2009/06/30(火) - 12:01
新城幸也(Bboxブイグテレコム)に続いてツール出場を決めた別府史之(日本、スキル・シマノ)に緊急インタビューを行った。フミの語るツールへの抱負とは?
-まずは、ツール・ド・フランス出場おめでとうございます。出場が決まったことを聞いて、どんな気持ちですか?
フミ:もう2ヶ月くらい「自分がツールに出るぞ!」っていう気持ちでトレーニングを積んで、イメージを持ってやってきました。出場の知らせを聞いてほっとした部分と、自分がベストを尽くしてきたので報われたな、という部分がありますね。
-5月の始めに12人のツール出場予定選手が発表され、6月の中旬に6人の選手が正式発表されたときにはフミの名前は無かったけれども、それでも不安にはならなかった?
フミ:スキル・シマノにいる選手はみんなレベルが拮抗していて、いい意味で差があまり無いんです。だからそんなに悲観的にはならなかったですね。みんな経験を積んでいて強い選手ですよ。ケニー(ロバート・ファンヒュンメル)は現在のUCIヨーロッパツアーのリーダーだし。
-スキル・シマノのメンバーリストも出揃いました。いいメンバーが揃っていますが、フミのチーム内での役割はどうなるのでしょう?
フミ:僕はスプリンターでもリアルなクライマーでも無くて、ルーラーっていうのかな? 逃げに乗って走るのが自分のスタイルだから、そこで狙って行きます。山岳に強い選手が狙う日はそのアシストを、スプリンターが狙う日はそのアシストをすることができたらいいと思う。
逆に自分が逃げる日は、後ろでチームメイトに集団を抑えてもらう。そういうチームワークができるのが今年のツールに臨むスキル・シマノのメンバーです。だからツールを走るにあたって、もちろん自分個人の走りも大事だけれど、チームの中で自分がどう機能できるか、っていうことも大事なポイントになります。プロ意識の高い選手たちとチームで走れるということは僕としても嬉しいです。
-今のコンディションはいかがですか?
フミ:練習もこなせてていい状態ですね。ツールのメンバー12人に選ばれて以来の集中した練習が実を結びつつあると感じています。
-自転車選手という意味ではフランスはフミにとって第2の故国ですが、ツール・ド・フランスはその意味でも特別なレースではないですか?
フミ:やっぱり言葉も通じるし、いろんな人にも会えるはずだからすごく楽しみです。ほんと、走り出したらどんどん楽しくなっちゃうと思う。今年のツールで行く町はけっこう以前にに走ったことがあったりするから、ストレス無くレースができるんじゃないかな。
-ディスカバリーチャンネルで衝撃のプロ入りした時から、あるいはもうプロ入りする前からかもしれませんね。別府史之は「ツール・ド・フランスで区間優勝を」を目標として公言してきました。現実にその舞台が見えた今の心境を聞かせてください。
フミ:ツール・ド・フランスは生易しいレースではないから、身を引き締めていかなくちゃいけない。でもこの世界最高のレースの中で自分がどれだけチャレンジできるか試したい。チャンスがあれば逃げに乗ってステージを狙うけれど、何回でも逃げに乗れるわけじゃないから日にちを見て、体調を整えて、「その日」を確実に狙って行きたいと思う。
-ステージを見て、ということになるとマルセイユ(フミが長年フランスの拠点とした)をスタートする第3ステージは特別な想いがあるのではないでしょうか?
フミ:心情的にはマルセイユスタートのステージで活躍したいという気持ちはある。あるけれど、実際に考えるとフラットなステージよりもアップダウンのあるステージの方が逃げには向いている。今は逃げて目立つ走りよりも、逃げ切れる逃げに乗って成績を出すことを考えています。逃げるのなら最後まで行きたい。
-それはある意味でプロの走りに徹するということでしょうね。ただ、私たち日本のファンからすると「完走」もまたフミに期待してしまいます。完走することについてはどう考えていますか?
