2010/10/12(火) - 13:09
デローザのフラグシップモデルがKING3 RSだ。トッププロから高評価を得たキング3を、レースシーンからのフィードバックでブラッシュアップして誕生した超実力派バイクとなっている。
デローザ KING3 RS photo:MakotoAYANO/cyclowired.jp
RSの称号を得た理由は、まずフレーム重量の軽量化が進んだ点。KING3から10%もの軽量化に成功している。そしてキング3 RS専用のストレートフォークも見逃せない。シャープなイメージの外観となっている。当然走りもさらに向上しているのだが、その内容はインプレッション部分で確認して欲しい。
——最高のイタリアンフレームメーカーは、カスタムサイズに対応する必要がある。
デローザの持つこの哲学も当然貫かれ、用意される10サイズのほかにシマノDi2仕様やサイズカスタムにも対応する。さらにサイズカスタムは「KING3 RS カスタム」と呼ばれ、オーバーサイズBB30や1.1/2オーバーサイズヘッドチューブも選択が可能になる。
そのほか、光の当たり具合でさまざまな顔を見せる特別なラメ素材で上品に仕上げた『スターダストペイント』を施すこともできるようになっている。
ラメの感じがよく分かるヘッドチューブ
ちなみに今回のインプレッション車両はこのスターダストペイントを施したKING3 RSである。実物を見る限りデローザへの憧れとともにビジュアルも補強される魅力は想像以上に所有欲をそそるものに仕上がっていた。
外見とスペック上、ツール(道具)としてもアート(芸術品)としても完成度の高いこのキング3RSをいったいどのようにライダーたちは評価するのか、興味は絶えない。それではインプレッションに入ろう。
ふくよかな曲線美を見せるダウンチューブ
キング3RS専用となったストレートフォーク
デローザ独自のインテグラルシートポストを採用している
ケーブルはこの位置から内蔵になる
なめらかな仕上がりのBB周りが絶妙の反発を生み出す
上り、下り、平坦のすべてのシーンで、どこを走っても難なくこなすハイポテンシャルなバイクになっているので、このKING3 RSに乗っておけばまずロードレースで困ることはないバイクと言えるだろう。
「質の高い適度なウィップは、しっかりと芯が残り、パワーロスを感じない心地いいものになっている」鈴木祐一
ロードレーサーの老舗メーカー。そのフラグシップモデルなので満足感の高いものだろうと試乗前から思っていたが、想像以上に好感触なバイクに仕上がっていた。
特に好印象だったのは、質の高い適度なウィップ(しなり)だ。サドルに腰を掛けただけくらいの力でも初期のウィップを感じられるのだが、剛性不足から推進力を殺してしまうときに口にされる“柔らかい”という類のものではなく、しっかりと芯が残ったパワーロスを感じない心地いいものになっている。
このウィップがあるお陰で、路面からの不必要な衝撃を抑えるとともに、クランクの上死点に近いかなり高い位置からペダルへ入力をはじめてもフレームのしなりが発生して、足への衝撃を緩和してくれる。つまりペダリングから来る身体へのダメージを押さえてくれるので、長時間走ってもストレスの少ないライディングが可能になっている。いわゆる“足にこない”バイクになっている。このメリットは大きい。
ただ、路面からの突き上げに関してはレーシングモデルということもあって、以前乗ったデローザ・ネオプロに比べれば路面のインフォメーションをダイレクトに伝えてくるところはある。しかし、それもこの芯の残った上質なフレームのしなりの効果で、キツすぎるという印象にはならない。
また先述したとおりレースはもちろんだが、このウィップがあるからこそツーリング的な走りでの活躍も十分に期待できる。レースからツーリングまで、高い満足感を持ってフォローできる守備範囲の広さを感じさせてくれる。
インテグラルシートポストを採用しているので、実際はある程度乗り込んでいるライダーに薦める1台となる。しかし、非常に懐が深いバイクなので、そのフィーリングは初心者から上級者まで幅広く薦めることのできるものとなっている。
自分のサイズさえ出ていれば、憧れやデザインだけで購入しても後悔しない1台とも言えるだろう。
「ヨレて横に力を逃がすのではなく、進行方向へ力がまとまって推進力に変換していくようなしなやかさ」三上和志
