2023/11/14(火) - 18:30
今年の春にフルモデルチェンジを遂げ、日本でもホビーレーサーを中心に一躍人気を博しているキャノンデールの新型SuperSix EVO。ジャパンンカップに参戦したEFエデュケーション・イージーポストの選手2人は、新型EVOをどう評価し、世界最高峰のレースを戦っているのだろうか。選手2人の素顔にも触れたインタビューをお届けしたい。
「昨年はニールソン(ポーレス)と僕でワンツーフィニッシュだったし、ジャパンカップはすごく思い出深いレースだった。暖かいファンが印象深かったし、自らジャパンカップを走ることを希望したんだ。でも去年も今年も左側通行に慣れないのは一緒だね(笑)」
まだ時差ボケが抜けきらない、少し眠そうな表情でジョークを交えながら話すのは、イタリア期待の星である21歳のアンドレア・ピッコロ(イタリア、EFエデュケーション・イージーポスト)だ。ジュニア時代は世界やヨーロッパ選手権トップ10常連組であり、初のグランツール出場となった今年のブエルタ・ア・エスパーニャではいきなりマイヨロホを着用。チーム創設以来初となる赤ジャージを喜んだのも束の間、グランツールの厳しさに直面することにもなったという。
「できる限り総合上位を守りたかったけど、連日ユンボのペースメイクが厳しくて、彼らとレムコ(エヴェネプール)が総合成績狙いに本腰を入れた時点で僕のチャンスは無くなってしまった。でもみんなで狙って勝ち取れたマイヨロホだったし、すごくワクワクした体験だった」。
まだ若いピッコロの夢は、グランツール、特に母国のジロ・デ・イタリアでステージ優勝を挙げること。5〜6分の登坂インターバルが強みであり、だからこそアルデンヌクラシックも目標の一つに見据えている。プロトンで上手く立ち回る上でも、マイヨロホを着た事は良い糧になったという。
サイモン・カー(イギリス)もピッコロと同じく、観光のため滞在日数を伸ばすほどにジャパンカップを楽しみにしていた一人。イギリス生まれ、フランス育ちの25歳のクライマーは、今年ツアー・オブ・アルプスでのステージ優勝や、直近のツール・ド・ランカウイ総合優勝などキャリアハイと呼べるシーズンを過ごし、宇都宮をシーズン最終戦に選んだ。
ランカウイでは難所として知られるゲンティン・ハイランドで勝利し、そのまま人生初のステージレース総合優勝。「リーダーになって初めて思ったことは、思っていた以上にストレスフルだということ。ゲンティンの後も3日間あったから何が起こるか分からないし、胃が痛かったよ。最後に優勝を決めた時はホッとする感覚が大きかったかな」と言う。今年は合計4勝。ワールドツアー格のレースではないが、今年積極的にレースをしたことで得たものがあった。
「逃げに入って勝つ能力があることが分かったんだ。僕はステージレースの中で調子を上げていくタイプだから、例えばグランツールの中盤から後半戦にかけて、先行グループ入って勝ちを狙うことが明確な目標になってきた」と言う。フランスで育ったカーだけに、勝ちたいレースはまだ出場したことのないツール・ド・フランス。「誰にとっての夢だけど、実際にツールを沿道で見てきた僕は、人一倍勝ちたい」と訴える。
そんな彼ら、EFエデュケーション・イージーポストの選手たちが駆るのがキャノンデールの新型SuperSix EVO。その正式発表は今年3月のことだったが、チームはそれに先駆け、年末年始のトレーニングキャンプから乗り込んだのちにツアー・ダウンアンダーで初戦を迎えた。
キャノンデールのロードラインナップには軽量オールラウンダーであるEVOの他に、エアロを重視したSystemSixも用意され、当然チームにも供給される。どちらも最高峰のLAB71グレード(SystemSixのLAB71は供給専用品)であり、従来は山岳コースでEVO、平坦であればSystemSixと乗り分けられてきたが、EVOがモデルチェンジによって性能を引き上げたことで、今シーズンはSystemSixを使う機会が激減したという。
カーは年初に初めて新型EVOに乗った時のことを「すごくクールな感覚だった」と表現する。「旧モデルとジオメトリーが一緒だからすぐに馴染めたし、だからこそすぐ違いに気づいたよ。何もよりも違うのはエアロ性能。SystemSixに迫るくらい速い。こんなに軽くて細身なのに、一台で平坦も登りもこなせるのは選手としてとても嬉しい」。
ピッコロも「今年SystemSixに乗ったのは2回だけだった」と意見を揃えた。カーが言うエアロはもちろん、気に入ってるのは剛性感。旧モデルよりもずっと反応性が良くなったと言う。
