2013/03/03(日) - 14:52
3月2日、イタリア・トスカーナ州のシエナ近郊を舞台に第7回ストラーデビアンケ(UCI1.1)が開催。未舗装路や激坂を含む難コースで果敢に動いた22歳のモレーノ・モゼール(イタリア、キャノンデールプロサイクリング)が勝利した。
本格的なクラシックシーズンを前に、イタリア・トスカーナ州で開催されるストラーデビアンケ(直訳すると白い道)。その名の通り未舗装路を走る特異なクラシックレースだ。
丘陵地帯を駆ける全長188kmのコースはアップダウンの連続で、未舗装区間が全8区間・合計57.2km詰め込まれている。中には全長13.5kmの長い区間や、最大勾配が18%に達する区間も登場。パリ〜ルーベと同様、パンクやメカトラが多発する過酷な闘いが繰り広げられる。
ゴール地点のシエナは、街全体が世界遺産に登録されているイタリアきっての観光地。丘の上に位置するシエナに向かって最大勾配18%の激坂を上り、中世の面影を色濃く残す街に見下ろされた石畳とテクニカルなコーナーを抜け、世界一美しいと称されるシエナ自慢のカンポ広場にゴールする。
スタート地点はシエナ北部のガイオーレ・イン・キアンティ。ワインの産地として世界的に知られるキアンティ地方を抜けるころに、ミヒャエル・シェアー(スイス、BMCレーシングチーム)、アレクセイ・サラモティンス(ラトビア、IAMサイクリング)、マキシム・ベルコフ(ロシア、カチューシャ)、ジャイロ・エルメティ(イタリア、アンドローニジョカトリ)のアタックが決まった。
存在感をアピールする意味合いの強い若いメンバーではなく、経歴も脚も揃った4人による逃げ。リスクを冒さず前半の未舗装区間を駆け抜けたメイン集団とのタイム差は10分50秒まで広がる。
この日は温かな太陽が射したものの、まだ冷たさの残る風が丘陵地帯を吹き抜けた。丘の稜線に沿うように繋がる未舗装区間には強風が吹き付ける。ただでさえポジション取りが難しい集団内はますます混沌とする。もちろん落車やパンクは絶えなかった。
セレクションが始まる5つ目の未舗装区間でキャノンデールプロサイクリングがペースアップを図ると、中切れによって集団は縮小。そこからフアンアントニオ・フレチャ(スペイン、ヴァカンソレイユ・DCM)がアタックを仕掛けて単独で飛び出したが、ペースの落ちない先頭4名との3分差は埋まらない。フレチャが孤島に取り残される状況が長く続いた。
レースが動いたのは、最大勾配15%に達する7つ目の未舗装区間。優勝候補のペーター・サガン(スロバキア、キャノンデールプロサイクリング)がマークにあうその横から、チームメイトのモゼールが一人で抜け出す。モゼールは前のフレチャに追いつき、最後の未舗装区間でふるい落とす。モゼールはラスト6km地点で先頭グループに追いついた。
モゼールが先頭グループを率いてシエナに向かうその後方では、大会3勝目を狙うディフェンディングチャンピオンのファビアン・カンチェラーラ(スイス、レディオシャック・レオパード)のアタックをサガンが封じる。モゼールのグループのすぐ後ろにメイン集団が迫るが、その距離が縮まりそうで縮まらない。
ラスト1kmを切り、シエナに向かう18%の石畳の登りが始まるとすぐ、先頭からモゼールがアタック。それまで逃げていたシェアーやサラモティンス、ベルコフにはなす術が無く、モゼール先頭でシエナの旧市街地に入った。
荒い石畳が敷かれた目抜き通りを抜け、モゼールが先頭でカンポ広場にゴール。その僅か6秒後に、ライバルたちを登りで置き去りにしたサガンが入る。キャノンデールプロサイクリングのワンツーが決まった。
モゼールとサガン、ともに22歳の若者がストラーデビアンケを支配した。「このレースは僕向きだと確信していた。今日のようなコースでは、あらかじめ立てていた戦略よりも、本能を優先して走る必要がある。集団のペースが少し落ちたタイミングで一気に行った」と、大会初のイタリア人優勝者となったモゼール。
「みんなペーター(サガン)をマークしていたので、その状況をうまく利用したんだ。後ろではペーターがアタックを処理してくれたし、仮に僕が捕まってもペーターが勝てる。チームワークの勝利だったと思う」。
