタ・ア・エスパーニャが開幕。2008年にアルベルト・コンタドール(スペイン)が達成して以来となるジロ・デ・イタリアとブエルタ・ア・エスパーニャ同年制覇に向けて、優勝候補の一角ヴィンチェンツォ・ニーバリ(イタリア、アスタナ)が最高のスタートを切った。
レース主催者が「グランツール史上初めて海上をスタート」と自慢げに宣言していた通り、8月24日、ブエルタ第1ステージはガリシア地方名物の養殖桟橋の上をスタートした。
ここ数年間、おおむね15km前後の距離で行なわれてきたブエルタの開幕チームタイムトライアル。今年はその全長が27.4kmに伸ばされたため、初日の顔見せとは呼べないほどのタイム差がつく。登りを含むテクニカルな前半部と、フラットで直線基調の後半部に分けられる難コースで、3週間の闘いは幕を明けた。
レース中盤に暫定トップタイムをマークしたのは、昨年のロード世界選手権チームTTで優勝したオメガファーマ・クイックステップ。世界TTチャンピオンのトニ・マルティン(ドイツ、オメガファーマ・クイックステップ)率いるベルギーチームが序盤からトップタイムを連発し、30分15秒でフィニッシュラインに飛び込む。他のチームメンバーがフロント56Tを使う中、マルティンは58Tを踏み抜いた。
しかし世界チャンピオンチームのタイムは、後半の平坦区間で追い上げたレディオシャック・レオパードに塗り替えられる。昨年のツール以来のグランツール出場となったファビアン・カンチェラーラ(スイス、レディオシャック・レオパード)が積極的に隊列を率い、オメガファーマ・クイックステップのトップタイムを5秒更新した。
最終走のアスタナは、日がすっかり西に傾いた20時12分に桟橋を駆け出す。9.2km地点の第1計測で、アスタナはオメガファーマ・クイックステップから4秒遅れ。他チームが追い風区間で選手を次々に失う中、後半に入っても隊列を崩さないアスタナがタイムを伸ばす。
20km地点の第2計測でオメガファーマ・クイックステップを8秒上回ったアスタナは、そのままの勢いでサンシェンショのフィニッシュラインを駆け抜けた。平均スピードは54.8km/h。
最後まで残ったメンバー6名のうち、先頭でフィニッシュしたのは、2度目の総合優勝がかかるニーバリではなく、最終コーナーで前に出たヤネス・ブライコヴィッチ(スロベニア、アスタナ)。アスタナとの契約を更新出来ず、他チームとの交渉を続けているスロベニア生まれの28歳がマイヨロホ着用の栄誉を得た。
「自分にとって今日はラッキーデーだった。朝目覚めた瞬間からフィニッシュラインを切るまで、全てが上手く行ったんだ。今シーズンは不運続きだったからレッドジャージ獲得は嬉しいし、何よりも強いチームを誇りに思う。チームは最終日にこのジャージを着るべく出場しているんだ。チームにとって良いスタートだと思う」と、細身のオールラウンダーは話す。大柄な選手のために用意されたマイヨロホは、小柄なブライコヴィッチには大きすぎた。なお、ブライコヴィッチは2006年のブエルタでもガリシア州のステージでリーダージャージ(当時は金色のマイヨオロ)を2日間着用している。
ブライコヴィッチは2004年にU23世界TTチャンピオンに輝き、2010年クリテリウム・ドゥ・ドーフィネ総合優勝、2012年ツール・ド・フランス総合9位という成績を残す。今シーズンは5月のジロ・デ・イタリアに出場予定だったが、ウイルス性の胃腸トラブルによって欠場。ツール・ド・フランスは山岳ステージ突入を前に第7ステージで落車リタイアしている。
ヤコブ・フグルサング(デンマーク)とともにアスタナのセカンドエースとしてブエルタに出場しているが、あくまでもその役目はニーバリをアシストすること。インタビューでブライコヴィッチは「チームリーダーはヴィンチェンツォ・ニーバリであることに議論の余地はない。彼は総合優勝の最有力候補であり、彼のために働くつもり」と念を押している。
総合有力候補のタイムを見てみると、ニーバリ擁するアスタナは、スカイプロサイクリング(エナオモントーヤ)から22秒、モビスター(バルベルデ)から29秒、サクソ・ティンコフ(クロイツィゲル)から32秒、ベルキンプロサイクリング(モレマ)から46秒、ランプレ・メリダ(スカルポーニ)から56秒、カチューシャ(ロドリゲス)から59秒ものリードを得ることに成功した。その一方でキャノンデールプロサイクリング(バッソ)やカハルーラル(アローヨ)、ガーミン・シャープ(マーティン)、アージェードゥーゼル(ポッツォヴィーヴォ)は初日から1分以上遅れる展開に。
