ピナレロは2013年、エントリー~ミドルグレードのラインナップを強化する。FPクアトロとFPデュエカーボンとの間に登場したニューモデルが、このFPチーム。シマノ・アルテグラ仕様で約30万円という、ミドルレンジど真ん中のニューモデルである。

ピナレロ FPチームピナレロ FPチーム
クアトロやロクと価格帯が近く、どれにすべきか迷っている人も多いだろうが、レースやヒルクライムなどチャレンジングな乗り方に対応するクアトロ、快適性重視のロクに対して、このFPチームはよりファンライド志向が強く、エンデューロや平坦基調のロングライド、週末サイクリングに適したバイクになっているという。要するに、ロングライドに振りすぎず、かといってあまりレーシーなのも…という「ちょうどいいロードバイク」を探している人にピッタリなのだ。

フレーム素材は上位機種であるロクやFPクアトロと同等の30トングレード。左右非対称設計は採用されていないフレーム素材は上位機種であるロクやFPクアトロと同等の30トングレード。左右非対称設計は採用されていない 試乗車はチームスカイカラー。ステムには、1KカーボンでラップされたMostステムが採用される試乗車はチームスカイカラー。ステムには、1KカーボンでラップされたMostステムが採用される

エントリーモデルでも手を抜かないピナレロの姿勢

とはいえ、素材は30トングレードカーボンでBB周辺には十分な剛性を持たせてあり、ヒルクライムやダンシングでもパワーロスを最小限に抑える作り。フロントフォークとシートステーには快適性と安定性に定評があるオンダフォークを採用している。完成車での販売となり、コンポーネントはシマノ・アルテグラ。非常に高いコストパフォーマンスを実現している。

シートステーは縦方向だけでなく、左右方向にも湾曲している。しっかりとした剛性を確保しつつ、快適性にも留意されているシートステーは縦方向だけでなく、左右方向にも湾曲している。しっかりとした剛性を確保しつつ、快適性にも留意されている
プロチームカラーは、このFPチームだけの特権。試乗車のチームスカイのほか、アルカンシェルやモビスターもラインナッププロチームカラーは、このFPチームだけの特権。試乗車のチームスカイのほか、アルカンシェルやモビスターもラインナップ
ヘッドベアリングは上側:1-1/8インチ、下側:1-1/4インチの上下異径タイプ。ヘッドチューブには特徴的なフィンがヘッドベアリングは上側:1-1/8インチ、下側:1-1/4インチの上下異径タイプ。ヘッドチューブには特徴的なフィンが


サイズが7種類と豊富に用意されている点にも注目したい。低価格モデルでもサイズラインナップに妥協しないピナレロの姿勢は評価するべきである。全サイズスローピングデザインとなるが、そのシルエットはホリゾンタルに近く、ロードバイクらしい立ち姿を持っているのも魅力だ。

従来ではピナレロ各グレードにチームカラーが設定されていたが、2013年モデルでは、このFPチームが完成車ラインナップ中、唯一のチームカラー設定モデルとなり、モビスター、チームスカイ、アルカンシェルが用意されている。

30トングレードカーボンを使用し、BB周辺には十分な剛性を持たせてある30トングレードカーボンを使用し、BB周辺には十分な剛性を持たせてある シートステーには快適性と安定性に定評があるオンダフォークを採用シートステーには快適性と安定性に定評があるオンダフォークを採用

ピナレロ FPチーム(シマノ アルテグラ完成車)

サイズ43SL, 44.5SL, 46SL, 49SL, 51SL, 53SL, 55SL
マテリアルCarbon 30HM12K
フォークOnda Carbon 30HM12K Asymmetric 1” 1/8 1” 1/4 integral system
ボトムブラケットMOst Croxover (ITA規格)
フレーム重量約1,250g(サイズ54、ベア重量)
ホイールシマノ R501-30
価 格319,000円(税込)

インプレッション

「中間加速のトルク感が魅力」 二戸康寛

CW:次は注目のニューモデル、FPチームです。

「中間加速のトルク感が魅力」 二戸康寛「中間加速のトルク感が魅力」 二戸康寛 白川:快適性が高く、スムーズな走行感が魅力ですね。あえて剛性感を落としてあるので、ムラのあるペダリングをしてもフレームが受け入れてくれる印象を受けました。これ、個人的にかなり好みですね。実業団レベルのライダーだと柔らかく感じる人もいるでしょうが、ビギナーはそこまでの性能を求めているわけではありません。他のインプレ記事ではもしかしたら柔らかいと書かれているかもしれませんが、その柔らかさは決してネガティブなものではありませんでした。

CW:なるほど。このバイクを購入するであろうライダーのレベルに最適化されているわけですか。

白川:そうですね。どんな踏み方をしてもフレームが受け入れてくれて前に進む力に換えてくれているイメージでしょうか。インナー×ローにして、上りで踏み込んでみたんですが、ものすごく気持ちよく進んでくれるんですよ。

CW:低価格ながら、なかなか高評価ですね。二戸さんは?

二戸:FPウノカーボンよりも剛性感がありますね。加速やゼロスタート時の軽さはさほど感じられないんですが、FPチームの魅力は「キレのよさ」というよりも、「スピードをさらに乗せていくときのトルク感」ですね。

CW:お二人とも同じような印象ですね。フレームのしなやかさがいい方向に効いているんでしょうか。

白川:ですね。踏んだ瞬間から爆発的に進むという感じではないんですが、常にトルクがかかって気持ちよく進んでくれます。

二戸:スピードがグングン伸びていく感じ。平地でポーンとスピードを上げて巡航に移る、というような走り方をすると本当に気持ちいい。

「レースでも使ってみたい!」 白川賢治

CW:シリアスレースには向かなさそうですか?

白川:シリアスレーサーというよりは、気持ちよく速く走りたいという人にオススメできますね。でも僕は、レースでもこういうフレームを使ってみたいと思っているんですよ。

「レースでも使ってみたいと思わせる走行性能」 白川賢治「レースでも使ってみたいと思わせる走行性能」 白川賢治
CW:ほう。それはなぜですか?

白川:硬いフレームに不満を感じることが多くなってきたんです。剛性があるバイクは確かにゼロスタート時の加速はいいんです。でも、中間加速ではそれほどの硬さは必要ないと思い始めたんです。剛性が適度だと、フレームの反発でペダルを上手く回せるようになりますし。高剛性イコール速い、ではないですね。

CW:なるほど。しなやかなフレームの方が好みだと言うプロ選手も多いですよね。快適性はどうでしたか?

二戸:レベル高いと思います。振動はしっかりと吸収してくれますし、ピナレロ独特の安定感はこのFPチームにも生きています。下りでの安定感も高い。

CW:どんな使い方に適していると思われますか?

白川:ロングライドにも使いたいですね。コースの後半で疲れてきたときに、自転車がライダーをサポートしてくれるので。こういう自転車で上手く力をセーブして走った方が、結果的にラクに速く遠くに行けるんじゃないかな、と感じます。

二戸:どんどんスピードを上げていく気持ちよさがあるので、平坦基調のコースを一日中かけてロングライドするというような使い方に適しています。見た目も存在感があっていいですよね。フルアルテグラですし、たっぷり楽しめますよ。長い目で見てもお買い得です。
編集:シクロワイアード 提供:カワシマサイクルサプライ