2024/10/26(土) - 18:30
フェルトが磨き上げた軽量ロードレーサー
それはまさに、純然たる軽量「ロードレーサー」。各部のインテグレーション化で空力性能を引き上げた、美しく精悍なダイヤモンド型のフレーム。どのメーカーもドロップステー形状を採用する中、レーサーに求められる剛性と快適性/トラクション性能を得るために、あえてフェルトはトラディショナルなフォルムを残した。トレンドに振り回されることなく理想像を追い求めた第4世代のFRは、端正なフォルムにフェルト開発陣の理想を宿し続けている。
今回テストを担当したのは、かつてアテネ五輪や世界選手権を経験し、2016年に現役復帰して以降、フェルトを駆る弱虫ペダルサイクリングチームの一員としてレースを戦った唐見実世子さん(現THE BASE勤務|CW店舗紹介記事)と、元Jプロツアー選手で、現アルディナサイクラリー店主として腕を振るう成毛千尋さんという、これまでフェルトを、選手として、そして走れるショップオーナーとして体感してきた2人だ。
FR4.0 ロードテスト
「フェルト本来の乗りやすさが戻ってきた」
国内最高峰の女子ロードシリーズであるJフェミニンツアーにて、2016年から2020年まで前人未到の個人総合優勝5連覇を達成した唐見さん。その活躍の大部分を支えてきたのは歴代のF〜FRシリーズとエアロロードのARだったし、常にトップモデルとセカンドグレードを乗り分け、その違いを脚で体感してきた。
「かれこれフェルトに乗り続けて7年くらい経つでしょうか。とにかくフェルトは基本的に乗りやすくて、(走らせるのに)悩む必要のないバイクを作ってくれますね。レースで不満が出ることも全くありませんでした。いろいろ乗らせて頂いた中で、私に一番合っていたのはFRのセカンドグレード(先代モデルのリムブレーキ版)。ハイエンドに乗りたいということで先代のFRDも乗りましたが、私には少し硬すぎた。そこまでの剛性が必要なかったということかもしれません。今回のFRは、乗ってみたらとてもバランスが良くて走らせやすかった。すごく好印象でした」と太鼓判を押す。
「先代FRのディスクブレーキモデルは、正直に言うとちょっと乗りづらくなっちゃったように感じていたんです。リムブレーキ時代のバランスが崩れて全体的に硬くなったというか。だから今回のこのバイクはどうかな?と思っていましたが、すごく乗りやすかった」とも。
走れる店長として知られる成毛さんもまた「FRはれっきとしたピュアレーサーなんですが、それでいてとっつきにくいバイクじゃないところが好みです」と、その乗りやすさを評価した。「乗りづらさっていろいろ要因がありますが、例えば剛性が高すぎることもあるし、挙動が軽すぎるバイクもありますよね。あまりにヒラヒラとしたバイクは、下りなんかでもピーキーですし、ペダリングのスイートスポットも狭い傾向があります。でも、FRはしっかりペダリングを受け止めつつ、その上で軽さを感じさせてくれる。土台がしっかりしている安心感があります。」
「走る場所と走らせ方を選ばない。苦しい場面でライダーを助けてくれる」
成毛:疲労が溜まってペダリングが乱れてくると、途端に進まなくなるバイクってよくありますよね。でも、FRはそういったタイミングでも乗り手を助けてくれる。頂上まであと少し!というところで、限界ギリギリでめちゃくちゃなペダリングでもがいても、しっかりと受け止めてくれて前へと連れて行ってくれるんですよね。走らせ方もそうですが、走る地形も選びません。登りも得意だし、一方で平坦でも踏める。下りも安定感ありますし。――フレームのどういった設計がその性格を生み出していると思うか、との質問に対して、オーソドックスなダイヤモンド型のフレームがこの乗り味を生んでいるのでしょう、と成毛さんは推察する。コンパクトなリアバックを採用するロードバイクが主流となった今、あえてこのカタチを採用したフェルト開発陣の意向は、優秀な乗り味として成毛さんに伝わったようだ。
成毛:先代まで存在したFRDグレードでこそありませんが、今回のFRを柔らかく感じたこともありませんでした。むしろ、バランスが取れていることもあって、かなり広いレベルのサイクリストにフィットするのではないでしょうか。レーサーも、全然レースには出ないよ、という人にだってオススメできます。
唐見:正直、日本のトップレースで引けを取ることは無いと思いますよ。弱虫ペダルサイクリングチームでもほとんどの選手が先代のFRグレードに乗っていましたし、十分に戦えるレベルにあると思います。ただ、「レーサーは硬さが正義」という主義から見ればこのバイクは違うかな。あくまで乗りやすさを含めたバランス感になっていて、長距離レースでも脚にこないでしょうね。
成毛:全方位的なレーシングバイクですよね。踏み方だって高回転でもいいし、トルクかけて踏んでいってもいい。踏み方によって、出てくる表情が変わる自転車ってありますけど、FRはそういう狭量さとは無縁です。それに、走りの部分で感じる懐の深さだけじゃなくて、パーツ構成も汎用性が高いのが良いですよね。ケーブルこそフル内装ですが、ステムやハンドルは別体式で、長さやハンドル角度の調整も簡単。だから、まだポジションが煮詰まっていない初~中級ライダーにも恩恵が大きいバイクだと思います。