翌日は大会最初の頂上ゴールが登場。ブエルタは前半戦から激しいマイヨロホ争いが繰り広げられることになりそうだ。
選手コメントはレース公式サイトならびにチーム公式サイトより。
ブエルタ・ア・エスパーニャ2013第1ステージ結果
1位 アスタナ 29'59"
2位 レディオシャック・レオパード +10"
3位 オメガファーマ・クイックステップ +16"
4位 スカイプロサイクリング +22"
5位 モビスター +29"
6位 サクソ・ティンコフ +32"
7位 ネットアップ・エンドゥーラ +35"
8位 BMCレーシングチーム +36"
9位 オリカ・グリーンエッジ +45"
10位 ベルキンプロサイクリング +46"
11位 ランプレ・メリダ +56"
12位 カチューシャ +59"
13位 ロット・ベリソル +1'14"
14位 エウスカルテル・エウスカディ
15位 ヴァカンソレイユ・DCM +1'18"
16位 FDJ.fr +1'25"
17位 キャノンデールプロサイクリング +1'26"
18位 カハルーラル +1'38"
19位 ガーミン・シャープ +1'41"
20位 アージェードゥーゼル
21位 アルゴス・シマノ +1'53"
22位 コフィディス +1'55"
敢闘賞
ヤネス・ブライコヴィッチ(スロベニア、アスタナ)
個人総合成績(マイヨロホ)
1位 ヤネス・ブライコヴィッチ(スロベニア、アスタナ) 29'59"
2位 ヴィンチェンツォ・ニーバリ(イタリア、アスタナ)
3位 パオロ・ティラロンゴ(イタリア、アスタナ)
4位 ヤコブ・フグルサング(デンマーク、アスタナ)
5位 アンドレー・グリブコ(ウクライナ、アスタナ)
6位 タネル・カンゲルト(エストニア、アスタナ)
7位 ファビアン・カンチェラーラ(スイス、レディオシャック・レオパード) +10"
8位 アイマル・スベルディア(スペイン、レディオシャック・レオパード)
9位 マルケル・イリサール(スペイン、レディオシャック・レオパード)
10位 ロベルト・キセロフスキー(クロアチア、レディオシャック・レオパード)
チーム総合成績
1位 アスタナ 29'59"
2位 レディオシャック・レオパード +10"
3位 オメガファーマ・クイックステップ +16"
text:Kei Tsuji
photo:Cor Vos, Unipublic
レース主催者が「グランツール史上初めて海上をスタート」と自慢げに宣言していた通り、8月24日、ブエルタ第1ステージはガリシア地方名物の養殖桟橋の上をスタートした。
ここ数年間、おおむね15km前後の距離で行なわれてきたブエルタの開幕チームタイムトライアル。今年はその全長が27.4kmに伸ばされたため、初日の顔見せとは呼べないほどのタイム差がつく。登りを含むテクニカルな前半部と、フラットで直線基調の後半部に分けられる難コースで、3週間の闘いは幕を明けた。
レース中盤に暫定トップタイムをマークしたのは、昨年のロード世界選手権チームTTで優勝したオメガファーマ・クイックステップ。世界TTチャンピオンのトニ・マルティン(ドイツ、オメガファーマ・クイックステップ)率いるベルギーチームが序盤からトップタイムを連発し、30分15秒でフィニッシュラインに飛び込む。他のチームメンバーがフロント56Tを使う中、マルティンは58Tを踏み抜いた。
しかし世界チャンピオンチームのタイムは、後半の平坦区間で追い上げたレディオシャック・レオパードに塗り替えられる。昨年のツール以来のグランツール出場となったファビアン・カンチェラーラ(スイス、レディオシャック・レオパード)が積極的に隊列を率い、オメガファーマ・クイックステップのトップタイムを5秒更新した。
最終走のアスタナは、日がすっかり西に傾いた20時12分に桟橋を駆け出す。9.2km地点の第1計測で、アスタナはオメガファーマ・クイックステップから4秒遅れ。他チームが追い風区間で選手を次々に失う中、後半に入っても隊列を崩さないアスタナがタイムを伸ばす。
20km地点の第2計測でオメガファーマ・クイックステップを8秒上回ったアスタナは、そのままの勢いでサンシェンショのフィニッシュラインを駆け抜けた。平均スピードは54.8km/h。
最後まで残ったメンバー6名のうち、先頭でフィニッシュしたのは、2度目の総合優勝がかかるニーバリではなく、最終コーナーで前に出たヤネス・ブライコヴィッチ(スロベニア、アスタナ)。アスタナとの契約を更新出来ず、他チームとの交渉を続けているスロベニア生まれの28歳がマイヨロホ着用の栄誉を得た。
