2010/10/19(火) - 14:07
デローザとカンパニョーロ。フレームとグループセット(コンポーネント)の単なる関係を超えて、両社には切っても切れない関係がある。デローザ創業者ウーゴ・デローザとカンパニョーロ社はレースという現場で、ときに意見を交わしながらともに進化し合ってきた歴史がある。
デローザにフレーム製作を依頼した史上最強のレーサーであるエディメルクス氏は、フレームは言うに及ばずパーツの細部にまで執拗なこだわりを見せた。そのリクエストに応えてきたのがカンパニョーロとデローザの両社だった。
両社の関係は、現代においても継承されている。フレームとパーツの調和のとれた進化は、データには表せないものだ。ここではカンパニョーロのパーツにスポットを当てて紹介しよう。
素材の変更、固定ボルト等の形式変更、各パーツの形状も高剛性・耐久性を追求しながらも、ストレスのかからない部分を削ぎ落とし、細部に渡るブラッシュアップが施された。
これらの積み重ねにより、グループセットごとに数十グラムの軽量化を達成している。
アテナ、ヴェローチェ、ケンタウルのグループセットには、新方式のパワートルク・クランクが採用された。スピンドル(クランク軸)がチェーンホイール側に固定されるワンピース方式になり、さらに耐ねじれ剛性が向上した。
チェーンリングは全グレードで一新され、変速がスムーズになっている。アウターチェーンリング内側に装備される変速用スパイクも、その位置が見直され、片側性向上のために施される切削加工と歯の形状も再設計された。とくにフロント側の変速性能が著しく向上した。
また、コーラス、レコード、スーパーレコードではインナーチェーンリングに雌ネジを切ることによってナットが不要となり、ボルトのみでアウター&インナーチェーンリングを固定できるようになった。
スーパーレコードではオプションでウルトラトルク・スピンドルにチタンバージョンの選択が可能となり、さらなる軽量化が可能になっている。
リアディレイラーは内側プーリーケージと内側リンクプレートを除きボディのほとんどがカーボン化された。軽量化とともに強靭な剛性を実現している。
アテナ、コーラス、レコード、スーパーレコードのグループセットでは、リアブレーキにデュアルピポットタイプとシングルピボットタイプが選択可能になった。より強いストッピングパワーを選ぶのか、軽量化を重視するのかを選択できるようになったと言えるだろう。ベローチェ、ケンタウルではデュアルピポットタイプとなる。
コーラス、レコード、スーパーレコードのブレーキパッドホルダーはスケルトンになり、パッドの交換が非常に容易な構造になった。チョイスするホイールにあわせ、パッドをカーボンリム用あるいはアルミ用と、スピーディに換装できる。
変速性能の要、エルゴパワーの内部ラチェット構造も見直された。前モデルよりシンプルな構造が追求され、キレの良い変速性能、シフトフィーリングのさらなる向上が実現している。
ブレーキフードにはレッドとホワイトが純正で用意され、カラーコーディネイトの幅が広がった。
2011年コンポの進化はここでは書ききれないほどだが、パフォーマンスと軽量化の向上に反比例するように全体の価格を下げたこともユーザーには見逃せない点だ。
今回試乗したR848に搭載されていたヴェローチェ、そしてキング3RSのスーパーレコードも、ともに確かに進化した性能を感じ取ることができた。上質な使い心地やフィーリングは、他社のコンポとはやはり一味違うと感じさせてくれる。
スーパーレコードはリアディレーラーがほぼフルカーボン化されたり、クランクにチタンシャフトを採用したりと、細かいところでスペックアップしている。
それは軽量化や耐久力を増すための努力であることは言うまでもない。そういうことも当然大事なのことだが、それ以上にカンパニョーロのコンポはどのグレードであっても上記のような感覚的な部分で共通した「気持ちよさ」を感じることを大切にしているように感じる。
人間の感覚に訴えてくる。カンパニョーロのコンポーネントを使うと、よく感じることだ。もちろん重量や動作精度も重要だが、カンパニョーロにはスペック表には記載できない直感的なフィーリングの良さがある。
「まるで気の合う友人と握手をしているような感覚になる」私のショップに来てくれるあるお客さんが表現した言葉だけど、ブレーキレバーを握る時の感覚はこの表現が言い得て妙だと感じる。手のひらにフィットして、心地よい力加減で操作することができる。まるで互いを信頼している友人同士のような関係を構築できる、というのがその理由だ。
