2010/10/05(火) - 11:57
なんと“デローザ”のカーボンバイクが完成車で30万円を切る価格で手に入れられる。デローザといえばその確かな品質で日本でも多くの支持を得てきたイタリアの老舗。しかし、デローザのラインナップは某自動車CMの名コピーをもじって「いつかはデローザ」と表されるほど、どれも高嶺の花だった。
自転車店で見知らぬ誰かに納車されるであろう“デローザ”に熱い視線を送った経験のある読者もいることだろう。しかしそんな「深窓の令嬢」的存在のデローザのカーボンバイクがエントリーユーザーに近づいてきてくれた。それがこのR848だ。
デローザ R848 photo:MakotoAYANO/cyclowired.jp
走りの中身はインプレッション本文で確認いただくとして、外見的な特徴から見ていこう。まず一見してエントリーモデルだからといって妥協されたようなところは一切ない。
ボリューム感のあるヘッド周りはガッチリとしているにも関わらず、シャープにまとめられている。BBやチェーンステー、ダウンチューブの一体感があり、美しく仕上げられている。
さらにグラフィックも同様に綺麗にまとめられている。ロードレーサーらしいシャープさと、マッシヴなカーボンフレームのダイナミックさがよく引き出されている。
白く塗り分けられたヘッドにはおなじみのハートマークが入る
シートチューブにはR848の文字が大きく記される
トップチューブにもさりげなくR848のロゴが入る
R848は完成車での販売となるので、フレーム以外の部分にも注目したい。シートポストやステムにはFSAの製品が使用されているが、シートポストにはデローザのロゴがプリントされていて、細かなところまで統一感があるデザインとなっている。
これにフィジークのアリオネ、カンパニョーロ・ヴェローチェのフルコンポと、ホイールに同カムシンがインストールされる。30万円でデローザがデローザとしてユーザーに届けられるパッケージとして、考え尽くされてされている。
そして技術的な部分では、サイズの違いによる乗り味の変化をなくして同一のポテンシャル、フィーリングを保つために BIO SP(Biometric Specific Profiles)テクノロジーを採用しているのが特徴的だ。
コンポは新しくなったカンパ・ヴェローチェだ
フィジークのデザインも車体によく似合う
リアステーはシャープでソリッドな印象だ
BIO SPテクノロジーでどのサイズでも均一のパフォーマンスを得られる
ダウンチューブ底部にもロゴがサイドとは反転して入る
一般的に自転車のフレームはチューブの長さを変えることで各サイズを展開する。しかしこの場合、ベースとなったサイズ以外はフィーリングに多少の違いが出ることが多い。この性能誤差をなくしたのがBIO SPテクノロジーというわけだ。
さらに嬉しいのはサイズ違いによるスタイルの変化も少ないというところ。店頭はもちろん各メディアで見た印象そのままが手に入るのは存外に嬉しい。
さてR848の概要を説明したところで、それではいよいよインプレッションに入っていこう。
「上りも下りも平坦もデローザらしい安定感のある乗り味がしっかりと感じられる1台」鈴木祐一
自分自身、デローザのバイクに乗っていたこともあるし、その歴史を知っているのでデローザといえば「レースバイクを中心に高級バイクしか販売していないメーカー」というイメージが強い。
だから乗ってみるまでは普及価格帯に“手を出してしまった”のではないか、と少々懐疑的になっていた。
しかし実際に乗ってみると、上りも下りも平坦もデローザらしい安定感のある乗り味がしっかりと感じられる1台に仕上がっていたので、とても好印象を受けた。
「嫌なブレーキングの感覚もなく、下りでのハードブレーキングも安定していた」鈴木祐一 嫌なクセがないのでどんなシーンにも適応できる。この辺りがロードレーサーをよく知っているデローザだからこそできる味付けなのだろう。
コストダウンだけを求めたバイクになることなく、デローザの魅力をしっかり伝えてくれる。これならばデローザのラインナップに加えてもなんら遜色ない。
また完成車なのでコンポとの相性にも触れておこう。同じイタリアのメーカーということでカンパニョーロコンポの採用は当然理解できる。