「自分にとって今日はラッキーデーだった。朝目覚めた瞬間からフィニッシュラインを切るまで、全てが上手く行ったんだ。今シーズンは不運続きだったからレッドジャージ獲得は嬉しいし、何よりも強いチームを誇りに思う。チームは最終日にこのジャージを着るべく出場しているんだ。チームにとって良いスタートだと思う」と、細身のオールラウンダーは話す。大柄な選手のために用意されたマイヨロホは、小柄なブライコヴィッチには大きすぎた。なお、ブライコヴィッチは2006年のブエルタでもガリシア州のステージでリーダージャージ(当時は金色のマイヨオロ)を2日間着用している。
ブライコヴィッチは2004年にU23世界TTチャンピオンに輝き、2010年クリテリウム・ドゥ・ドーフィネ総合優勝、2012年ツール・ド・フランス総合9位という成績を残す。今シーズンは5月のジロ・デ・イタリアに出場予定だったが、ウイルス性の胃腸トラブルによって欠場。ツール・ド・フランスは山岳ステージ突入を前に第7ステージで落車リタイアしている。
ヤコブ・フグルサング(デンマーク)とともにアスタナのセカンドエースとしてブエルタに出場しているが、あくまでもその役目はニーバリをアシストすること。インタビューでブライコヴィッチは「チームリーダーはヴィンチェンツォ・ニーバリであることに議論の余地はない。彼は総合優勝の最有力候補であり、彼のために働くつもり」と念を押している。
総合有力候補のタイムを見てみると、ニーバリ擁するアスタナは、スカイプロサイクリング(エナオモントーヤ)から22秒、モビスター(バルベルデ)から29秒、サクソ・ティンコフ(クロイツィゲル)から32秒、ベルキンプロサイクリング(モレマ)から46秒、ランプレ・メリダ(スカルポーニ)から56秒、カチューシャ(ロドリゲス)から59秒ものリードを得ることに成功した。その一方でキャノンデールプロサイクリング(バッソ)やカハルーラル(アローヨ)、ガーミン・シャープ(マーティン)、アージェードゥーゼル(ポッツォヴィーヴォ)は初日から1分以上遅れる展開に。
翌日は大会最初の頂上ゴールが登場。ブエルタは前半戦から激しいマイヨロホ争いが繰り広げられることになりそうだ。
選手コメントはレース公式サイトならびにチーム公式サイトより。
ブエルタ・ア・エスパーニャ2013第1ステージ結果
1位 アスタナ 29'59"
2位 レディオシャック・レオパード +10"
3位 オメガファーマ・クイックステップ +16"
4位 スカイプロサイクリング +22"
5位 モビスター +29"
6位 サクソ・ティンコフ +32"
7位 ネットアップ・エンドゥーラ +35"
8位 BMCレーシングチーム +36"
9位 オリカ・グリーンエッジ +45"
10位 ベルキンプロサイクリング +46"
11位 ランプレ・メリダ +56"
12位 カチューシャ +59"
13位 ロット・ベリソル +1'14"
14位 エウスカルテル・エウスカディ
15位 ヴァカンソレイユ・DCM +1'18"
16位 FDJ.fr +1'25"
17位 キャノンデールプロサイクリング +1'26"
18位 カハルーラル +1'38"
19位 ガーミン・シャープ +1'41"
20位 アージェードゥーゼル
21位 アルゴス・シマノ +1'53"
22位 コフィディス +1'55"
敢闘賞
ヤネス・ブライコヴィッチ(スロベニア、アスタナ)
個人総合成績(マイヨロホ)
1位 ヤネス・ブライコヴィッチ(スロベニア、アスタナ) 29'59"
2位 ヴィンチェンツォ・ニーバリ(イタリア、アスタナ)
3位 パオロ・ティラロンゴ(イタリア、アスタナ)
4位 ヤコブ・フグルサング(デンマーク、アスタナ)
5位 アンドレー・グリブコ(ウクライナ、アスタナ)
6位 タネル・カンゲルト(エストニア、アスタナ)
7位 ファビアン・カンチェラーラ(スイス、レディオシャック・レオパード) +10"
8位 アイマル・スベルディア(スペイン、レディオシャック・レオパード)
9位 マルケル・イリサール(スペイン、レディオシャック・レオパード)
10位 ロベルト・キセロフスキー(クロアチア、レディオシャック・レオパード)
チーム総合成績
1位 アスタナ 29'59"
2位 レディオシャック・レオパード +10"
3位 オメガファーマ・クイックステップ +16"
text:Kei Tsuji
photo:Cor Vos, Unipublic