2013/07/06(土) - 09:27
レース中盤の2級山岳でピュアスプリンターを振るい落としたキャノンデールプロサイクリングが、そのままゴールまでメイン集団を率いてスプリント勝負に持ち込んだ。「マイヨヴェールをパリまで着続けたい」と話すペーター・サガン(スロバキア、キャノンデールプロサイクリング)が今大会1勝目をマークしている。
コース設計者のジャンフランソワ・ペシュー氏によると「セオリー的には、スプリンターにチャンスがあるステージ」。しかしモンペリエからアルビに至る205.5kmはアップダウンの連続で、4つのカテゴリー山岳が登場。獲得標高差が2700mに達するタフなステージだ。
前日に落車したヤネス・ブライコヴィッチ(スロベニア、アスタナ)がスタート地点に姿を見せなかったこの日、ブレル・カドリ(フランス、アージェードゥーゼル)とイェンス・フォイクト(ドイツ、レディオシャック・レオパード)の2人が逃げる。
利害が一致した2人が徐々にリードを広げる頃、メイン集団内で落車が発生。クリスティアン・ヴァンデヴェルデ(アメリカ、ガーミン・シャープ)やエドヴァルド・ボアッソンハーゲン(ノルウェー、スカイプロサイクリング)が巻き込まれ、2日前の落車ですでに鎖骨骨折の固定ボルトが外れていたヴァンデヴェルデはここでレースを下りた。
逃げるカドリは順調に山岳ポイントを量産し、暫定的に山岳賞トップに。マイヨアポワを着るピエール・ロラン(フランス、ユーロップカー)がで集団から飛び出しを図ったが、カドリのチームメイトがこれを阻止。そんなチームワークが功を奏し、カドリはマイヨアポワ奪取に成功した。
ゴールまで110kmを残した2級山岳クロワ・ド・ムニス(登坂距離6.7km・平均勾配6.5%)でレースは重要な局面を迎える。
キャノンデールプロサイクリングが集団ペースアップを図ると、マーク・カヴェンディッシュ(イギリス、オメガファーマ・クイックステップ)やマルセル・キッテル(ドイツ、アルゴス・シマノ)、アンドレ・グライペル(ドイツ、ロット・ベリソル)が相次いで脱落。メイン集団は100名ほどに絞られてしまう。
2級山岳クロワ・ド・ムニスの頂上通過時点で、メイン集団から1分遅れでグライペル&キッテルを含む集団、3分遅れでカヴェンディッシュを含む集団という展開に。
スピードを弱めないキャノンデールプロサイクリングは、それまで逃げていたフォイクトとカドリを吸収。ピュアスプリンターたちを振り切るべく、ハイペースを刻み続けた。
サガンをスプリントポイント先頭通過に導いたキャノンデールプロサイクリングは、一旦メイン集団のペースを弱める。その隙を突いてヤン・バケランツ(ベルギー、レディオシャック・レオパード)とフアンホセ・オロス(スペイン、エウスカルテル)、シリル・ゴティエ(フランス、ユーロップカー)が先行。すると再びキャノンデールプロサイクリングの集団牽引が始まる。
キャノンデールプロサイクリングが引くメイン集団を、オメガファーマ・クイックステップ、アルゴス・シマノ、ロット・ベリソル率いる第2集団が追走。マイヨジョーヌの座を脅かすバケランツが逃げたため、オリカ・グリーンエッジも集団牽引に合流する。
メイン集団と第2集団のタイム差は2分半を推移。長時間にわたって我慢比べが続いたが、ゴールまで42kmを残して第2集団の追走がパタリと止まる。第2集団を牽き続けていたオメガファーマ、アルゴス、ロットの3チームがついに白旗を揚げた。
ピュアスプリンターを振り切ったキャノンデールプロサイクリングはそのまま集団牽引を続け、ラスト3kmでバケランツ、オロス、ゴティエを吸収。トレインを組んでアルビのゴール地点に突入する。
フラムルージュを通過してランプレ・メリダが先頭に立ったが、ファビオ・サバティーニ(イタリア)がサガンのために先頭を奪い返す。サガンとジョン・デゲンコルブ(ドイツ、アルゴス・シマノ)によるゴールスプリント勝負が始まった。
鋭い加速で先頭に立ったデゲンコルブを、サガンがタイミング良く追撃。サガンがデゲンコルブに並び、抜き去る。大柄なピュアスプリンターを欠く中で、サガンのスプリント力は圧倒的だった。