「チームが完璧なパフォーマンスを発揮した」と話すのはチームメイトのサガン。「チームとして長時間レースをコントロールしていたし、終盤の勝負所で2人(サガンとモゼール)が残っていたのは大きかった。ジョーカーとして飛び出したモレーノの美しい勝利だ」。
キャノンデールプロサイクリングの若手2人に苦しめられたのは、孤軍奮闘したカンチェラーラ。スプリントでリナルド・ノチェンティーニ(イタリア、アージェードゥーゼル)に敗れて4位に終わったが、来る本格クラシックシーズンに向けてまずまずの出だしだと言える。
またドーピング問題が再燃した2009年以来久々にイタリアレースを走ったアレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター)が13位、UCIワールドツアーリーダーのトムイェルテ・スラグテル(オランダ、ブランコプロサイクリング)が18位に入っている。
シクロワイアードでは後日ストラーデビアンケを走った機材特集ならびにレース観戦記を掲載予定です。
ストラーデビアンケ2013結果
1位 モレーノ・モゼール(イタリア、キャノンデールプロサイクリング) 5h01'53"
2位 ペーター・サガン(スロバキア、キャノンデールプロサイクリング) +06"
3位 リナルド・ノチェンティーニ(イタリア、アージェードゥーゼル) +07"
4位 ファビアン・カンチェラーラ(スイス、レディオシャック・レオパード)
5位 アレクセイ・サラモティンス(ラトビア、IAMサイクリング)
6位 フレフ・ファンアフェルマート(ベルギー、BMCレーシングチーム)
7位 アレクサンドル・コロブネフ(ロシア、カチューシャ)
8位 フランチェスコ・レーダ(イタリア、アンドローニジョカトリ)
9位 ジャンパオロ・カルーゾ(イタリア、カチューシャ) +10"
10位 マキシム・ベルコフ(ロシア、カチューシャ) +13"
text:Kei Tsuji in Siena, Italy
photo:Kei Tsuji, Riccardo Scanferla
本格的なクラシックシーズンを前に、イタリア・トスカーナ州で開催されるストラーデビアンケ(直訳すると白い道)。その名の通り未舗装路を走る特異なクラシックレースだ。
丘陵地帯を駆ける全長188kmのコースはアップダウンの連続で、未舗装区間が全8区間・合計57.2km詰め込まれている。中には全長13.5kmの長い区間や、最大勾配が18%に達する区間も登場。パリ〜ルーベと同様、パンクやメカトラが多発する過酷な闘いが繰り広げられる。
ゴール地点のシエナは、街全体が世界遺産に登録されているイタリアきっての観光地。丘の上に位置するシエナに向かって最大勾配18%の激坂を上り、中世の面影を色濃く残す街に見下ろされた石畳とテクニカルなコーナーを抜け、世界一美しいと称されるシエナ自慢のカンポ広場にゴールする。
スタート地点はシエナ北部のガイオーレ・イン・キアンティ。ワインの産地として世界的に知られるキアンティ地方を抜けるころに、ミヒャエル・シェアー(スイス、BMCレーシングチーム)、アレクセイ・サラモティンス(ラトビア、IAMサイクリング)、マキシム・ベルコフ(ロシア、カチューシャ)、ジャイロ・エルメティ(イタリア、アンドローニジョカトリ)のアタックが決まった。
存在感をアピールする意味合いの強い若いメンバーではなく、経歴も脚も揃った4人による逃げ。リスクを冒さず前半の未舗装区間を駆け抜けたメイン集団とのタイム差は10分50秒まで広がる。
この日は温かな太陽が射したものの、まだ冷たさの残る風が丘陵地帯を吹き抜けた。丘の稜線に沿うように繋がる未舗装区間には強風が吹き付ける。ただでさえポジション取りが難しい集団内はますます混沌とする。もちろん落車やパンクは絶えなかった。
セレクションが始まる5つ目の未舗装区間でキャノンデールプロサイクリングがペースアップを図ると、中切れによって集団は縮小。そこからフアンアントニオ・フレチャ(スペイン、ヴァカンソレイユ・DCM)がアタックを仕掛けて単独で飛び出したが、ペースの落ちない先頭4名との3分差は埋まらない。フレチャが孤島に取り残される状況が長く続いた。