フミ:ワンデイレースとは違うから、完走率はそんなに低くないはずですよね。でもいろんな選手が口を揃えて言うのはツールは他のどのグランツールと比べてもスピードが速いということ。それでもジロのように山岳ばかり、という訳でもないし、ずっと極端にスピードが速いという訳でも無いはず。だからレースのタイプとしては完走できると思う。落車だとか体調不良が無ければいけると思います。自転車レースは水モノだから、自己管理には気をつけて走りたいですね。
-フミ自身としては完走することに価値は見出している?
フミ:ツールの完走は他のレースのそれとはやっぱり違う。完走だけを目指すのはナンセンスだけれど、ツールはパリまでいってナンボというところもある。完走狙いでは走らないけどやっぱり最後まで走り切りたい。
-今年は「死の山」モン・ヴァントゥーを走ります。
フミ:ヴァントゥーは…森の中が一番キツイんですよね。森を抜けた禿げ山のところまでいっちゃえば山頂はあっという間だけど、その前の森の中が勾配もキツくて厳しい。みんな上からヴァントゥーを見るけど、森林限界の下が実は大変。今年のドーフィネでバルベルデがアタックしたところが一番キツくて、そこでパラパラになるともう追いつかない。
-ステージと体調を見ながら狙えるステージを狙う、という話でしたが、今年のツールでここを狙う!というところはありますか?
フミ:超級の登りで総合を争うような走りは難しいから、そういう展開をどう利用して自分が走るか、がカギになる。総合を狙う選手たちの思惑とステージを狙う自分の思惑がバッティングすると、どうしても総合狙いのチームの方が力が大きい。だから序盤から張り切りすぎるよりは、中盤から上げていって、総合争いの狭間のステージとか、展開をうまく読んでチャンスを見出すことが大事。
-ツールの最終週は山岳が厳しいですね。
フミ:2つのサン・ベルナール峠を走る第16ステージはすごくタフ。アヌシーでのタイムトライアル前(第17ステージ)もキツいと思う。でも過去にツール・ド・スイスを走って、期間は短いですが山岳のステージレースを走り切る感覚はつかめたので、問題は無いと思う。
-97年の今中大介さん以来、久々にツールを日本人が走るわけですが、今年は新城幸也選手(Bboxブイグテレコム)と2人が出場することで注目度が俄然高まっています。同じ日本人選手として、やはり意識はしてしまうと思いますが?
フミ:もしかしたら一緒に逃げることもあるかもしれないですよね。ただ、とくに意識することなく、自分の走りがしたいです。それに相手のことを考えている余裕はないかもしれません。むしろプロトンの中で日本人同士の会話ができたらいいですね。
-さて、ここから出場決定までの走りを振り返ってみたいのですが、まずツール出場の12人に選ばれてから最初のレースが、ツール・ド・ピカルディ(5月15日〜17日)でした。このレースはどう走った?
フミ:乗り込んでいいコンディションを保ってレース入りしたんですが、初日で落車してタイムを落としてしまって、チームの為の仕事に徹したんです。スプリンターのロバート・ワーグナーがいるので。その仕事ぶりは監督に高い評価をもらえました。それは嬉しかったですが、やっぱり自分の中で成績を出したい気持ちもあって。
-それでバイエルン・ルントファート(5月27日〜31日)を走りました。
フミ:このレースは結構登りのあるレースなんですが、これで逃げることができたらな、と思っていたんです。結果的には2ステージで逃げに乗って、そのうちの1回はクリスチャン・クネース(チームミルラム)やマークス・ブルグハート(チームコロンビア)らいいメンバーと一緒で、これはゴールまで行くぞと思ってたんですが、サーヴェロテストチームの引きで追いつかれてしまった。
逃げ切れるって監督も思っていたから、レースが終わってから「今日はツイてなかった」と言っていた。この監督はマレインっていうんですが、バイエルンが終った時に、「残念ながら成績にはつながらなかったが、今回のレースはいい走りができてるぞ。ちゃんと動けて逃げにも乗れている。これができればいずれ成績につながるよ」って言ってくれたんです。
-そして今回のツール出場に当たって結果というカタチでアピールできたルート・ドゥ・スッド(6月18日〜21日)を走ります。
