2013/01/30(水) - 10:23
サイクリングロードやサイクリングステーションなど、自転車を取り巻く環境の良さに驚いた台湾でのサイクリングツアー、Formosa900は2日目を迎え、宜蘭から山道を北上するルートを取る。
DAY3のコース
(宜蘭)羅東→(新北)新店:羅東-宜蘭-礁溪-北宜公路-(新北)坪林茶葉博物館-小格頭-新店
台湾一周サイクリングの2日目、この日は山間部の道を台北の南に位置する新店まで走る100kmほどがコースだ。
昨夜の宴席では台湾自転車界のボス的存在、ジャイアントのトニー・ロー社長らによるお接待の元、美味しいお酒と台湾料理を頂いた。朝、帰国する愛媛県知事の中村時広さんと別れを告げ、宜蘭へと向かう。今日は峠道の多い山越えルートだ。
今日も便利商店(コンビニ)の駐車場で台湾ミュージックにのって準備体操をして、走りだす。天気が崩れる予報のなか、峠の多い山道ということで、皆の間では少し緊張感がある。
走りだしていきなり上りに入る。ここから先はずっと山道だ。すると無数のスポーツカーやハーレーとすれ違う。ここは台湾のニューリッチ層が、台北あたりからドライブにやってくる道らしく、箱根のような存在のようだ。台湾の経済成長度を感じるエピソード。
そして、我々の先を走る、ミニベロに乗った女性サイクリストを見つける。峠の頂上付近で休憩していると、追い抜いた彼女も休憩にと止まってくれる。それまで顔には台湾人の定番である排ガス防止のフェイスマスクをしていたのだが、それを取るとなんと20代の女性サイクリスト! 思わず我ら日本隊のメンバーの男性陣が喜び、一緒に記念写真をせがみだす(笑)。
お互い片言の英語を駆使してコミュニケーションをはかり、わかったところによれば、セシリー・フアンさん(台湾人はなぜか欧米風のファーストネームを持っている)は20代のOLで、ミニベロで台湾一周サイクリング旅行中。すでに行程の大半を終え、あと2日で台北にゴールするのだという。九州ほどの大きさの台湾。10日の日程の自転車旅を、女性一人でしているそうだ。ちなみにセシリーさん、1ヶ月前には日本にもやってきたそうだ(それは自転車なしの観光旅行)。
はしゃぐおじさんたちの群れと一緒に記念写真をパチリ(笑)。
台湾を自転車で回っていると、自転車旅行をしている人の多さに驚く。それはなぜかというと、2007年に聴覚障害を抱える青年が自転車で台湾を一周する「練習曲」という映画が大ヒット(こちらを参照)。それから台湾に自転車ブーム、いや、正確には「台湾自転車一周旅行ブーム」がやってきたという。
それにさらに火を点けたのはジャイアントの会長、キング・リュウ氏の73歳での台湾一周自転車旅行だった。73歳の老人、しかも世界の自転車界のトップにいるリュウ氏が挑戦した記録映像に、多くの台湾国民が共感し、自転車に乗って旅するようになったのだという。ちなみに台湾一周のことを「環台」と呼ぶ。
峠道で出会った可愛い女性の”環台サイクリスト”に、男性陣は思わず舞い上がってしまったが、彼女のようなサイクリストが多いのが今の台湾の自転車ブームを象徴していると思う。台湾人は今、自転車で自国を一周する旅をいつか実現したい目標のひとつにしているようだ。
峠を越え、山間部を走るとお茶の名産地、坪林(ピンリン)に着く。ここのお茶は烏龍茶とも違う、文山包種茶という特産品。ここでお茶文化センター(のような施設)「坪林茶業博物館」をみつけ、入ってみる。香り高いお茶を丁寧に淹れて香りから楽しむ、地元の台湾の人たち。作法は分からずとも、そのお茶文化の豊かさに思わず感心しきり。おみやげに包種茶を買い込んでしまった。そんなに安いものではないが、日本ではまず手に入らないシロモノだ。
山中の天気は冴えず、冷え込んできた。峠には洒落た珈琲店があったのでそこでお茶することに。烏龍茶など台湾特産のお茶もいいが、コーヒーもなかなか。温まってから峠を下り、今日投宿する新店へ。台北市市中心地へ向かう通勤人口を多数抱えるベッドタウンである。