そして試乗した印象は、ふわりと進み始めるしなやかさが印象的。クリートをペダルにはめるために足を置いただけで軽くたわみを感じて、それを推進力に換えて「あれ? もう進むの?」というな感覚で進み始める。
しかし同時に、弱い入力でたわむということは、強い入力のときに腰砕けのような弱さがあるんじゃないか? と懸念せざるを得なかった。だが、一度強く踏み込んだ瞬間にそんな不安は吹き飛んでしまった。それほどよく反応して進んでくれたのが衝撃的だった。
そしてよぎった不安をあっさり杞憂に終わらせてくれたこのKING3 RSは、ペダリングするほどに「このバイクはどんな強度の入力でも、しなやかさを持って伸びやかに進むことができるバイクなんだな」と感じさせてくれる。
また、荒れた路面でもそのしなやかさが活きてくる。それもたわんだ分をヨレて横に力を逃がすのではなくて、進行方向へ力がまとまって推進力に変換していくような感覚がある。しなやかなバイクは多くあるが、こうした感覚にまでなるバイクは数少ない。
「ハンドリングは自分のライン選んで安心してコントロールできるだけの正確さがある」三上和志
ペダリングした時によく働くチェーンステーからBB周りのしっかりした感じと、それを支えるようにフロントは力を逃がさない感覚がある。だからといって荒れた路面で弾かれることがない。フレーム全体をとおしてバランスの良さを感じる。
弾かれるような荒れた路面でのカーブでも、ハンドリングは自分のライン選んで安心してコントロールできるだけの正確さがある。その上、不安感のないシットリした印象を受ける。
まとめるなら、力強くペダリングした時の爽快感のある走りと、疲れてしまった時の快適性を求めた走りの両方を獲得できるバイクに仕上がってる。レース用途に向いているのは言うまでもないが、レースからロングライドまでこの1台で全部をこなしたい、という人には打ってつけの選択になりえるだろう。
またロングライドの休憩時などに、傍らのバイクを遠目に眺めても満足できるデザインは、所有する歓びをも与えてくれる。さらには「自分を鍛えてもっと走らせてみたい」と感じさせてくれる素性の良さ、ポテンシャルの高さを感じさせてくれるのも印象的だった。
機材としての良さはもちろんだが、それ以上に言葉だけでは表現が難しい感覚的な部分でロードバイクとして完成度が高い。
数値的なカタログスペックだけとってみれば、もっと軽いホイールを採用するなど、まだいろいろできるかもしれないが、このパッケージを想定したデローザは、ロードバイクとしての完成度を求めてフレームとパーツを用意したことが理解できるのだ。
デローザとして考える最高の走りを突き詰めていった結果、このKING3 RSに到達した——。そう感じるモノに仕上がっている。
全体で見ても、走り、外観ともにデローザらしい魅力をしっかり引き継いでいる。これはデローザのフラグシップとして正統に進化した存在感のある1台と言えるだろう。
デローザ KING3 RS photo:MakotoAYANO/cyclowired.jp
■ KING3 RS / KING3 RS Custom
■ KING3 RS Custom
鈴木祐一
鈴木 祐一(Rise Ride)
サイクルショップ・ライズライド代表。バイシクルトライアル、シクロクロス、MTB-XCの3つで世界選手権日本代表となった経歴を持つ。元ブリヂストン MTBクロスカントリーチーム選手としても活躍した。2007年春、神奈川県橋本市にショップをオープン。クラブ員ともにバイクライドを楽しみながらショップを経営中。各種レースにも参戦中。セルフディスカバリー王滝100Km覇者。
サイクルショップ・ライズライド
三上 和志
三上和志(サイクルハウスMIKAMI)
埼玉県飯能市にある「サイクルハウスMIKAMI」店主。MTBクロスカントリー全日本シリーズ大会で活躍した経験を生かし、MTBに関してはハード・ソフトともに造詣が深い。トレーニングの一環としてロードバイクにも乗っており、使用目的に合った車種の選択や適正サイズに関するアドバイスなど、特に実走派のライダーに定評が高い。
サイクルハウスMIKAMI
RSの称号を得た理由は、まずフレーム重量の軽量化が進んだ点。KING3から10%もの軽量化に成功している。そしてキング3 RS専用のストレートフォークも見逃せない。シャープなイメージの外観となっている。当然走りもさらに向上しているのだが、その内容はインプレッション部分で確認して欲しい。
——最高のイタリアンフレームメーカーは、カスタムサイズに対応する必要がある。
