2013/03/12(火) - 10:56
3月11日に行われたティレーノ~アドリアティコ第6ステージで総合争いが大きく動いた。終盤に抜け出したニーバリがフルームを逆転して首位に立ち、共に逃げたサガンが大会2勝目を飾った。
最終個人タイムトライアルを目前に控えたティレーノ~アドリアティコ(UCIワールドツアー)第6ステージ。アドリア海に面した風光明媚な街、ポルト・サンテルピディオを発着するコースは、沿岸部に張り出した急峻な丘陵地帯を行く209kmだ。
スタートからゴールまで細かいアップダウンが絶えること無く、山岳ポイントが設定されている「サンテルピディオ・ア・マーレ」のスペックは、何と最大勾配が27%を数えるもの。サーキットコースとなっているためこれを3回通過し、コース合計での獲得標高は4000mオーバーというアルデンヌ・クラシック以上の難易度を誇る。この日もイタリアの天気は雨模様。濡れた路面が急勾配の難易度をより一層高めた。
この日スタートサインを行ったのは162名。しかし春の大一番、「ミラノ~サンレモ」が週末に近づいていることからレースが進むにつれてリタイアが続出。大本命と目されるマーク・カヴェンディッシュ(イギリス、オメガファーマ・クイックステップ)やマシュー・ゴス(オーストラリア、オリカ・グリーンエッジ)、ムリロ・フィッシャー(ブラジル、ガーミン・シャープ)や、そのアシスト達がレースを止めた。
また調子の上がらないアンディ・シュレク(ルクセンブルク、レディオシャック・レオパード)や、トーマス・デッケル(オランダ、ガーミン・シャープ)もレース中にバイクを降り、DNSとDNFを合わせて52名もの選手がレースを去った。
この日は序盤、ファビアン・カンチェラーラ(スイス、レディオシャック・レオパード)、ベナト・インチャウスティ(スペイン、モビスター)、ジョヴァンニ・ヴィスコンティ(イタリア、モビスター)、ダミアーノ・クネゴ(イタリア、ランプレ・メリダ)、トム・デュムラン(オランダ、アルゴス・シマノ)、ラルス・ボーム(オランダ、ブランコプロサイクリング)を含む強力な16名の逃げが決まる。
しかし細やかなアップダウンが続くコースでは、数の有利はそれほど力を成さない。残り60kmを切ってから先頭グループにシャッフルが掛かり、クネゴやインチャウスティらを含む7名に減少。メイン集団はマリア・アッズーラのクリス・フルーム(イギリス)擁するスカイプロサイクリングやキャノンデール・プロサイクリングが牽引し、徐々にタイム差を削り取っていく。
やがて吸収が決定的となった先頭グループからは、3回目の激坂サンテルピディオ・ア・マーレを利用てデュムランとインチャウスティが抜け出し、最後の抵抗を見せる。数秒差に迫ったメイン集団後方では、あまりの勾配と強い雨に濡れた路面に手を焼き、バイクを押す選手も。
サンテルピディオ・ア・マーレの下りで動いたのは、2年連続の大会制覇を狙うヴィンツェンツォ・ニーバリ(イタリア、アスタナ)。テクニカルな下りを攻めてインチャウスティに合流すると、追走したサミュエル・サンチェス(スペイン、エウスカルテル・エウスカディ)、ペーター・サガン(スロバキア、キャノンデール・プロサイクリング)と共に4名の先頭グループを形成。
アルベルト・コンタドール(スペイン、サクソ・ティンコフ)やフルームはこの動きを対処できず、それぞれ第1、第2追走グループへ。そして上りを利用し、追走からホアキン・ロドリゲス(スペイン、カチューシャ)が、ニーバリとサガン2名となっていた先頭へのブリッジを成功させる。
フルームに対して総合リードを奪いたいニーバリとロドリゲス、ステージ優勝を狙いたいサガン。それぞれの狙いが合致した先頭グループは協調してペースを維持し、残り10kmのアーチをくぐった。
タイム差は、残り6kmでコンタドールグループに対して27秒、フルームグループに対して54秒。残り3kmではそれぞれ38秒と56秒。ニーバリが積極的に先頭グループを率いたことで、追走との差は縮まらない。そのままの体制でゴール前のストレートに到達した。