自転車がつなぐ愛媛県と台湾の関係
前回の連載第2回の記事でも紹介したとおり、今回一緒にしているのは四国は愛媛県の皆さん。昨日別ルートで100kmを走った愛媛県知事の中村時広さんをはじめ、四国隊のメンバーは愛媛県や今治市の関係者が多い。ここに今回の旅の裏テーマがある。それは台湾と愛媛の自転車交流だ。
中村知事らも着ているのは、しまなみ海道に架かる橋をデザインしたオリジナルジャージ。中村知事は地元のしまなみ海道を走り、サイクリングに夢中だとのこと。そして、今治市のゆるキャラ「バリィさん」のマスコットを皆がつけて走っている。
愛媛県は、2014年5月に開催を予定している「瀬戸内しま博覧会」のメインイベントとして、瀬戸内しまなみ海道を走る国際サイクリング大会の開催を企画しているのだ。そして今秋10月、プレ大会の開催計画が進んでいる。
イベントは今治インターチェンジをスタートに、35kmから103kmの3つのコースに応じて、しまなみ海道の沿線の大島、伯方島、大三島を折り返すというもの。しまなみ海道の2006年の全通以来、初めて自動車専用道を使ったコースが設定される予定だという。
2012年5月のしまなみサイクリングの様子から
さる2012年5月には、ジャイアントのリュウ会長ら一行が、中村知事の招きに応じてしまなみ海道を訪れ、愛媛県関係者たちと一緒にサイクリングを楽しんだ経緯がある。その日台交流事業の一環として、今回は愛媛県の関係者らが台湾でのサイクリングを楽しんでいるというわけだ。もちろん、この先開催するしまなみ海道を舞台とするサイクリング大会の予行演習を兼ねて。愛媛県関係者も、自身で走りながら台湾の自転車環境を学び、自転車を使った観光や地域新興の在り方を探っているのだ。
台湾でもしまなみ海道のサイクリングは注目されていて、プレ大会、そして国際大会への期待が大いに寄せられている。台湾の旅行社も日本へのサイクリングツアーを企画しているときく。
ツール・ド・おきなわや美ら島センチュリーライドなど、すでに多くの台湾人サイクリストが日本のイベントに参加しているのはご存知のとおりだ。
こういった交流が進み、また行政レベルの要人たちが実際に自転車でサイクリングして身につけたノウハウが、今後の地域の発展に生かされていくというのは、素晴らしい話だと思う。本当に走りやすいサイクリングロードや、サイクリストをサポートする必要な施設は、そういった実体験から生み出されるはずだ。
台湾でのサイクリングツアーをアレンジするジャイアント旅行社
世界最大の自転車メーカー、ジャイアント。そのお膝元の台湾で、サイクリングツアーをアレンジしている旅行社がジャイアント・トラベルだ。今回のツアーもジャイアント・トラベル台湾のスタッフがフルサポートであたってくれた。
日本語を喋れるスタッフが、自転車で実走しながらコースを誘導してくれる。そして後方にはキャリア付きのサポートカーが伴走してくれ、休憩ポイントごとに補給食を用意してくれる。当然、怪我の際の応急手当等も行える専門知識を持っている。まさにサイクリングガイドとして専門化されたエキスパート集団だ。
ジャイアント・ジャパンも、いつか近い将来このジャイアントトラベルの日本版をつくりたいと考えているようだ。すでにしまなみ海道の拠点である今治市にはレンタサイクルやサポート施設も完備したジャイアントストアがある。旅して最高のしまなみ海道、そして、もともと八十八ヶ所巡りのお遍路文化のある四国は、自転車で旅するには最高の土地だ。ゆくゆくはこのしまなみ海道と四国の地を舞台にサイクリングツアーを展開したいと夢を持っているという。
台湾、愛媛、しまなみ海道、そして四国と、サイクリングがつなぐ国際交流がここ数年で加速度的に広がっていきそうだ。
続く
