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前後に独自のサスペンション機構である"Future Shock"を搭載したフルサスグラベルバイク、スペシャライズド"Diverge STR"をフィーチャー。Fサスに加えてシートポストをしならせる新機構のリアサスを新たに搭載し、リジッドバイクのペダリング効率を兼ね備えた一台へ進化した。

スペシャライズド Diverge STR スペシャライズド Diverge STR photo:Makoto AYANO
世界的な流行を見せるグラベルライド。危険が多い交通量の多い道路を避け、安全なライド環境を求めるムーブメントは「未舗装路への逃避」という側面から始まったが、今やアメリカでは北米最大のバイクイベントがアンバウンド・グラベル(Unbound Gravel)というほどに流行し、大きな広がりを見せている。

グラベルとの取り組みは人さまざま。オフロードを楽しむという日常のライドから、多くのプロライダーが存在するレーシングの世界までもが瞬く間に確立された。当然、グラベルバイクもオフロードに対するキャパシティー(許容量)の面から分類しても様々な進化を遂げてきた。

シンプルかつ軽量で調節可能なリアサスペンションとして完成したリアのFuture Shockシンプルかつ軽量で調節可能なリアサスペンションとして完成したリアのFuture Shock photo:Makoto AYANO
オン/オフでレースシーンを牽引するスペシャライズドは、それらのニーズに応える豊富なバイクラインアップを揃える。エンデュランスレーサーのRoubaix(ルーベ)、グラベル/シクロクロス両対応のCRUX(クラックス)、そして最もキャパシティが大きなグラベル/アドベンチャーバイクとして用意されるDiverge(ディヴァージュ)という3つのラインアップで、広がり続けるドロップハンドル・オフロードライドの世界をカバーしている。

今回発表されたDiverge STRは、最もアグレッシブにオフロードを走破するグラベルバイク Divergeの進化形。フォークコラムに内蔵されたFuture Shockに加え、リア用に開発された新たなFuture Shockを搭載。フロント20mm・リア30mmストロークを実現したフルサスグラベルバイクだ。

しなるフレームポストをトップチューブ内蔵ダンパーで制御するリアのFuture Shock しなるフレームポストをトップチューブ内蔵ダンパーで制御するリアのFuture Shock
路面の凹凸をいなすサスペンションの搭載は、ある意味オフロードバイクが到達する回答のひとつ。しかしサスペンションは自ずと重量増を招き、軽快さを欠いてしまうことにつながる。またペダリングパワーを吸収する動きのサスはともするとパワーロスにつながってしまう。そうした課題を常に抱える機構であることはご存知のとおりだ。

フレームポストを90°回転させることで可動量を選べるフレームポストを90°回転させることで可動量を選べる 3段階にコンプレッションダンピングを調節することが可能3段階にコンプレッションダンピングを調節することが可能

スペシャライズドがRoubaixやDivergeに搭載してきたフロント用のFuture Shockは、一般的なサスペンションとは異なる発想で作られている。ギャップからの振動をホイールを動かすことで受け止める既存の方式ではなく、フロントに搭載されたFuture Shockはフレームが動くことを許容することでライダーから振動を切り離すサスペンションだ。

フレームポストが可動するための構造をとるシート&トップ接合部フレームポストが可動するための構造をとるシート&トップ接合部 フレームポストはシートチューブ下部でクランプされ固定されるフレームポストはシートチューブ下部でクランプされ固定される 27.2mm径の丸断面シートポストを採用するためドロッパーポストにも差し替えが可能だ27.2mm径の丸断面シートポストを採用するためドロッパーポストにも差し替えが可能だ

新開発のリアのFuture Shockもそうした発想で設計された。もっとも、当初から開発は最短距離ではなかった。様々なリアサス搭載フレームのプロトタイプがテストされ、試行錯誤を経てきた。そのうえでクリス・ダルージオ氏を中心とする開発チームは、パワー伝達効率や反応性を損なわないリアサス構造のヒントを、既存のRoubaixやDivergeに搭載されていたシートポストに見出すことになる。

ペダリングロスを生まずに衝撃を吸収するFuture Shockリアサスペンションの開発

リアホイールの軌跡を相殺するようにサドルの位置が動き、ライダーを路面の振動から切り離すリアホイールの軌跡を相殺するようにサドルの位置が動き、ライダーを路面の振動から切り離す (c)スぺシャライズド・ジャパン
着想のもととなったのはRoubaix搭載のPavé(パヴェ)シートポストと、Diverge搭載のTerra(テラ)シートポストだった。カーボンレイアップを工夫し、伸び特性をもつ素材を特定の部位に使うことで垂直方向のコンプライアンス(柔軟性)をもたせたそれらのシートポストは、しなることで快適で滑らかな乗り心地を実現し、同時に段差を乗り越える際のリアホイールの軌道をしっかり相殺するサドルの動きを生み出していた。