唐見:最近のインテグレートハンドルはやっぱりどうしても融通が利かないですよね。後からああしたい、こうしたいと思ってもなかなか対応できません。そういった「尖った」ものを使わずに仕上げられているのはこのバイクらしいですよね。良い意味でイマドキのレーシングバイクらしくない一台だと思います。なんだか、フェルトというブランドのイメージそのもののような。
成毛:そうですよね。だからこそ一周まわって、玄人好みのバイクにも感じますね。自転車のことが分かっていないとこういうバイクを開発するのも難しいと思いますし(笑)。超エアロ!超軽い!バイクはコンセプトが簡単ですが、FRのようなバイクは、相当の自転車好きにしか作れない。
「FRは毎日乗れるバイク」
成毛:ディスクロードが主流になってもう5~6年くらいですかね。正直言って、硬く速いレーシングバイクに疲れてる人も多いと思うんですよね。そんな時に、こういったロードバイクの原点に回帰したようなバイクは嬉しいですよ。レーシングバイクって、やはり一瞬の速さを求めてしまうところがあって、もちろんレーサーは勝負をかけた時に最高のパフォーマンスを求めてしまうわけですが、ホビーライダーからするとやや過剰な面もある。もちろんその瞬間瞬間は最高なんですけど、毎日乗るとなった時に、疲れてくるんですよね。毎日フレンチのフルコースを食べられないんです。気持ちよく乗れるから毎日乗れる。FRは毎日乗れるバイクです。
――フェルトを愛する人にとって気になるのが、エアロモデルARとの乗り分け、そして選び方だろう。もとよりこの記事を執筆しているCW編集部の磯部は、2019年に新型ARの国際発表会に参加しているのだが、その際乗ったセカンドグレードのARがエアロロードだと忘れるほどに乗りやすくて気に入っていた。過去に両モデルを実戦投入していた唐見さんにぜひ聞いて見たいという思いがあったのだ。
「当然と言えば当然なんですが、FRはARよりも乗る人を選びませんよね」と唐見さん。「ARは一回スピード乗ってしまえば最高なんですが、特にFRDグレードは剛性が高いので、だいぶパワーが無いと乗りこなせないレーシングモデルなんです。例えば入部選手は群馬CSCの逆回りまではARでいける、と言うほどにオールラウンド性能があるエアロモデルですが、やっぱりFRの万能性、誰にでも乗れるこの感じは魅力ですよね」と言う。やはりオールマイティさにかけてはFRに一日の長があるようだ。
「安心感と共に新しい発見をもたらしてくれる」
成毛:今流行りのエアロオールラウンダーって、耳障りは良いんですけど、やっぱりどこかで辛くなっちゃうタイミングが来ると思うんですよね。そこへ行くと、このFRは魅力的なバイクです。なんでも価格が高くなっている今、ユーザーはバイク選びを失敗したくないし、そういう方にこそオススメできるバイクだなと感じますよね。
最先端のトレンドを求めているという人には違うかもしれないし、めちゃくちゃ軽いわけでもないし、価格的にも決して割安感があるわけでもない。でも、ベテランライダーが選んでも、安心感と共に新しい発見をもたらしてくれる選択肢だと思うんですよね。
Ultegra Di2完成車 | 105 Di2完成車 | 105完成車 | |
フレーム | |||
フォーク | |||
ステム/ハンドル | Carbon Integrated Road Handlebar/Stem | Easton AL/ Devox DBar.A1 | Easton AL/Devox DBar.A1 |
コンポーネント | Shimano Ultegra Di2 R8150 | Shimano 105 Di2 R7150 | Shimano 105 R7100 |
サドル | Prologo Dimension 143 T4.0 | Prologo Dimension 143 T4.0 | Prologo Dimension 143 STN |
シートポスト | Devox Post.C2 Cap | Devox Post.C2 Cap | Devox Post.C2 Cap |
ホイール | Reynolds AR41 DB Custom | Reynolds AR41 DB Custom | Devox WheelRDS.A1 with Shimano hubs |
タイヤ | Vittoria Rubino Pro IV, 700x28c | Vittoria Rubino Pro IV, 700x28c | Vittoria Rubino Pro IV, 700x28c |
カラー | ライティングホワイト、ネイビースモーク | ディスラプティブブルー、ファストオレンジ | マットベイブルー |
価格 | 990,000円 | 792,000円 | 495,000円 |
text:So Isobe
提供:ライトウェイプロダクツジャパン
提供:ライトウェイプロダクツジャパン