そのなかでもフレームとコンポの相性が出やすいブレーキを特に気に留めて走っていたのだが、嫌なブレーキングの感覚もなく、下りでのハードブレーキングも安定していた。
フレームのデキの良さとパーツアッセンブルがそれに適していると言えるだろう。完成車として評価できるポイントだ。
また、販売されるパッケージのままでも充分なパフォーマンスを得られるが、このフレームは高い基本性能を持っているのでホイールを換えるだけでよりユーザーの用途や好みに合わせてカスタマイズしていけると感じた。
さまざまな走り方に合わせられる造りと乗り味のフレームなので、ディープリムを履かせてもいいだろうし、軽いホイールで峠越えやロングライドをさらに楽しく走るのもいいだろう。
現在、ロードバイクはレースからツーリングまでターゲットを細分化して商品が投入されるようになってきた。決して安い買い物ではないだけに、R848のような守備範囲の広いバイクはユーザーも重宝するだろう。
そして安くない買い物のなかでもデローザはこれまで高嶺の花の存在だったので、買える人が限られてしまっていた。この価格帯で誰もがデローザの魅力に触れられるようになった意味は想像以上に大きい。
少なくともR848はデローザファンをより多く作り出す1台になることは間違いないだろう。
しかしそんな懸念はまったくの杞憂だった。最初の踏み込みによる初期の動きから軽やかで、力強くペダリングしても力を溜めておいてそれを反発させて進んでいってくれる。そんなしなやかな走りを感じさせてくれた。
「荒れた路面でのハンドリングの良さを含めて、いつでも安心感のある走りを提供してくれるのが印象的」三上和志
また走行シーンで不得意な部分は無いように感じた。むしろ得意な部分がクローズアップされる印象のほうが強い。なかでも荒れた路面でのハンドリングの良さを含めて、いつでも安心感のある走りを提供してくれるのが印象的だった。
そしてフレームの設計の良さからか、インストールされているホイールの重さを経験から知っているのだが、それすら走り始めればまったく感じさせないのには驚いた。
このフレームならば高級ホイールを履いたとしても充分その力を発揮できるだろう。
また、よくある「フレームはいいのだけれど、フォークがイマイチ」なんてアンバランスさも感じさせない。ブレーキも安心感のある感触でパッケージとして優秀なものになっていると言える。
デローザのバイクとしてはかなり安価に登場したが、デローザの魅力的な部分をたっぷり味わわせてくれるバイクになっている。
また見た目も美しく、なめらかな作りで造形的にも満足できる仕上がりになっている。その上、シートポストに貼られたロゴもただシールを貼るのではなく、クリアコートの中に貼ってあるなど、細部にわたって気が遣われているのが好印象。
デローザはその走行性能だけではなく、デザインやグラフィックにも定評のあるメーカーだ。それだけに外見的な部分で憧れていた人も居ると思う。
「ハートマークが気に入っているのだけど、値段が高くて買えない」と言っていた人たちが、「これならば」と手を出せる価格帯でこのR848を登場させたのは素晴らしい。
「ブレーキも安心感のある感触でパッケージとして優秀なものになっている」三上和志
どんなアプローチにせよ、このバイクならばロードバイクの魅力を充分伝えることができるし、デローザの魅力ももちろん伝わるだろう。最初の1台としても、長くつきあえる1台としても適したバイクになっていると言える。
この価格でこれだけの実力を見せられると高い評価をせざる得ないが、個人的には「デローザは永遠に高嶺の花でいてほしかったな」という複雑な心境になってしまう、そんなバイクだった。
デローザ R848 photo:MakotoAYANO/cyclowired.jp
鈴木祐一
鈴木 祐一(Rise Ride)
サイクルショップ・ライズライド代表。バイシクルトライアル、シクロクロス、MTB-XCの3つで世界選手権日本代表となった経歴を持つ。元ブリヂストン MTBクロスカントリーチーム選手としても活躍した。2007年春、神奈川県橋本市にショップをオープン。クラブ員ともにバイクライドを楽しみながらショップを経営中。各種レースにも参戦中。セルフディスカバリー王滝100Km覇者。
サイクルショップ・ライズライド
三上 和志
三上和志(サイクルハウスMIKAMI)
