「完組ホイール全盛時代」と言われるようになってからもう十年近くが経つだろうか。いよいよリム、ハブ、スポークを自由に組み合わせてホイールを組む「手組みホイール」のメリットは見出しにくい昨今だ。しかしそんな状況の中で、コアなバイクファンの支持を一手に集めるカリスマ的なカーボンリムブランドがある。アメリカのエンヴィ・コンポジット社である。

新進気鋭のカーボン専門ブランド エンヴィコンポーネンツ新進気鋭のカーボン専門ブランド エンヴィコンポーネンツ

高い技術を有するカリスマブランド

ユナイテッドヘルスケアチームによって実戦で鍛えられるロードホイールユナイテッドヘルスケアチームによって実戦で鍛えられるロードホイール
エンヴィはエッジ・コンポジットという社名で2008年にスタートした比較的新しいアメリカンブランドだ。ヨーロッパでの商標問題を理由に2010年9月に社名をエンヴィに変更したが、軽量で精度の高い高性能カーボンパーツはその勢いを更に増し、加速の一途を辿る。同社のメインとなる商品はカーボンリムだが、フォーク、ステム、ハンドル、ピラーをラインナップしており、フレームビルダー向けにフレーム用のカスタムチューブなども作っている。

DHやXCマラソンでは世界王者を獲得し、その頑丈さを証明したDHやXCマラソンでは世界王者を獲得し、その頑丈さを証明した
製品は度重なるクラッシュテストを受けて市場に送り出される製品は度重なるクラッシュテストを受けて市場に送り出される エンヴィ社の強みは、優秀な技術陣と彼らが持つ高い技術力。自転車業界のトップブランドで設計を担当していた者が多く在籍しているため、カーボン素材やその製造法についての豊富な知識を備えているのだ。中には30年以上もカーボンの製造に関わってきた技術者もおり、F1のエンジニアを経験した超エリートとタッグを組んだりもする。

そのため、新しいブランドながらエンヴィのプロダクツは世界中で高い評価を得ており、ロードレースシーンではもちろん、シクロクロス、トライアスロン、MTBの各カテゴリで活躍している。ダウンヒルで過酷な使い方をするパーツ・クラッシャーたちも、「エンヴィだけは大丈夫!」と太鼓判を押すことも多いという。

パーツ表面のマットな素材感や独特の雰囲気のブランドロゴも人気の秘密だろう。ちなみに、パーツの製造はアメリカ・ユタ州の自社工場で行われている。


独自の製造技術で軽さと強さを両立

エンヴィの作るリムは、なぜそんなにいいのか? そのテクノロジーの大部分は企業秘密だが、製造工程がエンヴィ独自のものであることが理由の一つだ。例えば、製造時にリムの内部で膨らんでカーボン素材を型に押し付けるブラダ(風船のように膨らむエアバッグ)。通常、ブラダはナイロン素材でできている。

空力を制するエアロロードホイールスマート・エンヴィ・システム空力を制するエアロロードホイールスマート・エンヴィ・システム
コストを掛けて作り上げられるリム。内部の仕上げも美しいコストを掛けて作り上げられるリム。内部の仕上げも美しい しかしエンヴィでは、ナイロンとは異なる高価な素材を使用しているのだという。その素材は再利用できないため、リムを一本作る度にブラダを交換しなくてはならない。コストは高くなってしまうが、このようなこだわりによって、エンヴィのリムは高い精度と軽量性、耐久性を持ち合わせることに成功している。

また、スポークホール周辺の設計も理由の一つだ。通常のカーボンリムはリムを成型した後、ドリリングによってスポークホールを開ける。しかしエンヴィの場合、最初から穴を開けた状態で成型しているのだ。そのためカーボン繊維が途切れることなく、高いスポークテンションを受けることが可能になる。

このようなテクノロジーは、強度、剛性、耐久性という面でも有利になるエンヴィ独自の技術である。

それらのリムは、強度試験、衝撃耐久試験、ブレーキ耐久試験、スポーク引っ張り試験にかけられており、過酷な状況下でのテストを全てクリアしている。トップレベルの軽さを持ちながら、相反するはずの非常に高い剛性、安全性、耐久性を有していることがエンヴィの強みなのだ。


エンヴィホイールラインナップを一挙インプレッション!

今回のスペシャルコンテンツでは、自他共に認めるエンヴィフリークのお二人、RiseRideの鈴木祐一氏、盆栽自転車店の吉田秀夫氏というふたりに、1.25、スマート・エンヴィ・システム6.7と8.9というホイール3セットの乗り比べインプレッションを行なってもらった。次ページより、各ホイールの特徴と性能にフォーカスしていく。

インプレライダーのプロフィール

吉田秀夫(左、盆栽自転車店)、鈴木祐一(右、RiseRide)吉田秀夫(左、盆栽自転車店)、鈴木祐一(右、RiseRide)
吉田秀夫(盆栽自転車店)
東京・千駄ヶ谷にある「自転車屋カフェ盆栽自転車店」のプレジデント。かつては実業団トップカテゴリーを走り、ツアー・オブ・ジャパンやツール・ド・熊野など国際レースも多数出場。2011年の独立開業後に自身のクラブも立ち上げてロードレースからシクロクロスまで鋭意参戦中。ファッションサイクリストをレペゼン。自転車における速さだけではない分野においても、同時に深く追求し続けている。
→盆栽自転車店
鈴木 祐一(Rise Ride)
サイクルショップ・ライズライド代表。バイシクルトライアル、シクロクロス、MTB-XCの3つで世界選手権日本代表となった経歴を持つ。元ブリヂストン MTBクロスカントリーチーム選手としても活躍した。2007年春、神奈川県橋本市にショップをオープン。クラブ員ともにバイクライドを楽しみながらショップを経営中。各種レースにも参戦中。セルフディスカバリー王滝100Km覇者。
→RiseRide

提供:トライスポーツ 編集:シクロワイアード編集部