フミ:その前に6月初旬にオーストリアでチームの合宿を行いました。ツールを見据えてのトレーニングだったんですが、そこですごく充実した練習ができました。その合宿後のレースだったからモチベーションも体のコンディションもいい状態で臨めました。バイエルンの時に僕は逃げに乗ってレースを作る、っていうスタイルが出せてチームの信頼もあったから、このルート・ドゥ・スッドはとても走りやすかったです。
-それで第1ステージでレースを決定づける逃げに乗りました。山岳ポイントは総取りでジャージを確定しましたが、ゴール勝負で破れて惜しくも2位。
フミ:ゴール30km手前でもう逃げ切ることはわかっていました。山を登った時点でプロトンとほぼ同じスピードだったので。残り60kmで10分以上の差があったんです。それで残りはあまりムキになって前を引かないでスプリントに備えました。チームメイトのシリル(・ルモワンヌ)がこの日優勝したニコラ・ルソーに詳しくて無線で「フミ、ルソーはトラックの選手でスプリント力があるから要注意だよ」って教えてくれた。でも僕自身スプリントは不得意じゃないし、この日の逃げ集団内では僕が一番走れてたから、勝負できるぞ、って思ってた。最後、ルソーの番手についてゴールを狙ったんだけど詰め切れずに2位に終ってしまいました。
-しかしピンクの山岳賞ジャージは獲得しました。こういう特別賞ジャージを着るのはかなり久しぶりだったのでは?
フミ:かなりというか…今まで無かったですね。初めてですよ、特別賞ジャージは。過去にアンダー23のワールドカップでロンド・ド・リザールっていうピレネーのレースで山岳賞を獲ったことはあったけれど。
-ピレネーと相性がいいんですね(笑)
フミ:なんかミラクルを感じるね(笑)。 相性がいいのかもしれない。昔、ツール・ド・ピレネーってレースに出てツールマレ峠を7位通過したこともあるし。
-今年のツール・ド・フランスではツールマレを通りますね。
フミ:がんばります。まぁ逃げる走りが自分のスタイルだからチャンスがあれば積極的にいきます。
-そのスタイルで今回は山岳賞ジャージを着ることが出来たわけですが、残る3ステージではそれを「守る」走りという、これまであまり経験したことのない走りをしたと思うのですが、どんな意識で走ったのでしょうか?
フミ:第2ステージからはこの山岳賞ジャージを守ろう、ポイントを加算しようっていう走りをしました。普段はそういう走り方はしないから不思議な感じだったけどいい経験になりましたね。レースの途中途中でポイントを獲りにいくっていうのは楽しかった!今までは逃げてても山岳とか中間スプリントよりもゴールを狙うことばかり考えていて「ふん、ポイントなんて興味ないよ」とか思ってたんですけど(笑)
-それでも今回山岳ポイントを獲りにいく走りをしたのはなぜ?
フミ:調子が良かったっていうのがひとつと、集団に追いつかれるんじゃないか、と思って速いテンポで走ったというのがもうひとつですね。初日だったしジャージを狙えるぞ、という意識もやっぱりありました。でも楽じゃなかったですね。山頂から残り3kmで単独でアタックし抜け出して、山岳ポイントを獲りにいく攻めの走りもしました。
-あ、もう時間ですか。では、春にも聞きましたが改めて、ツール・ド・フランス目前に控えた今だからもう一度伺います。別府史之にとってツール・ド・フランスとはどんなレースなのでしょうか?
フミ:夢の大舞台。自分の情熱に身を任せて暑苦しいくらい、気持ちと元気をいっぱいにして走りたいレースです。ここまでやるべきことをやってきて、今は体調もいい。自分の運命として、自分の必然としてツール・ド・フランスはそこにある。まだ始まったワケじゃないし、スタートするまで集中して臨みたい。
-日本のロードレースファンが待望したツール・ド・フランスがいよいよやってきます。日本のファンに向けてメッセージをお願いします。
フミ:「今年のツール・ド・フランスは俺のアツい走りについてこい!」ちょっとカッコつけた言い方すぎるかな(笑)。でも心から、フランスを熱く駆け抜けたいと思っています。
interviewer:Yufta Omata
photo:CorVos
-まずは、ツール・ド・フランス出場おめでとうございます。出場が決まったことを聞いて、どんな気持ちですか?
