富士急ハイランドにおいて開催されたキャノンデールの2014年モデル発表&試乗会。新型シナプスは上位モデルのカーボンが話題だが、アルミフレームモデルもラインナップされている。そして定番の人気を誇るCAAD8にも試乗してみた。
アルミモデルCAAD10の人気のお陰でキャノンデールのエリートロードラインナップは非常に好調だという。EVOがハイエンドだけでなくエントリーモデルまでラインナップを揃えたことで今年はカーボンの年となりそうだが、アルミモデルも非常に魅力的。そもそもアルミに尋常ならぬこだわりを見せてきた同社だけのことはある。
今回はディスクブレーキ仕様のシナプスALLOYと、エントリーモデルのCAAD8・105仕様をテストライドした。CAAD10はマイナーチェンジしたそのディテールを紹介しよう。
シナプスDISC5 105
キャノンデール シナプスDISC5 105 (c)Makoto.AYANO
軽合金を意味するALLOYの名前を冠したシナプスALLOYシリーズ。アルミフレームを採用した新型シナプスだ。キャリパーブレーキ仕様のモデルもあるが、今回はディスクブレーキ採用のシナプスDISC5 105に乗ってみた。シマノ105コンポにFSAチェンホイールを採用。ワイヤー引きのディスクブレーキ本体はPromax Renderを採用し、完成車で169,000円のプライスが付く。
素材は6061アルミ。カーボンのシナプス同様のジオメトリーとフレーム形状を採用。ねじれたシートステイや中ほどで大きく潰され、くびれたチェーンステイ。これらがSAVE PLUS(セーブプラス)と呼ばれるマイクロサスペンションを形成する。BB接合部で二股に分かれる「パワーピラミッド」こそ搭載されていないが、代わりにチューブ末端がBB付近でラッパ状に広がるDELTA形状が採用されている。
リラックスポジションを形成するために長めに設定されたヘッドチューブ (c)Makoto.AYANO
カーボンのシナプス同様の形状がアルミで造られたシート周辺部 (c)Makoto.AYANO
振動吸収性を追求したアルミフレームに機械式のディスクブレーキを採用したモデルには、全天候・全地形走破型ロードバイクの性格を感じる。ラック&フェンダーマウント(つまり”ダボ”)も目立たない形で装備されている。
インプレッション
乗り始めた瞬間に本当にアルミフレームなのかと思ってしまうほどに乗り心地だった。そもそも金属フレームに常にある甲高い反響音がほとんど聞こえてこないのだ。素材が他メーカーでも一般的に使用されている6061アルミ合金であることを考慮すれば、上位機種のSYNAPSE Hi-MODのカーボン技術同様にキャノンデールのアルミにおける技術力の高さ体感できるバイクだ。
EVO等に比較して長めに設定されたヘッドチューブ シフトケーブルは内蔵される (c)Makoto.AYANO
シートチューブはカーボン同様の曲線を描く (c)Makoto.AYANO
フォークに直付けされたメカニカルブレーキ本体 (c)Makoto.AYANO
ただ、単純に快適性が高いだけではなく、アルミらしい部分もしっかりと残っており、スプリントしても瞬時に反応してくれた。加えて荒れた路面ではフロントフォークの先端とリアバック全体がサスペンションのようにしなってくれるためトラクションが抜ける様なことはなく、非常に高い安心感を覚えた。この乗り味は長めのヘッドチューブ長やホイールベースとヘッドアングルを寝かせたエンデュランスジオメトリーによるものだと思われる。
しかし、ハンドリングやダンシングにおけるダルさや反応の鈍さは感じなかった。これは上位機種から取り入れた、縦方向には変形するけれど横方向に変形しずらくしたチェーンステーの形状に理由がありそうだ。複雑な形状が苦手な一般的なアルミ合金を自在に成型できる点はカーボン全盛の昨今においてもキャノンデールの強みと言えるだろう。
上りではアルミらしくシャキシャキ走らせることができ、シッティングでもダンシングでもソツなくこなしてくれる。下りでは滑らかに走らせることが可能で、ロングライドの終盤で疲労がたまってきても余裕を持って操れそうだ。制動に関しても特に不安はなく、今回の試乗車には機械式ディスクブレーキが装着されていたがキャリパーブレーキと大きな差の無い操作感だった。また、末端をしならせる設計がなされたフレームだが、ブレーキング時の変形は特に感じなかった。(インプレッションby山本雄哉)
CAAD8
キャノンデールCAAD8 (c)Makoto.AYANO
ヘッドチューブを15mm長くとることでリラックスしたポジションを可能にした (c)Makoto.AYANO
ドライブサイド側をオーバーサイズ化する左右比対称のチェーンステー (c)Makoto.AYANO
CAAD8は上位モデル譲りのレースジオメトリーを持ちながら、ヘッドチューブを15mm長くとることでリラックスしたポジションを可能にしたキャノンデールのエントリーアルミロードバイクだ。
快適性に貢献しつつ横剛性を確保するSAVEステーや、キャノンデールのトレードマークであるダブルパス・スムーズウェルディング、ドライブサイド側のチェーンステーをオーバーサイズ化する左右比対称のチェーンステーなど、ピュアアルミレーサーであるCAAD10のDNAを受け継いでいる。シマノの105、ティアグラ、ソラモデルがあるが、今回は159,000円のプライスが付く105仕様をテストライドした。