「だからこそ、スプリントに強いヤツでもEVOに乗る機会が多くなった。ダウンヒルでコーナーを攻める時もEVOの方が素直に曲がってくれるし、あらゆる方向で使いやすい。僕が思うにSuperSix EVOは僕が過去乗ってきた中でのベストバイクさ。エアロ、快適性、剛性、そして軽さ。全て満たしているバイクはなかなか無いと思う」。
走りに関してはこれ以上ないほどにベタ褒め。しかしよくよく聞けば、少し納得できていない部分もあるそうだ。それがジオメトリーと、重量。確かに54サイズのスタック値は555mmとライバルモデルと比較すると少し高く、ピッコロのEVOはパワーメーター無しで6.9kgだという。
「チームに加入した時にフレームサイズ選びに少し苦労したよ。僕は54と56の中間が良いんだ。54だと少し低すぎて近く、56だとリーチはちょうど良いけどスタックが高すぎる。ちょっとそのあたり、ジオメトリーはもう少し種類があっていい気がするね」とはピッコロの談。
カーもその意見に同意しつつ、「ただし一般ライダーのことを思えば収まりのいいジオメトリーだと思う。レーサーじゃない限り低くて遠いポジションは身体を痛めてしまう原因になってしまうから」とも。同席したキャノンデール・ジャパンの伊藤氏は「本国スタッフに伝えておくよ(笑)」とも。キャノンデール最後のカスタムジオメトリーフレームは、つい先日ロード競技から引退したペテル・サガン用のものだったという逸話も飛び出した。
カーは「SuperSix EVOに限らず今日の全てのバイクに言えることだけど」と念押ししつつ、重量についても意見を続ける。
「UCIルールの6.8kgリミットに対して、僕が乗るような54や56サイズは7kg+αくらいある。リムブレーキ時代はもっと軽かったから、それと比べるともっと軽くしてほしい,,,という心の声はあるよね。でも10年前のバイクと比べると明らかに速いし快適なので、さっき僕が言ったように何事にもバランスが重要なんだろうとは理解できる。
バイクがディスクブレーキになって、チューブレスタイヤになって、ここ数年で機材はドラスティックに変わったね。特にタイヤの変化は大きいよ。チューブレスの走行抵抗の軽さはすごいし、対パンク性能も上がっている。特に僕たちはタイヤインサートを使っているから、パンクしてもタイヤがホイールから外れない。安全面でもいいことだと思う」
機材の進化と、戦術の変化。平均速度が急上昇する緊張感溢れる現代ロードレースを戦う選手たち。今日(こんにち)のレースバイクに求めることを二人に尋ねると、共に「バランスに秀でること」という答えが返ってきた。ピッコロは「ただ単に軽い矢は飛ばないんだ」とも表現する。
「エアロダイナミクスは必要不可欠だし、瞬発力に繋がる剛性も大切だ。それに、僕個人としては乗り心地も重要視してる。脚を残せば残すほど有利だし、だから結果的に、僕たち選手は性能バランスに優れたバイクを欲している。いくら速くても乗り心地が悪ければ使えないし、その逆も然り。その上で、EVOの走りに対して僕はとても満足しているよ」(カー)。
3月の発売以来好評を博し、国内の品薄状態が続くSuperSix EVO。フレームは最高峰モデルのLAB71、セカンドグレードとなったHi-Mod、さらにはノーマルモッドと3グレード展開となるが、つい先日にはノーマルモッドフレームにシマノの電動式105を搭載した「SuperSix EVO 3」と機械式105を搭載した完成車「SuperSix EVO 4」が追加となった。価格はそれぞれ税込55万円と39.9万円となり、カーボンレーシングモデル入門機としてベストチョイス。これまで高価なハイグレードモデルが中心だっただけに、ステップアップを考えている方には福音となるだろう。
EFエデュケーション・イージーポストの2人に聞く、新型SuperSix EVO
「昨年はニールソン(ポーレス)と僕でワンツーフィニッシュだったし、ジャパンカップはすごく思い出深いレースだった。暖かいファンが印象深かったし、自らジャパンカップを走ることを希望したんだ。でも去年も今年も左側通行に慣れないのは一緒だね(笑)」
まだ時差ボケが抜けきらない、少し眠そうな表情でジョークを交えながら話すのは、イタリア期待の星である21歳のアンドレア・ピッコロ(イタリア、EFエデュケーション・イージーポスト)だ。ジュニア時代は世界やヨーロッパ選手権トップ10常連組であり、初のグランツール出場となった今年のブエルタ・ア・エスパーニャではいきなりマイヨロホを着用。チーム創設以来初となる赤ジャージを喜んだのも束の間、グランツールの厳しさに直面することにもなったという。
「できる限り総合上位を守りたかったけど、連日ユンボのペースメイクが厳しくて、彼らとレムコ(エヴェネプール)が総合成績狙いに本腰を入れた時点で僕のチャンスは無くなってしまった。でもみんなで狙って勝ち取れたマイヨロホだったし、すごくワクワクした体験だった」。