フミ:もう2ヶ月くらい「自分がツールに出るぞ!」っていう気持ちでトレーニングを積んで、イメージを持ってやってきました。出場の知らせを聞いてほっとした部分と、自分がベストを尽くしてきたので報われたな、という部分がありますね。
-5月の始めに12人のツール出場予定選手が発表され、6月の中旬に6人の選手が正式発表されたときにはフミの名前は無かったけれども、それでも不安にはならなかった?
フミ:スキル・シマノにいる選手はみんなレベルが拮抗していて、いい意味で差があまり無いんです。だからそんなに悲観的にはならなかったですね。みんな経験を積んでいて強い選手ですよ。ケニー(ロバート・ファンヒュンメル)は現在のUCIヨーロッパツアーのリーダーだし。
-スキル・シマノのメンバーリストも出揃いました。いいメンバーが揃っていますが、フミのチーム内での役割はどうなるのでしょう?
フミ:僕はスプリンターでもリアルなクライマーでも無くて、ルーラーっていうのかな? 逃げに乗って走るのが自分のスタイルだから、そこで狙って行きます。山岳に強い選手が狙う日はそのアシストを、スプリンターが狙う日はそのアシストをすることができたらいいと思う。
逆に自分が逃げる日は、後ろでチームメイトに集団を抑えてもらう。そういうチームワークができるのが今年のツールに臨むスキル・シマノのメンバーです。だからツールを走るにあたって、もちろん自分個人の走りも大事だけれど、チームの中で自分がどう機能できるか、っていうことも大事なポイントになります。プロ意識の高い選手たちとチームで走れるということは僕としても嬉しいです。
-今のコンディションはいかがですか?
フミ:練習もこなせてていい状態ですね。ツールのメンバー12人に選ばれて以来の集中した練習が実を結びつつあると感じています。
-自転車選手という意味ではフランスはフミにとって第2の故国ですが、ツール・ド・フランスはその意味でも特別なレースではないですか?
フミ:やっぱり言葉も通じるし、いろんな人にも会えるはずだからすごく楽しみです。ほんと、走り出したらどんどん楽しくなっちゃうと思う。今年のツールで行く町はけっこう以前にに走ったことがあったりするから、ストレス無くレースができるんじゃないかな。
-ディスカバリーチャンネルで衝撃のプロ入りした時から、あるいはもうプロ入りする前からかもしれませんね。別府史之は「ツール・ド・フランスで区間優勝を」を目標として公言してきました。現実にその舞台が見えた今の心境を聞かせてください。
フミ:ツール・ド・フランスは生易しいレースではないから、身を引き締めていかなくちゃいけない。でもこの世界最高のレースの中で自分がどれだけチャレンジできるか試したい。チャンスがあれば逃げに乗ってステージを狙うけれど、何回でも逃げに乗れるわけじゃないから日にちを見て、体調を整えて、「その日」を確実に狙って行きたいと思う。
-ステージを見て、ということになるとマルセイユ(フミが長年フランスの拠点とした)をスタートする第3ステージは特別な想いがあるのではないでしょうか?
フミ:心情的にはマルセイユスタートのステージで活躍したいという気持ちはある。あるけれど、実際に考えるとフラットなステージよりもアップダウンのあるステージの方が逃げには向いている。今は逃げて目立つ走りよりも、逃げ切れる逃げに乗って成績を出すことを考えています。逃げるのなら最後まで行きたい。
-それはある意味でプロの走りに徹するということでしょうね。ただ、私たち日本のファンからすると「完走」もまたフミに期待してしまいます。完走することについてはどう考えていますか?