デローザの持つこの哲学も当然貫かれ、用意される10サイズのほかにシマノDi2仕様やサイズカスタムにも対応する。さらにサイズカスタムは「KING3 RS カスタム」と呼ばれ、オーバーサイズBB30や1.1/2オーバーサイズヘッドチューブも選択が可能になる。
そのほか、光の当たり具合でさまざまな顔を見せる特別なラメ素材で上品に仕上げた『スターダストペイント』を施すこともできるようになっている。
ちなみに今回のインプレッション車両はこのスターダストペイントを施したKING3 RSである。実物を見る限りデローザへの憧れとともにビジュアルも補強される魅力は想像以上に所有欲をそそるものに仕上がっていた。
外見とスペック上、ツール(道具)としてもアート(芸術品)としても完成度の高いこのキング3RSをいったいどのようにライダーたちは評価するのか、興味は絶えない。それではインプレッションに入ろう。
インプレッション by 鈴木祐一(Rise Ride)
「芯のあるウィップがすごく気持ちいい1台」
デローザのラインナップで、というよりロードレーサーとしてあらゆる面でレベルの高いバイクという印象を受けた。同時にデローザの特徴であるロードレースをメインにおいた造りがよく感じられた。上り、下り、平坦のすべてのシーンで、どこを走っても難なくこなすハイポテンシャルなバイクになっているので、このKING3 RSに乗っておけばまずロードレースで困ることはないバイクと言えるだろう。
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特に好印象だったのは、質の高い適度なウィップ(しなり)だ。サドルに腰を掛けただけくらいの力でも初期のウィップを感じられるのだが、剛性不足から推進力を殺してしまうときに口にされる“柔らかい”という類のものではなく、しっかりと芯が残ったパワーロスを感じない心地いいものになっている。
このウィップがあるお陰で、路面からの不必要な衝撃を抑えるとともに、クランクの上死点に近いかなり高い位置からペダルへ入力をはじめてもフレームのしなりが発生して、足への衝撃を緩和してくれる。つまりペダリングから来る身体へのダメージを押さえてくれるので、長時間走ってもストレスの少ないライディングが可能になっている。いわゆる“足にこない”バイクになっている。このメリットは大きい。
ただ、路面からの突き上げに関してはレーシングモデルということもあって、以前乗ったデローザ・ネオプロに比べれば路面のインフォメーションをダイレクトに伝えてくるところはある。しかし、それもこの芯の残った上質なフレームのしなりの効果で、キツすぎるという印象にはならない。
また先述したとおりレースはもちろんだが、このウィップがあるからこそツーリング的な走りでの活躍も十分に期待できる。レースからツーリングまで、高い満足感を持ってフォローできる守備範囲の広さを感じさせてくれる。
インテグラルシートポストを採用しているので、実際はある程度乗り込んでいるライダーに薦める1台となる。しかし、非常に懐が深いバイクなので、そのフィーリングは初心者から上級者まで幅広く薦めることのできるものとなっている。
自分のサイズさえ出ていれば、憧れやデザインだけで購入しても後悔しない1台とも言えるだろう。
インプレッション by 三上和志(サイクルショップミカミ)
「スペック以上にデローザらしい魅力が詰まっている」
まず一見しただけで金色と紫色に光るラメが入っていて、「こんなにカッコいいバイクってなかなか無いんじゃないかな?」と思わせるほど美しさが際立っている。グラフィックと後ろから見た時のなめらかなラインなどを含めて、無難にまとめることをせず、積極的にデザインされた印象を受ける。思わず乗る前にしばらく見とれてしまった。
そして試乗した印象は、ふわりと進み始めるしなやかさが印象的。クリートをペダルにはめるために足を置いただけで軽くたわみを感じて、それを推進力に換えて「あれ? もう進むの?」というな感覚で進み始める。
しかし同時に、弱い入力でたわむということは、強い入力のときに腰砕けのような弱さがあるんじゃないか? と懸念せざるを得なかった。だが、一度強く踏み込んだ瞬間にそんな不安は吹き飛んでしまった。それほどよく反応して進んでくれたのが衝撃的だった。