photo&text:Makoto.AYANO
撮影・文 綾野 真
DAY3のコース
(宜蘭)羅東→(新北)新店:羅東-宜蘭-礁溪-北宜公路-(新北)坪林茶葉博物館-小格頭-新店
台湾一周サイクリングの2日目、この日は山間部の道を台北の南に位置する新店まで走る100kmほどがコースだ。
昨夜の宴席では台湾自転車界のボス的存在、ジャイアントのトニー・ロー社長らによるお接待の元、美味しいお酒と台湾料理を頂いた。朝、帰国する愛媛県知事の中村時広さんと別れを告げ、宜蘭へと向かう。今日は峠道の多い山越えルートだ。
今日も便利商店(コンビニ)の駐車場で台湾ミュージックにのって準備体操をして、走りだす。天気が崩れる予報のなか、峠の多い山道ということで、皆の間では少し緊張感がある。
走りだしていきなり上りに入る。ここから先はずっと山道だ。すると無数のスポーツカーやハーレーとすれ違う。ここは台湾のニューリッチ層が、台北あたりからドライブにやってくる道らしく、箱根のような存在のようだ。台湾の経済成長度を感じるエピソード。
そして、我々の先を走る、ミニベロに乗った女性サイクリストを見つける。峠の頂上付近で休憩していると、追い抜いた彼女も休憩にと止まってくれる。それまで顔には台湾人の定番である排ガス防止のフェイスマスクをしていたのだが、それを取るとなんと20代の女性サイクリスト! 思わず我ら日本隊のメンバーの男性陣が喜び、一緒に記念写真をせがみだす(笑)。
お互い片言の英語を駆使してコミュニケーションをはかり、わかったところによれば、セシリー・フアンさん(台湾人はなぜか欧米風のファーストネームを持っている)は20代のOLで、ミニベロで台湾一周サイクリング旅行中。すでに行程の大半を終え、あと2日で台北にゴールするのだという。九州ほどの大きさの台湾。10日の日程の自転車旅を、女性一人でしているそうだ。ちなみにセシリーさん、1ヶ月前には日本にもやってきたそうだ(それは自転車なしの観光旅行)。
はしゃぐおじさんたちの群れと一緒に記念写真をパチリ(笑)。
台湾を自転車で回っていると、自転車旅行をしている人の多さに驚く。それはなぜかというと、2007年に聴覚障害を抱える青年が自転車で台湾を一周する「練習曲」という映画が大ヒット(こちらを参照)。それから台湾に自転車ブーム、いや、正確には「台湾自転車一周旅行ブーム」がやってきたという。
それにさらに火を点けたのはジャイアントの会長、キング・リュウ氏の73歳での台湾一周自転車旅行だった。73歳の老人、しかも世界の自転車界のトップにいるリュウ氏が挑戦した記録映像に、多くの台湾国民が共感し、自転車に乗って旅するようになったのだという。ちなみに台湾一周のことを「環台」と呼ぶ。
峠道で出会った可愛い女性の”環台サイクリスト”に、男性陣は思わず舞い上がってしまったが、彼女のようなサイクリストが多いのが今の台湾の自転車ブームを象徴していると思う。台湾人は今、自転車で自国を一周する旅をいつか実現したい目標のひとつにしているようだ。
峠を越え、山間部を走るとお茶の名産地、坪林(ピンリン)に着く。ここのお茶は烏龍茶とも違う、文山包種茶という特産品。ここでお茶文化センター(のような施設)「坪林茶業博物館」をみつけ、入ってみる。香り高いお茶を丁寧に淹れて香りから楽しむ、地元の台湾の人たち。作法は分からずとも、そのお茶文化の豊かさに思わず感心しきり。おみやげに包種茶を買い込んでしまった。そんなに安いものではないが、日本ではまず手に入らないシロモノだ。
山中の天気は冴えず、冷え込んできた。峠には洒落た珈琲店があったのでそこでお茶することに。烏龍茶など台湾特産のお茶もいいが、コーヒーもなかなか。温まってから峠を下り、今日投宿する新店へ。台北市市中心地へ向かう通勤人口を多数抱えるベッドタウンである。
自転車がつなぐ愛媛県と台湾の関係