レースが動いたのは、最大勾配15%に達する7つ目の未舗装区間。優勝候補のペーター・サガン(スロバキア、キャノンデールプロサイクリング)がマークにあうその横から、チームメイトのモゼールが一人で抜け出す。モゼールは前のフレチャに追いつき、最後の未舗装区間でふるい落とす。モゼールはラスト6km地点で先頭グループに追いついた。
モゼールが先頭グループを率いてシエナに向かうその後方では、大会3勝目を狙うディフェンディングチャンピオンのファビアン・カンチェラーラ(スイス、レディオシャック・レオパード)のアタックをサガンが封じる。モゼールのグループのすぐ後ろにメイン集団が迫るが、その距離が縮まりそうで縮まらない。
ラスト1kmを切り、シエナに向かう18%の石畳の登りが始まるとすぐ、先頭からモゼールがアタック。それまで逃げていたシェアーやサラモティンス、ベルコフにはなす術が無く、モゼール先頭でシエナの旧市街地に入った。
荒い石畳が敷かれた目抜き通りを抜け、モゼールが先頭でカンポ広場にゴール。その僅か6秒後に、ライバルたちを登りで置き去りにしたサガンが入る。キャノンデールプロサイクリングのワンツーが決まった。
モゼールとサガン、ともに22歳の若者がストラーデビアンケを支配した。「このレースは僕向きだと確信していた。今日のようなコースでは、あらかじめ立てていた戦略よりも、本能を優先して走る必要がある。集団のペースが少し落ちたタイミングで一気に行った」と、大会初のイタリア人優勝者となったモゼール。
「みんなペーター(サガン)をマークしていたので、その状況をうまく利用したんだ。後ろではペーターがアタックを処理してくれたし、仮に僕が捕まってもペーターが勝てる。チームワークの勝利だったと思う」。
「チームが完璧なパフォーマンスを発揮した」と話すのはチームメイトのサガン。「チームとして長時間レースをコントロールしていたし、終盤の勝負所で2人(サガンとモゼール)が残っていたのは大きかった。ジョーカーとして飛び出したモレーノの美しい勝利だ」。
キャノンデールプロサイクリングの若手2人に苦しめられたのは、孤軍奮闘したカンチェラーラ。スプリントでリナルド・ノチェンティーニ(イタリア、アージェードゥーゼル)に敗れて4位に終わったが、来る本格クラシックシーズンに向けてまずまずの出だしだと言える。
またドーピング問題が再燃した2009年以来久々にイタリアレースを走ったアレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター)が13位、UCIワールドツアーリーダーのトムイェルテ・スラグテル(オランダ、ブランコプロサイクリング)が18位に入っている。
シクロワイアードでは後日ストラーデビアンケを走った機材特集ならびにレース観戦記を掲載予定です。
ストラーデビアンケ2013結果
1位 モレーノ・モゼール(イタリア、キャノンデールプロサイクリング) 5h01'53"
2位 ペーター・サガン(スロバキア、キャノンデールプロサイクリング) +06"
3位 リナルド・ノチェンティーニ(イタリア、アージェードゥーゼル) +07"
4位 ファビアン・カンチェラーラ(スイス、レディオシャック・レオパード)
5位 アレクセイ・サラモティンス(ラトビア、IAMサイクリング)
6位 フレフ・ファンアフェルマート(ベルギー、BMCレーシングチーム)
7位 アレクサンドル・コロブネフ(ロシア、カチューシャ)
8位 フランチェスコ・レーダ(イタリア、アンドローニジョカトリ)
9位 ジャンパオロ・カルーゾ(イタリア、カチューシャ) +10"
10位 マキシム・ベルコフ(ロシア、カチューシャ) +13"
text:Kei Tsuji in Siena, Italy
photo:Kei Tsuji, Riccardo Scanferla
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