そして最後は圧倒的なスプリントでサガンが勝利。第3ステージに続く2勝目を挙げると共に、集団スプリントから激坂まで、あらゆるコースで勝てることを再び証明した。
「ハードなステージだった。激坂区間でコンタドールと一緒に走っていたけれど、彼はダンシングでリアを滑らせた。だから僕はずっとシッティングでこなしていたんだ。先頭に立ってからは、ニーバリが僕にコンディションはどうかと聞いてきた。最後まで残れるか分からないと答えたんだけど、最後まで逃げ切れたね。」
「僕は総合に興味は無かったけれど、僕も前を牽いた。ヴィンツェンツォは僕の友人だからね。彼の好調さを見ることができて嬉しいよ。ミラノ~サンレモは大好きなレースだ。でもまだ勝てていない。誰もにかつチャンスがある。日曜日が楽しみだよ。」とサガンは語った。
サガンから遅れること2秒、ニーバリとロドリゲスの争いはニーバリに軍配しボーナスタイムを獲得。第2追走グループに取り残されたフルームが48秒差でゴールしたため、ニーバリは目論見通り、マリア・アッズーラの獲得に成功した。
「プラーティ・ディ・ティーボでは守りにはいってしまい、最後にアタックしたのは残り2km。昨日も消極的で、タイムを取り戻すことは出来ないと思っていたんだ。けれど今日は運気が僕に向いた。今日は27%の勾配があると聞いて、バイクもそれに合わせて周到に準備してきた。」
「もし最終局面で調子が良かったら上りで掛けたいと思っていた。悪天候になった時、チャンスが来たと思ったよ。皆は寒さに参っていたけど、僕は問題なかった。いつもそうなんだ。」そう語る"メッシーナのサメ"。ニーバリはフルームに対して32秒、ロドリゲスに対して37秒の差を持って翌日の最終個人TTへと挑む。
ティレーノ~アドリアティコ2013第6ステージ結果
1位 ペーター・サガン(スロバキア、キャノンデール・プロサイクリング) 5h45′17″
2位 ヴィンツェンツォ・ニーバリ(イタリア、アスタナ) +2″
3位 ホアキン・ロドリゲス(スペイン、カチューシャ)
4位 マウロ・サンタンブロジロ(イタリア、ヴィーニファンティーニ) +44″
5位 サミュエル・サンチェス(スペイン、エウスカルテル・エウスカディ)
6位 クリストファー・ホーナー(アメリカ、レディオシャック・レオパード)
7位 アルベルト・コンタドール(スペイン、サクソ・ティンコフ)
8位 ユルゲン・ルーランツ(ベルギー、ロット・ベリソル) +50″
9位 トル・フースホフト(ノルウェー、BMCレーシング)
10位 サイモン・ゲスク(ドイツ、アルゴス・シマノ)
個人総合成績
1位 ヴィンツェンツォ・ニーバリ(イタリア、アスタナ) 27h57′26″
2位 クリス・フルーム(イギリス、スカイプロサイクリング) +34″
3位 ホアキン・ロドリゲス(スペイン、カチューシャ) +37″
4位 アルベルト・コンタドール(スペイン、サクソ・ティンコフ) +48″
5位 ミカル・クヴィアトコウスキー(ポーランド、オメガファーマ・クイックステップ) +58″
6位 クリストファー・ホーナー(アメリカ、レディオシャック・レオパード) +1′05″
7位 マウロ・サンタンブロジロ(イタリア、BMCレーシング) +1′20″
8位 プリジミスラウ・ニエミエツ(ポーランド、ランプレ・メリダ) +2′54″
9位 アンドレイ・アマドール(コスタリカ、モビスター) +2′58″
10位 ワウテル・ポエルス(オランダ、ヴァカンソレイユ・DCM) +3′08″
山岳賞
ダミアーノ・クネゴ(イタリア、ランプレ・メリダ)
ポイント賞
アルベルト・コンタドール(スペイン、サクソ・ティンコフ)
新人賞
ミカル・クヴィアトコウスキー(ポーランド、オメガファーマ・クイックステップ)
text:So.Isobe