そしてよぎった不安をあっさり杞憂に終わらせてくれたこのKING3 RSは、ペダリングするほどに「このバイクはどんな強度の入力でも、しなやかさを持って伸びやかに進むことができるバイクなんだな」と感じさせてくれる。
また、荒れた路面でもそのしなやかさが活きてくる。それもたわんだ分をヨレて横に力を逃がすのではなくて、進行方向へ力がまとまって推進力に変換していくような感覚がある。しなやかなバイクは多くあるが、こうした感覚にまでなるバイクは数少ない。
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弾かれるような荒れた路面でのカーブでも、ハンドリングは自分のライン選んで安心してコントロールできるだけの正確さがある。その上、不安感のないシットリした印象を受ける。
まとめるなら、力強くペダリングした時の爽快感のある走りと、疲れてしまった時の快適性を求めた走りの両方を獲得できるバイクに仕上がってる。レース用途に向いているのは言うまでもないが、レースからロングライドまでこの1台で全部をこなしたい、という人には打ってつけの選択になりえるだろう。
またロングライドの休憩時などに、傍らのバイクを遠目に眺めても満足できるデザインは、所有する歓びをも与えてくれる。さらには「自分を鍛えてもっと走らせてみたい」と感じさせてくれる素性の良さ、ポテンシャルの高さを感じさせてくれるのも印象的だった。
機材としての良さはもちろんだが、それ以上に言葉だけでは表現が難しい感覚的な部分でロードバイクとして完成度が高い。
数値的なカタログスペックだけとってみれば、もっと軽いホイールを採用するなど、まだいろいろできるかもしれないが、このパッケージを想定したデローザは、ロードバイクとしての完成度を求めてフレームとパーツを用意したことが理解できるのだ。
デローザとして考える最高の走りを突き詰めていった結果、このKING3 RSに到達した——。そう感じるモノに仕上がっている。
全体で見ても、走り、外観ともにデローザらしい魅力をしっかり引き継いでいる。これはデローザのフラグシップとして正統に進化した存在感のある1台と言えるだろう。
デローザ KING3 RS
■ KING3 RS / KING3 RS Custom
サイズ(AF) | 53.5・55.5・57.5・59.5・61.5・63.5・64.5・66.5・68.5・70.5 |
カラー |
Savana、BlueWhite、Red、BlackWhite ※今回のインプレッションで使用したフレームカラーは、Savanaカラーのプロトタイプです。 実際の製品版Savanaはゴールドに塗られた部分がレッドになります。 |
フレーム価格 | ¥577,500(本体価格 ¥550,000) ※Savanaカラーは特別塗装のStardustPaintが採用されているため、フレーム価格は¥593,250(本体価格 ¥565,000)となります。 |
完成車参考価格 | ¥1,512,000(本体価格 ¥1,440,000) カンパニョーロ スーパーレコード11V / ボーラウルトラ |
■ KING3 RS Custom
セミカスタムカラー(ベース色のカスタム)、 特注BB&Head、特注シマノDi2仕様フレームオプション | 各 ¥26,250(本体価格 ¥25,000) |
インプレライダーのプロフィール
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サイクルショップ・ライズライド代表。バイシクルトライアル、シクロクロス、MTB-XCの3つで世界選手権日本代表となった経歴を持つ。元ブリヂストン MTBクロスカントリーチーム選手としても活躍した。2007年春、神奈川県橋本市にショップをオープン。クラブ員ともにバイクライドを楽しみながらショップを経営中。各種レースにも参戦中。セルフディスカバリー王滝100Km覇者。
サイクルショップ・ライズライド
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埼玉県飯能市にある「サイクルハウスMIKAMI」店主。MTBクロスカントリー全日本シリーズ大会で活躍した経験を生かし、MTBに関してはハード・ソフトともに造詣が深い。トレーニングの一環としてロードバイクにも乗っており、使用目的に合った車種の選択や適正サイズに関するアドバイスなど、特に実走派のライダーに定評が高い。
サイクルハウスMIKAMI
提供:日直商会 企画:シクロワイアード