「東北クロスといえば雪」というイメージがすっかり定着しつつあるが、期待を裏切らない白銀コースで国内CX最終戦ともなる東北シクロクロス第5戦が行われた。序盤から下りを攻めた前田公平(Speedvagen Cyclocross Team)が小坂光らを下し、来るMTBシーズンに弾みをつけた。

C1スタートC1スタート photo:Kasukabe Vision FILMzスポーツランドSUGOでレースが行われるのは4回目だが、今回は始めて国際モトクロスコースを利用したコースが準備された。

レース序盤先頭を走行する小坂光(宇都宮ブリッツエン)レース序盤先頭を走行する小坂光(宇都宮ブリッツエン) photo:Kasukabe Vision FILMz起伏に富み、様々な要素が織り交ぜられたレイアウトには、メカニックとしてシクロクロス世界選手権に帯同したオーガナイザー、菅田さんの「国内では泥や雪などコースコンディションの酷いレースがない、選手が世界選へ出て行っても対応できるようなコースが必要」との思いを反映したもの。

ジェットコースターのような下りで圧倒的な早さを見せた前田公平(Speedvagen Cyclocross Team)ジェットコースターのような下りで圧倒的な早さを見せた前田公平(Speedvagen Cyclocross Team) photo:Kasukabe Vision FILMzまた、前日の設営を手伝った合田正之(cycleclub3UP)も「自分達が走っていて面白い」という観点からテクニカルなセクションを追加し、国内ではなかなか見られない1.7kmのアップダウンコースが完成した。

2位争いをする合田正之(cycleclub 3UP)と小坂光(宇都宮ブリッツエン)2位争いをする合田正之(cycleclub 3UP)と小坂光(宇都宮ブリッツエン) photo:Kasukabe Vision FILMz土曜日午後からは、恒例となっている池本真也(和光機器-AUTHOR)のシクロクロススクールに、合田正之や前田公平も参加。参加者全員でゆっくり 1周した後、2周目はポイントごとに攻略法をレクチャー、最後は各トップライダーが練習方法や、強く速くなるための秘訣などを語って締めくくった。

選手達が試走を終えて洗車すると、そのまま泥と水滴が凍りつくという、まさにルイビルの再現のようなコンディションであったが、深夜から雪が降り積もり、翌日の朝には一面真っ白な景色へと変貌していた。

雪でトラクションのかからない上り区間雪でトラクションのかからない上り区間 photo:Kasukabe Vision FILMz予想外の積雪で会場へたどり着くのが困難な参加者も出たため、スケジュールを30分遅らせて開会式、レースがスタート。気温が低く風も強く吹いたため、前回に続き受付や招集が屋内施設で行われたのは好評だった。もちろん、専属スタッフによる豚汁と「玉こん」も振舞われ、走り終えた選手らが次々に名物の味を楽しんだ。


20cmシケインを全周回バニーホップでクリアする前田公平(Speedvagen Cyclocross Team)20cmシケインを全周回バニーホップでクリアする前田公平(Speedvagen Cyclocross Team) photo:Kasukabe Vision FILMzC1/C2 のレースは、雪がちらつく中、スターティングゲートにトップライダーを含む26名が横一列に並ぶという壮観のスタートとなった。

まず飛び出したのは小坂光(宇都宮ブリッツエンシクロクロス)、続いて前田公平、合田正之らがスタートループから短い坂を駆け上がり、細い階段、ベンチ横の隙間をすり抜けるような区間、急な下りからのUターン、連続ヘアピン、トンネルを抜けてからの登り下りなど、細かい要素が入り組んだセクションへと突入していく。ところどころに泥や氷が交じる圧雪の路面は、前日の泥コンディションよりも乗りやすいように見えた。

スタート看板前に設置された低めのシケインを越え、雪原を横切ると、直線的で緩めな勾配を徐々に登って、短い階段を担ぎ上り、こぶのある急勾配をターンしながら一気に下る「見せ場」へと入っていく。舗装路のピットエリアを越え、登り基調のシケインから連続する短い勾配を担いで登り、小さくターンしながら下って、スタンド横の勾配を登るとゴール地点へ戻る。

