2023/12/25(月) - 12:30
上を目指すために。ホビーレーサーに愛されるSuperSix EVO
キャノンデールが新世代SuperSix EVOを発表して1年が経とうとしている。飛躍的な進化を遂げた新型EVOは、トッププロ選手の走りを支えるその一方、現代の軽量オールラウンドバイクとしてホビーユーザーからも注目を集め愛される存在となってきた。
今回は、「鈴なり妖怪 鈴」こと木下友梨菜さん、ACTIVIKE代表の西谷亮さん、「最強ホビーレーサー」高岡亮寛さん、そしてキャノンデール横浜ベイサイド店長の高木友明さんという、新型EVOに乗り込み、成績を出すホビーレーサーや、プロショップスタッフにインタビュー。EVOを知り尽くした人からの目線からの走りの印象を、その人となりと共に紹介したい。
木下友梨菜/鈴なり妖怪 鈴さん
「最高の相棒。全日本選手権優勝を叶えるために」
SNSで活躍する女性インフルエンサーは数いれど、これほど本気のシリアスレーサーはいないだろう。「鈴なり妖怪 鈴」こと木下友梨菜さんはヒルクライマーとして台頭し、今年のMt.富士ヒルクライムでは歴代コースレコードを1分2秒縮める1時間6分44秒を達成。あれよあれよと言う間にロードレースに出場すると持ち前の登坂力を武器にJBCF南魚沼ロードで優勝、続くジャパンカップで2位、さらにツール・ド・おきなわ女子国際3位と成績を並べ、一気に強豪レーサーの仲間入りを果たした。
中学から大学までは3000m障害や5000mといった長距離種目を専門にした陸上選手。スポーツバイクとの出会いは意外にも遅く、大学卒業時に、通学用クロスバイクで友達と自転車旅行を楽しむ道中に知り合ったサイクリストからロードバイクを貸してもらった時がファーストコンタクトだという。「クロスバイクと全然違う走りにびっくりしたんです。弱虫ペダルを見始めたことあったし、お店にあったゴールドのCAAD13に一目惚れしちゃった。これはもう買うしかないな...と。気づいたらこうなっていました」と笑う。
「本気で陸上競技に取り組んでいたからこそ、人と競ったり、レース前の緊張だったり、そういうの、もうお腹いっぱいだったんです。だからロードを手に入れてもロングライドばっかり楽しんでました。でも、ふと出場した箱根ヒルクライムで負けて悔しかったんです。それでもっと練習して負けないようにしたい、って。それがのめり込むキッカケでしたね」。
練習に打ち込んだことで「もっと自転車に乗りたい」という思いはますます強くなった。自転車と向き合う時間を作るため、そしてフィジカルベースを上げるため一般会社員からジムトレーナーに転職し、さらに自転車もCAAD13からSuperSix EVOへ。生活環境とバイクの変化なくして今の自分はありえなかった、とも。
ひたすらに自転車を楽しむために乗っていた頃と違い、今年は目標を携えたトレーニングライドがその大部分を占めるようになった。持ち前の明るい性格が練習仲間を増やし、今では良きアドバイスをしてくれる人たちに囲まれているという。「本当にありがたいし、こんなに貴重なことはないと思いますね。そんな練習のおかげで、スタートラインに並んでも緊張せずにワクワクして、純粋にレースを楽しめています」。
そんな"鈴"さんが「最高の相棒」と言うのがSuperSix EVOのHi-Modモデルだ。
「バイク歴もCAADだけだったし、みんながバイクについて話している時も何のことだかさっぱりだったんですよね。でも、そんな私でもEVOの速さにはびっくりしました。全てが軽いし、特に緩斜面での走りがいいですね。伸び感が強くて、グッと前に出てくれる。それから乗り心地の良さにも驚きました。衝撃が身体にこないから、200kmライドに行っても身体の疲れは全く違います」。