埼玉県飯能市にある「サイクルハウスMIKAMI」店主。MTBクロスカントリー全日本シリーズ大会で活躍した経験を生かし、MTBに関してはハード・ソフトともに造詣が深い。トレーニングの一環としてロードバイクにも乗っており、使用目的に合った車種の選択や適正サイズに関するアドバイスなど、特に実走派のライダーに定評が高い。
サイクルハウスMIKAMI
自転車店で見知らぬ誰かに納車されるであろう“デローザ”に熱い視線を送った経験のある読者もいることだろう。しかしそんな「深窓の令嬢」的存在のデローザのカーボンバイクがエントリーユーザーに近づいてきてくれた。それがこのR848だ。
走りの中身はインプレッション本文で確認いただくとして、外見的な特徴から見ていこう。まず一見してエントリーモデルだからといって妥協されたようなところは一切ない。
ボリューム感のあるヘッド周りはガッチリとしているにも関わらず、シャープにまとめられている。BBやチェーンステー、ダウンチューブの一体感があり、美しく仕上げられている。
さらにグラフィックも同様に綺麗にまとめられている。ロードレーサーらしいシャープさと、マッシヴなカーボンフレームのダイナミックさがよく引き出されている。
R848は完成車での販売となるので、フレーム以外の部分にも注目したい。シートポストやステムにはFSAの製品が使用されているが、シートポストにはデローザのロゴがプリントされていて、細かなところまで統一感があるデザインとなっている。
これにフィジークのアリオネ、カンパニョーロ・ヴェローチェのフルコンポと、ホイールに同カムシンがインストールされる。30万円でデローザがデローザとしてユーザーに届けられるパッケージとして、考え尽くされてされている。
そして技術的な部分では、サイズの違いによる乗り味の変化をなくして同一のポテンシャル、フィーリングを保つために BIO SP(Biometric Specific Profiles)テクノロジーを採用しているのが特徴的だ。
一般的に自転車のフレームはチューブの長さを変えることで各サイズを展開する。しかしこの場合、ベースとなったサイズ以外はフィーリングに多少の違いが出ることが多い。この性能誤差をなくしたのがBIO SPテクノロジーというわけだ。
さらに嬉しいのはサイズ違いによるスタイルの変化も少ないというところ。店頭はもちろん各メディアで見た印象そのままが手に入るのは存外に嬉しい。
さてR848の概要を説明したところで、それではいよいよインプレッションに入っていこう。
インプレッション by 鈴木祐一(Rise Ride)
「デローザのテイストをしっかり感じられる普及モデル」
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自分自身、デローザのバイクに乗っていたこともあるし、その歴史を知っているのでデローザといえば「レースバイクを中心に高級バイクしか販売していないメーカー」というイメージが強い。
だから乗ってみるまでは普及価格帯に“手を出してしまった”のではないか、と少々懐疑的になっていた。
しかし実際に乗ってみると、上りも下りも平坦もデローザらしい安定感のある乗り味がしっかりと感じられる1台に仕上がっていたので、とても好印象を受けた。
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コストダウンだけを求めたバイクになることなく、デローザの魅力をしっかり伝えてくれる。これならばデローザのラインナップに加えてもなんら遜色ない。
また完成車なのでコンポとの相性にも触れておこう。同じイタリアのメーカーということでカンパニョーロコンポの採用は当然理解できる。
そのなかでもフレームとコンポの相性が出やすいブレーキを特に気に留めて走っていたのだが、嫌なブレーキングの感覚もなく、下りでのハードブレーキングも安定していた。
フレームのデキの良さとパーツアッセンブルがそれに適していると言えるだろう。完成車として評価できるポイントだ。
また、販売されるパッケージのままでも充分なパフォーマンスを得られるが、このフレームは高い基本性能を持っているのでホイールを換えるだけでよりユーザーの用途や好みに合わせてカスタマイズしていけると感じた。
さまざまな走り方に合わせられる造りと乗り味のフレームなので、ディープリムを履かせてもいいだろうし、軽いホイールで峠越えやロングライドをさらに楽しく走るのもいいだろう。
