2つの難関山岳を越えるツアー・オブ・ユタ(UCI2.1)第6ステージでフランシスコ・マンセーボ(スペイン、5アワーエナジー)が優勝。ライバルを引き離したトム・ダニエルソン(アメリカ、ガーミン・シャープ)が逆転で総合優勝に輝いた。



ソルトレイクシティ近郊のパークシティをスタートするプロトンソルトレイクシティ近郊のパークシティをスタートするプロトン photo:Tour of Utahソルトレイクシティで開催された2002年冬季オリンピックの会場パークシティを発着するユタ最終ステージ。距離は125.5kmと短いが、後半にかけて2級山岳ウルフクリークランチと超級山岳エンパイアーパスが登場する。最後の難所であるエンパイアーパスはゴールから8.4kmしか離れていない。

パークシティをスタートするプロトンパークシティをスタートするプロトン photo:Tour of Utahアタックに次ぐアタックでメイン集団から飛び出したのは15名。ポイント賞2位のマイケル・マシューズ(オーストラリア、オリカ・グリーンエッジ)やフランシスコ・マンセーボ(スペイン、5アワーエナジー)、ジャスパー・ステイヴェン(ベルギー、ボントレガー)らが逃げた。

スプリントで勝利したフランシスコ・マンセーボ(スペイン、5アワーエナジー)スプリントで勝利したフランシスコ・マンセーボ(スペイン、5アワーエナジー) photo:Tour of Utah中間スプリントで積極的にポイントを稼いだマシューズは、フレフ・ファンアフェルマート(ベルギー、BMCレーシングチーム)をポイント数で上回ってポイント賞ランキング首位に。マシューズはそれに飽き足らず、登りでも積極的な走りを見せる。

両手を挙げてゴールするトム・ダニエルソン(アメリカ、ガーミン・シャープ)両手を挙げてゴールするトム・ダニエルソン(アメリカ、ガーミン・シャープ) photo:Tour of Utahメイン集団から3分リードを得て超級山岳エンパイアーパスに突入した逃げグループからマシューズがアタック。今大会すでに2勝を飾っているスプリンターの動きに、マンセーボらが合流する。一方のメイン集団では逆転狙いのガーミン・シャープがペースアップを開始した。

勾配11%区間を含むエンパイアーパスで先頭はマシューズとマンセーボの2人に。果敢に走ったマシューズのアタックは決まらず、マンセーボの独走が始まった。

メイン集団からは0秒差で総合2位のトム・ダニエルソン(アメリカ、ガーミン・シャープ)がアタック。リーダージャージのクリストファー・ホーナー(アメリカ、レディオシャック・レオパード)はこのダニエルソンの加速に着いていけなかった。

エンパイアーパス頂上を前に、ライバルを引き離したダニエルソンは先頭のマンセーボをパス。マンセーボは距離を広げられながらもダニエルソンに食らいつく。ゴールに至る下りでハニエル・アセベドカーイェ(コロンビア、ジェイミス・ハーゲンズベルマン)が先頭2名に追いつき、3名によるステージ優勝争いが始まる。

すでにホーナーを1分以上引き離し、総合逆転を確実なものにしていたダニエルソンはステージ優勝を狙わず、マンセーボとアセベドカーイェの2人がスプリント。先着したマンセーボが歓喜のガッツポーズを繰り出し、4秒遅れのダニエルソンも両手を挙げてゴールした。

現在37歳のマンセーボは、2000年ツール・ド・フランスでマイヨブランを獲得し、2004年と2005年にブエルタ・ア・エスパーニャで総合3位。2006年にスペインで勃発したオペラシオンプエルトで名前が挙がったため当時所属していたアージェードゥーゼルを離脱したが、結果的にドーピングへの関与は認められなかった。それ以降ロックレーシングなどの格下チームで走り続けている。

第2ステージで激しく落車して骨折を負ったチームメイトのナイト・イングリッシュにこの日の勝利を捧げたマンセーボ。「2日目に落車したチームメイトのための勝利だ。登りでダニエルソンが追いついたとき、総合狙いの彼に着いていくことが出来れば、ステージ優勝のチャンスがあると思った。下りでアセベドが追いついてきたのには驚いたけど、彼が前を引き続けたこともあって、スプリントで勝てた」と喜ぶ。

そして総合優勝の栄冠はダニエルソンの手に。最終的にホーナーとの総合タイム差は1分29秒まで広がった。「今日は自分の理想を追い求め、恐れずに勝負を挑み、それを成し遂げた。今日の走りを誇りに思う。ここまで数年間ずっとチームメイトのアシストを受けていたのに、結果で報いることが出来ていかなかった。だから本当に嬉しい」と、ダニエルソンは喜びを語る。ディスカバリーチャンネル時代のドーピングを告白し、2012年9月に6ヶ月間の出場停止処分を受けた35歳のアメリカンが復活を遂げた。