その「シートポストを積極的にしならせることでリアバックの追従性を生み出す」というアプローチのまま、より大きなトラベル量を確保し、またリバウンド時にライダーを前方へと押し出すエネルギーを相殺するためのダンピング機構を実装することが次なる開発目標となった。ペダリングロスを生じず、振動からライダーを切り離すリアサスペンションを求めて。

フレームポストはフレームサイズに応じて2種類が同梱され、4種の硬さを選ぶことができるフレームポストはフレームサイズに応じて2種類が同梱され、4種の硬さを選ぶことができる
フレームポストは90°回転させれば硬さを選べるフレームポストは90°回転させれば硬さを選べる マニュアルを参照してフレームポストを体重等に応じてセットするマニュアルを参照してフレームポストを体重等に応じてセットする

そして数々のプロトタイプを経て最終的にたどり着いたのは、スプリングの役割を果たす柔軟性に富んだ「フレームポスト」によって前後方向のトラベルを確保する方式。このフレームポストをトップチューブに内蔵されたダンパーユニットと接続することで最適な動きに制御するリアのFuture Shockが開発された。

リアのFuture Shockは、動きやすさを決定するスプリングレシオを調整するために、そのしなやかさに応じて9種類のフレームポストが用意され、フレームサイズに応じてその中から2種類が同梱される。フレームポストは90°回転させることでハードとソフトを調整でき、初期パッケージのみで4種類から好みの硬さを選ぶことができる。

ゴムブーツ等を取り付けて内蔵するフレームポストの状態ゴムブーツ等を取り付けて内蔵するフレームポストの状態 フレームポストを体重や好みに応じて差し替え、セットすることができるフレームポストを体重や好みに応じて差し替え、セットすることができる

フレームポストの動きの速さを決めるのがトップチューブに内蔵されたダンパーだ。サドルが後ろに動くコンプレッション(プル式なのでダンパーは伸びる動きとなるが)側に3段階の調節機能が備えられている。レバーをオープンの位置にすれば最も制限のないアクティブな動きに、クローズドではより緩やかな動きとなる。

サドルが元の位置に戻る速さに影響するリバウンドダンピングもトップチューブ裏の六角ボルトにより調節することが可能だ。フレームポストの剛性とライダーの体重や好みによって設定すれば最適な動きを得ることができる。サドルに座らない状態ならリアは常にリジッドフレームであることも特筆すべき点だ。つまり従来のリアサスペンションが動いてしまうことで生じていたようなペダリングロスは皆無だ。

コラムに内蔵され20mmストロークを持つFuture Shock2.0フロントサスを搭載コラムに内蔵され20mmストロークを持つFuture Shock2.0フロントサスを搭載 photo:Makoto AYANO
Diverge STRはフロント/リアのFuture Shockを搭載しつつ、従来のDivergeに比べてシステム重量で約400gの増加にとどめられた。わずかな重量増と引き換えに、ペダリングロスを生まずに圧倒的な快適性とトラクション、コントロール性能の向上を実現した。

Future shockは上部ダイアルで可動量を制御できるFuture shockは上部ダイアルで可動量を制御できる バーは両肩上がりのグラベルハンドルが採用されるバーは両肩上がりのグラベルハンドルが採用される photo:Makoto AYANO

なおフレームジオメトリーは従来のDivergeとスタック・リーチは共通で、同じポジションを実現可能。しかしリアのFuture Shockのサグ(静止状態の初期移動量)に合わせてシートアングルが最大0.5度立たされており、BBドロップが5mm、チェーンステー長が4mm増加するなど、メインフレームもリアのFuture shock搭載に合わせて設計し直されたのだ。

シンプルかつ軽量で調節可能なリアサスペンションとして完成したFuture Shockだが、27.2mm径の丸形シートポストを採用しているため、一般的なドロッパーポストにも対応している。トレイルライドやテクニカルなダウンヒルを楽しむ際などにはドロッパーポストを使用すれば、よりアグレッシブなライドを可能にしてくれるのだ。

フォークにはケージ装着用のアイレットが3つ備わるフォークにはケージ装着用のアイレットが3つ備わる タイヤクリアランスは最大700×47mm、650Bなら52mm(2.1インチ)タイヤクリアランスは最大700×47mm、650Bなら52mm(2.1インチ) フレーム素材はTarmac SL7等と同等のFact Carbon11Rを採用フレーム素材はTarmac SL7等と同等のFact Carbon11Rを採用

