2013/01/21(月) - 22:59
時速40kmで走行しているとき、ライダーの出力の約80%が空気抵抗によって失われてしまう。速度域の高いタイムトライアルやトライアスロンでは、クオリティの高いTTバイクを手に入れることが結果に直結するのである。プロチームに機材供給を行うニールプライドも、BMWデザインワークスUSAとプロ選手がタッグを組み、流体解析と風洞実験を駆使しながらバイヤモという名のTTフレームを開発した。
ニールプライド BAYAMO
このバイヤモも、翼断面形状ではなくアリーゼと同様の翼断面の後端をカットしたようなカムテール形状をフレーム全体に採用している。これにより、斜めや横方向からの風に対しても高い空力性能を発揮するほか、剛性面でも有利となり、加速能力や登坂性も犠牲になっていないという。
エアロ効果を高めるため、独特のディープ形状を持つヘッドチューブ周り
前方投影面積を削るため、ヘッドセットは上1インチ、 下1-1/8インチとなっている
取材時、現在最も高い空力性能を持っているという某社のTTフレームとバイヤモの空力性能を比較したデータを見せてもらった。それによると、進行方向に対して0~15°から吹く風では2台の空力性能はほぼ同じ、15~30°から吹く横風の状況下では、「時速40kmで一時間走った場合、バイヤモの方が約1分も速く走りきる」というデータが出ていた。
滑らかで美しい形状のハンガー周り。BBにはプレスフィット規格が採用されている
他の2台と同じく、このバイヤモもダウンチューブに3ボトル台座穴を採用 取り付け位置の調整が可能だ
空力性能とハンドリング性能を両立させるため、フォークはカムテール形状となっている
当初はリアブレーキをBB下に、フロントブレーキをフォーク後ろ側に設置する流行の設計だったが、プロチームのリクエストにより通常の位置に取り付けることになった。特にヨーロッパのレースでは市街地などテクニカルなコースを使うタイムトライアルが多く、制動力やメンテナンス性(ブレーキの調整、シューの交換など)、ホイール交換の手間などのことを考えてのことだ。
そもそもバイヤモはシートチューブにカムテールデザインを採用しているため、リアブレーキ本体には風が当たりにくく、リアブレーキを通常の位置にしても空気抵抗はさほど増加しないのだという。それよりも「普通のブレーキングができる」というメリットのほうが大きい。TTといってもストレートだけではないので、いくらフレームの空気抵抗が少なくてもコーナー毎にブレーキングでタイムロスをしていたら意味がない。
エアロ形状とメンテナンス性を両立させるため、リアブレーキの取り付けはプレートを用いて行う
他社のTTフレームに乗っているプロライダーは、「こんなに乗りやすいTTバイクは初めて。普通のロードバイクとして使いたい」と言ったとか。扱いやすく、加速も登坂も得意で、しかも空気抵抗の数値はトップクラスのTTフレーム以下という、まさにスーパーなTTバイクが誕生したのである。
「非常に扱いやすいのに、他のTTフレームに劣るところがない」 鈴木祐一(Rise Ride)
肝心の高速順行性ですが、空気の抜けがよくスピードが低下しにくいことが実感できます。上げたスピードを持続するときでも、踏み足す必要がないんです。さすがに空力を得意としているブランドだけあります。過剰なエアロ装置を装備したモデルに比べると造形がシンプルで、横風にもあおられにくく、余計な材料を使っていないので結果として重量も軽く仕上がっていますね。
また、ブレーキの位置がオーソドックスなので、様々なコースに対応できることもメリットです。単なる「直線番長」ではありません。コーナーがたくさんあるコースであれば、空力のみに特化した専用ブレーキのフレームよりも、扱いやすくてブレーキも利くバイヤモのほうが結果的に速いでしょうね。シチュエーションを限定することなくアベレージ速度を上げることができるバイクだといえるでしょう。
直線走行に特化したバイクだと、ビギナーにとっては「速く走るのが怖いフレーム」になってしまう可能性が高い。でもバイヤモはすごく自然に操れる。このメリットは大きいですね。シンプルなんだけど、トータルのバランスがすばらしい。こういう性能は、広告やカタログの数値から読み取るのは難しいんです。派手なカタチやスペックのものに目が行ってしまいがちですが、結果として安全に楽にTTコースを走り抜けることができるのは、バイヤモでしょう。
「TTバイクに乗り慣れていなくても、ロードバイク感覚で乗れる」 吉田秀夫(盆栽自転車店)
専用ブレーキを装備しているTTフレームはやっぱり制動が苦手なことが多いですが、TTバイクといっても制動力は重要な性能。そういう意味でも、このバイヤモはTTバイクにもメンテナンス性や安心感を求めたい人にオススメできます。
ハンドリングはやはり直進安定性重視のTTフレームという印象で、左右方向への移動には若干のクセがありますが、TTに乗り慣れていなくてもロードフレームの感覚で乗れるレベル。ロードから乗り換えても、特別な練習をしなくて済みます。特殊なモデルだと慣れるのに時間が掛かりますから。ダンシングがしやすいというだけでも、登りで有利ですよね。
肝心の高速巡航性能もいいですね。TTバイクらしく高速への伸びがあり、脚さえあればスピードがどんどん上がっていく感じがします。メカニック視点で見ても組みやすそうです。TTフレームにありがちなシフト操作が重くなってしまうようなこともありませんでした。ホビーレーサーにとって、TTレースって年に数回ですよね。そんなスポット参戦的な状況には、この扱いやすいバイヤモは非常にオススメできるモデルだと言えます。