増田成幸(キャノンデール・プロサイクリング)と西薗良太(チャンピオンシステム)はともに13分以上遅れてゴール。それぞれ総合46位と総合73位で6日間の闘いを終えた。両者ともにユタ州からコロラド州に移動。8月19日にアスペンで開幕するUSAプロサイクリングチャレンジ(UCI2.HC)に出場する。

「最終日は昨日のツケが回ってきました。最後の登りで完全にストップしてグルペット。今回“Tour of Utah”は絶対的なエースがいないので、ミーティングで大体の流れだけを決めて、みんな比較的自由な感じで走りました」と増田。西薗は「最終ステージに似つかわしくない激しいステージでした。最後の登り二つは言うにおよばず、途中の横風も大変なことに。おまけにフィーディングで絡んですっ転ぶというオマケ付き。膝頭の肉で全て受け止めたので身体は元気でしたが、肉がなくなりすぎて六針ほど縫ってきました」とコメントしている。

ステージ優勝を飾ったフランシスコ・マンセーボ(スペイン、5アワーエナジー)ステージ優勝を飾ったフランシスコ・マンセーボ(スペイン、5アワーエナジー) photo:Tour of Utah逆転によって表彰台の頂点に立つトム・ダニエルソン(アメリカ、ガーミン・シャープ)逆転によって表彰台の頂点に立つトム・ダニエルソン(アメリカ、ガーミン・シャープ) photo:Tour of Utah




Stage 6 Highlights from the Tour of Utah from Tour of Utah on Vimeo.






選手コメントはレース公式サイトならびにTwitterより。

ツアー・オブ・ユタ2013第6ステージ結果
1位 フランシスコ・マンセーボ(スペイン、5アワーエナジー)          3h12'52"
2位 ハニエル・アセベドカーイェ(コロンビア、ジェイミス・ハーゲンズベルマン)
3位 トム・ダニエルソン(アメリカ、ガーミン・シャープ)              +04"
4位 ルーカス・ユーザー(アメリカ、ユナイテッドヘルスケア)           +1'29"
5位 マシュー・ブッシュ(アメリカ、レディオシャック・レオパード)
6位 ミヒャエル・シェアー(スイス、BMCレーシングチーム)
7位 フィリップ・ダイグナン(アイルランド、ユナイテッドヘルスケア)
8位 クリストファー・ホーナー(アメリカ、レディオシャック・レオパード)
9位 カーター・ジョーンズ(アメリカ、ビッセルプロサイクリング)
10位 ジャスパー・ステイヴェン(ベルギー、ボントレガー)            +1'39"
65位 増田成幸(日本、キャノンデール・プロサイクリング)           +13'15"
80位 西薗良太(日本、チャンピオンシステム)                 +15'53"

個人総合成績
1位 トム・ダニエルソン(アメリカ、ガーミン・シャープ)           23h05'45"
2位 クリストファー・ホーナー(アメリカ、レディオシャック・レオパード)     +1'29"
3位 ハニエル・アセベドカーイェ(コロンビア、ジェイミス・ハーゲンズベルマン)  +1'37"
4位 ルーカス・ユーザー(アメリカ、ユナイテッドヘルスケア)           +2'02" 
5位 マシュー・ブッシュ(アメリカ、レディオシャック・レオパード)        +2'06"
6位 フィリップ・ダイグナン(アイルランド、ユナイテッドヘルスケア)       +2'27"
7位 ミヒャエル・シェアー(スイス、BMCレーシングチーム)            +3'11"
8位 カーター・ジョーンズ(アメリカ、ビッセルプロサイクリング)         +3'49"
9位 フランシスコ・マンセーボ(スペイン、5アワーエナジー)           +3'50"
10位 ティアゴ・マシャド(ポルトガル、レディオシャック・レオパード)
46位 増田成幸(日本、キャノンデール・プロサイクリング)            +35'16"
73位 西薗良太(日本、チャンピオンシステム)                  +53'29"

ポイント賞
マイケル・マシューズ(オーストラリア、オリカ・グリーンエッジ)

山岳賞
マイケル・トルッケラー(ニュージーランド、ビッセルプロサイクリング)

新人賞
ラクラン・モートン(オーストラリア、ガーミン・シャープ)

チーム総合成績
レディオシャック・レオパード

text:Kei Tsuji
photo:Tour of Utah

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