前回の連載第2回の記事でも紹介したとおり、今回一緒にしているのは四国は愛媛県の皆さん。昨日別ルートで100kmを走った愛媛県知事の中村時広さんをはじめ、四国隊のメンバーは愛媛県や今治市の関係者が多い。ここに今回の旅の裏テーマがある。それは台湾と愛媛の自転車交流だ。
中村知事らも着ているのは、しまなみ海道に架かる橋をデザインしたオリジナルジャージ。中村知事は地元のしまなみ海道を走り、サイクリングに夢中だとのこと。そして、今治市のゆるキャラ「バリィさん」のマスコットを皆がつけて走っている。
愛媛県は、2014年5月に開催を予定している「瀬戸内しま博覧会」のメインイベントとして、瀬戸内しまなみ海道を走る国際サイクリング大会の開催を企画しているのだ。そして今秋10月、プレ大会の開催計画が進んでいる。
イベントは今治インターチェンジをスタートに、35kmから103kmの3つのコースに応じて、しまなみ海道の沿線の大島、伯方島、大三島を折り返すというもの。しまなみ海道の2006年の全通以来、初めて自動車専用道を使ったコースが設定される予定だという。
2012年5月のしまなみサイクリングの様子から
さる2012年5月には、ジャイアントのリュウ会長ら一行が、中村知事の招きに応じてしまなみ海道を訪れ、愛媛県関係者たちと一緒にサイクリングを楽しんだ経緯がある。その日台交流事業の一環として、今回は愛媛県の関係者らが台湾でのサイクリングを楽しんでいるというわけだ。もちろん、この先開催するしまなみ海道を舞台とするサイクリング大会の予行演習を兼ねて。愛媛県関係者も、自身で走りながら台湾の自転車環境を学び、自転車を使った観光や地域新興の在り方を探っているのだ。
台湾でもしまなみ海道のサイクリングは注目されていて、プレ大会、そして国際大会への期待が大いに寄せられている。台湾の旅行社も日本へのサイクリングツアーを企画しているときく。
ツール・ド・おきなわや美ら島センチュリーライドなど、すでに多くの台湾人サイクリストが日本のイベントに参加しているのはご存知のとおりだ。
こういった交流が進み、また行政レベルの要人たちが実際に自転車でサイクリングして身につけたノウハウが、今後の地域の発展に生かされていくというのは、素晴らしい話だと思う。本当に走りやすいサイクリングロードや、サイクリストをサポートする必要な施設は、そういった実体験から生み出されるはずだ。
台湾でのサイクリングツアーをアレンジするジャイアント旅行社
世界最大の自転車メーカー、ジャイアント。そのお膝元の台湾で、サイクリングツアーをアレンジしている旅行社がジャイアント・トラベルだ。今回のツアーもジャイアント・トラベル台湾のスタッフがフルサポートであたってくれた。
日本語を喋れるスタッフが、自転車で実走しながらコースを誘導してくれる。そして後方にはキャリア付きのサポートカーが伴走してくれ、休憩ポイントごとに補給食を用意してくれる。当然、怪我の際の応急手当等も行える専門知識を持っている。まさにサイクリングガイドとして専門化されたエキスパート集団だ。
ジャイアント・ジャパンも、いつか近い将来このジャイアントトラベルの日本版をつくりたいと考えているようだ。すでにしまなみ海道の拠点である今治市にはレンタサイクルやサポート施設も完備したジャイアントストアがある。旅して最高のしまなみ海道、そして、もともと八十八ヶ所巡りのお遍路文化のある四国は、自転車で旅するには最高の土地だ。ゆくゆくはこのしまなみ海道と四国の地を舞台にサイクリングツアーを展開したいと夢を持っているという。
台湾、愛媛、しまなみ海道、そして四国と、サイクリングがつなぐ国際交流がここ数年で加速度的に広がっていきそうだ。
続く
photo&text:Makoto.AYANO
撮影・文 綾野 真
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