走りが良いから、乗り心地が良いからこそ、EVOをもっとロングライドに連れ出したいという。今こそレース活動が中心となったものの、それまでは横浜から九州までソロツーリングを敢行したり、れっきとした旅派。自走で北海道に到達することは今でも大きな目標なんだとか。
「例えば関東から九州とかって、普通だったら飛行機とか新幹線で行く距離じゃないですか。でも自分の脚で走ることで、自転車と一緒にいろんな景色を見れるし、ゴールした時のは凄かったんですよね。わざわざ大変な思いをしてようやく見えた景色っていうのは格別なんです。性別も年齢もフィジカルレベルも自転車を楽しむ上では関係ないし、すごい乗り物だなっていつも思いますね」。
そんな彼女が2024年の目標として公言するのが全日本ロードの優勝だ。もちろん限りなく難しい目標と自覚しているが、同時に「絶対不可能なものじゃないとも思うんです。ギリギリ見えている...かな、ぐらいのところにある」と可能性を見出している。
「"全日本獲ります!"なんて普通言えないけど、ここ最近はあえて目標を口に出すようにしているんです。なぜかと言えば、そうすることで練習に誘ってくれたり、アドバイスをしてくれる人がすごく増えたことを実感しているから。実現できなかったら...と思えば怖いけれど、それ以上にメリットの方が大きくて。だから私は"全日本を獲りたい"」。
そのために、今必要だと感じているのはライバルを振り落とす爆発力だ。登坂力はあれど短い登りで抜け出すには至らず、ゴールスプリントではライバルの背中を見送るばかり。「ウェイトトレーニングをベースにフィジカルを付ければ、もっと勝負できると思うんです。そうすればレースの走り方、戦略、強いて言えば勝ち方が増えるわけですから」。
素養は十分。没頭できる環境を自ら作り、その結果仲間にも恵まれ、楽しむことから始まった自転車だけにメンタルもフレッシュ。全日本チャンピオンになるという、最も難しい目標を叶えるため、鈴なり妖怪のチャレンジは止まらない。
西谷亮さん(ACTIVIKE代表)
「距離を乗ってもストレスのない、スピードレースで活きる走り」
「一番に思うのは"買ってよかった"ということ。意外と脚あたりが硬すぎず、ぐっとスピードが伸びるのに脚を残せるんです。長くトルクをかける僕のペダリングにピッタリでした」と、愛車であるSuperSix EVO LAB71と評価するのは、ACTIVIKE代表の西谷亮さん。理学療法士の経験に基づいたフィッティングマイスターとして東京稲城市にスタジオを構えて活動する傍ら、ここ近年は強豪ホビーレーサーとして頭角を顕してきた。
「単純に乗り込み量を増やしたんです。みんなが走らない夏場でも月間2000kmは下りませんでした。そこに人と競い合う練習を足して、限界値を刺激したことで結果に繋がりました」と言う。過去最高のコンディションで迎えたと言う今年のツール・ド・おきなわ市民レース200kmでは積極的に攻めた走りで9位入賞。「レース経験がまだ少なく攻め所を見誤り、最後はタレてしまいました」と言うものの、ホビーレースの甲子園たる大一番での結果は大きく目を引いた。
「強くなるために距離を重ねたんですが、それは長距離でもストレスを感じにくいEVOだからできたことだったかな、と。乗っていて楽しいし、今の成績はEVOでなければ叶っていませんでしたね。おきなわとニセコを目標に据えたバイク選びをする中で、エアロと軽さを両立したバイクが必要でした。見た目にも空力や重心バランスが良いはずと思っていましたし、実際に乗ってもそれは感じたことでした。振りの軽さについてはモモデザインのハンドルが寄与するところも大きいと思ってます。もちろん高価ですが、レース機材として買った今も後悔は全くありません」。
"ブレイクスルー"を遂げた今シーズンを終え、EVOと共に来季狙うのはニセコクラシックの年代別、そしておきなわ市民200kmの優勝だ。「今年のおきなわは優勝争いが見える位置にいましたからね。でもまだ上位陣、特にトップスリーとの差は大きいと実感しました。雨で冷える特殊なコンディションによって有力選手が苦戦したこともかなり大きいですし、長時間高強度に耐えるフィジカルと、レース勘を養ってまたあの舞台に立ちたいですね」。
