JMAが主催するMTBレース「a.b.c.cup(エービーシーカップ)」は、今回紹介する大会でなんと通算57回目。2月24日に開催された子供たちが主役のレースの模様、コンセプトなどを取材した。

子供同士で競い合うのは楽しそうだ子供同士で競い合うのは楽しそうだ

「a.b.c.cup vol.57 ひなまつりすぺしゃる」の舞台となったのは千葉県立幕張海浜公園。サイクルモードでお馴染みの見本市会場から道路を挟んで海側、千葉マリンスタジアムの横に広がる広場がメイン会場だ。コースはこの広場周辺に造成されたMTB専用コースを使って行われる。

芝の広場からは幕張新都心が見渡せる芝の広場からは幕張新都心が見渡せる コブの連続を体重移動で飛ぶように走るコブの連続を体重移動で飛ぶように走る


「a.b.c.cup」には大人のクラスも用意されているが、どちらかといえば子供と初心者が中心になるイベントだ。
おもな種目はバリバリエンデュランス(1時間)、サーキットレース、ゆったりエンデュランス(1時間)の3つ。
サーキットレースはそれぞれ年代別にクラスが分けられ、キッズは学年別、そして補助輪あり・なしの5つのクラスに分けられる。
1時間の耐久レースであるエンデュランスは「バリバリ」が中級者以上、ゆったりが順位を争わない初心者や子どもたちが中心のエンデューロだ。

スタート地点はフラットダートスタート地点はフラットダート スタートから折り返してバンプへと向かう直線ダートスタートから折り返してバンプへと向かう直線ダート


ただし「中級者」として表記されていても、それは子供にとっても大人にとっても中級者という意味で、子供はダメというわけではない。つまり子供でもレース経験者なら中級者になるという考え方だ。レース出場経験だけでなく、「走力とスキルのある人」と言い換えてもいい。

キッズ補助輪なしクラス さらに補助輪ありクラスもありますキッズ補助輪なしクラス さらに補助輪ありクラスもあります 競輪場のようなカントがついたコーナーバンク競輪場のようなカントがついたコーナーバンク


子どもたちの真剣レース ゆったりエンデュランスもけっこうアツい!

会場に来ている親子連れの姿からファミリーイベントの雰囲気が感じられるが、どのクラスもいざ始まってみると真剣で熱いレースが繰り広げられる。
コース脇の芝生の広場にテントを張り、応援&ピットスペースをつくっているグループも多い。そのすぐ脇がコースになっていて、親の応援を受けて一生懸命に走る子どもたちの姿はとてもかわいい。

お父さんお母さんの見守るホームストレートお父さんお母さんの見守るホームストレート 表彰式ではお菓子の詰め合わせももらえる表彰式ではお菓子の詰め合わせももらえる


エンデュランスはそれぞれ1時間だが、小学生低学年でもソロでチャレンジする人、友達同士のキッズオンリーで走るチーム、親とペアの「キッズイン」で走るチームなど、組み合わせは自由だ。
各年代別の順位表賞に加えてレース中に発表される「マジックナンバー」の順位でゴールしたチームを「ピッタリ賞」として表彰するため、誰にでも入賞のチャンスがある。

講習会を担当したJMAインストラクターの渡邊城作さん(右)、石松克基さん講習会を担当したJMAインストラクターの渡邊城作さん(右)、石松克基さん JMAインストラクターによる講習会も

バリバリエンデュランスが行われている午前中には芝の広場でJMAインストラクターによる講習会が行われる。この日は渡邊城作さん、石松克基さんが担当してくれた。両名とも日本のトップ選手のサポート活動でも名を知っている方。渡邉さんはMTBアジア選手権などの日本選手団スタッフもつとめるフィジカルトレーナー、石松さんはキャノンデールオーナーズクラブを代表するマウンテンバイカーで、ふたりともインストラクターの資格をもつ「教えるプロ」。子供と初心者たちにも分り易くレクチャーしてくれる。