タイヤクリアランスは現行モデルと同様の最大700×47mm、650Bであれば52mm(2.1インチ)で、フォーク/フレームとの間に最低6mmの間隔を確保している。ダウンチューブには内蔵ストレージシステム"SWAT"が備えられる。ボトルケージ台座を兼ねる蓋がワンタッチで取り外せ、手軽に内部ストレージへとアクセスできる。2つの専用袋が用意され、グラベルライドに欠かせないスペアチューブやタイヤレバー、ツールなどをスマートに収納可能だ。

SWATケージを外せばフレーム内部をストレージとして活用できるSWATケージを外せばフレーム内部をストレージとして活用できる SWATケージに内蔵する専用アクセサリーバッグSWATケージに内蔵する専用アクセサリーバッグ

フロントフォークにはラックやケージを取り付けられるアイレットを搭載し、アクセサリーバッグの直付けやボトルの増設、バイクパッキングのセットアップに対応する。ただしフロント/リアのFuture Shockと動くフレームポストに干渉しない取り付け方をする必要がある。

トップチューブ上にはアクセサリーバッグを直付けできるアイレットを装備トップチューブ上にはアクセサリーバッグを直付けできるアイレットを装備 ダウンチューブ下部には跳ね石からチューブを護るアンダーガードが装着されるダウンチューブ下部には跳ね石からチューブを護るアンダーガードが装着される

路面による振動からライダーを切り離す前後Future Shockを搭載することで、スペシャライズドのグラベルバイク史上最高レベルの追従性を確保しつつ、軽くキビキビと走る反応性をも両立したDiverge STR。一言でフルサスバイクとは言うにはあまりに他とは違う性能を獲得することに成功した。それは乗ってみなければ体験できないフィーリングだろう。

スペシャライズドのグラベルバイク2種、DIVERGEとCRUX はどう選ぶ?

Divergeの追加モデルとして誕生したDiverge STRによって、スペシャライズドのグラベルカテゴリーのバイクの選択肢はさらに充実することになった。ここではDivergeとCruxの2系統あるラインアップそれぞれについて、その違いがどこにあるのかを探ってみたい。

グラベル&エンデュランスロードのDIVERGE PROグラベル&エンデュランスロードのDIVERGE PRO CXレースバイクをベースに開発されたCruxCXレースバイクをベースに開発されたCrux

まず簡潔に言ってDivergeは未舗装で最高のパフォーマンスを発揮できるよう設計された「グラベル/アドベンチャーロード」だ。今回発表されたSTRのベースとなるDivergeも2020年5月にフルモデルチェンジを受け、気ままなオフロードライドからグラベルレースまで、長距離であっても速く・快適に走ることを主眼に設計された。

対して昨年10月にデビューしたCruxは、それまでの純シクロクロスレースバイクからフルモデルチェンジして生まれた「CX系グラベルバイク」。それまではワールドカップ等で戦えるピュアシクロクロスレーサーとして位置づけられてきたCruxだが、スペシャライズド曰く"グラベル・エクスペリエンス"にフォーカスを当てたバイクへと生まれ変わった。軽量で操作性と反応性に優れ、グラベルであっても機敏な走りを実現するバイクとしてリメイクされたのだ。

2021年のアンバウンド・グラベルでDivergeを駆りワンツーフィニッシュを飾ったイアン・ボズウェルとローレンス・テンダム2021年のアンバウンド・グラベルでDivergeを駆りワンツーフィニッシュを飾ったイアン・ボズウェルとローレンス・テンダム photo: 400North Creative
DivergeとCrux、この似て非なる2種のグラベルバイクを前に「どちらを選べば良いのか?」と迷う読者がいることは想像に難くない。そういった選択の際の参考となるのは、ともに開発に協力してきたスペシャライズドのサポートアスリートであるトップレーサーたちのチョイスだ。

2021年にアンバウンド・グラベルで優勝したイアン・ボズウェルと2位のローレンス・テンダムは、揃ってDivergeを駆ってワン・ツー・フィニッシュを飾り、話題となった。そして今年、2022年の同大会でも2人は揃ってDivergeを選択。優勝こそ逃したものの3位と4位に。グラベル界のスター&レジェンドの2人は、常にリスペクトされ注目される存在だ。

イアン・ボズウェルと愛車スペシャライズドS-WORKS DIVERGEイアン・ボズウェルと愛車スペシャライズドS-WORKS DIVERGE photo:MakotoAYANO
ところで2022年のアンバウンド・グラベルはスペシャライズドとしてはCruxを発表したばかりのタイミングで、マーケティング上の理由からも当然Cruxを選ぶものと思っていた周囲を驚かせた。なぜ2人はあえてDivergeを選んだのだろう?

