2013/08/16(金) - 08:07
テクニカルな周回コースで落車が発生する中、アンドレ・グライペル(ドイツ、ロット・ベリソル)が貫禄のスプリント勝利。大会連覇を狙うゴール地点フレイメン出身のラース・ボーム(オランダ、ベルキンプロサイクリング)が総合首位に立った。
ベルギーのエッセンからオランダのフレイメンまでの169.6kmで行なわれたエネコ・ツアー(UCIワールドツアー)第4ステージ。ほぼ真っ平らなコースの締めくくりに、テクニカルなフレイメンの周回が待っている。
天候は曇り時々雨で、宮澤崇史(サクソ・ティンコフ)によると「朝から雲行きが怪しいと思っていたら、スタート前になって降り始めた。冬用の半袖を着る選手もいて、本当に寒かった」という。
翌日の第5ステージは個人タイムトライアルで、その後の2ステージは急坂がふんだんに取り入れられた難コース。ビッグスプリンターたちにとって、この日が実質的に最後のチャンスであるため、逃げグループを形成したピーター・ヤコブス(ベルギー、トップスポートフラーンデレン)、スタフ・シェイリンクス(ベルギー、アクセントジョブス)、ピム・リヒハルト(オランダ、ヴァカンソレイユ・DCM)、イオアニス・タモウリディス(ギリシャ、エウスカルテル)のリードは徹底的に抑え込まれた。
最大5分30秒まで広がったタイム差を、リーダージャージ擁するFDJ.frや、スプリンター擁するチームが詰めにかかる。フレイメンの周回コースに入るとタイム差の縮小は加速し、残り35kmでタイム差は1分を切った。
エウスカルテルに所属するギリシャチャンピオンのタモウリディスが粘りを見せたものの、ベルキンプロサイクリングやロット・ベリソル、オメガファーマ・クイックステップ、オリカ・グリーンエッジ率いるメイン集団にスピードで対抗出来ず。逃げは残り10kmを切ってすぐに吸収された。
そこからスプリンターチームによるバトルがスタート。「今日も最後の周回に集中して、ベンナーティ、マルコ(クンプ)を中心にスプリントでステージを狙い走る事がミーティングで決まる。ゴールはトリッキーで、残り1km、700m、400mに90°コーナーがあり、残り3kmからの位置取りが特に重要になる。集団40番手ほどに居ても振り回される為、みな前へ前へとポジションを上げながら速いペースで進む」と振り返る宮澤崇史が、チームメイトを率いて集団先頭まで上がるシーンも。
街中の石畳を含む周回コースは落車を誘発し、残り6kmでコースを塞ぐ大落車が発生。ジャコポ・グアルニエーリ(イタリア、アスタナ)らが巻き込まれ、マルセル・キッテル(ドイツ、アルゴス・シマノ)やブラドレー・ウィギンズ(イギリス、スカイプロサイクリング)はここで遅れてしまう。
先頭では引き続きスプリンターチームがペースを上げて残り1km。テクニカルコーナーが連続したため、どのチームもリードアウトトレインを組めない。ロット・ベリソル勢を先頭に最終コーナーを抜け、総合2位ラース・ボーム(オランダ、ベルキンプロサイクリング)の加速を合図にスプリントが始まった。
ボームの番手から飛び出したのは、赤いポイント賞ジャージを着るアンドレ・グライペル(ドイツ、ロット・ベリソル)。その加速力は圧倒的で、並んでいたタイラー・ファラー(アメリカ、ガーミン・シャープ)を置き去りにし、ジャコモ・ニッツォロ(イタリア、レディオシャック・レオパード)を振り切った。
「3度目の挑戦でようやく勝利を手にすることが出来た」と、今シーズン12勝目を飾ったドイツチャンピオンのグライペル。「今日のステージで、スプリントに向けてチームが完璧なリードアウトを組めることを証明出来た。正しいタイミングで先頭に上がって、正しくスプリントに持ち込めた。細いコースだったので位置取りに細心の注意を払ったよ」。
グライペルはチームと同じロット社がスポンサーを務めるポイント賞でもトップを快走。ボーナスタイムによって総合2位に浮上したが「この先は得意分野ではないステージが続くので、総合成績は関係ない。ステージ優勝が目標で、今日その目標は達成された」と語っている。
スプリントに絡めなかったアルノー・デマール(フランス、FDJ.fr)に代わって総合首位に立ったのは、連日積極的な走りを見せているディフェンディングチャンピオンのボーム。ピュアスプリンターではないボームが、持ち味の独走力を駆使してステージ3位に入った。
ゴール地点フレイメンはボームの生まれ故郷。地元でリーダージャージを手にしたボームは「ホームタウンで開催されるワールドツアーレースで総合リーダーになるなんて、これ以上の喜びはないよ。今日は終盤までレースは比較的平穏だったので、地元のファンに挨拶しながら走った」と喜ぶ。