現在、ロードバイクはレースからツーリングまでターゲットを細分化して商品が投入されるようになってきた。決して安い買い物ではないだけに、R848のような守備範囲の広いバイクはユーザーも重宝するだろう。
そして安くない買い物のなかでもデローザはこれまで高嶺の花の存在だったので、買える人が限られてしまっていた。この価格帯で誰もがデローザの魅力に触れられるようになった意味は想像以上に大きい。
少なくともR848はデローザファンをより多く作り出す1台になることは間違いないだろう。
インプレッション by 三上和志(サイクルショップミカミ)
「高嶺の花でいてほしかった、そう思わせるデキ」
なによりもまずエントリーモデルのデローザが出たことに驚いた。同時に果たして本当に“デローザ”なんだろうか? なんて疑ってしまった。しかしそんな懸念はまったくの杞憂だった。最初の踏み込みによる初期の動きから軽やかで、力強くペダリングしても力を溜めておいてそれを反発させて進んでいってくれる。そんなしなやかな走りを感じさせてくれた。
そしてフレームの設計の良さからか、インストールされているホイールの重さを経験から知っているのだが、それすら走り始めればまったく感じさせないのには驚いた。
このフレームならば高級ホイールを履いたとしても充分その力を発揮できるだろう。
また、よくある「フレームはいいのだけれど、フォークがイマイチ」なんてアンバランスさも感じさせない。ブレーキも安心感のある感触でパッケージとして優秀なものになっていると言える。
デローザのバイクとしてはかなり安価に登場したが、デローザの魅力的な部分をたっぷり味わわせてくれるバイクになっている。
また見た目も美しく、なめらかな作りで造形的にも満足できる仕上がりになっている。その上、シートポストに貼られたロゴもただシールを貼るのではなく、クリアコートの中に貼ってあるなど、細部にわたって気が遣われているのが好印象。
デローザはその走行性能だけではなく、デザインやグラフィックにも定評のあるメーカーだ。それだけに外見的な部分で憧れていた人も居ると思う。
「ハートマークが気に入っているのだけど、値段が高くて買えない」と言っていた人たちが、「これならば」と手を出せる価格帯でこのR848を登場させたのは素晴らしい。
どんなアプローチにせよ、このバイクならばロードバイクの魅力を充分伝えることができるし、デローザの魅力ももちろん伝わるだろう。最初の1台としても、長くつきあえる1台としても適したバイクになっていると言える。
この価格でこれだけの実力を見せられると高い評価をせざる得ないが、個人的には「デローザは永遠に高嶺の花でいてほしかったな」という複雑な心境になってしまう、そんなバイクだった。
デローザ R848
サイズ(A) | 42・45・48 |
カラー | BlackRed、BlackGold、BlackSilver |
コンポーネント/ホイール | Campagnolo Veloce / Khamsin wheels |
サドル | フィジーク |
ハンドル/ステム/シートピラー | FSA |
タイヤ | ビットリア |
完成車価格 | ¥299,250(本体価格 ¥285,000) |
インプレライダーのプロフィール
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サイクルショップ・ライズライド代表。バイシクルトライアル、シクロクロス、MTB-XCの3つで世界選手権日本代表となった経歴を持つ。元ブリヂストン MTBクロスカントリーチーム選手としても活躍した。2007年春、神奈川県橋本市にショップをオープン。クラブ員ともにバイクライドを楽しみながらショップを経営中。各種レースにも参戦中。セルフディスカバリー王滝100Km覇者。
サイクルショップ・ライズライド

埼玉県飯能市にある「サイクルハウスMIKAMI」店主。MTBクロスカントリー全日本シリーズ大会で活躍した経験を生かし、MTBに関してはハード・ソフトともに造詣が深い。トレーニングの一環としてロードバイクにも乗っており、使用目的に合った車種の選択や適正サイズに関するアドバイスなど、特に実走派のライダーに定評が高い。
サイクルハウスMIKAMI
提供:日直商会 企画:シクロワイアード