強化合宿で競い合う仲の強豪選手たち。手の内を知り尽くしているからこその激戦となった選抜ロード。岡本隼(和歌山北)がチームでこの戦いに勝利。女子は元砂七夕美(奈良・榛生昇陽)が制した。

男子 岡本隼(和歌山北)が横山航太(長野・篠ノ井)を下して優勝男子 岡本隼(和歌山北)が横山航太(長野・篠ノ井)を下して優勝 photo:Hideaki TAKAGI
選抜オープニング・レース 一般は西村和樹(中央、Espoir Asia)、中学生は日野竜嘉(右、ボンシャンス飯田)が優勝選抜オープニング・レース 一般は西村和樹(中央、Espoir Asia)、中学生は日野竜嘉(右、ボンシャンス飯田)が優勝 photo:Hideaki TAKAGI高校生がチームプレーをする。以前ならばそれは消極的なレース展開になることも。しかしここ数年は違う。前へ出て行く攻撃的な作戦で、強者だけしか最終局面に残れない。今回さらにそこからの激しいアタック合戦で人数を減らした先頭から抜け出したのは岡本。激しく追い込む横山航太(長野・篠ノ井)を抑えて、岡本はロードレース全国大会初優勝を遂げた。
女子 元砂七夕美(奈良・榛生昇陽)が優勝女子 元砂七夕美(奈良・榛生昇陽)が優勝 photo:Hideaki TAKAGI
3月24日(日)、熊本県山鹿市の公道で行われた高校選抜大会ロードレース。昨年と同じコースで1周11.5km。以前のUCIレースの熊本国際ロードの北半分をさらに伸ばしたルートを取る。比較的急な上りと緩く長い上りがありあとは緩いアップダウン。

本レースに先立って、選抜オープニング・ロードが行われた。一般、高校生、中学生の3クラスで、JCF登録者または本大会のみ有効の臨時登録者が出場資格。3周するレースは4人によるゴール勝負となり、トップは一般の西村和樹(Espoir Asia)。中学生優勝の日野竜嘉(ボンシャンス飯田)は西村に次ぐ2着でゴール、非凡な力を見せた。

元砂七夕美(奈良・榛生昇陽)が優勝の女子
男子 シード選手たちが前に男子 シード選手たちが前に photo:Hideaki TAKAGI
40人が出場、3周34.5kmの女子は、序盤から元砂、JCF強化指定B選手の谷伊央里(群馬・前橋育英)、三浦涼香(愛知・桜花)、日野友葵(愛媛・丹原)らが積極的に展開、ラスト1kmで6人にまとまりそこからゴールまでの勝負に。これを元砂が制した。元砂は本大会トラックのスクラッチでも優勝しており2勝目。同時に一人での参加だったが学校対抗総合女子でも優勝した。

アジア選帰りの強豪が参加の男子
男子 1周目、上りを山本大喜(奈良・榛生昇陽)先頭で進む男子 1周目、上りを山本大喜(奈良・榛生昇陽)先頭で進む photo:Hideaki TAKAGI
3月15日までインドで行われていたジュニアアジア選手権に参加していたロード、トラックの選手が参加。ロードは3位の黒枝咲哉(大分・日出暘谷)、司令塔だった横山、個人TT2位の山本大喜(奈良・榛生昇陽)が。トラックからはポイントレース優勝の原井博斗(福岡・祐誠)、団抜き優勝メンバーの岡本、原井、森口寛己(和歌山北)らが参加。彼らを中心の展開が予想された。
男子 5周目、強豪が前を固めるメイン集団男子 5周目、強豪が前を固めるメイン集団 photo:Hideaki TAKAGI
7周80.5kmのレースは中盤までは数人が逃げる展開が続く。いずれも4人以内30秒差以内でアジア選メンバーが含まれないもの。メイン集団はしかしながら徐々に数を減らし30人ほどに。大きな動きはラスト2周の上り区間。これの下から一気にスピードを上げたのは山本。このペースアップで11人になりその後4人が合流し15人の先頭集団に。ここからアタックが続くが大きな差にはならない。

最終周回、上りで横山と岡本が抜け出すが集団に戻りいよいよゴールまでのアタック合戦に。山本、横山らが激しく動く。ラスト1kmで橋詰丈(東京・昭和一学園)がアタックし50mほど差をつけるが中野尻祥(和歌山北)がチェック。続いて黒枝がラスト400mほどでアタックするが、これをスパートした岡本そして合わせた横山が抜きさって2人の一騎打ちに。
男子 ゴールスプリント 岡本隼(和歌山北)先行。横山航太(長野・篠ノ井)は追い込むが届かない男子 ゴールスプリント 岡本隼(和歌山北)先行。横山航太(長野・篠ノ井)は追い込むが届かない photo:Hideaki TAKAGI
緩いカーブのイン側を先行して走る岡本に対し、アウト側から横山は追い込んだが半車輪以下の僅差で岡本が先着。自身初の全国大会でのロードレース優勝だ。