「明日のタイムトライアルで僕は最後の出走。13kmという距離は完全に僕向き。このエネコツアーの最終日までリーダージャージを守り抜きたいと思う」。大会連覇に向けてボームが順調に駒を進めた。
選手コメントはレース公式サイトより。
エネコ・ツアー2013第4ステージ結果
1位 アンドレ・グライペル(ドイツ、ロット・ベリソル) 3h47'36"
2位 ジャコモ・ニッツォロ(イタリア、レディオシャック・レオパード)
3位 ラース・ボーム(オランダ、ベルキンプロサイクリング)
4位 アレッサンドロ・ペタッキ(イタリア、オメガファーマ・クイックステップ)
5位 アレクサンドル・ポルセフ(ロシア、カチューシャ)
6位 タイラー・ファラー(アメリカ、ガーミン・シャープ)
7位 イェンス・ケウケレール(ベルギー、オリカ・グリーンエッジ)
8位 ヤウヘニ・フタロヴィッチ(ベラルーシ、アージェードゥーゼル)
9位 エリア・ヴィヴィアーニ(イタリア、キャノンデールプロサイクリング)
10位 クリストファー・サットン(オーストラリア、スカイプロサイクリング)
139位 宮澤崇史(日本、サクソ・ティンコフ) +3'11"
個人総合成績
1位 ラース・ボーム(オランダ、ベルキンプロサイクリング) 16h06'15"
2位 アンドレ・グライペル(ドイツ、ロット・ベリソル) +01"
3位 アルノー・デマール(フランス、FDJ.fr) +03"
4位 ゼネク・スティバル(チェコ、オメガファーマ・クイックステップ) +06"
5位 フィリップ・ジルベール(ベルギー、BMCレーシングチーム) +07"
6位 タイラー・ファラー(アメリカ、ガーミン・シャープ) +08"
7位 アレッサンドロ・ペタッキ(イタリア、オメガファーマ・クイックステップ) +13"
8位 ジャコモ・ニッツォロ(イタリア、レディオシャック・レオパード) +15"
9位 テイラー・フィニー(アメリカ、BMCレーシングチーム) +17"
10位 ピーター・ヤコブス(ベルギー、トップスポートフラーンデレン)
126位 宮澤崇史(日本、サクソ・ティンコフ) +5'09"
ポイント賞
アンドレ・グライペル(ドイツ、ロット・ベリソル)
コンバティビティ賞
ローレンス・デフリース(ベルギー、トップスポートフラーンデレン)
チーム総合成績
オメガファーマ・クイックステップ
text:Kei Tsuji
photo:Riccardo Scanferla, Cor Vos
ベルギーのエッセンからオランダのフレイメンまでの169.6kmで行なわれたエネコ・ツアー(UCIワールドツアー)第4ステージ。ほぼ真っ平らなコースの締めくくりに、テクニカルなフレイメンの周回が待っている。
天候は曇り時々雨で、宮澤崇史(サクソ・ティンコフ)によると「朝から雲行きが怪しいと思っていたら、スタート前になって降り始めた。冬用の半袖を着る選手もいて、本当に寒かった」という。
翌日の第5ステージは個人タイムトライアルで、その後の2ステージは急坂がふんだんに取り入れられた難コース。ビッグスプリンターたちにとって、この日が実質的に最後のチャンスであるため、逃げグループを形成したピーター・ヤコブス(ベルギー、トップスポートフラーンデレン)、スタフ・シェイリンクス(ベルギー、アクセントジョブス)、ピム・リヒハルト(オランダ、ヴァカンソレイユ・DCM)、イオアニス・タモウリディス(ギリシャ、エウスカルテル)のリードは徹底的に抑え込まれた。
最大5分30秒まで広がったタイム差を、リーダージャージ擁するFDJ.frや、スプリンター擁するチームが詰めにかかる。フレイメンの周回コースに入るとタイム差の縮小は加速し、残り35kmでタイム差は1分を切った。
エウスカルテルに所属するギリシャチャンピオンのタモウリディスが粘りを見せたものの、ベルキンプロサイクリングやロット・ベリソル、オメガファーマ・クイックステップ、オリカ・グリーンエッジ率いるメイン集団にスピードで対抗出来ず。逃げは残り10kmを切ってすぐに吸収された。
そこからスプリンターチームによるバトルがスタート。「今日も最後の周回に集中して、ベンナーティ、マルコ(クンプ)を中心にスプリントでステージを狙い走る事がミーティングで決まる。ゴールはトリッキーで、残り1km、700m、400mに90°コーナーがあり、残り3kmからの位置取りが特に重要になる。集団40番手ほどに居ても振り回される為、みな前へ前へとポジションを上げながら速いペースで進む」と振り返る宮澤崇史が、チームメイトを率いて集団先頭まで上がるシーンも。
街中の石畳を含む周回コースは落車を誘発し、残り6kmでコースを塞ぐ大落車が発生。ジャコポ・グアルニエーリ(イタリア、アスタナ)らが巻き込まれ、マルセル・キッテル(ドイツ、アルゴス・シマノ)やブラドレー・ウィギンズ(イギリス、スカイプロサイクリング)はここで遅れてしまう。
