2024/11/03(日) - 18:00
時代を先取りする「バーサタイル・レースバイク」
きっと、フェルトの先見の明はもの凄いんだと思う。今や世界選手権が開催されるほどムーブメントを巻き起こしている「グラベルレース」が影も形もない頃から「(V)バーサタイル・(R)レースバイク」を作っていたんだから。
ホビーユーザーに愛されてきた名作Zシリーズの流れを汲むVRは、その名の通り多用途レースモデルとして開発されたバイク。イージーポジションを叶えるジオメトリーと高い振動吸収性能こそ与えられているが、走行性能は技術屋集団フェルトが培ってきたレーシングバイクそのものという、一般的なエンデュランスモデルとは一味違う、ユニークなキャラクター設定が最たる特徴だ。
クリーンなルックスと、衝撃吸収シートクランプを手に入れての第4世代化。新型VRをテストするのはFRに引き続いてアテネ五輪や世界選手権を経験し、2016年に現役復帰して以降、フェルトを駆る弱虫ペダルサイクリングチームの一員としてレースを戦った唐見実世子さん(現THE BASE勤務)と、元Jプロツアー選手で、現アルディナサイクラリー店主として腕を振るう成毛千尋さんという、これまでフェルトを、選手として、そして走れるショップオーナーとして体感してきた2人。
エンデュランスモデルとグラベルモデルのあり方が急速に変わる2020年代中盤において、VRはどのような意味を持つのか、どういうユーザーにベストマッチするのかを聞いた。
VR4.0 ロードテスト
「とにかく走りが軽い。こんなエンデュランスモデルはなかなか無い」
今回試乗車として用意されたのは、ULTEGRA DI2とレイノルズのAR46ホイール、一体型ハンドルで武装した最高峰完成車(47サイズ)と105 DI2を搭載したミドルグレードモデル(51サイズ)。手に持つとずっしりと重く(フレームはFRと同じ900gであり、パーツアッセンブリーによるものと推察される)心配されたものの、その予想を大きく裏切るほどVRに対する2人の印象は良いものだった。
「正直驚きましたね。105完成車に乗りましたが、とにかく走りが軽い。重量的には8kg以上あって手に持つと「うわ重いな...」と感じていましたが、ダンシングで軽いし、ヒルクライム性能が良い。それでいて下りはビタッと安定しているんです。これは良いバイクです」と、成毛さんは驚きを隠さない。そしてそれは、今までフェルトのレーシングモデルしか乗ってこなかった唐見さんも同じだった。
唐見:本当ですよね。登りはとても軽くて驚きました。登ってる感じが希薄なくらい軽かった。良すぎるから『いや絶対こんなはずはない。どっかに欠陥が無いとおかしい』と思っちゃうくらい。これだけ軽いんだから下りはピーキーなんじゃないかと思っても、実際は驚くほど下りやすい。極めて優秀なバイクです。
成毛:下り初めてようやく「あ、こんなに登ってきてたのか」って気付くくらいでしたね。それくらい登れちゃう。タイヤも硬いエンデュランスモデルで、しかもチューブドだったのに走りに重さが反映されない。一発の速さで選ぶならFRですが、この優しさと走りの軽さは、本当に凄いですね。
例えば快適性を出す上で、メーカーによっては衝撃吸収機能を入れたりするじゃないですか。でもVRはそういった走りをスポイルするような要素もありません。絶対的な剛性感自体は硬くなくて、踏んでいっても辛さが無い。だから脚も残しやすいんです。
唐見:そう考えると、フェルトってすごいなと改めて思いました。エンデュランスロードって、そこまで速さを求めてないし、重ったるい感じの乗り味になってしまう。でも、このVRの走りはシャキっとしてるんですよね。別に速さ自体はそこまで求めていないから、そのリソースを乗りやすさやペダリングしやすさといった要素に割り振っているんでしょうね。
正直、レースに出ないのであればVRで良い。レーシングバイクよりも幸せになれますよ。しんどさが無いから、もうちょっと頑張ってみようかなという気持ちになれます。
成毛:そうですよね。確かにレーシングバイクって「しんどい」になっちゃうんです。速く走らないと!という気持ちになっちゃって。そのために作られているので、やっぱり速く走らないと楽しくないという部分は出てきますから。