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このバイヤモも、翼断面形状ではなくアリーゼと同様の翼断面の後端をカットしたようなカムテール形状をフレーム全体に採用している。これにより、斜めや横方向からの風に対しても高い空力性能を発揮するほか、剛性面でも有利となり、加速能力や登坂性も犠牲になっていないという。
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コーナリングもブレーキングも得意!コントローラブルなTTバイク
取材時、現在最も高い空力性能を持っているという某社のTTフレームとバイヤモの空力性能を比較したデータを見せてもらった。それによると、進行方向に対して0~15°から吹く風では2台の空力性能はほぼ同じ、15~30°から吹く横風の状況下では、「時速40kmで一時間走った場合、バイヤモの方が約1分も速く走りきる」というデータが出ていた。
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当初はリアブレーキをBB下に、フロントブレーキをフォーク後ろ側に設置する流行の設計だったが、プロチームのリクエストにより通常の位置に取り付けることになった。特にヨーロッパのレースでは市街地などテクニカルなコースを使うタイムトライアルが多く、制動力やメンテナンス性(ブレーキの調整、シューの交換など)、ホイール交換の手間などのことを考えてのことだ。
そもそもバイヤモはシートチューブにカムテールデザインを採用しているため、リアブレーキ本体には風が当たりにくく、リアブレーキを通常の位置にしても空気抵抗はさほど増加しないのだという。それよりも「普通のブレーキングができる」というメリットのほうが大きい。TTといってもストレートだけではないので、いくらフレームの空気抵抗が少なくてもコーナー毎にブレーキングでタイムロスをしていたら意味がない。
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他社のTTフレームに乗っているプロライダーは、「こんなに乗りやすいTTバイクは初めて。普通のロードバイクとして使いたい」と言ったとか。扱いやすく、加速も登坂も得意で、しかも空気抵抗の数値はトップクラスのTTフレーム以下という、まさにスーパーなTTバイクが誕生したのである。
インプレッション
「非常に扱いやすいのに、他のTTフレームに劣るところがない」 鈴木祐一(Rise Ride)
思っていたよりナチュラルですね。すごく自然に操作できます。TTバイクに乗ったことがない人でもすぐ対応できてしまう。そんな懐の広さがあります。ロードと全く同じというわけにはもちろんいきませんが、コーナリングやアップダウン、加速減速といった通常のライディングに必要な扱いやすさはしっかりと確保されています。ダンシングも本当に自然でビックリしました。下りのタイトコーナーでも試してみたんですが、不安感はありませんでしたね。
肝心の高速順行性ですが、空気の抜けがよくスピードが低下しにくいことが実感できます。上げたスピードを持続するときでも、踏み足す必要がないんです。さすがに空力を得意としているブランドだけあります。過剰なエアロ装置を装備したモデルに比べると造形がシンプルで、横風にもあおられにくく、余計な材料を使っていないので結果として重量も軽く仕上がっていますね。
また、ブレーキの位置がオーソドックスなので、様々なコースに対応できることもメリットです。単なる「直線番長」ではありません。コーナーがたくさんあるコースであれば、空力のみに特化した専用ブレーキのフレームよりも、扱いやすくてブレーキも利くバイヤモのほうが結果的に速いでしょうね。シチュエーションを限定することなくアベレージ速度を上げることができるバイクだといえるでしょう。
直線走行に特化したバイクだと、ビギナーにとっては「速く走るのが怖いフレーム」になってしまう可能性が高い。でもバイヤモはすごく自然に操れる。このメリットは大きいですね。シンプルなんだけど、トータルのバランスがすばらしい。こういう性能は、広告やカタログの数値から読み取るのは難しいんです。派手なカタチやスペックのものに目が行ってしまいがちですが、結果として安全に楽にTTコースを走り抜けることができるのは、バイヤモでしょう。
「TTバイクに乗り慣れていなくても、ロードバイク感覚で乗れる」 吉田秀夫(盆栽自転車店)
TTバイクにしてはすごく扱いやすいことが印象に残りました。さすがに通常のロードのようにとはいきませんが、慣れればダンシングもしやすいですね。今回のインプレでも、意識せず自然にダンシングしてました。ブレーキ位置もスペシャルなパーツを必要としない作りなので、安心できます。
専用ブレーキを装備しているTTフレームはやっぱり制動が苦手なことが多いですが、TTバイクといっても制動力は重要な性能。そういう意味でも、このバイヤモはTTバイクにもメンテナンス性や安心感を求めたい人にオススメできます。
ハンドリングはやはり直進安定性重視のTTフレームという印象で、左右方向への移動には若干のクセがありますが、TTに乗り慣れていなくてもロードフレームの感覚で乗れるレベル。ロードから乗り換えても、特別な練習をしなくて済みます。特殊なモデルだと慣れるのに時間が掛かりますから。ダンシングがしやすいというだけでも、登りで有利ですよね。
肝心の高速巡航性能もいいですね。TTバイクらしく高速への伸びがあり、脚さえあればスピードがどんどん上がっていく感じがします。メカニック視点で見ても組みやすそうです。TTフレームにありがちなシフト操作が重くなってしまうようなこともありませんでした。ホビーレーサーにとって、TTレースって年に数回ですよね。そんなスポット参戦的な状況には、この扱いやすいバイヤモは非常にオススメできるモデルだと言えます。
提供:トライスポーツ 編集:シクロワイアード編集部