1周目の下りで先頭に出た前田に5~6秒づつ遅れて合田、光の順で2周回目に入ると、50秒ほど遅れて4位の池本真也が通過。この時点でほぼトップ3が決まった形となった。マウンテンバイクで培った得意の下りに加え、低めのシケインも前田にはアドバンテージになったようで、バイクを降りずに全てバニーホップでクリアし観客を湧かせていた。

一方後続は5周目まで2位を走っていた合田を、中盤から調子をあげてきた光が追い上げ、1度は前へ出て差が開いたものの10周目に光がミスして再び3位に後退、バイクを交換した後、最終周回で再び合田を抜き返すという白熱した展開になった。

ウイリーでゴールする前田公平(Speedvagen Cyclocross Team)ウイリーでゴールする前田公平(Speedvagen Cyclocross Team) photo:Kasukabe Vision FILMz得意のセクションごとに差を広げているように見えた前田が、最後までトップを譲ることなく1分以上の差をつけてゴール。得意のウィリーを決めながらC1 2勝目を飾った。続いて意地を見せた光が2位を守り、合田が3位に入った。5位に入った池本までが完走、小坂正則(スワコレーシングチーム)は-1Lap の8位と振るわなかった。


前田公平「純粋に楽しめたことが勝因」
ー勝因は?
マウンテンバイクも出ている方はご存知かと思いますが、下りが大好きで、この雪でカチコチになってツルツルなアップダウンなコースを楽しめたので、これはもう楽しんだ者勝ちですね。純粋に小学生みたいな気持ちになって楽しめました!

C2優勝の三浦孝司(VLAAMS)C2優勝の三浦孝司(VLAAMS) photo:Kasukabe Vision FILMzあとは低いシケインが飛べたので、周回数が多い中で 1箇所でも降りる所が少ないとシューズの裏につく雪も違ってくるので、そこで雪にペダルがはまらないという事を少なく出来たのが有利になった点かと思います。

ー難しかったところは?
全体的に氷っていて滑るので、ワンコーナーワンコーナーがすごく難しくなっていて、何回も転びそうになりながらそれもまた楽しめました。予想外のスリップも含めて楽しめたのが今回の走りに繋がったと思います。

ー今シーズンの総括と来シーズンへ向けて
最終戦で勝ててよかったです! 気持よくシーズンを締めくくれます。夏はマウンテンバイクで Jシリーズを走って、体力面も技術面も磨いて、来シーズンもっと早くなって帰ってきます!


2位の小坂光
マスターズ優勝の羽鳥和重(cycleclub 3UP)マスターズ優勝の羽鳥和重(cycleclub 3UP) photo:Kasukabe Vision FILMzーレースを振り返って
最初は全然自分のラインがつかめなくて、中盤からラインもわかってペースもあがってきたのですが、機材トラブルなどで集中を欠いて転んだりと、踏んだり蹴ったりな感じでした。

C3優勝の遠藤健太(チームフィンズ)C3優勝の遠藤健太(チームフィンズ) photo:Kasukabe Vision FILMz終盤はいい感じで追いついていったのですが、途中でペダルがはまらなくて転んでしまいました。今日は最後まで走るのを辞めるわけにはいかないと思っていたので、転んだ後にギアがシフトしなくなり、合田さんに抜かれてしまった後も、最後はバイクを変えて集中し直して、最低でも 2位と思って走りきりました。今日は公平が強かったです。最終戦なので勝てればよかったですけど、また来年がんばります。

ー今シーズンの総括と来シーズンへ向けて
前半は 9月から百日咳にかかったりと、最悪のスタートだったのですが、全日本に向けてすごく集中できて、出来る限りのことをやって全日本を走れました。その結果世界選にも出場することが出来、結果はダメでしたが、目標のレースに向けたトレーニングなどはうまくいったので、良いシーズンだったと思います。

来シーズンはもちろん全日本で勝つことが目標です。機会があれば、海外のレースをいくつか走ってみたいですが、まずは国内で常に世界を意識してレース走りたいと思っています。現状では、自分は国内で強くなるしかありません。日本で強くなった選手が世界でも戦える事を証明したいです。