VRはもちろん追い込んでも楽しめるし、一方で適当に楽しく走ることだって出来る。タイヤも38Cまで履けるし、軽めのグラベルだって楽しめる。舗装路を中心にしつつ、たまにスパイスとして冒険出来る。ラファのプレステージなんか、ぴったりのバイクですよ。今日走ったような林道なんかだと、安心して走れるというのはアドバンテージで、結果的にそちらの方が速かったりする。ビビりながら走るよりもあらゆる面で絶対いいですよ。
唐見:VRは基本的にどこに突っ込んでいっても大丈夫だな、という安心感が強いですよね。今日のコースもかなり荒れていて、ところどころ舗装が剥がれているくらいでしたけど、全然不安に感じることは無かったですね。
成毛:汎用性が高いのもいいですよね。丸ピラー仕様なので、ドロッパーポストも入れられますし、もっとアドベンチャー寄りに仕上げることも出来ますし。今回はクリンチャー仕様でしたから、良いタイヤでチューブレスにすればもっと走りは良くなる。走りが良くないバイクなら28Cにして軽快感を出す選択肢になりますが、走りが良いVRはワイドタイヤでこそバランスが良くなる。
「みんな、こういう良くできたエンデュランスモデルに乗るべき」
成毛:このVRに乗って一番強く思ったことは「みんな無理してレーシングバイクに乗っているんだな」ということです。唐見さんの言葉と同じですが、一般サイクリストは、こういう良くできたエンデュランスモデルに乗るべきなんですよ。日本は特にレーシングバイク崇拝が強いですが、実際にJBCFに出るような人って、ほんとに一握りですから。
唐見:レーシングバイクに乗り続けてきた私から見ると、VRはちょっとハンドル位置が高かったのですが、逆に言えばネガティブはそれくらい。走りは軽いし、ペダルも回しやすい。どんないい加減に漕いでも気持ちよく進んでくれる領域が広く感じます。FRが基本に忠実な自転車だとしたら、VRの方が今風のバイクに感じますね。
成毛:分かりますよ。エンデュランスバイクって今本当に難しい立ち位置にあると思うんですよね。グラベルには心許ないし、速さという意味ではちょっと物足りないし、という。どっちつかずなポジションですよね。でも、このVRは勾配が8%越えるような峠でも苦に感じない。そんなエンデュランスロードってなかなかありませんよ。
「速い」のは確実にFRですが、「軽さ」という感覚を体感しやすいのはVRかもしれません。エンデュランスロードにここまでの軽快感を感じたことはありませんでした。純粋な速さで評価すればFRに対して85点くらいだと感じますが、それでも85点を獲れると思うんです。
そこの差に価値を見出す人、記録を狙う人であればFRを選ぶべきですが、他にもロングライドを楽しんだり、グラベルにも行ってみたいというのであれば、VRが良い。そこまで思わせてくれる、久々に感動したエンデュランスロードでした。
Ultegra Di2完成車 | 105 Di2完成車 | 105完成車 | |
フレーム | |||
フォーク | |||
ステム/ハンドル | Carbon Integrated Road Handlebar/Stem | Easton AL/ Devox DBar.A2 | Easton AL/Devox DBar.A2 |
コンポーネント | Shimano Ultegra Di2 R8150 | Shimano 105 Di2 R7150 | Shimano 105 R7100 |
サドル | Prologo Dimension Space T4.0 | Prologo Dimension Space T4.0 | Prologo Dimension Space STN |
シートポスト | Devox Post.C2 | Devox Post.C2 | Devox Post.C2 |
ホイール | Reynolds AR46 DB Custom | Reynolds AR46 DB Custo | Devox WheelRDS.A1 with Shimano hubs |
タイヤ | Vittoria Rubino Pro IV, 700x32c | Vittoria Rubino Pro IV, 700x32c | Vittoria Rubino Pro IV, 700x32c |
カラー | ライティングホワイト | ディスラプティブブルー、ファストオレンジ | マットベイブルー、ブラック |
価格 | 990,000円 | 792,000円 | 495,000円 |
text:So Isobe
提供:ライトウェイプロダクツジャパン
提供:ライトウェイプロダクツジャパン