実際、ボズウェルとテンダムの2人はそれまでのレースでCruxを駆り、リザルトも残している。ボズウェルは言う。「(アンバウンド・グラベルまでに)Cruxでトレーニングを積み、レースに備えたが、最終的に選んだのはDiverge。Cruxは俊敏だがラフ過ぎず、ピーキー過ぎることもない。しかしアンバウンド・グラベルは200マイル(=320km)という長距離レースで、路面も荒れていることが予想できた。Divergeのほうがより向いていると判断したんだ」と話す。

Divergeを駆りアンバウンド・グラベルを走るイアン・ボズウェルDivergeを駆りアンバウンド・グラベルを走るイアン・ボズウェル photo:Snowy Mountain Photography
41歳のテンダムは次のように話す。「僕らは距離や路面状況によってバイクを乗り分けるんだ。アンバウンドのような長い距離にはDivergeが適している。ここまでの1ヶ月間、Cruxでトレーニングを積んでいたんだけど、直前にDivergeに乗ってみると腰がリラックスした状態でライドすることができたんだ。もしアンバウンドのコースがもっと短くて登りが多かったらCruxを選んだだろうね」。

先頭集団で展開するローレンス・テンダム先頭集団で展開するローレンス・テンダム photo:Snowy Mountain Photography
つまり二人とも、長距離で路面が荒れている場合はDivergeを選んだほうが快適に速く走れるというのだ。テンダムの示唆する「距離が短い場合はCruxを選んだだろう」という一言は、100マイル(160km)クラスに飛び入りエントリーしたペテル・サガンのチョイスがCruxだったことがひとつの答えになっている。

サガンはトレーニングでアメリカに滞在しており、特別ゲストとして100マイルレースにエントリーし、ファンたちと楽しんで走った。レース中には路面のギャップにあわせて飛び跳ね、ウィリーをキメるサガンの走りを目撃している。天才的なライディングを見せるサガンは、ご存知の通りMTBレーサーとしても五輪選手になるテクニシャンだ。

スペシャライズドCruxを駆り、グラベルを楽しむように走るペテル・サガンスペシャライズドCruxを駆り、グラベルを楽しむように走るペテル・サガン photo:Makoto AYANO
もっとも、100マイルが「短い距離」というのはプロならではの表現だろう。160kmのグラベルはアマチュアサイクリストにとっては気の遠くなるような距離であるはず。しかしプロの選択基準も、自分のライディングテクニックを基準に、距離と難易度によってバイクを選ぶのだということがわかる。サガンがグラベル世界選手権にRoubaixをチョイスして走ったことはその極端な例だろう。ダートをいなすテクニックとフィジカルがあれば、ロードモデルでだってグラベルを走れてしまうのが一流のプロライダーだ。

ボズウェルは言う。「マウンテンバイクをルーツに持つ選手たちはテクニックがあるからダウンヒル時のアドバンテージを得るためにCruxを選ぶだろうし、彼らが劣るアップヒルでも車重の軽さが有利に働くだろう。しかし僕とローレンス(テンダム)は彼らほどテクニックが無いから、重視するバイクの特性は違ってくるんだ」。

ペテル・サガンがアンバウンド・グラベルで駆ったスペシャライズドS-WORKS Cruxペテル・サガンがアンバウンド・グラベルで駆ったスペシャライズドS-WORKS Crux photo:Specialized
速く走ることが重要なレースでは、ライダーの長所をより引き出してくれ、短所をカバーしてくれる機材選択がタイム短縮のキーとなる。しかしそれと同時に悪路を走るグラベルレースでは、路面からの振動を吸収し、身体に受けるストレスを減らすことがエンデュランス(耐久)という観点で大事になってくる。

テンダムは「スピードのために軽量化に徹するレーサーも居るけれど、僕の場合はサスペンションから受けられる恩恵は外せない要素。僕はテクニックのあるライダーではないので、Divergeならより安心して走ることができるんだ」と話し、バイク自体の軽量化よりもサスペンションがあることのメリットを選ぶ理由を説明する。