快適性に貢献しつつ横剛性を確保するSAVEシートステイ (c)Makoto.AYANO
シートチューブにCAAD8のロゴが入る (c)Makoto.AYANO
フルカーボンのフロントフォーク 内側にULTRAのロゴ (c)Makoto.AYANO
インプレッション
CAAD8はSYNAPSEとは対象的に、カーボンバイクに乗り慣れた体には懐かしいと感じるくらい王道的なアルミの感触が伝わってくるバイクだ。ロードノイズや変速時のショックでフレームが「カーン」と反響する音がやる気にさせてくる。同時に金属フレーム特有のがっしりとした安定感を感じることが出来たため、まさしくビギナーに向くバイクだろう。
レースエントリーを狙ったアルミバイク、キャノンデールCAAD8をテストライド (c)Makoto.AYANO剛性は高めで、体重がある私がスプリントしても反応が遅れるようなことはなかった。しかし、乗り心地が犠牲にされている訳ではなく、大きな振動こそ伝わってくるものの細かな振動は前後のエンド部分がしっかりといなしているように感じた。この理由は上位機種にも採用される「SAVE」と名付けられたシートステーとチェーンステーがしっかりと機能しているからだと思われる。
上りではシッティングで高回転で走らせると剛性を活かせるように感じたが、ダンシングで踏みこんだ際には車体の重さが顔を出してしまう。下りは至ってニュートラルで、ビギナーの速度域であれば問題なく安心して走らせることが出来るだろう。平地ではアップライトなポジションで、軽く回してもスプリントで踏みこんでもしっかりと走ってくれる。フレーム自体は問題ないが、クランクは多少華奢なようで、強く踏み込むとしなりを感じた。新たにBBシェルがBB30になったので、ぜひとも高剛性なクランクを組み合わせて走らせてみたいものだ。
同じ価格帯のSYNAPSE DISC 5とCAAD8 5を乗り比べて分かったことは2点、キャノンデールがアルミに関する進化の手を緩めていないこと、そして明確にバイクの味付けを分けていることだ。また、今回試乗を行わなかったがSYNAPSE DISCとCAAD X DISCでも棲み分けが出来ていることだろう。ハイエンドの「EVOがF1なら新型シナプスは耐久レース用GTマシン」であれば、「CAAD8が市販車ベースのGTマシンならSYNAPSE DISCはラリーカー」とでも言うことが出来るのではないだろうか。(インプレッションby山本雄哉)
マイナーチェンジされたCAAD10
マイナーチェンジされたキャノンデールCAAD10 アルテグラモデル (c)Makoto.AYANO
リアのブレーキケーブルとあわせDi2ケーブルをフレーム内蔵とする (c)Makoto.AYANO
チェーンステイはスピードSAVEを採用した扁平形状 (c)Makoto.AYANO
キャノンデールが「史上最高の性能を持つアルミニウムレーシングバイク」と謳うCAAD10のディテールを紹介する。 多くのカーボンフレームバイクさえ凌ぐ、優れた軽量性、高剛性、スムーズなライディング性能。 以心伝心の乗り心地はまさにキャノンデールのエリートロードバイクそのもの。SUPERSIX EVOと同一のジオメトリーを採用し、レースならではのアグレッシブなポジショニングを実現。フレーム重量は1,050g。
ハイドロフォーミングによるパイプ成型、テーパーバテッドや滑らかなダブルパス溶接など高度なアルミ製造技術を駆使して軽量かつ強度の高いフレームに仕上げている。スピードSAVEステー&フォークなどによりマイクロサスペンションを形成。ただ硬く強いだけでない、高い振動吸収性と快適な乗り心地も手に入れたアルミロードレーサーだ。
スピードSAVEを採用しマイクロサスペンション構造を形成するシートステイ (c)Makoto.AYANO
ダウンチューブ上部にCannondaleのグラフィックが入る (c)Makoto.AYANO
フロントフォークはEVOにも採用されている逆オフセットのエンド (c)Makoto.AYANO
今季モデルは新たに交換式の新型ケーブルストップを採用してマイナーチェンジ。フロントとエンド部のケーブルストップ(ホルダー)はネジ止めとなり、メカニカル(ワイヤー式)かDi2かに合わせて交換して使用する電動・機械式兼用フレームになった。フレームセットの税込み価格は139.000円となる。完成車も実戦的かつ魅力的なパッケージだ。
text:Makoto.AYANO,Yuya.Yamamoto
photo:Makoto.AYANO
アルミモデルCAAD10の人気のお陰でキャノンデールのエリートロードラインナップは非常に好調だという。EVOがハイエンドだけでなくエントリーモデルまでラインナップを揃えたことで今年はカーボンの年となりそうだが、アルミモデルも非常に魅力的。そもそもアルミに尋常ならぬこだわりを見せてきた同社だけのことはある。
今回はディスクブレーキ仕様のシナプスALLOYと、エントリーモデルのCAAD8・105仕様をテストライドした。CAAD10はマイナーチェンジしたそのディテールを紹介しよう。
シナプスDISC5 105

