悪天候に見舞われているツール・ド・ランカウイ。山岳ステージを終え、リーダージャージを着るジュリアン・アレドンド擁するチームNIPPO・デローザが懸命に集団をコントロールし、ステージ優勝をめざす愛三工業レーシングは果敢にゴールスプリントに挑む。

第7ステージ、トレンガヌ州の小学生たちが学校の前で声援を送る第7ステージ、トレンガヌ州の小学生たちが学校の前で声援を送る photo : Sonoko Tanaka
トレンガヌ州の石油発掘場の前を通り過ぎるトレンガヌ州の石油発掘場の前を通り過ぎる photo : Sonoko Tanaka自転車熱の高まるトレンガヌ州に到着!

「昨日でツール・ド・ランカウイは終わり! 今日からツール・ド・トレンガヌが始まるんだ! みんなわかっているよな?」と地元マレーシアの人気チーム、トレンガヌの監督が朝から選手たちに檄を飛ばす。トレンガヌはその名前の通り、地方自治体であるトレンガヌ州がメインスポンサーを務めるコンチネンタルチームで、昨年までは福島晋一らアジア各国の選手も在籍していたが、今季からはすべてマレーシア人選手で構成されている。

第7ステージ、クアンタンをスタートした一行は、途中で第7ステージ、雨のなか逃げる第7ステージ、雨のなか逃げる photo : Sonoko Tanakaトレンガヌ州に入り、この先の3ステージはトレンガヌ州近郊で開催される。その背景にはオイルマネーを持つトレンガヌ州がツール・ド・ランカウイのビッグスポンサーであり、トレンガヌは現在マレーシアでもっとも自転車熱の高いエリアになる。しかし、レースが始まった当初から、トレンガヌ州の天気が悪いというのが噂されていた。

そして案の定、第6ステージの激しいスコールに始まり、第7ステージも雨が降ったり止んだりという悪天候で、さらにこの先も天気予報では雨やら雷(!)マークが続いている。そんな変わりやすい天候や、暑さ、水分の過剰摂取、慣れない食事などから体調を壊す選手がここにきて一気に増えた。

序盤のステージで2連勝し、イエロージャージを獲得したテオ・ボス(オランダ、ブランコプロサイクリング)もその1人。山岳ステージを終えて、これからゴールスプリントで勝ち星を挙げるチャンスがたくさんあったはずが、胃腸トラブルにより第6ステージを前にレースを去り、ゴールスプリントとなった第7ステージでは、これまで2位に沈んでいたアンドレア・グアルディーニ(イタリア、アスタナ)が念願の移籍後初、プロツアー選手として初めての勝利を掴んだ。

第7ステージ、悪天候の中でレースは進んでいく第7ステージ、悪天候の中でレースは進んでいく photo : Sonoko Tanaka
第2ステージ、レース前に準備をする愛三工業レーシングチーム。アジアツアーで戦うノウハウを多く持つ第2ステージ、レース前に準備をする愛三工業レーシングチーム。アジアツアーで戦うノウハウを多く持つ photo : Sonoko Tanaka第7ステージ、西谷泰治が9位でフィニッシュ

この日の日本人最高位は西谷泰治(愛三工業レーシング)の9位。第4ステージでのチームメイト綾部勇成に次ぐ2回目の9位となり、UCIポイント圏内の8位以上になかなか入れない。しかし、西谷よりも上位の選手をみると、みなヨーロッパのトップレースで活躍する選手で、アジアの選手としては西谷が最高位となる。

チームのキャプテン綾部勇成は「みんなで前に行こうと残り3−4kmのところでプロツアーチームなどに並んで前の方に上がり、残り1kmで西谷と真平を連れて前に出ましたが、残り300mのところで真平がほかの選手と接触激しい雨の中のスプリントになった第6ステージ激しい雨の中のスプリントになった第6ステージ photo : Sonoko Tanakaし、はじかれてしまいました。プロツアーチームの意地でもいい位置を取るという迫力や意気込みのすごさを感じています。

これまでに9位を2回という結果なので、残りの3ステージでは。すべてでUCIポイントを獲得して帰りたいと思っています。格上チームもみんな疲れてきているので、前に出やすくなってきています。自分たちも疲れてはいますが、そんなことは言っていられません。うまくハマれば表彰台を狙えるはずです」と話す。

そして別府匠監督はチームの現状をこう捉えてい第7ステージを終えて汗をぬぐう中島康晴(愛三工業レーシング)第7ステージを終えて汗をぬぐう中島康晴(愛三工業レーシング) photo : Sonoko Tanakaる。

「なかなか数字という面での結果は出てきていませんが、チームは確実にステップアップしている印象を持っています。選手たちはトップとの差を明確に捉えながら、それでも前に出て勝負しようとしています。
愛三工業レーシングチームは、上の世代と下の世代のジェネレーションに差があります。たとえば福田真平は87年生まれの若い選手で、同年代でヨーロッパでは勝つ選手もいますが、日本やアジアをベースに走る選手にとっては、まだ勝つためには経験が必要だと思っています。
このレースでは、トップ選手が前に見えるところで走れているので、しっかりと経験したことが活かされてくれば、結果が出てくるはずです。現にレースが始まったころに比べて、前でゴールできるようになっています。なので今回のような経験は、強くなるために必要なステップだと考えています」

「残り3ステージありますが、タイミングで勝てるチャンスはあると思います。なかなか上位に絡めていないので、場所取りなど厳しいのが現実ですが、プロツアー選手たちも疲れてきているので、残りのステージでは自分たちの持っている力を発揮してチャンスを狙いたいと思います」

悪天候や疲労、ステージレースの過酷さを味わう関係者

10日間のツール・ド・ランカウイは、移動日や休息日がなく、ステージとステージの移動が長いこともあり、選手だけでなく、すべての関係者にとって、とてもハードなスケジュールとなっている。
レース中の落車は少ないものの、例年以上に関係車両の事故をよく耳にする。現在のマレーシアは雨季にあたり、とくにトレンガヌ州の天気は悪く一部では洪水になっているエリアもあるという。この先も悪天候が続く予報が出ているため、まずは安全にレースが進むことを願いたい。


photo & text : Sonoko Tanaka in Kuala Terengganu, Malaysia

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