結局、カヴェンディッシュやグライペルは1ポイントも稼ぐことが出来ず。15分近く遅れてアルビにゴールした。
今大会1勝目を飾ったサガンは「チームの強さを見せつけることが出来たと思う。メンバー全員が一つの目標を目指し、僕を信頼して走ってくれた。最初はスプリントポイントまでの予定だった。でもチームメイトたちが『このまま集団を引き続けよう。後ろのスプリンターを待つ必要なんてない』と言ったんだ。それから彼らは再び集団先頭に立って走り続けた」とコメントする。
昨年ステージ3勝ずつ飾ったサガン、カヴェンディッシュ、グライペルの3人が、それぞれ得意なパターンに持ち込んでステージ1勝をマーク。なお、サガンはポイント賞2位のグライペルに100ポイント近い差をつけることに成功している。
この日、新城幸也(ユーロップカー)はメイン集団内に残ったが、ロランの位置取りに力を尽くし、スプリントには絡まず55位。一方、トマ・ヴォクレール(フランス、ユーロップカー)は14分53秒遅れの集団でゴールしている。
選手コメントはレース公式サイトより。
ツール・ド・フランス2013第7ステージ
1位 ペーター・サガン(スロバキア、キャノンデールプロサイクリング) 4h54'12"
2位 ジョン・デゲンコルブ(ドイツ、アルゴス・シマノ)
3位 ダニエーレ・ベンナーティ(イタリア、サクソ・ティンコフ)
4位 ミカル・クヴィアトコウスキー(ポーランド、オメガファーマ・クイックステップ)
5位 エドヴァルド・ボアッソンハーゲン(ノルウェー、スカイプロサイクリング)
6位 フランチェスコ・ガヴァッツィ(イタリア、アスタナ)
7位 トニー・ギャロパン(フランス、レディオシャック・レオパード)
8位 アルテュール・ヴィショ(フランス、FDJ.fr)
9位 マヌエーレ・モーリ(イタリア、ランプレ・メリダ)
10位 シルヴァン・シャヴァネル(フランス、オメガファーマ・クイックステップ)
55位 新城幸也(日本、ユーロップカー)
敢闘賞
ヤン・バケランツ(ベルギー、レディオシャック・レオパード)
個人総合成績 マイヨジョーヌ
1位 ダリル・インピー(南アフリカ、オリカ・グリーンエッジ) 27h12'29"
2位 エドヴァルド・ボアッソンハーゲン(ノルウェー、スカイプロサイクリング) +03"
3位 サイモン・ゲランス(オーストラリア、オリカ・グリーンエッジ) +05"
4位 ミハエル・アルバジーニ(スイス、オリカ・グリーンエッジ)
5位 ミカル・クヴィアトコウスキー(ポーランド、オメガファーマ・クイックステップ) +06"
6位 シルヴァン・シャヴァネル(フランス、オメガファーマ・クイックステップ)
7位 クリス・フルーム(イギリス、スカイプロサイクリング) +08"
8位 リッチー・ポルト(オーストラリア、スカイプロサイクリング)
9位 ニコラス・ロッシュ(アイルランド、サクソ・ティンコフ) +14"
10位 ロマン・クロイツィゲル(チェコ、サクソ・ティンコフ)
ポイント賞 マイヨヴェール
1位 ペーター・サガン(スロバキア、キャノンデールプロサイクリング) 224pts
2位 アンドレ・グライペル(ドイツ、ロット・ベリソル) 130pts
3位 マーク・カヴェンディッシュ(イギリス、オメガファーマ・クイックステップ) 119ts
山岳賞 マイヨブランアポワルージュ
1位 ブレル・カドリ(フランス、アージェードゥーゼル) 12pts
2位 ピエール・ロラン(フランス、ユーロップカー) 11pts
3位 サイモン・クラーク(オーストラリア、オリカ・グリーンエッジ) 5pts
新人賞 マイヨブラン
1位 ミカル・クヴィアトコウスキー(ポーランド、オメガファーマ・クイックステップ)22h18'23"
2位 アンドリュー・タランスキー(アメリカ、ガーミン・シャープ) +16"
3位 ナイロ・クインターナ(コロンビア、モビスター) +19"
チーム総合成績
1位 オリカ・グリーンエッジ 80h45'40"
2位 スカイプロサイクリング +08"