先頭では引き続きスプリンターチームがペースを上げて残り1km。テクニカルコーナーが連続したため、どのチームもリードアウトトレインを組めない。ロット・ベリソル勢を先頭に最終コーナーを抜け、総合2位ラース・ボーム(オランダ、ベルキンプロサイクリング)の加速を合図にスプリントが始まった。
ボームの番手から飛び出したのは、赤いポイント賞ジャージを着るアンドレ・グライペル(ドイツ、ロット・ベリソル)。その加速力は圧倒的で、並んでいたタイラー・ファラー(アメリカ、ガーミン・シャープ)を置き去りにし、ジャコモ・ニッツォロ(イタリア、レディオシャック・レオパード)を振り切った。
「3度目の挑戦でようやく勝利を手にすることが出来た」と、今シーズン12勝目を飾ったドイツチャンピオンのグライペル。「今日のステージで、スプリントに向けてチームが完璧なリードアウトを組めることを証明出来た。正しいタイミングで先頭に上がって、正しくスプリントに持ち込めた。細いコースだったので位置取りに細心の注意を払ったよ」。
グライペルはチームと同じロット社がスポンサーを務めるポイント賞でもトップを快走。ボーナスタイムによって総合2位に浮上したが「この先は得意分野ではないステージが続くので、総合成績は関係ない。ステージ優勝が目標で、今日その目標は達成された」と語っている。
スプリントに絡めなかったアルノー・デマール(フランス、FDJ.fr)に代わって総合首位に立ったのは、連日積極的な走りを見せているディフェンディングチャンピオンのボーム。ピュアスプリンターではないボームが、持ち味の独走力を駆使してステージ3位に入った。
ゴール地点フレイメンはボームの生まれ故郷。地元でリーダージャージを手にしたボームは「ホームタウンで開催されるワールドツアーレースで総合リーダーになるなんて、これ以上の喜びはないよ。今日は終盤までレースは比較的平穏だったので、地元のファンに挨拶しながら走った」と喜ぶ。
「明日のタイムトライアルで僕は最後の出走。13kmという距離は完全に僕向き。このエネコツアーの最終日までリーダージャージを守り抜きたいと思う」。大会連覇に向けてボームが順調に駒を進めた。
選手コメントはレース公式サイトより。
エネコ・ツアー2013第4ステージ結果
1位 アンドレ・グライペル(ドイツ、ロット・ベリソル) 3h47'36"
2位 ジャコモ・ニッツォロ(イタリア、レディオシャック・レオパード)
3位 ラース・ボーム(オランダ、ベルキンプロサイクリング)
4位 アレッサンドロ・ペタッキ(イタリア、オメガファーマ・クイックステップ)
5位 アレクサンドル・ポルセフ(ロシア、カチューシャ)
6位 タイラー・ファラー(アメリカ、ガーミン・シャープ)
7位 イェンス・ケウケレール(ベルギー、オリカ・グリーンエッジ)
8位 ヤウヘニ・フタロヴィッチ(ベラルーシ、アージェードゥーゼル)
9位 エリア・ヴィヴィアーニ(イタリア、キャノンデールプロサイクリング)
10位 クリストファー・サットン(オーストラリア、スカイプロサイクリング)
139位 宮澤崇史(日本、サクソ・ティンコフ) +3'11"
個人総合成績
1位 ラース・ボーム(オランダ、ベルキンプロサイクリング) 16h06'15"
2位 アンドレ・グライペル(ドイツ、ロット・ベリソル) +01"
3位 アルノー・デマール(フランス、FDJ.fr) +03"
4位 ゼネク・スティバル(チェコ、オメガファーマ・クイックステップ) +06"
5位 フィリップ・ジルベール(ベルギー、BMCレーシングチーム) +07"
6位 タイラー・ファラー(アメリカ、ガーミン・シャープ) +08"
7位 アレッサンドロ・ペタッキ(イタリア、オメガファーマ・クイックステップ) +13"
8位 ジャコモ・ニッツォロ(イタリア、レディオシャック・レオパード) +15"
9位 テイラー・フィニー(アメリカ、BMCレーシングチーム) +17"
10位 ピーター・ヤコブス(ベルギー、トップスポートフラーンデレン)
126位 宮澤崇史(日本、サクソ・ティンコフ) +5'09"
ポイント賞
アンドレ・グライペル(ドイツ、ロット・ベリソル)
コンバティビティ賞
ローレンス・デフリース(ベルギー、トップスポートフラーンデレン)
チーム総合成績
オメガファーマ・クイックステップ
text:Kei Tsuji
photo:Riccardo Scanferla, Cor Vos
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