まだ若いピッコロの夢は、グランツール、特に母国のジロ・デ・イタリアでステージ優勝を挙げること。5〜6分の登坂インターバルが強みであり、だからこそアルデンヌクラシックも目標の一つに見据えている。プロトンで上手く立ち回る上でも、マイヨロホを着た事は良い糧になったという。
サイモン・カー(イギリス)もピッコロと同じく、観光のため滞在日数を伸ばすほどにジャパンカップを楽しみにしていた一人。イギリス生まれ、フランス育ちの25歳のクライマーは、今年ツアー・オブ・アルプスでのステージ優勝や、直近のツール・ド・ランカウイ総合優勝などキャリアハイと呼べるシーズンを過ごし、宇都宮をシーズン最終戦に選んだ。
ランカウイでは難所として知られるゲンティン・ハイランドで勝利し、そのまま人生初のステージレース総合優勝。「リーダーになって初めて思ったことは、思っていた以上にストレスフルだということ。ゲンティンの後も3日間あったから何が起こるか分からないし、胃が痛かったよ。最後に優勝を決めた時はホッとする感覚が大きかったかな」と言う。今年は合計4勝。ワールドツアー格のレースではないが、今年積極的にレースをしたことで得たものがあった。
「逃げに入って勝つ能力があることが分かったんだ。僕はステージレースの中で調子を上げていくタイプだから、例えばグランツールの中盤から後半戦にかけて、先行グループ入って勝ちを狙うことが明確な目標になってきた」と言う。フランスで育ったカーだけに、勝ちたいレースはまだ出場したことのないツール・ド・フランス。「誰にとっての夢だけど、実際にツールを沿道で見てきた僕は、人一倍勝ちたい」と訴える。
「SystemSixの出番がなくなるほど、EVOは速くなった」
そんな彼ら、EFエデュケーション・イージーポストの選手たちが駆るのがキャノンデールの新型SuperSix EVO。その正式発表は今年3月のことだったが、チームはそれに先駆け、年末年始のトレーニングキャンプから乗り込んだのちにツアー・ダウンアンダーで初戦を迎えた。
キャノンデールのロードラインナップには軽量オールラウンダーであるEVOの他に、エアロを重視したSystemSixも用意され、当然チームにも供給される。どちらも最高峰のLAB71グレード(SystemSixのLAB71は供給専用品)であり、従来は山岳コースでEVO、平坦であればSystemSixと乗り分けられてきたが、EVOがモデルチェンジによって性能を引き上げたことで、今シーズンはSystemSixを使う機会が激減したという。
カーは年初に初めて新型EVOに乗った時のことを「すごくクールな感覚だった」と表現する。「旧モデルとジオメトリーが一緒だからすぐに馴染めたし、だからこそすぐ違いに気づいたよ。何もよりも違うのはエアロ性能。SystemSixに迫るくらい速い。こんなに軽くて細身なのに、一台で平坦も登りもこなせるのは選手としてとても嬉しい」。
ピッコロも「今年SystemSixに乗ったのは2回だけだった」と意見を揃えた。カーが言うエアロはもちろん、気に入ってるのは剛性感。旧モデルよりもずっと反応性が良くなったと言う。
「だからこそ、スプリントに強いヤツでもEVOに乗る機会が多くなった。ダウンヒルでコーナーを攻める時もEVOの方が素直に曲がってくれるし、あらゆる方向で使いやすい。僕が思うにSuperSix EVOは僕が過去乗ってきた中でのベストバイクさ。エアロ、快適性、剛性、そして軽さ。全て満たしているバイクはなかなか無いと思う」。
54サイズで6.8kg切りは可能か? 今後の更なる軽量化に期待が高まる
走りに関してはこれ以上ないほどにベタ褒め。しかしよくよく聞けば、少し納得できていない部分もあるそうだ。それがジオメトリーと、重量。確かに54サイズのスタック値は555mmとライバルモデルと比較すると少し高く、ピッコロのEVOはパワーメーター無しで6.9kgだという。
「チームに加入した時にフレームサイズ選びに少し苦労したよ。僕は54と56の中間が良いんだ。54だと少し低すぎて近く、56だとリーチはちょうど良いけどスタックが高すぎる。ちょっとそのあたり、ジオメトリーはもう少し種類があっていい気がするね」とはピッコロの談。
カーもその意見に同意しつつ、「ただし一般ライダーのことを思えば収まりのいいジオメトリーだと思う。レーサーじゃない限り低くて遠いポジションは身体を痛めてしまう原因になってしまうから」とも。同席したキャノンデール・ジャパンの伊藤氏は「本国スタッフに伝えておくよ(笑)」とも。キャノンデール最後のカスタムジオメトリーフレームは、つい先日ロード競技から引退したペテル・サガン用のものだったという逸話も飛び出した。