3位 サクソ・ティンコフ +19"
text:Kei Tsuji
photo:A.S.O., Cor Vos
コース設計者のジャンフランソワ・ペシュー氏によると「セオリー的には、スプリンターにチャンスがあるステージ」。しかしモンペリエからアルビに至る205.5kmはアップダウンの連続で、4つのカテゴリー山岳が登場。獲得標高差が2700mに達するタフなステージだ。
前日に落車したヤネス・ブライコヴィッチ(スロベニア、アスタナ)がスタート地点に姿を見せなかったこの日、ブレル・カドリ(フランス、アージェードゥーゼル)とイェンス・フォイクト(ドイツ、レディオシャック・レオパード)の2人が逃げる。
利害が一致した2人が徐々にリードを広げる頃、メイン集団内で落車が発生。クリスティアン・ヴァンデヴェルデ(アメリカ、ガーミン・シャープ)やエドヴァルド・ボアッソンハーゲン(ノルウェー、スカイプロサイクリング)が巻き込まれ、2日前の落車ですでに鎖骨骨折の固定ボルトが外れていたヴァンデヴェルデはここでレースを下りた。
逃げるカドリは順調に山岳ポイントを量産し、暫定的に山岳賞トップに。マイヨアポワを着るピエール・ロラン(フランス、ユーロップカー)がで集団から飛び出しを図ったが、カドリのチームメイトがこれを阻止。そんなチームワークが功を奏し、カドリはマイヨアポワ奪取に成功した。
ゴールまで110kmを残した2級山岳クロワ・ド・ムニス(登坂距離6.7km・平均勾配6.5%)でレースは重要な局面を迎える。
キャノンデールプロサイクリングが集団ペースアップを図ると、マーク・カヴェンディッシュ(イギリス、オメガファーマ・クイックステップ)やマルセル・キッテル(ドイツ、アルゴス・シマノ)、アンドレ・グライペル(ドイツ、ロット・ベリソル)が相次いで脱落。メイン集団は100名ほどに絞られてしまう。
2級山岳クロワ・ド・ムニスの頂上通過時点で、メイン集団から1分遅れでグライペル&キッテルを含む集団、3分遅れでカヴェンディッシュを含む集団という展開に。
スピードを弱めないキャノンデールプロサイクリングは、それまで逃げていたフォイクトとカドリを吸収。ピュアスプリンターたちを振り切るべく、ハイペースを刻み続けた。
サガンをスプリントポイント先頭通過に導いたキャノンデールプロサイクリングは、一旦メイン集団のペースを弱める。その隙を突いてヤン・バケランツ(ベルギー、レディオシャック・レオパード)とフアンホセ・オロス(スペイン、エウスカルテル)、シリル・ゴティエ(フランス、ユーロップカー)が先行。すると再びキャノンデールプロサイクリングの集団牽引が始まる。
キャノンデールプロサイクリングが引くメイン集団を、オメガファーマ・クイックステップ、アルゴス・シマノ、ロット・ベリソル率いる第2集団が追走。マイヨジョーヌの座を脅かすバケランツが逃げたため、オリカ・グリーンエッジも集団牽引に合流する。
メイン集団と第2集団のタイム差は2分半を推移。長時間にわたって我慢比べが続いたが、ゴールまで42kmを残して第2集団の追走がパタリと止まる。第2集団を牽き続けていたオメガファーマ、アルゴス、ロットの3チームがついに白旗を揚げた。
ピュアスプリンターを振り切ったキャノンデールプロサイクリングはそのまま集団牽引を続け、ラスト3kmでバケランツ、オロス、ゴティエを吸収。トレインを組んでアルビのゴール地点に突入する。
フラムルージュを通過してランプレ・メリダが先頭に立ったが、ファビオ・サバティーニ(イタリア)がサガンのために先頭を奪い返す。サガンとジョン・デゲンコルブ(ドイツ、アルゴス・シマノ)によるゴールスプリント勝負が始まった。
鋭い加速で先頭に立ったデゲンコルブを、サガンがタイミング良く追撃。サガンがデゲンコルブに並び、抜き去る。大柄なピュアスプリンターを欠く中で、サガンのスプリント力は圧倒的だった。
結局、カヴェンディッシュやグライペルは1ポイントも稼ぐことが出来ず。15分近く遅れてアルビにゴールした。