高岡亮寛さん(RX BIKE/チームRoppongi Expressオーナー)
「オールラウンドに速い。優れたロードレーサーとはこうあるべき」
「山がちなコースでも、平坦なレースでもクリテリウムでも、コース問わずオールラウンドに使えるのは良いですね。本当に優れたロードバイクというのはそうであるべきだと思います」とSuperSix EVOを評価するのは、言わずと知れた最速ホビーレーサーであり、Roppongi Express代表、そして目黒のプロショップRX BIKEの代表を務める高岡亮寛さんだ。
「その時に興味のある、好きなバイクに乗ってみたい主義」を貫く高岡さんは今年、LAB71グレードのDura-Aceモデルでマスターズ全日本選手権とJプロツアー第11戦の石川ロード優勝という実績を残した。
寝たヘッドアングルによるハンドリングや、長いヘッドチューブなどEVOのジオメトリーは少し気になったものの、乗り込むことで問題なく慣れる範疇だったという。どうしてもバリエーションの限られる一体型ハンドルだが、MOMOデザインによるSystemBar R-Oneハンドルに120mmステムと400mm幅の組み合わせがあること、そしてDI2バッテリーをBB部分に内蔵することでUCIの新規則に準拠した薄型エアロシートポストを実現したことも評価する。
歯に衣着せない機材評価で知られる高岡さんだが、モノが良いだけに一体型ハンドルは380mm幅などサイズバリエーションと、安定した供給があればなお良いとも。シマノのリアディレーラーに対応したダイレクトマウントハンガーも高岡さんが強く希望するものだ。
また、高岡さんは完成車に付属するHollowGram 50 R-SLにも高評価を下した。「カタログ重量が重かったのでオールラウンド性能に疑問を持ちながら走りましたが、いつも走るヤビツ峠でも全く問題なくよく走ったのが意外だったんです。それ以来、(登りの厳しい)修善寺での全日本選手権以外はほとんどR-SL50との組み合わせで走っていました」。
高木友明さん(キャノンデール横浜ベイサイド店長)
「レース機材としてはもちろん、所有欲も満たしてくれる」
「現代のオールラウンドレーサーとして死角が無いバイクですよね。登ってよし、平坦よし、下ってよしと、どんなコースでも速いですし、速く走らせたくなります」。アウトドアスペース風魔横浜、そしてキャノンデール横浜ベイサイドの店長を務める高木友明さんはEVOをそう評価する。
「トルクで踏んでも、回していっても進むのですが、どちらにしても高強度領域でこそこのバイクの良さは引き立ちます。プロが勝つために開発された機材ということが如実に伝わってきます。空力もしっかり効いていますよね。SuperSix EVOに乗った人と一緒に下ることがあって、その時自分は別のバイクだったんですが、下りで距離が開いていくんです。一見、軽量バイクに見えますけど、やっぱりエアロなんだなと実感しました」。
「SystemBar R-Oneハンドルも純粋にカッコいいですし、薄いのにしっかりしていて安心感があります。硬めなんですが、ある程度の吸収性もあるので乗り心地も悪くない」という高木さん。フレームのみならずトータルセットでの高評価は、昔からクランクやホイールなどコンポーネントまでを作り拡充させてきたキャノンデールならではと言えそうだ。
「それに、LAB71はなんといってもペイントの良さも大きな魅力です。お店に展示していても、LAB71のカラーは好評ですし、個人的にも非常に好みです。レース機材としてはもちろん、所有欲も満たしてくれる一台として、稀有な存在だと思います」。
提供:キャノンデール・ジャパン | text:So Isobe