2011年にデビューしたアリーゼは、ニールプライドの得意分野である空力技術が活かされたエアロロード。高い高速巡航性能を武器とするハイスピードクルーズバイクである。デビュー当時から高い評価を受けてプロレースでも活躍したアリーゼは、今年も継続してラインナップされる。

ニールプライド ALIZEニールプライド ALIZE
特徴は、カムテールデザインが随所に取り入れられていることだ。これは、航空機や船のデザインを手掛けるBMWデザインワークスUSAの手による設計。ロードバイクに従来の翼断面形状を取り入れると、フレームが縦に薄くなってしまうため乗り心地が悪化する上に横剛性に乏しくなり、横風に対する操縦性も悪くなる。

シートポストにも柔軟性のあるカーボンを使用しており振動吸収性に留意されているシートポストにも柔軟性のあるカーボンを使用しており振動吸収性に留意されている ヘッドチューブにはくびれがあり、前方投影面積を削減している。ヘッドは上下異径だヘッドチューブにはくびれがあり、前方投影面積を削減している。ヘッドは上下異径だ フォークもカムテール形状。高い性能を有しながら、優れた空力性能も持ち合わせるフォークもカムテール形状。高い性能を有しながら、優れた空力性能も持ち合わせる

ニールプライドはあえて幅の広い独特のチューブ形状を採用することで、チューブ後方に仮想テールを出現させ、剛性と乗り心地を高いレベルで維持しつつ、翼断面と同等の空力性能を実現させている。


素材や製法が改良され、基本性能がレベルアップ

バイクが進む場合、ダウンチューブとシートチューブが最も風を受けやすい。このアリーゼでは、まずダウンチューブが空気を切り裂いて後方に仮想フィンを作ることで、シートチューブに風が当たりにくくなり、フレーム体として非常に優れた空力性能を有しているという。

向かい風はもちろん、横風に対しても空気抵抗を削減する独自形状のダウンチューブ向かい風はもちろん、横風に対しても空気抵抗を削減する独自形状のダウンチューブ オプションでシートアングル78度のシートポストも用意され、TTバイクとしても使用可能オプションでシートアングル78度のシートポストも用意され、TTバイクとしても使用可能

また、独自の流体解析ソフトの使用や風洞実験を繰り返したことであらゆる方向からの風に対して空気抵抗を削減できる形状となっている。このカムテールデザインによってハンガー周りの幅も確保され、エアロロードながら高い動力伝達性能も持ち合わせる。ジオメトリは初心者でも乗りやすいものとなっており、プロ好みのクイックな味付けでありながら、安定感のあるハンドリングを実現している。

これまでのスリーピースからワンピースとなり、剛性と振動吸収性が向上したリア三角これまでのスリーピースからワンピースとなり、剛性と振動吸収性が向上したリア三角
2013モデルは機械式、電動の両方に対応する。バッテリーの位置はBB後方2013モデルは機械式、電動の両方に対応する。バッテリーの位置はBB後方
ワイヤー類は全て内蔵されるが、必要なメンテナンス性は確保される。BBはプレスフィットワイヤー類は全て内蔵されるが、必要なメンテナンス性は確保される。BBはプレスフィット


継続ラインナップとなるモデルだが、2013年モデルからは大幅なマイナーチェンジを受けている。2012モデルまでは東レと三菱のカーボンをミックスして使っていたが、2013モデルから素材供給元を東レのみとし、より高弾性な素材に変更。今まではシートステー、エンド、チェーンステーはそれぞれバラバラに作られた後、接着して作られていたが、2013モデルではリアセクションがワンピースとなり、剛性と振動吸収性が向上している。

BBはノーマルのスレッド式から、プレスフィット30に。リアエンドもアルミからフルカーボンになり、ワイヤー受けなどをカーボン一体にするなど、細かい部分も改良されている。また、Di2と機械式の両方に対応したこともトピックである。Di2に対応しながら昨年モデルより40g軽くなっていることも見逃せない。


インプレッション

「風を味方に付け、トータルバランスに優れるオールラウンダー」 鈴木祐一(Rise Ride)

ビューラSLは軽さですが、このアリーゼは高速巡航がウリ。長く速く走るには最適な設計になっていると感じます。平坦でスピードアップしたとき、スピードが低下しにくいんですよね。ホイールを統一して他のバイクと比べても、スピードの持続力が高いことが分かります。フレームの空力性能が効いているのでしょう。

「風を味方に付け、トータルバランスに優れるオールラウンダー」 鈴木祐一(Rise Ride)「風を味方に付け、トータルバランスに優れるオールラウンダー」 鈴木祐一(Rise Ride)
登り性能はビューラSLに一歩譲るのですが、走りにモッサリした感覚はなく軽快です。細かい衝撃は情報として伝えてくれつつ、大きな凹凸では衝撃をしっかりと丸めてくれる性格があって、快適性についても好印象ですね。カンカンパリパリというような細かな振動を全て吸収してしまうと路面状況が分からなくなってしまうので、必要な情報を伝えてくれるこの乗り味は正解でしょう。フワフワにしてしまうのではなく、路面状況を分からせるという作り方は上手いな、と思います。ロングライドでもストレスが少ない乗り味。疲れてきた時に安心できる性能がありますね。

トータルでバランスがとれているのでオールラウンドですが、平坦を多く含んだファストランにいいでしょう。走行時間の中で、30km以上の速度域の占める割合が多い場合はアリーゼ、ヒルクライムなど低速度域が多い場合はビューラをオススメします。風を味方につけるか、軽さを味方につけるか。ニールプライドはテーマ別に良いバイク作りをするな、と感じました。老舗ブランドを上回る能力を見せていると思います。


「アグレッシブな走りに適しているピュアレーシングバイク」 吉田秀夫(盆栽自転車店)

「アグレッシブな走りに適しているピュアレーシングバイク」 吉田秀夫(盆栽自転車店)「アグレッシブな走りに適しているピュアレーシングバイク」 吉田秀夫(盆栽自転車店) エアロバイクと言いつつも、フレーム重量は軽く、反応が良く進んでくれるバイクです。剛性感は高めですね。とはいえ踏み負けるという感じではなく、「しっかりしている」という印象。

急加速に対しても反応が良く、高速からさらにスピードに乗せるようなシーンでも、フレームがしっかりと応えてくれます。完全にレース向けです。スピードや負荷が上下するような走り方をするライダー、アタックを多発するようなアグレッシブなライダーに適しているピュアレーシングバイクです。

試乗車のタイヤのせいもあって路面のコツコツはハンドルに伝えてくるので、コンフォート傾向というよりはレーシングユース。でも乗り心地が悪くて不快というレベルではありません。ハンドリングも素直で乗りやすい。クイック気味ですが、扱いやすく仕上げられています。ロードレースやクリテリウムで必要とされる機敏なコーナリングはしやすいですね。ハードブレーキでもフォークやヘッドが音を上げることがなく、ハイスピードなダウンヒルも安心して攻めることができます。

まさにオールラウンドですが、特にロードレースに向いていると思います。JCRCやツール・ド・おきなわなどには最適。富士チャレなどの耐久系サーキットレースにもいいでしょう。

高い空力性能を持ったエアロロードなのに、踏み込んでもグニャッとたわむ感じは全くなく、ダンシングもしやすく登りも得意。まさにオールラウンドなレーシングバイクです。
提供:トライスポーツ 編集:シクロワイアード編集部