今大会1勝目を飾ったサガンは「チームの強さを見せつけることが出来たと思う。メンバー全員が一つの目標を目指し、僕を信頼して走ってくれた。最初はスプリントポイントまでの予定だった。でもチームメイトたちが『このまま集団を引き続けよう。後ろのスプリンターを待つ必要なんてない』と言ったんだ。それから彼らは再び集団先頭に立って走り続けた」とコメントする。
昨年ステージ3勝ずつ飾ったサガン、カヴェンディッシュ、グライペルの3人が、それぞれ得意なパターンに持ち込んでステージ1勝をマーク。なお、サガンはポイント賞2位のグライペルに100ポイント近い差をつけることに成功している。
この日、新城幸也(ユーロップカー)はメイン集団内に残ったが、ロランの位置取りに力を尽くし、スプリントには絡まず55位。一方、トマ・ヴォクレール(フランス、ユーロップカー)は14分53秒遅れの集団でゴールしている。
選手コメントはレース公式サイトより。
ツール・ド・フランス2013第7ステージ
1位 ペーター・サガン(スロバキア、キャノンデールプロサイクリング) 4h54'12"
2位 ジョン・デゲンコルブ(ドイツ、アルゴス・シマノ)
3位 ダニエーレ・ベンナーティ(イタリア、サクソ・ティンコフ)
4位 ミカル・クヴィアトコウスキー(ポーランド、オメガファーマ・クイックステップ)
5位 エドヴァルド・ボアッソンハーゲン(ノルウェー、スカイプロサイクリング)
6位 フランチェスコ・ガヴァッツィ(イタリア、アスタナ)
7位 トニー・ギャロパン(フランス、レディオシャック・レオパード)
8位 アルテュール・ヴィショ(フランス、FDJ.fr)
9位 マヌエーレ・モーリ(イタリア、ランプレ・メリダ)
10位 シルヴァン・シャヴァネル(フランス、オメガファーマ・クイックステップ)
55位 新城幸也(日本、ユーロップカー)
敢闘賞
ヤン・バケランツ(ベルギー、レディオシャック・レオパード)
個人総合成績 マイヨジョーヌ
1位 ダリル・インピー(南アフリカ、オリカ・グリーンエッジ) 27h12'29"
2位 エドヴァルド・ボアッソンハーゲン(ノルウェー、スカイプロサイクリング) +03"
3位 サイモン・ゲランス(オーストラリア、オリカ・グリーンエッジ) +05"
4位 ミハエル・アルバジーニ(スイス、オリカ・グリーンエッジ)
5位 ミカル・クヴィアトコウスキー(ポーランド、オメガファーマ・クイックステップ) +06"
6位 シルヴァン・シャヴァネル(フランス、オメガファーマ・クイックステップ)
7位 クリス・フルーム(イギリス、スカイプロサイクリング) +08"
8位 リッチー・ポルト(オーストラリア、スカイプロサイクリング)
9位 ニコラス・ロッシュ(アイルランド、サクソ・ティンコフ) +14"
10位 ロマン・クロイツィゲル(チェコ、サクソ・ティンコフ)
ポイント賞 マイヨヴェール
1位 ペーター・サガン(スロバキア、キャノンデールプロサイクリング) 224pts
2位 アンドレ・グライペル(ドイツ、ロット・ベリソル) 130pts
3位 マーク・カヴェンディッシュ(イギリス、オメガファーマ・クイックステップ) 119ts
山岳賞 マイヨブランアポワルージュ
1位 ブレル・カドリ(フランス、アージェードゥーゼル) 12pts
2位 ピエール・ロラン(フランス、ユーロップカー) 11pts
3位 サイモン・クラーク(オーストラリア、オリカ・グリーンエッジ) 5pts
新人賞 マイヨブラン
1位 ミカル・クヴィアトコウスキー(ポーランド、オメガファーマ・クイックステップ)22h18'23"
2位 アンドリュー・タランスキー(アメリカ、ガーミン・シャープ) +16"
3位 ナイロ・クインターナ(コロンビア、モビスター) +19"
チーム総合成績
1位 オリカ・グリーンエッジ 80h45'40"
2位 スカイプロサイクリング +08"
3位 サクソ・ティンコフ +19"
text:Kei Tsuji
photo:A.S.O., Cor Vos
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