ブレーキング時の体重移動で後輪荷重を学ぶブレーキング時の体重移動で後輪荷重を学ぶ パイロンを利用したスラロームパイロンを利用したスラローム


講習のおもなメニューは、上り・下り・コーナリングの基本フォームや身体の動かし方。パイロンを用いてのスラロームなどをこなしながら、MTBライディングの基本から教えていく。ちなみに私も受講者になってみたが、基本を丁寧に教えてくれるので、けっこう目から鱗。
「おそろかになりがちな基本の基本が最復習できるので、意外に中級者の方などにも好評なんですよ」と渡邉さん。確かにそうでした。
この講習会にはイベント参加権も含まれていて、午前は教室、午後はレースとお得に楽しめるのもマル。

スピードとテクニックで攻略! ほぼ常設のMTB専用コース

ここでは稲毛の浜から少し高台の土地にある、緑地公園のなかに造成された常設のMTB専用コースの紹介をしよう。(コースは設定により変わるのでこの日のロングコースを紹介します)
芝生広場の脇に出入り口があるそのコースは、スタートすると緩やかなカーブの上りで折り返し、直線路を経てジャンプが出来るコブの連続がある。そして鋭角ターンで登り返して松林の中の急な上りへ。
下って急な左コーナーはバンクに、そして右バンク。海を右手に眺めながら長い上りへ。そしてターンした先には小さな競輪場のようなコーナーバンクが。
木立の間をくねくねと折り返し、林のなかを縫って芝生の広場へ、そして一周のゴールへ。

ジャンプが出来るぐらいのコブの連続ジャンプが出来るぐらいのコブの連続 スピードを落とさずにバンク(傾斜)のついたコーナーをクリアするスピードを落とさずにバンク(傾斜)のついたコーナーをクリアする


コースには細かく変化があってBMX向けにも最適と思えるほど。テクニックのある人にはけっこう楽しめるだろう。
高低差はあるが、勾配は緩やかで、スピードが出てなかなか面白い。スピードを出して攻めるほどに難しくなるが、子供にも無理なく走れるコースだ。コースの取り方によって距離は変化するが、だいたいは見渡せる範囲に収まっているため一周は10分とかからない。

中島瞳ちゃんは身長130cmに満たないながら26インチバイクを乗りこなす中島瞳ちゃんは身長130cmに満たないながら26インチバイクを乗りこなす レースに真剣なキッズたちとバイクのこと

小学生カテゴリー低学年で優勝した中島瞳ちゃん(チーム・ザ・モンキーズ)は埼玉・吉見のGPミストラルなどシクロクロスや、全国小中学生MTB大会などでも大活躍する小学2年生。130cmに満たない身長ながら26インチのMTBに乗り、この日も見事優勝。
お父さんによれば「26インチのバイクの適性身長には程遠いんですが、上手に乗りこなすことができるのでステムなどで調整して乗れる状態にしています。やはり転がりの面でも凹凸の走破性の面でも26インチは有利ですからね」とのこと。

ソロで16周でトップの川野碧巳くん(Team K)ソロで16周でトップの川野碧巳くん(Team K) ゆったりエンデューロをキッズソロで走り、大人たちにまじってトップを走り、まさに大人顔負けの16周という周回数でトップになったのは川野碧巳くん(Team K)。こちらもMTBレースやシクロクロスによく出場する、真剣な小学5年生。
お父さん曰く「やまめ工房の堂城賢さんに教わって、ポジションはやまめ乗りに合わせています。子供用にしてはハンドル広め、クランク長めですね。全国小中学生大会で優勝するのが当面の目標です」。




JMAの鷲田紀夫会長に訊く 「a.b.c.cupってどんな大会?」

JMA会長の鷲田紀夫さんJMA会長の鷲田紀夫さん 鷲田さん談「a.b.cとはつまり『イロハ』です。MTBのもっともベーシックなこと、楽しさ・面白さを味わってもらうという意味が込められています。レース的に楽しむもよし、集い的に楽しむもよし、と考えています。

この会場は千葉県の協力によって、都会の近くに常設のMTBコースを造ることができました。MTBの普及にとっては街の近くで乗れるコースがあるというのが重要なことです。
年4回ほどやっているので、1年に4回としても、もう15年ぐらいは開催していることになります。運動会の気分で居ますので本当は炊き出ししたりバーベQやったりしながらできるといいんですが、公共の広場ですのでそれはできません。でも家族や子供連れが楽しめるような内容になるように考えています」。

次回a.b.c.cupは6月9日に同会場で開催。競技志向に火がついたら、8月に白馬で開催されるレース「全国小中学生大会」がオススメだ。

photo&text:Makoto.AYANO

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