軽合金を意味するALLOYの名前を冠したシナプスALLOYシリーズ。アルミフレームを採用した新型シナプスだ。キャリパーブレーキ仕様のモデルもあるが、今回はディスクブレーキ採用のシナプスDISC5 105に乗ってみた。シマノ105コンポにFSAチェンホイールを採用。ワイヤー引きのディスクブレーキ本体はPromax Renderを採用し、完成車で169,000円のプライスが付く。
素材は6061アルミ。カーボンのシナプス同様のジオメトリーとフレーム形状を採用。ねじれたシートステイや中ほどで大きく潰され、くびれたチェーンステイ。これらがSAVE PLUS(セーブプラス)と呼ばれるマイクロサスペンションを形成する。BB接合部で二股に分かれる「パワーピラミッド」こそ搭載されていないが、代わりにチューブ末端がBB付近でラッパ状に広がるDELTA形状が採用されている。


振動吸収性を追求したアルミフレームに機械式のディスクブレーキを採用したモデルには、全天候・全地形走破型ロードバイクの性格を感じる。ラック&フェンダーマウント(つまり”ダボ”)も目立たない形で装備されている。
インプレッション
乗り始めた瞬間に本当にアルミフレームなのかと思ってしまうほどに乗り心地だった。そもそも金属フレームに常にある甲高い反響音がほとんど聞こえてこないのだ。素材が他メーカーでも一般的に使用されている6061アルミ合金であることを考慮すれば、上位機種のSYNAPSE Hi-MODのカーボン技術同様にキャノンデールのアルミにおける技術力の高さ体感できるバイクだ。



ただ、単純に快適性が高いだけではなく、アルミらしい部分もしっかりと残っており、スプリントしても瞬時に反応してくれた。加えて荒れた路面ではフロントフォークの先端とリアバック全体がサスペンションのようにしなってくれるためトラクションが抜ける様なことはなく、非常に高い安心感を覚えた。この乗り味は長めのヘッドチューブ長やホイールベースとヘッドアングルを寝かせたエンデュランスジオメトリーによるものだと思われる。
しかし、ハンドリングやダンシングにおけるダルさや反応の鈍さは感じなかった。これは上位機種から取り入れた、縦方向には変形するけれど横方向に変形しずらくしたチェーンステーの形状に理由がありそうだ。複雑な形状が苦手な一般的なアルミ合金を自在に成型できる点はカーボン全盛の昨今においてもキャノンデールの強みと言えるだろう。
上りではアルミらしくシャキシャキ走らせることができ、シッティングでもダンシングでもソツなくこなしてくれる。下りでは滑らかに走らせることが可能で、ロングライドの終盤で疲労がたまってきても余裕を持って操れそうだ。制動に関しても特に不安はなく、今回の試乗車には機械式ディスクブレーキが装着されていたがキャリパーブレーキと大きな差の無い操作感だった。また、末端をしならせる設計がなされたフレームだが、ブレーキング時の変形は特に感じなかった。(インプレッションby山本雄哉)
CAAD8