3位の合田正之ユース優勝の織田聖(mistral)ユース優勝の織田聖(mistral) photo:Kasukabe Vision FILMz
ーレースを振り返って
今日はコースがすごく楽しくて、きついというよりもこのコースを楽しんで走れました。また、小坂 (光) くんと前後して良い感じでレースが出来たので、来シーズンもレベルアップして東北に来たいと思います。また、昨日からコースづくりを一緒に手伝ったことで運営の人の大変さもわかり、すごく良い大会だなと思いました。コースも今までと違って起伏に飛んでいて面白く、雪で昨日の試走とは変わっていたので、全く違うコースを走れる感じが非常に楽しかったです。

スタート後、良い位置に居られたのでミスしないように走っていたのですが、何回か細かいミスをした時に小坂 (光) くんに抜かれてしまいました。でも、自分のペースを保って走れて気持ち良いレースが出来ました。

ー今シーズンの総括と来シーズンへ向けて
前半戦はマウンテンバイクの疲れがあり、全日本まではなんとなくただ乗っていたような、楽しいけれども追い込めないような、思いと身体がバラバラな感じでした。でも今年に入ってから、だいぶ気持ちと身体が一致して走れるようになってきて、成績も安定してきたので、来年はマウンテンバイクのシーズンを早めに終わらせてクロスのシーズンに合わせられたらと思います。


Femme 優勝の武田和佳
ーレースを振り返って
femme優勝の武田和佳(ARAI MURACA)femme優勝の武田和佳(ARAI MURACA) photo:Kasukabe Vision FILMz前回のレース(大和町)とは雪質が違うし、ジェットコースターみたいなコースですごく楽しめました。ペダルに雪が詰まって後半ミスしてしまったのですが、前半はしっかりマスターの先頭に付いて行けました。もっと前に出てガツガツ走らなければいけないのですが、自分的にはちょっといい走りが出来たかなと自信がついたレースになりました。

ー今シーズンの総括と来シーズンへ向けて
今年は復活戦というかブランクからやっと復帰できたので、来シーズンに向けて課題を見つめなおしながらロードもしっかり走って、次のシーズンは全日本の優勝を目標にしっかり上に絡んでいきたいです。がんばります!


閉会式では、東北CXシリーズ/JECXツアーの各レースで獲得したポイントの合計で争われる、総合ランキングの表彰も合わせて行われた。C1の東北CXシリーズは池本真也が、JECXツアーは若手ホープの前田公平が獲得したほか、年間を通して健闘したライダー達に豪華賞品、賞金が手渡された。

東北クロスの魅力はなんといっても、参加者全員で大会を作り上げているようなアットホームな雰囲気。また天候や地形を生かし、本場のシクロクロスを意識して作られるコースレイアウトも、関東近郊や関西ではなかなか得られない体験として価値あるものになるだろう。走り終えた選手達から口々に「楽しかった」という感想が聞かれた今回のコースで、いずれ全日本かUCIレースが開催できないかとオーガナイザーの菅田さんは画策している。


カテゴリー1の表彰カテゴリー1の表彰 photo:Kasukabe Vision FILMzリザルト
C1 11周回
1位 前田公平(Speedvagen Cyclocross Team) 58'52"
2位 小坂光(宇都宮ブリッツエンシクロクロス) +1:08
3位 合田正之(cycleclub3UP) +1:18
4位 山川惇太郎(ARAI MURACA) +4:34
東北CXシリーズ表彰、C1チャンピオンは池本真也(和光機器-AUTHOR)2位は小坂光(宇都宮ブリッツエン)、3位は前田公平(Speedvagen Cyclocross Team)東北CXシリーズ表彰、C1チャンピオンは池本真也(和光機器-AUTHOR)2位は小坂光(宇都宮ブリッツエン)、3位は前田公平(Speedvagen Cyclocross Team) photo:Kasukabe Vision FILMz5位 池本真也(和光機器-AUTHOR) +4:49
6位 佐復真人(WildBoars加波一族) -1Lap
7位 佐藤利英(エルドラード) -1Lap
8位 小坂正則(スワコレーシングチーム) -1Lap
9位 JamesMachin(Champion System) -1Lap
カテゴリーfemmeの表彰カテゴリーfemmeの表彰 photo:Kasukabe Vision FILMz10位 伊井賢一(臼杵レーシング) -1Lap