photo:RCSsport,Cor.Vos
最終個人タイムトライアルを目前に控えたティレーノ~アドリアティコ(UCIワールドツアー)第6ステージ。アドリア海に面した風光明媚な街、ポルト・サンテルピディオを発着するコースは、沿岸部に張り出した急峻な丘陵地帯を行く209kmだ。
スタートからゴールまで細かいアップダウンが絶えること無く、山岳ポイントが設定されている「サンテルピディオ・ア・マーレ」のスペックは、何と最大勾配が27%を数えるもの。サーキットコースとなっているためこれを3回通過し、コース合計での獲得標高は4000mオーバーというアルデンヌ・クラシック以上の難易度を誇る。この日もイタリアの天気は雨模様。濡れた路面が急勾配の難易度をより一層高めた。
この日スタートサインを行ったのは162名。しかし春の大一番、「ミラノ~サンレモ」が週末に近づいていることからレースが進むにつれてリタイアが続出。大本命と目されるマーク・カヴェンディッシュ(イギリス、オメガファーマ・クイックステップ)やマシュー・ゴス(オーストラリア、オリカ・グリーンエッジ)、ムリロ・フィッシャー(ブラジル、ガーミン・シャープ)や、そのアシスト達がレースを止めた。
また調子の上がらないアンディ・シュレク(ルクセンブルク、レディオシャック・レオパード)や、トーマス・デッケル(オランダ、ガーミン・シャープ)もレース中にバイクを降り、DNSとDNFを合わせて52名もの選手がレースを去った。
この日は序盤、ファビアン・カンチェラーラ(スイス、レディオシャック・レオパード)、ベナト・インチャウスティ(スペイン、モビスター)、ジョヴァンニ・ヴィスコンティ(イタリア、モビスター)、ダミアーノ・クネゴ(イタリア、ランプレ・メリダ)、トム・デュムラン(オランダ、アルゴス・シマノ)、ラルス・ボーム(オランダ、ブランコプロサイクリング)を含む強力な16名の逃げが決まる。
しかし細やかなアップダウンが続くコースでは、数の有利はそれほど力を成さない。残り60kmを切ってから先頭グループにシャッフルが掛かり、クネゴやインチャウスティらを含む7名に減少。メイン集団はマリア・アッズーラのクリス・フルーム(イギリス)擁するスカイプロサイクリングやキャノンデール・プロサイクリングが牽引し、徐々にタイム差を削り取っていく。
やがて吸収が決定的となった先頭グループからは、3回目の激坂サンテルピディオ・ア・マーレを利用てデュムランとインチャウスティが抜け出し、最後の抵抗を見せる。数秒差に迫ったメイン集団後方では、あまりの勾配と強い雨に濡れた路面に手を焼き、バイクを押す選手も。
サンテルピディオ・ア・マーレの下りで動いたのは、2年連続の大会制覇を狙うヴィンツェンツォ・ニーバリ(イタリア、アスタナ)。テクニカルな下りを攻めてインチャウスティに合流すると、追走したサミュエル・サンチェス(スペイン、エウスカルテル・エウスカディ)、ペーター・サガン(スロバキア、キャノンデール・プロサイクリング)と共に4名の先頭グループを形成。
アルベルト・コンタドール(スペイン、サクソ・ティンコフ)やフルームはこの動きを対処できず、それぞれ第1、第2追走グループへ。そして上りを利用し、追走からホアキン・ロドリゲス(スペイン、カチューシャ)が、ニーバリとサガン2名となっていた先頭へのブリッジを成功させる。
フルームに対して総合リードを奪いたいニーバリとロドリゲス、ステージ優勝を狙いたいサガン。それぞれの狙いが合致した先頭グループは協調してペースを維持し、残り10kmのアーチをくぐった。
タイム差は、残り6kmでコンタドールグループに対して27秒、フルームグループに対して54秒。残り3kmではそれぞれ38秒と56秒。ニーバリが積極的に先頭グループを率いたことで、追走との差は縮まらない。そのままの体制でゴール前のストレートに到達した。