特にブレーキは、誰もがオンとオフ、1か0じゃない細かな操作を知らないうちにしている。しかも足よりも感覚の鋭敏な手による操作だから、記憶に残りやすい。実際にカンパのブレーキ操作感覚を言葉で表現すると「ギュウッと握る」とか「グッと握る」「ジワッと握る」など、擬音がどうしても入ってくることが多い。
具体的な数値で表すことができないからこそ“フィーリング”で説明するほかない。そのほかの部位もこのような表現になってしまう。だから感覚的にカンパニョーロのコンポは“気持ちいい”。どうしてもそういう評価、表現に落ち着いてしまう。
あるいは直感的な部分で操作しやすく“コンポと対話しているような感覚になる”と言い換えてもいい。冒頭でも言わせてもらったが、カンパニョーロの魅力を尋ねられたら、やはりそれは「直感的なフィーリングの良さ」に尽きる。
話題が少し横道に逸れるが、カンパニョーロのホイールも同様にスペックには表せない気持ちよさがある。それはよく回るとか、手応えで分かりやすいクイックリリースレバーの締まり具合など、カンパニョーロらしいフィーリングの良さ、対人間を考えた設計であろうことが伺える。
数字では表せない、自転車で走るために考えられた直感性、優れたフィーリング。これはデローザのバイクにも当てはまる特徴だ。新ヴェローチェのフルグループセットで組まれたR848は、フレームとパーツ、そしてホイールを含めた一体感を、テストライドで体感することができた。
加えてデザインの完璧な調和。だからこそやはりデローザにはカンパが似合う。そう思わせてくれる互いの設計思想の相性のよさがそこにはある。
デローザにフレーム製作を依頼した史上最強のレーサーであるエディメルクス氏は、フレームは言うに及ばずパーツの細部にまで執拗なこだわりを見せた。そのリクエストに応えてきたのがカンパニョーロとデローザの両社だった。
両社の関係は、現代においても継承されている。フレームとパーツの調和のとれた進化は、データには表せないものだ。ここではカンパニョーロのパーツにスポットを当てて紹介しよう。
さらなる成熟を究めた2011カンパニョーロ・グループセット
2011年モデルとして登場するカンパニョーロのグループセット(コンポーネント)は、すべてのグレードにおいて大幅な改良が行われた。素材の変更、固定ボルト等の形式変更、各パーツの形状も高剛性・耐久性を追求しながらも、ストレスのかからない部分を削ぎ落とし、細部に渡るブラッシュアップが施された。
これらの積み重ねにより、グループセットごとに数十グラムの軽量化を達成している。
アテナ、ヴェローチェ、ケンタウルのグループセットには、新方式のパワートルク・クランクが採用された。スピンドル(クランク軸)がチェーンホイール側に固定されるワンピース方式になり、さらに耐ねじれ剛性が向上した。
チェーンリングは全グレードで一新され、変速がスムーズになっている。アウターチェーンリング内側に装備される変速用スパイクも、その位置が見直され、片側性向上のために施される切削加工と歯の形状も再設計された。とくにフロント側の変速性能が著しく向上した。
また、コーラス、レコード、スーパーレコードではインナーチェーンリングに雌ネジを切ることによってナットが不要となり、ボルトのみでアウター&インナーチェーンリングを固定できるようになった。
スーパーレコードではオプションでウルトラトルク・スピンドルにチタンバージョンの選択が可能となり、さらなる軽量化が可能になっている。
リアディレイラーは内側プーリーケージと内側リンクプレートを除きボディのほとんどがカーボン化された。軽量化とともに強靭な剛性を実現している。
アテナ、コーラス、レコード、スーパーレコードのグループセットでは、リアブレーキにデュアルピポットタイプとシングルピボットタイプが選択可能になった。より強いストッピングパワーを選ぶのか、軽量化を重視するのかを選択できるようになったと言えるだろう。ベローチェ、ケンタウルではデュアルピポットタイプとなる。
コーラス、レコード、スーパーレコードのブレーキパッドホルダーはスケルトンになり、パッドの交換が非常に容易な構造になった。チョイスするホイールにあわせ、パッドをカーボンリム用あるいはアルミ用と、スピーディに換装できる。
変速性能の要、エルゴパワーの内部ラチェット構造も見直された。前モデルよりシンプルな構造が追求され、キレの良い変速性能、シフトフィーリングのさらなる向上が実現している。
ブレーキフードにはレッドとホワイトが純正で用意され、カラーコーディネイトの幅が広がった。