フミ:ワンデイレースとは違うから、完走率はそんなに低くないはずですよね。でもいろんな選手が口を揃えて言うのはツールは他のどのグランツールと比べてもスピードが速いということ。それでもジロのように山岳ばかり、という訳でもないし、ずっと極端にスピードが速いという訳でも無いはず。だからレースのタイプとしては完走できると思う。落車だとか体調不良が無ければいけると思います。自転車レースは水モノだから、自己管理には気をつけて走りたいですね。
-フミ自身としては完走することに価値は見出している?
フミ:ツールの完走は他のレースのそれとはやっぱり違う。完走だけを目指すのはナンセンスだけれど、ツールはパリまでいってナンボというところもある。完走狙いでは走らないけどやっぱり最後まで走り切りたい。
-今年は「死の山」モン・ヴァントゥーを走ります。
フミ:ヴァントゥーは…森の中が一番キツイんですよね。森を抜けた禿げ山のところまでいっちゃえば山頂はあっという間だけど、その前の森の中が勾配もキツくて厳しい。みんな上からヴァントゥーを見るけど、森林限界の下が実は大変。今年のドーフィネでバルベルデがアタックしたところが一番キツくて、そこでパラパラになるともう追いつかない。
-ステージと体調を見ながら狙えるステージを狙う、という話でしたが、今年のツールでここを狙う!というところはありますか?
フミ:超級の登りで総合を争うような走りは難しいから、そういう展開をどう利用して自分が走るか、がカギになる。総合を狙う選手たちの思惑とステージを狙う自分の思惑がバッティングすると、どうしても総合狙いのチームの方が力が大きい。だから序盤から張り切りすぎるよりは、中盤から上げていって、総合争いの狭間のステージとか、展開をうまく読んでチャンスを見出すことが大事。
-ツールの最終週は山岳が厳しいですね。
フミ:2つのサン・ベルナール峠を走る第16ステージはすごくタフ。アヌシーでのタイムトライアル前(第17ステージ)もキツいと思う。でも過去にツール・ド・スイスを走って、期間は短いですが山岳のステージレースを走り切る感覚はつかめたので、問題は無いと思う。
-97年の今中大介さん以来、久々にツールを日本人が走るわけですが、今年は新城幸也選手(Bboxブイグテレコム)と2人が出場することで注目度が俄然高まっています。同じ日本人選手として、やはり意識はしてしまうと思いますが?
フミ:もしかしたら一緒に逃げることもあるかもしれないですよね。ただ、とくに意識することなく、自分の走りがしたいです。それに相手のことを考えている余裕はないかもしれません。むしろプロトンの中で日本人同士の会話ができたらいいですね。
-さて、ここから出場決定までの走りを振り返ってみたいのですが、まずツール出場の12人に選ばれてから最初のレースが、ツール・ド・ピカルディ(5月15日〜17日)でした。このレースはどう走った?
フミ:乗り込んでいいコンディションを保ってレース入りしたんですが、初日で落車してタイムを落としてしまって、チームの為の仕事に徹したんです。スプリンターのロバート・ワーグナーがいるので。その仕事ぶりは監督に高い評価をもらえました。それは嬉しかったですが、やっぱり自分の中で成績を出したい気持ちもあって。
-それでバイエルン・ルントファート(5月27日〜31日)を走りました。
フミ:このレースは結構登りのあるレースなんですが、これで逃げることができたらな、と思っていたんです。結果的には2ステージで逃げに乗って、そのうちの1回はクリスチャン・クネース(チームミルラム)やマークス・ブルグハート(チームコロンビア)らいいメンバーと一緒で、これはゴールまで行くぞと思ってたんですが、サーヴェロテストチームの引きで追いつかれてしまった。
逃げ切れるって監督も思っていたから、レースが終わってから「今日はツイてなかった」と言っていた。この監督はマレインっていうんですが、バイエルンが終った時に、「残念ながら成績にはつながらなかったが、今回のレースはいい走りができてるぞ。ちゃんと動けて逃げにも乗れている。これができればいずれ成績につながるよ」って言ってくれたんです。
-そして今回のツール出場に当たって結果というカタチでアピールできたルート・ドゥ・スッド(6月18日〜21日)を走ります。