「優勝できるまで長かった」岡本隼(和歌山北)

「長かったです、優勝できるまで。今までロードレースで勝てていなかったので」と感慨深く語る岡本。「ポイントレースで負けていたのでロードで結果を出したかった」「森口そして最終局面にいた中野尻とうまく協力できたおかげ」「黒枝と原井のスプリントはマークした」「上りゴールスプリントならば横山と勝負できると思った」と語る。
女子 表彰女子 表彰 photo:Hideaki TAKAGI
その横山は「岡本と黒枝をゴール前に連れて行かないことを考えていたができなかった」と語る。岡本も横山も小学生時代からMTBで競い合っており、お互いの脚質はわかっている仲だ。

男子総合優勝は和歌山北高
男子 表彰男子 表彰 photo:Hideaki TAKAGI
トラックとロード全種目の総合成績で優勝したのは和歌山北高。上野孝監督にとっては35年ぶりの優勝旗。選抜第1回大会(1978年)で当時大分・日出高校でロードに優勝し同時に高校としても総合優勝。選手として優勝旗を手にしてじつに35年ぶりに今度は監督として初めて手にした栄誉。「選手たちに総合優勝を取らせてあげたいと思っていた。ようやく今回それができた。だが総合優勝を目標にしたのではなく、一人ひとりがそれぞれに走った結果」と言う。

同校の自転車競技経験者は岡本だけでほかのメンバーは全員が高校に入ってから始めている。レース中は監督やメンバーとほとんど会話をせずともお互いの動きを託すことのできる仲になっている。全員が同じ方向に向いているのは、厳しくも愛情ある指導の賜物だ。
女子総合表彰 榛生昇陽高が優勝女子総合表彰 榛生昇陽高が優勝 photo:Hideaki TAKAGI
男子のレースを動かしたのは、アジア選手権出場者を含むJCF強化指定選手たちだ。随時入れ替え制の厳しい強化合宿を経て指定されるメンバーは、紛れもなく現在最強の選手たち。彼らがレースを動かしかつ上位に入ることは、強化方針の正しさを伝えるものとなるだろう。
男子総合表彰 和歌山北高が優勝男子総合表彰 和歌山北高が優勝 photo:Hideaki TAKAGI

結果
男子 80.5km
1位 岡本隼(和歌山北)2時間03分46秒
2位 横山航太(長野・篠ノ井)
3位 黒枝咲哉(大分・日出暘谷)+01秒
4位 原井博斗(福岡・祐誠)+03秒
5位 中野尻祥(和歌山北)
6位 伊藤泰輝(大分・別府商)+04秒
7位 山本大喜(奈良・榛生昇陽)+10秒
8位 橋詰丈(東京・昭和一学園)+15秒 
9位 中釜優作(鹿児島・南大隅)+59秒
10位 河津賢人(熊本・九州学院)

女子 34.5km
1位 元砂七夕美(奈良・榛生昇陽)1時間03分24秒
2位 谷伊央里(群馬・前橋育英)+03秒
3位 三宅玲奈(岡山・岡山工)+07秒
4位 大谷杏奈(愛知・桜丘)+08秒
5位 三浦涼香(愛知・桜丘)+11秒
6位 日野友葵(愛媛・丹原)+20秒
7位 細田愛未(埼玉・川越工)+1分17秒
8位 鈴木奈央(静岡・星陵)+1分48秒

総合成績・男子
1位 和歌山県立和歌山北 32点
2位 福岡・祐誠 19点
3位 岡山県立岡山工業 18点
4位 千葉経済大学附属 15点
5位 京都府立北桑田 15点
6位 大分県立日出暘谷 15点
7位 栃木・作新学院 14点
8位 奈良県立榛生昇陽 14点

総合成績・女子
1位 奈良県立榛生昇陽 25点
2位 岡山県立岡山工業 20点
3位 静岡理工科大学星陵 19点
4位 愛知・桜丘 18点
5位 埼玉県立川越工業 16点
6位 宮崎県立日向 12点
7位 栃木・作新学院 12点
8位 京都府立北桑田 10点

photo&text:高木秀彰