そして最後は圧倒的なスプリントでサガンが勝利。第3ステージに続く2勝目を挙げると共に、集団スプリントから激坂まで、あらゆるコースで勝てることを再び証明した。
「ハードなステージだった。激坂区間でコンタドールと一緒に走っていたけれど、彼はダンシングでリアを滑らせた。だから僕はずっとシッティングでこなしていたんだ。先頭に立ってからは、ニーバリが僕にコンディションはどうかと聞いてきた。最後まで残れるか分からないと答えたんだけど、最後まで逃げ切れたね。」
「僕は総合に興味は無かったけれど、僕も前を牽いた。ヴィンツェンツォは僕の友人だからね。彼の好調さを見ることができて嬉しいよ。ミラノ~サンレモは大好きなレースだ。でもまだ勝てていない。誰もにかつチャンスがある。日曜日が楽しみだよ。」とサガンは語った。
サガンから遅れること2秒、ニーバリとロドリゲスの争いはニーバリに軍配しボーナスタイムを獲得。第2追走グループに取り残されたフルームが48秒差でゴールしたため、ニーバリは目論見通り、マリア・アッズーラの獲得に成功した。
「プラーティ・ディ・ティーボでは守りにはいってしまい、最後にアタックしたのは残り2km。昨日も消極的で、タイムを取り戻すことは出来ないと思っていたんだ。けれど今日は運気が僕に向いた。今日は27%の勾配があると聞いて、バイクもそれに合わせて周到に準備してきた。」
「もし最終局面で調子が良かったら上りで掛けたいと思っていた。悪天候になった時、チャンスが来たと思ったよ。皆は寒さに参っていたけど、僕は問題なかった。いつもそうなんだ。」そう語る"メッシーナのサメ"。ニーバリはフルームに対して32秒、ロドリゲスに対して37秒の差を持って翌日の最終個人TTへと挑む。
ティレーノ~アドリアティコ2013第6ステージ結果
1位 ペーター・サガン(スロバキア、キャノンデール・プロサイクリング) 5h45′17″
2位 ヴィンツェンツォ・ニーバリ(イタリア、アスタナ) +2″
3位 ホアキン・ロドリゲス(スペイン、カチューシャ)
4位 マウロ・サンタンブロジロ(イタリア、ヴィーニファンティーニ) +44″
5位 サミュエル・サンチェス(スペイン、エウスカルテル・エウスカディ)
6位 クリストファー・ホーナー(アメリカ、レディオシャック・レオパード)
7位 アルベルト・コンタドール(スペイン、サクソ・ティンコフ)
8位 ユルゲン・ルーランツ(ベルギー、ロット・ベリソル) +50″
9位 トル・フースホフト(ノルウェー、BMCレーシング)
10位 サイモン・ゲスク(ドイツ、アルゴス・シマノ)
個人総合成績
1位 ヴィンツェンツォ・ニーバリ(イタリア、アスタナ) 27h57′26″
2位 クリス・フルーム(イギリス、スカイプロサイクリング) +34″
3位 ホアキン・ロドリゲス(スペイン、カチューシャ) +37″
4位 アルベルト・コンタドール(スペイン、サクソ・ティンコフ) +48″
5位 ミカル・クヴィアトコウスキー(ポーランド、オメガファーマ・クイックステップ) +58″
6位 クリストファー・ホーナー(アメリカ、レディオシャック・レオパード) +1′05″
7位 マウロ・サンタンブロジロ(イタリア、BMCレーシング) +1′20″
8位 プリジミスラウ・ニエミエツ(ポーランド、ランプレ・メリダ) +2′54″
9位 アンドレイ・アマドール(コスタリカ、モビスター) +2′58″
10位 ワウテル・ポエルス(オランダ、ヴァカンソレイユ・DCM) +3′08″
山岳賞
ダミアーノ・クネゴ(イタリア、ランプレ・メリダ)
ポイント賞
アルベルト・コンタドール(スペイン、サクソ・ティンコフ)
新人賞
ミカル・クヴィアトコウスキー(ポーランド、オメガファーマ・クイックステップ)
text:So.Isobe
photo:RCSsport,Cor.Vos
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