フミ:その前に6月初旬にオーストリアでチームの合宿を行いました。ツールを見据えてのトレーニングだったんですが、そこですごく充実した練習ができました。その合宿後のレースだったからモチベーションも体のコンディションもいい状態で臨めました。バイエルンの時に僕は逃げに乗ってレースを作る、っていうスタイルが出せてチームの信頼もあったから、このルート・ドゥ・スッドはとても走りやすかったです。
-それで第1ステージでレースを決定づける逃げに乗りました。山岳ポイントは総取りでジャージを確定しましたが、ゴール勝負で破れて惜しくも2位。
フミ:ゴール30km手前でもう逃げ切ることはわかっていました。山を登った時点でプロトンとほぼ同じスピードだったので。残り60kmで10分以上の差があったんです。それで残りはあまりムキになって前を引かないでスプリントに備えました。チームメイトのシリル(・ルモワンヌ)がこの日優勝したニコラ・ルソーに詳しくて無線で「フミ、ルソーはトラックの選手でスプリント力があるから要注意だよ」って教えてくれた。でも僕自身スプリントは不得意じゃないし、この日の逃げ集団内では僕が一番走れてたから、勝負できるぞ、って思ってた。最後、ルソーの番手についてゴールを狙ったんだけど詰め切れずに2位に終ってしまいました。
-しかしピンクの山岳賞ジャージは獲得しました。こういう特別賞ジャージを着るのはかなり久しぶりだったのでは?
フミ:かなりというか…今まで無かったですね。初めてですよ、特別賞ジャージは。過去にアンダー23のワールドカップでロンド・ド・リザールっていうピレネーのレースで山岳賞を獲ったことはあったけれど。
-ピレネーと相性がいいんですね(笑)
フミ:なんかミラクルを感じるね(笑)。 相性がいいのかもしれない。昔、ツール・ド・ピレネーってレースに出てツールマレ峠を7位通過したこともあるし。
-今年のツール・ド・フランスではツールマレを通りますね。
フミ:がんばります。まぁ逃げる走りが自分のスタイルだからチャンスがあれば積極的にいきます。
-そのスタイルで今回は山岳賞ジャージを着ることが出来たわけですが、残る3ステージではそれを「守る」走りという、これまであまり経験したことのない走りをしたと思うのですが、どんな意識で走ったのでしょうか?
フミ:第2ステージからはこの山岳賞ジャージを守ろう、ポイントを加算しようっていう走りをしました。普段はそういう走り方はしないから不思議な感じだったけどいい経験になりましたね。レースの途中途中でポイントを獲りにいくっていうのは楽しかった!今までは逃げてても山岳とか中間スプリントよりもゴールを狙うことばかり考えていて「ふん、ポイントなんて興味ないよ」とか思ってたんですけど(笑)
-それでも今回山岳ポイントを獲りにいく走りをしたのはなぜ?
フミ:調子が良かったっていうのがひとつと、集団に追いつかれるんじゃないか、と思って速いテンポで走ったというのがもうひとつですね。初日だったしジャージを狙えるぞ、という意識もやっぱりありました。でも楽じゃなかったですね。山頂から残り3kmで単独でアタックし抜け出して、山岳ポイントを獲りにいく攻めの走りもしました。
-あ、もう時間ですか。では、春にも聞きましたが改めて、ツール・ド・フランス目前に控えた今だからもう一度伺います。別府史之にとってツール・ド・フランスとはどんなレースなのでしょうか?
フミ:夢の大舞台。自分の情熱に身を任せて暑苦しいくらい、気持ちと元気をいっぱいにして走りたいレースです。ここまでやるべきことをやってきて、今は体調もいい。自分の運命として、自分の必然としてツール・ド・フランスはそこにある。まだ始まったワケじゃないし、スタートするまで集中して臨みたい。
-日本のロードレースファンが待望したツール・ド・フランスがいよいよやってきます。日本のファンに向けてメッセージをお願いします。
フミ:「今年のツール・ド・フランスは俺のアツい走りについてこい!」ちょっとカッコつけた言い方すぎるかな(笑)。でも心から、フランスを熱く駆け抜けたいと思っています。
interviewer:Yufta Omata
photo:CorVos