CAAD8は上位モデル譲りのレースジオメトリーを持ちながら、ヘッドチューブを15mm長くとることでリラックスしたポジションを可能にしたキャノンデールのエントリーアルミロードバイクだ。
快適性に貢献しつつ横剛性を確保するSAVEステーや、キャノンデールのトレードマークであるダブルパス・スムーズウェルディング、ドライブサイド側のチェーンステーをオーバーサイズ化する左右比対称のチェーンステーなど、ピュアアルミレーサーであるCAAD10のDNAを受け継いでいる。シマノの105、ティアグラ、ソラモデルがあるが、今回は159,000円のプライスが付く105仕様をテストライドした。



インプレッション
CAAD8はSYNAPSEとは対象的に、カーボンバイクに乗り慣れた体には懐かしいと感じるくらい王道的なアルミの感触が伝わってくるバイクだ。ロードノイズや変速時のショックでフレームが「カーン」と反響する音がやる気にさせてくる。同時に金属フレーム特有のがっしりとした安定感を感じることが出来たため、まさしくビギナーに向くバイクだろう。

上りではシッティングで高回転で走らせると剛性を活かせるように感じたが、ダンシングで踏みこんだ際には車体の重さが顔を出してしまう。下りは至ってニュートラルで、ビギナーの速度域であれば問題なく安心して走らせることが出来るだろう。平地ではアップライトなポジションで、軽く回してもスプリントで踏みこんでもしっかりと走ってくれる。フレーム自体は問題ないが、クランクは多少華奢なようで、強く踏み込むとしなりを感じた。新たにBBシェルがBB30になったので、ぜひとも高剛性なクランクを組み合わせて走らせてみたいものだ。
同じ価格帯のSYNAPSE DISC 5とCAAD8 5を乗り比べて分かったことは2点、キャノンデールがアルミに関する進化の手を緩めていないこと、そして明確にバイクの味付けを分けていることだ。また、今回試乗を行わなかったがSYNAPSE DISCとCAAD X DISCでも棲み分けが出来ていることだろう。ハイエンドの「EVOがF1なら新型シナプスは耐久レース用GTマシン」であれば、「CAAD8が市販車ベースのGTマシンならSYNAPSE DISCはラリーカー」とでも言うことが出来るのではないだろうか。(インプレッションby山本雄哉)
マイナーチェンジされたCAAD10



キャノンデールが「史上最高の性能を持つアルミニウムレーシングバイク」と謳うCAAD10のディテールを紹介する。 多くのカーボンフレームバイクさえ凌ぐ、優れた軽量性、高剛性、スムーズなライディング性能。 以心伝心の乗り心地はまさにキャノンデールのエリートロードバイクそのもの。SUPERSIX EVOと同一のジオメトリーを採用し、レースならではのアグレッシブなポジショニングを実現。フレーム重量は1,050g。
ハイドロフォーミングによるパイプ成型、テーパーバテッドや滑らかなダブルパス溶接など高度なアルミ製造技術を駆使して軽量かつ強度の高いフレームに仕上げている。スピードSAVEステー&フォークなどによりマイクロサスペンションを形成。ただ硬く強いだけでない、高い振動吸収性と快適な乗り心地も手に入れたアルミロードレーサーだ。



今季モデルは新たに交換式の新型ケーブルストップを採用してマイナーチェンジ。フロントとエンド部のケーブルストップ(ホルダー)はネジ止めとなり、メカニカル(ワイヤー式)かDi2かに合わせて交換して使用する電動・機械式兼用フレームになった。フレームセットの税込み価格は139.000円となる。完成車も実戦的かつ魅力的なパッケージだ。
text:Makoto.AYANO,Yuya.Yamamoto
photo:Makoto.AYANO
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