2011年コンポの進化はここでは書ききれないほどだが、パフォーマンスと軽量化の向上に反比例するように全体の価格を下げたこともユーザーには見逃せない点だ。
インプレッション by 鈴木祐一(Rise Ride)
「人間的なフィーリングと直感的な操作感を大切にしたコンポ」
デローザはカンパニョーロのコンポで組まれていてほしい。やはりそう思う。これを説明するにはまずカンパニョーロの魅力を説明したほうが分かりやすいだろう。今回試乗したR848に搭載されていたヴェローチェ、そしてキング3RSのスーパーレコードも、ともに確かに進化した性能を感じ取ることができた。上質な使い心地やフィーリングは、他社のコンポとはやはり一味違うと感じさせてくれる。
スーパーレコードはリアディレーラーがほぼフルカーボン化されたり、クランクにチタンシャフトを採用したりと、細かいところでスペックアップしている。
それは軽量化や耐久力を増すための努力であることは言うまでもない。そういうことも当然大事なのことだが、それ以上にカンパニョーロのコンポはどのグレードであっても上記のような感覚的な部分で共通した「気持ちよさ」を感じることを大切にしているように感じる。
人間の感覚に訴えてくる。カンパニョーロのコンポーネントを使うと、よく感じることだ。もちろん重量や動作精度も重要だが、カンパニョーロにはスペック表には記載できない直感的なフィーリングの良さがある。
「まるで気の合う友人と握手をしているような感覚になる」私のショップに来てくれるあるお客さんが表現した言葉だけど、ブレーキレバーを握る時の感覚はこの表現が言い得て妙だと感じる。手のひらにフィットして、心地よい力加減で操作することができる。まるで互いを信頼している友人同士のような関係を構築できる、というのがその理由だ。
特にブレーキは、誰もがオンとオフ、1か0じゃない細かな操作を知らないうちにしている。しかも足よりも感覚の鋭敏な手による操作だから、記憶に残りやすい。実際にカンパのブレーキ操作感覚を言葉で表現すると「ギュウッと握る」とか「グッと握る」「ジワッと握る」など、擬音がどうしても入ってくることが多い。
具体的な数値で表すことができないからこそ“フィーリング”で説明するほかない。そのほかの部位もこのような表現になってしまう。だから感覚的にカンパニョーロのコンポは“気持ちいい”。どうしてもそういう評価、表現に落ち着いてしまう。
あるいは直感的な部分で操作しやすく“コンポと対話しているような感覚になる”と言い換えてもいい。冒頭でも言わせてもらったが、カンパニョーロの魅力を尋ねられたら、やはりそれは「直感的なフィーリングの良さ」に尽きる。
話題が少し横道に逸れるが、カンパニョーロのホイールも同様にスペックには表せない気持ちよさがある。それはよく回るとか、手応えで分かりやすいクイックリリースレバーの締まり具合など、カンパニョーロらしいフィーリングの良さ、対人間を考えた設計であろうことが伺える。
数字では表せない、自転車で走るために考えられた直感性、優れたフィーリング。これはデローザのバイクにも当てはまる特徴だ。新ヴェローチェのフルグループセットで組まれたR848は、フレームとパーツ、そしてホイールを含めた一体感を、テストライドで体感することができた。
加えてデザインの完璧な調和。だからこそやはりデローザにはカンパが似合う。そう思わせてくれる互いの設計思想の相性のよさがそこにはある。
インプレライダーのプロフィール
鈴木 祐一(Rise Ride)
サイクルショップ・ライズライド代表。バイシクルトライアル、シクロクロス、MTB-XCの3つで世界選手権日本代表となった経歴を持つ。元ブリヂストン MTBクロスカントリーチーム選手としても活躍した。2007年春、神奈川県橋本市にショップをオープン。クラブ員ともにバイクライドを楽しみながらショップを経営中。各種レースにも参戦中。セルフディスカバリー王滝100Km覇者。
サイクルショップ・ライズライド
サイクルショップ・ライズライド代表。バイシクルトライアル、シクロクロス、MTB-XCの3つで世界選手権日本代表となった経歴を持つ。元ブリヂストン MTBクロスカントリーチーム選手としても活躍した。2007年春、神奈川県橋本市にショップをオープン。クラブ員ともにバイクライドを楽しみながらショップを経営中。各種レースにも参戦中。セルフディスカバリー王滝100Km覇者。
サイクルショップ・ライズライド
提供:日直商会 企画:シクロワイアード