C2 6周回
1位 三浦孝司(VLAAMS) 37'22"
2位 服部森彦(CYCLO YAMANASHI) +2'04"
3位 佐藤勇気(Team12so) +2'22"

C3 4周回
1位 遠藤健太(チームフィンズ) 25'39"
2位 根本 丈司(Bio racer off road team) +0'33"
3位 森山栄幸(チームJUN) +1'46"

東北CXシリーズ表彰、femme 2年連続チャンピオンの綿貫通穂(臼杵レーシング)東北CXシリーズ表彰、femme 2年連続チャンピオンの綿貫通穂(臼杵レーシング) photo:Kasukabe Vision FILMzFemme 5周回
1位 武田和佳(ARAI MURACA) 36'55"
2位 村松英里菜 -1LAP
3位 林口ゆきえ(ぺだる小僧) -1LAP

Masters 5周回
1位 羽鳥和重(cycleclub 3UP) 31'50"
2位 富田道夫(シロクマカフェレーシング) +2'08"
3位 森大輔(Team-BIG) +2'40"

Youth 4周回
1位 織田聖(mistral) 30'53"

TOHOKU CX Project 2012-2013 ポイントランキング
(東北CX 5戦の合計ポイントによるランキング)

国際モトクロスコースをバックに集合写真国際モトクロスコースをバックに集合写真 photo:Kasukabe Vision FILMzC1
1位 池本真也(和光機器-AUTHOR) 57ポイント
2位 小坂光(宇都宮ブリッツエンシクロクロス) 55ポイント
3位 前田公平(Speedvagen Cyclocross Team) 35ポイント

Femme
1位 綿貫通穂(臼杵レーシング) 78ポイント

Masters
1位 富田道夫(シロクマCAFERACING) 85ポイント

Youth
1位 織田聖(mistral) 80ポイント

JECXツアー ポイントランキング
(JECXツアー 12戦の合計ポイントによるランキング)

C1
1位 前田公平(Speedvagen Cyclocross Team) 430ポイント
2位 合田正之(cycleclub3UP) 415ポイント
3位 池本真也(和光機器-AUTHOR) 395ポイント

Femme
1位 綿貫通穂(臼杵レーシング) 605ポイント

Masters
1位 富田道夫(シロクマCAFERACING) 566ポイント

Youth
1位 織田聖(mistral) 630ポイント

リザルト詳細(PDF)
AJOCCカテゴリーの部
TOHOKU CX Project 2012-2013 ポイントランキング
JECX Tour ポイントランキング




コース設営裏話
今回のレースでは、3位に入った合田正之がコース設営に初めて携わり、実際に障害やコースレイアウトを決定したという。東北シクロクロスではレーサーとオーガナイザーが一緒になってイベントを作っていることが、アットホームな雰囲気の要素の一つと言える。合田、池本、前田、小坂光によるレース後のコース設営こぼれ話をご紹介。


合田「ヘアピンカーブが続く柵のセクションは、自分で得意だと思って作ったんですけど、いざ走ってみたら全然遅くて、あんなくねくねしなければよかったな、と(笑)。」
光 「あれ合田さんが作ったんですか?」
合田「不評だった?」
池本「いや、もう降りちゃえばいいかなと思って」
合田「良い感じで回れるかなと思ってたら全然乗れなくて、結局柵を掴んで回って...」
池本「あれ、もっと人が見える場にあったら面白いよね」
光 「でもあれがあったから合田さんに追いつけましたよ」
一同爆笑
公平「それ最高のオチ」
合田「あそこがポイントだったのに...」
合田「また来年もコースづくりから手伝って、もうちょっとワールドカップっぽく良いコースを作れたらなと思うのでよろしくお願いします!」


text:Alisa.Okazaki
photo:Kasukabe Vision FILMz