近年、急速な興隆を見せるグラベルライドシーンの「レース創成期以前」に着目すると、未舗装路を含むウルトラディスタンスへの挑戦というライドがその由来となってきた経緯がある。今のアンバウンド・グラベルのレースの起源となったのは、耐久レース「トランス・アイオワ(アイオワ州横断レース)」。じつに340マイル(544km)を走るウルトラエンデュランス(耐久)レースだった。

フリントヒルズのグラベルロードを走るローレンス・テンダムフリントヒルズのグラベルロードを走るローレンス・テンダム (c)Laurens ten Dam
元ダーティカンザ、今のアンバウンド・グラベルの創始者たちがこぞって走ったその超長距離耐久レースが今のグラベルレースの発想元となり、後にスペシャライズドのアンバサダーとなったダン・ヒューズ氏(アンバウンドグラベル3度の覇者)らがDivergeの開発協力者となってレースを走りながらバイクを開発していった。つまり超長距離を速く・快適に走るという視点でDivergeの開発は進むことになる。フレーム素材もスチールからアルミ、そしてカーボンへと変遷し、長距離を安定して走れるジオメトリーやレイアップ(積層)が研究されてきた。もちろんタイヤやホイール、コンポーネントもマウンテンバイクやシクロクロスの代用品から、それにあわせた専用品へと開発が進んだ。

グラベルの砂塵を巻き上げて大集団が突き進むグラベルの砂塵を巻き上げて大集団が突き進む ©Life Time
対してシクロクロスレースを起源とするCruxは、1時間という決められた時間内にシケインや連続するコーナーなどが設定された難コースを全開で速く走り切るCXレースを前提としてきたバイクだ。それが2021年のフルモデルチェンジで「CXレースも走れるグラベルレーサー」として変貌を遂げたとしても、加速性やハンドリングの俊敏さ、反応性、旋回性能などを重視してきた流れを持つことから、その走りのキャラクターは想像できるはずだ。

俊敏な反応や加速性、操舵性が求められるシクロクロス(CX世界選手権2022)俊敏な反応や加速性、操舵性が求められるシクロクロス(CX世界選手権2022) photo:Nobuhiko Tanabe
Diverge STRが今回フルサスモデルとしてDivergeのラインナップに加わったが、それはDivergeの上位モデルという位置づけではなく、より走破性の高いグラベル・エンデュランスバイクが加わったということ。当然アマチュアライダーにとってはグラベルで余裕を持った走りができることにつながる。しかしボズウェルやテンダムといったトップレーサーがそれをレースで選ぶかどうかは、走るコースのキャラクターや路面状況などの難易度によるのだろう。

速く走り結果を残すことが仕事のプロは、時としてリスクとストレスがあることを承知で、極限まで攻めたバイクセットアップを選択する。しかしアマチュアライダーにとっては、その人のテクニックや体力、走り方を補ってくれるバイクを選ぶことがなにより重要だろう。

なお、本特集の次項ではグラベルの第一人者ふたり、高岡亮寛さん(Roppongi Express)と三上和志さん(サイクルハウスミカミ)による徹底インプレッションでDiverge STRの走りを掘り下げていく。

スペシャライズド S-WORKS DIVERGE STR FRAMESET

サイズ49, 52, 54, 56
カラーSatin Forest Green/Dark Moss Green/Black Pear
価格825,000円(税込)

スペシャライズド DIVERGE STR PRO

フレームDiverge FACT 11r carbon frameset with front and rear Future Shock suspension, SWAT™ Door integration, threaded BB, internal routing, 12x142mm thru-axle, flat-mount disc
ハンドルバーRoval Terra, carbon, 103mm drop x 70mm reach x 12º flare
コンポーネントSRAM Force eTap AXS Eagle
ホイールRoval Terra CL
フロントタイヤTracer Pro 2BR, 700x42
サイズ52, 54, 56
カラーSatin Blaze/Violet Ghost Pearl Fade
価格1,210,000円(税込)

スペシャライズド DIVERGE STR EXPERT

フレームDiverge FACT 11r carbon frameset with front and rear Future Shock suspension, SWAT™ Door integration, threaded BB, internal routing, 12x142mm thru-axle, flat-mount disc
ハンドルバーSpecialized Adventure Gear Hover, 103mm drop x 70mm reach x 12º flare
コンポーネントSRAM Rival eTap AXS Eagle
ホイールRoval Terra C
フロントタイヤTracer Pro 2BR, 700x42
サイズ49, 52, 54, 56
カラーSatin Black/Diamond Dust、Satin Harvest Gold/Gold Ghost Pear
価格990,000円(税込)

text&photo:綾野 真(シクロワイアード) 提供:スペシャライズド・ジャパン