カーは「SuperSix EVOに限らず今日の全てのバイクに言えることだけど」と念押ししつつ、重量についても意見を続ける。
「UCIルールの6.8kgリミットに対して、僕が乗るような54や56サイズは7kg+αくらいある。リムブレーキ時代はもっと軽かったから、それと比べるともっと軽くしてほしい,,,という心の声はあるよね。でも10年前のバイクと比べると明らかに速いし快適なので、さっき僕が言ったように何事にもバランスが重要なんだろうとは理解できる。
バイクがディスクブレーキになって、チューブレスタイヤになって、ここ数年で機材はドラスティックに変わったね。特にタイヤの変化は大きいよ。チューブレスの走行抵抗の軽さはすごいし、対パンク性能も上がっている。特に僕たちはタイヤインサートを使っているから、パンクしてもタイヤがホイールから外れない。安全面でもいいことだと思う」
トータルバランスに秀でるEVOは、現代レースに求められるオールラウンダー
機材の進化と、戦術の変化。平均速度が急上昇する緊張感溢れる現代ロードレースを戦う選手たち。今日(こんにち)のレースバイクに求めることを二人に尋ねると、共に「バランスに秀でること」という答えが返ってきた。ピッコロは「ただ単に軽い矢は飛ばないんだ」とも表現する。
「エアロダイナミクスは必要不可欠だし、瞬発力に繋がる剛性も大切だ。それに、僕個人としては乗り心地も重要視してる。脚を残せば残すほど有利だし、だから結果的に、僕たち選手は性能バランスに優れたバイクを欲している。いくら速くても乗り心地が悪ければ使えないし、その逆も然り。その上で、EVOの走りに対して僕はとても満足しているよ」(カー)。
新型EVOに機械式105搭載モデル追加 販売ラインナップがさらに広がる
3月の発売以来好評を博し、国内の品薄状態が続くSuperSix EVO。フレームは最高峰モデルのLAB71、セカンドグレードとなったHi-Mod、さらにはノーマルモッドと3グレード展開となるが、つい先日にはノーマルモッドフレームにシマノの電動式105を搭載した「SuperSix EVO 3」と機械式105を搭載した完成車「SuperSix EVO 4」が追加となった。価格はそれぞれ税込55万円と39.9万円となり、カーボンレーシングモデル入門機としてベストチョイス。これまで高価なハイグレードモデルが中心だっただけに、ステップアップを考えている方には福音となるだろう。
キャノンデール SuperSix EVO 3
フレーム | SuperSix EVO Carbon, BSA 68mm threaded BB, flat mount disc, integrated seat binder |
フォーク | SuperSix EVO Carbon, integrated crown race, 12x100mm Syntace thru-axle, flat mount disc, internal routing, 1-1/8" to 1-1/4" Delta steerer, 55mm offset (44-54cm), 45mm offset (56-61cm) |
ホイール | DT Swiss R460 DB, 28h |
コンポーネント | Shimano 105 Di2 R7150, 12-speed |
ハンドル | Vision Trimax Compact |
サイズ | 48, 51, 54, 56, 58 |
カラー | Black |
価格 | 550,000円(税込) |
キャノンデール SuperSix EVO 4
フレーム | SuperSix EVO Carbon, BSA 68mm threaded BB, flat mount disc, integrated seat binder |
フォーク | SuperSix EVO Carbon, integrated crown race, 12x100mm Syntace thru-axle, flat mount disc, internal routing, 1-1/8" to 1-1/4" Delta steerer, 55mm offset (44-54cm), 45mm offset (56-61cm) |
ホイール | DT Swiss R460 DB, 28h |
コンポーネント | Shimano 105 7100, 12-speed |
ハンドル | Vision Trimax Compact |
サイズ | 44, 48, 51, 54, 56 |
カラー | Black |
価格 | 399,000円(税込) |
提供:キャノンデール・ジャパン | text:So Isobe